説明を聞き終え、黒ウサギのコミュニティに行くべく五人は歩いている。天真は歩きながら、段々と自分のギフトを理解していった。ギフト名はわかったが、使えるようになったばかりだから制御がなっていない。
「なあ、天真。世界の果てまで行ってみないか?」
唐突に十六夜が話しかけてきた。
「なんで俺なんだ?耀達もいるだろ?」
「オマエが一番面白そうだからだよ。底が見えない相手は久々だ」
「お前なあ。別に構わないけどよ」
口では呆れを含んだ言い方だけど、
(ギフトを制御するいい練習になりそうだ)
内心はワクワクしていた。
「それじゃあ、行くか!黒ウサギには言うなよ!」
「黒ウサギにゴメンって伝えといて。後で埋め合わせはするからとも」
そう耀達に言い残して天真達は世界の果てへと向かった。
黒ウサギはこの間、新しい仲間とのこれからを思い浮かべていたため、全く気づく事はなかった。それどころか、歌を口遊みそうなほど上機嫌で歩いていた。やがて門が見えると、一人の少年が立っているのが見えた。
「ジン坊っちゃーン!新しい方を連れてきましたよー!」
「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性二人が?」
「はいな、こちらの御四人様が―――」
クルリ、と振り返りそのままフリーズする黒ウサギ。
「………え、あれ?もう二人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児!”ってオーラを放っている殿方と、かなり目つきが悪いけれどとても常識のある殿方が」
「ああ、十六夜君達のこと?彼らなら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」
あっちの方に。と指をさすのは上空4000mから見えた断崖絶壁。
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「“止めてくれるなよ”と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「“黒ウサギには言うなよ”と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょう御二人さん!」
「「うん」」
ガクリ、と前のめりに倒れる黒ウサギ。
「て、天真さんは何か言っていましたか?」
「“黒ウサギにゴメンって伝えといて”と言っていたわよ」
「謝るのなら行かないで下さいよ………」
「“後で埋め合わせはする”とも言われた」
「埋め合わせですか………なら後でたっぷりとお説教ですヨ」
少し黒いオーラが滲み出ている黒ウサギ。するとジンが蒼白になって叫ぶ。
「た、大変です!“世界の果て”にはギフトゲームのため野放しされている幻獣が」
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に“世界の果て”付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間には太刀打ち出来ません!」
「あら、それは残念。もう彼らはゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?………斬新?」
「冗談を言っている場合じゃありません!」
「はぁ………ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが、御二人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった。黒ウサギはどうする?」
「問題児達を捕まえに参ります。事のついでに―――“箱庭の貴族”と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」
黒ウサギは怒りのオーラを全身から噴出させ、艶のある黒い髪を淡い緋色に染めていく。外門めがけて空中高く跳び上がった黒ウサギは外門の脇にあった彫像を次々と駆け上がり、外門の柱に水平に張り付くと、
「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ございませ!」
全力で跳躍し、弾丸のように飛び去った。あっという間に視界から消え去った黒ウサギ。巻き上がる風から髪の毛を庇う様に押さえていた飛鳥が呟く。
「………。箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」
「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが………」
飛鳥は心配そうにしているジンに向き直り、
「黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、御言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」
「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。二人の名前は?」
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」
「春日部耀」
「さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」
三人は新しい生活に期待しながら箱庭の外門をくぐった。