『ギフトゲーム名 “太陽の連撃”
・プレイヤー一覧
潺 天真
・クリア条件
一、白夜叉の攻撃を二度防ぎきる。
二、白夜叉に一撃与える。
上記の全てを満たした場合。
・敗北条件
降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りとホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“サウザンドアイズ”印』
「クリア条件が増えているのに加えて、難易度が跳ね上がっているのは気のせいですかね?」
「いいえ、気のせいではないわよ」
天真のぼやきに飛鳥が反応する。
「まあ、自分で決闘を選んだんだ。ぼやいてもしょうがないぜ」
「そうだけどさ。真正面から戦うと二番目がきついんだよ」
「きついとは言っても、出来ないとは言わないんだろ?」
「………はあ。頑張るか」
深いため息を吐いてから気持ちを切り替える。
「そろそろ始めるかの」
白夜叉から声がかかる。
「ああ、待たせて悪かった。さあ、始めようか」
天真は白夜叉に返事をした後、体を軽く動かして臨戦態勢をとった。
「まずは半分の力でだったの」
白夜叉がそう言うやいなや、紅蓮の太陽が頭上に現れる。
(これが半分?だとしたら少し期待外れだな)
天真は太陽に向かって跳び上がりそれに触れた。何事もなかったように消え去る太陽に皆が驚愕する。
「………はっ?」
「白夜叉、次は本気で頼むよ。前座にしても軽すぎる」
「い、いやいや。おんし本当に人間か?確かに半分の力では無かったとしても星霊の一撃をあんなに易々と防ぐことができるのは、最低でも神格持ちでないと不可能だぞ!」
「その話は後で分かると思うから、今は闘いに集中しようよ」
「ムム。気になりはするが決闘の最中だったの。おんしには手加減が不要みたいだの。全力で行くぞ!」
さっきのモノが遊びに見えるくらいの太陽が現れた。白夜叉が手を振り下ろし、太陽が天真に迫る。
(おお。コレなら全力を試せそうだ)
天真が目を瞑ると、天真を中心に暴風雨が吹き荒れ始めた。暴風雨は太陽と接触すると少しの均衡の後、まるで太陽を喰らうかのように削りとっていく。見ている全員は言葉もなく立ち尽くしている。
「よもや全力の一撃を真正面から打ち破るとは思わなんだ。」
「二撃防ぎきったよ。後は一撃与えるだけでゲームクリアだよね?」
「うむ。この私に一撃与えることが出来たらの?」
全力を出して疲れた天真は、真正面から戦うことを放棄した。
「“
一瞬のうちに白夜叉の背後に回り込み、首筋に手を当てる。
「チェックメイト」
白夜叉が降参し、勝利宣言が為された。
『ギフトゲーム名 “太陽の連撃”
勝者・潺 天真
敗者・白夜叉
*上記のゲームをもちまして、今ゲームは終了となります。』
「ふいー。疲れた」
天真が一息ついていると、十六夜が思い出したように言う。
「ああ、天真はアザトースの化身だったか。それなら今の状況にもなるか」
十六夜の言葉に白夜叉が食いつく。
「アザトースだと!?架空の神性とはいえ宇宙の真の造物主。神そのものではないか!」
「アザトースの他にも力を持っているけどね」
天真のカミングアウトに絶句する白夜叉。
「全力を出すってこんなに気持ちがいいものなんだな」
天真は晴れ晴れとした表情でそう呟くのだった。呆然としていたメンバーのうち、逸早く復活した黒ウサギが言う。
「天真さんの強大な力を含めて、今日は鑑定をお願いしたかったのですけど」
ゲッ、と気まずそうになる白夜叉。
「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」
白夜叉はゲームの賞品として依頼を無償で引き受けるつもりだったのだろう。困ったように白髪を搔きあげ、着物の裾を引きずりながら三人の顔を両手で包んで見つめる。
「どれどれ………ふむふむ………うむ、三人ともにあやつほどではないが素養が高いのは分かる。しかしこれではなんとも言えんな。おんしらは自分のギフトの力をどの程度に把握している?」
「企業秘密」
「右に同じ」
「以下同文」
「黙秘権を行使」
「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに」
「別に鑑定なんていらねえよ。人に値札貼られるのは趣味じゃない」
ハッキリと拒絶するような声音の十六夜に、同意するように頷く三人。困ったように頭を搔く白夜叉は、突如妙案が浮かんだとばかりにニヤリと笑った。
「ふむ。何にせよ“主催者”として、星霊のはしくれとして、試練をクリアしたおんしらには“恩恵”を与えねばならん。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう」
白夜叉がパンパンと柏手を打つ。すると三人の眼前に光り輝く三枚のカードが現れる。カードにはそれぞれの名前と、体に宿るギフトを表すネームが記されていた。
コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム“
ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”
パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム“
プラチナブロンドとブラックのストライプのカードに潺天真・ギフトネーム“
それぞれの名とギフトが記されたカードを受け取る。黒ウサギは驚いたような、興奮したような顔で三人のカードを覗きこんだ。
「ギフトカード!」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「誕プレ?」
「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合っているのです!?このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!耀さんの“生命の目録”だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのですよ!」
「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?」
「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」
黒ウサギに叱られながら四人はそれぞれのカードを物珍しそうにみつめる。
「我らの双女神の紋もように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは“ノーネーム”だからの。少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」
「ふぅん………もしかして水樹って奴も収納できるのか?」
何気なく水樹にカードを向ける。すると水樹は光の粒子となってカードの中に呑み込まれた。見ると十六夜のカードは溢れるほどの水を生みだす樹の絵が差し込まれ、ギフト欄の“正体不明”の下に“水樹”の名前が並んでいる。
「おお?これ面白いな。もしかしてこのまま水を出せるのか?」
「出せるとも。試すか?」
「だ、駄目です!水の無駄遣い反対!その水はコミュニティの為に使ってください!」
チッ、とつまらなそうに舌打ちする。黒ウサギはまだ安心できないような顔でハラハラと十六夜を監視している。白夜叉はその様子を高らかに笑いながら見つめた。
「そのギフトカードは、正式名称を“ラプラスの紙片”、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった“恩恵”の名称。鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」
「へえ?じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」
ん?と白夜叉が十六夜のギフトカードを覗きこむ。そこには確かに“正体不明”の文字が刻まれている。ヤハハと笑う十六夜とは対照的に、白夜叉の表情の変化は劇的だった。
「………いや、そんな馬鹿な」
パシッと白夜叉はすぐさま顔色を変えてギフトカードを取り上げる。真剣な眼差しでギフトカードを見る白夜叉は、不可解とばかりに呟く。
「“正体不明”だと………?いいやありえん、全知である“ラプラスの紙片”がエラーを起こすはずなど」
「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」
パシッとギフトカードを白夜叉から取り上げる。だが白夜叉は納得できないように怪訝な瞳で十六夜を睨む。
(そういえばこの童………蛇神を倒したと言っていたな)
生来の神々や星霊ほどではないものの、神格保持者は種の最高位。嵐を呼び寄せるほどの力を持つ蛇神が人間に打倒されるというのは、まずあり得ないことだ。
(強大な力を持っている事は間違いないわけか。………しかし“ラプラスの紙片”ほどのギフトが正常に機能しないとはどういう………)
ギフトが正常に機能しない。そこで白夜叉の脳裏に一つの可能性が浮上した。
(ギフトを
浮上した可能性を、苦笑と共に切り捨てる。十六夜のように強大な奇跡を身に宿す者が、奇跡を打ち消す御技を宿しては大きく矛盾するため、“ラプラスの紙片”に問題があるという結論の方がまだ納得できた。
「そういえばおんしは複数のギフトがあると言っていたの」
「俺か?そうだけど見るか?」
天真はそう言ってギフトカードを白夜叉に渡す。ギフトカードを見た白夜叉と十六夜は、
「おんしは本当に規格外にも程があるの。三柱もの神霊の化身が一つの魂に集結するなど初めて見たぞ」
「バアルにベルゼブブか………おい、白夜叉。天真は元々二柱の神霊の化身だった可能性があるぞ。それも神と魔王の力を併せ持つ、な」
「どういうことだ?」
「バアルとベルゼブブは、同一なんだ。バアルは旧約聖書では神として、新約聖書では悪魔として記された。箱庭に来て、ギフトとして確立するときにそれぞれの力が効率よく発揮出来るように分離したんだろう」
「………にわかに信じがたいが可能性としてはあるか。いずれにせよ、この童が強大な奇跡を身に宿していることに変わりあるまい」
五人と一匹は暖簾の下げられた店前に移動し、天真達は一礼した。
「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」
「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等な条件で挑むのだもの」
「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」
「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。………ところで」
白夜叉はスッと真剣な顔で天真達を見る。
「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」
「ああ、名前とか旗の話か?それなら聞いたぜ」
「ならそれを取り戻すために、“魔王”と戦わねばならんことも?」
「聞いてるわよ」
「………。では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」
「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」
「“カッコいい”で済む話ではないのだがの………全く、若さゆえのものなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止めんが………そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」
予言するように断言する。二人は言い返そうと言葉を探したが、魔王と同じく“主催者権限”をもつ白夜叉の助言は、物を言わさぬ威圧感があった。
「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧らはともかく、おんしら二人の力では魔王のゲームを生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ」
「………ご忠告ありがと。肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みに行くから、覚悟しておきなさい」
「ふふ、望むところだ。私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い。………ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」
「嫌です!」
黒ウサギは即答で返す。天真達は女性店員に見送られて“サウザンドアイズ”二一◯五三八◯外門支店を後にした。