神であり魔王である者も異世界から来るそうですよ?   作:ケミ

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第8話 白夜叉の試練

『ギフトゲーム名 “鷲獅子の手綱”

 

 ・プレイヤー一覧

  逆廻 十六夜

  久遠 飛鳥

  春日部 耀

 

 ・クリア条件

  グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

 

・クリア方法

 “力”“知恵”“勇気”の何れかでグリフォンに認められる。

 

・敗北条件

 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りとホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

“サウザンドアイズ”印』

 

「私がやる」

 

挙手したのは耀だった。大人しい彼女にしては珍しく熱い視線だ。十六夜達も異論は無いらしく先手は耀に決まった。耀はグリフォンに話しかける。

 

「え、えーと。初めまして、春日部耀です」

 

『!?』

 

グリフォンの肢体が跳ねた。耀のギフトは幻獣にも有効みたいだ。

 

「私を貴方の背に乗せ………誇りを賭けて勝負をしませんか?」

 

耀は力と勇気の双方を試す条件を出した。

 

『娘よ。お前は私に“誇りを賭けろ”と持ちかけた。お前の述べる通り、娘一人振るい落とせないならば、私の名誉は失墜するだろう。―――だがな娘。誇りの対価に、お前は何を賭す?』

 

「命を賭けます」

 

即答だった。余りに突飛な返答に黒ウサギと飛鳥が慌てたが、

 

「大丈夫だよ」

 

耀が振り向きながら飛鳥と黒ウサギに頷く。その瞳には何の気負いもない。耀は手綱を握ってグリフォンの背に乗りこむ。

 

「始める前に一言だけ。………私、貴方の背中に跨るのが夢の一つだったんだ」

 

『―――そうか』

 

グリフォンは苦笑して翼を羽ばたかせる。そして、薄明の空に飛び出した。試練が始まった。

 

疾風の如く駆けるグリフォンに、耀はよく耐えている。旋回や急降下を繰り返し、グリフォンは耀を振り落とそうと必死になっている。最後の山場を越え湖畔の中心まで疾走したグリフォン。耀の勝利が決定したその瞬間―――耀の手から手綱が外れた。耀の小さな体は突風に吹き飛ばされたように舞い、慣性のまま打ち上がった。助けに行こうとした黒ウサギの手を、十六夜が摑んだ。

 

「は、離し―――」

 

「待て!まだ終わってない!」

 

焦る黒ウサギと止める十六夜。ふわっと、耀の体が翻り、慣性を殺すような緩慢な動きはやがて彼女の落下速度を衰えさせ、遂には湖畔に触れることなく飛翔した。

 

「………なっ」

 

その場にいた全員が絶句した。不慣れな飛翔を見せる耀に十六夜が近寄る。

 

「やっぱりな。お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」

 

むっとしたような声音で耀が返す。

 

「………違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」

 

「ただの推測。お前、黒ウサギと出会った時に“風上に立たれたら分かる”とか言ってたろ。そんな芸当はただの人間には出来ない。だから春日部のギフトは他種とコミュニケーションをとるわけじゃなく、他種のギフトを何らかの形で手に入れたんじゃないか………と推察したんだが、それだけじゃなさそうだな。あの速度で耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」

 

興味津々な十六夜の視線をフイッと避ける。

 

「耀、怪我とかはないのか?」

 

天真の言葉に、

 

「うん、大丈夫。指がジンジンするのと服がパキパキになったぐらい」

 

耀が応える。その向こうでパチパチと拍手を送る白夜叉と、感嘆の眼差しで見つめるグリフォン。

 

『見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証として使って欲しい』

 

「うん。大事にする」

 

「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。………ところで、おんしの持つギフトだが。それは先天性か?」

 

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった」

 

「木彫り?」

 

首を傾げる白夜叉に三毛猫が説明する。

 

『お嬢の親父さんは彫刻家やっとります。親父さんの作品でワシらとお嬢は話せるんや』

 

「ほほう………彫刻家の父か。よかったらその木彫りというのを見せてくれんか?」

 

頷いた耀は、ペンダントにしていた丸い木彫り細工を取り出す。飛鳥と十六夜も白夜叉の隣から木彫り細工を覗きこんだ。

 

「複雑な模様ね。何か意味があるの?」

 

「意味はあるけど知らない。昔教えてもらったけど忘れた」

 

「………。これは」

 

白夜叉だけでなく、十六夜と黒ウサギも神妙な顔をして鑑定に参加している。

 

「材質は楠の神木………?神格は残ってないようですが……この中心を目指す幾何学線……そして中心に円上の空白……もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」

 

「うん。私の母さんがそうだった」

 

「生物学者ってことは、やっぱりこの図形は系統樹を表しているのか白夜叉?」

 

「おそらくの……ならこの図形はこうで………この円上が収束するのは……いや、これは……これは、凄い!!本当に凄いぞ娘!!本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ!まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは!コレは正真正銘“生命の目録”と称して過言ない名品だ!」

 

「系統樹って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ?でも母さんの作った系統樹の図はもっと樹の形をしていたと思うけど」

 

「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ。この木彫りをわざわざ円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、即ち世界の中心を目指して進む様を表現している。中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、生命の完成が未だに視えぬからか、それともこの作品そのものが未完成の作品だからか。―――うぬぬ、凄い。凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ!実にアーティスティックだ!おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」

 

「ダメ」

 

耀はあっさり断って木彫り細工を取り上げる。白夜叉はお気に入りの玩具を取り上げられた子供のようにしょんぼりした。そこに天真は話に水を差すようで気が引けながら一言。

 

「盛り上がっているとこ悪いんだけど、早く白夜叉と戦り合いたいんだ」

 

「むっ。すまんすまん。すっかり忘れとった。あの木彫りも気にはなるが、おんしとの闘いも気が抜けなんだ。他の三人より頭二つ分くらいは実力がありそうだしの」

 

(気が抜けない、か。少しは警戒してくれているみたいだ)

 

そんなことを考えながら、白夜叉に問いかけた。

 

「それでゲーム内容はどうするんだ?さすがに命は賭けたくはないけど」

 

「命まで取るとは私も考えておらん。私の一撃を防ぎきるのはどうだ?」

 

「………二撃で頼めるか?最初は半分の力で、二撃目は最初の攻撃を受けてみてから決める」

 

「よかろう。では始めるとするか」

 

 

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