rikkaのメモ帳(短編・走り書き集)   作:rikka

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コナン-②

 まさか、注目していた毛利小五郎と出会うとは思ってなかったけど、結局彼は帰ってしまった。

 帰ってしまったけど……戻ってくるんだろうなぁ。

 紅子には話していないが、自分はこの世界が未完結の物語の世界なんじゃないかと思っている。

 だからこそ、一年は確かに過ぎ去っているのになんでもなかった事の様になっている。

 ポケベルとか今じゃあ誰も使わなくなったし、最近じゃあ携帯電話も当たり前になってきている。

 

 ……そうだった、働きだしたら携帯も買わなきゃ。

 お嬢様――って呼ぶ必要はないか。紅子からも「早く持ちなさい」って言われてるし。

 

「尊敬する日本のマジシャン、ですかぁ」

 

 食事の最中に振られた雑談に答えながら、毛利小五郎という名探偵が一度ここに来て、娘を置いて行ったという事象について考える。

 ここの周囲は崖で、来る時に渡ったあのボロいつり橋が唯一のルート。

 険しい森の中を抜けるルートもあるんだろうけど、この雪じゃあ走破は難しい。

 

(あぁ、これ橋落とされるな。あるいはもう落とされてるか)

 

 斬り落とされるか焼き落とされるか、あとついでに電話も使えなくなるんだろう。

 さっき土井塔さんが「ここ圏外かぁ」ってボヤいてたし。

 

 で、橋が落ちる寸前になんらかの情報を得た名探偵が戻ってきて一緒に閉じ込められる。

 

 ……あるいは、外部からなんらかの方法で連絡して、娘の……蘭さんだっけか。彼女と友人の園子さんが協力して解決するってパターンか。

 

(とりあえず、周囲の様子には注意しておくか)

 

 多分、誰かが殺されるだろうし……。

 

 出来ることならその前に止めたいけど、せめて犯人の動機というか被害(予定)者の傾向がわからないと手の打ちようがない。

 山カンで適当な人に入りついて情報を見落としたら元も子もないし。

 

「浅見君はどうだい? 尊敬するマジシャンっていうのは」

 

 おっと。

 すみません土井塔さん、ちょっと考え事してました。

 

「そうですね、黒羽盗一さん……かなぁ。俺のマジックの先生が、よく教材としてビデオを見せてくれたのもあって強く印象に残っています」

「先生って、浅見さんはマジシャンを目指しているんですか?」

 

 で、俺がこの場で注目している三人目。鈴木園子さん。

 普通のミーハーな女子高生って感じだけど、フォークやナイフの使い方が洗練されているんだよなぁ。

 しっかりとしたマナーの教育を受けているというか。

 今晩の食事はステーキだけど、フォークを刺しすぎず、ナイフも力みすぎずに、大きな音を立てずに肉を適切な大きさに切って下品に見えない。

 添え物の野菜の食べ方も丁寧だ。

 ソースや肉汁を垂らさず、綺麗に食べてる。

 

 さっきからキャットフードに被りついている源之助君、見習いたまえ。

 

「んー。残念だけど園子さん、今の所は専門のマジシャンになるつもりはないよ。やってる仕事と言えば接客が主だしね」

 

 どういうわけかえらく懐いてくれるんだよなぁ、この子。

 何が琴線に触れたんだろうか。

 

「ちょっと前まで、とあるお屋敷の使用人をしていたんだけど、そこのお嬢様から『観察力や話術を養うのも兼ねてちょっと勉強しなさい』って言われて、先生を付けられたのさ」

「え、観察力に話術? それで、なんで手品?」

 

 うーん、鈴木という性でお嬢様。

 ……まさか鈴木財閥?

 いや、まぁ、そういう目で見るのは止めておこうか。

 

「結構手品では大事なことなんだよ。観察力はもちろん、会話術もさ」

「そうそう」

 

 でもなんでか園子ちゃん、俺の言葉に相槌打ってくれる土井塔さんをジロっと睨んだりするんだよなぁ。

 なんでだろ? 土井塔さん、ルックスも愛嬌あるし、会話で大事な距離感も程良い。

 大学とかで一番モテるタイプだと思うんだけどなぁ。

 

「例えば、相手にカードを一枚選ばせるタイプのマジックなんかだと、選んだカードを当てるために、相手が上や下、目印のカードから何枚目のカードを選んだかって言うのを素早く数える必要があったりするからね。そういう時に会話や演技などで、時間を稼ぐ事が必要な時っていうのがあるんだ」

 

 まぁ、それだけじゃあないんだけどね? と締めくくる土井塔さん……本気で瑞紀さんに似てるなぁ。

 全くおんなじ事を瑞紀さんに言われましたわ。

 だから、自分の喋り方のペースの把握とかスピードのコントロールは大事って口を酸っぱくして言われたなぁ。

 それが声帯模写の訓練に繋がった訳だけど。

 

「そうだな。尊敬するマジシャン……。黒羽盗一さんが凄い方だっていうのは分かるけど前言撤回。やっぱり先生だなぁ」

「へぇ……なんていう人なんですか?」

 

 蘭さん。名探偵の娘という、一番注意しないといけない女の子が俺に尋ねてくる。

 

「瑞紀さん。瀬戸瑞紀さんです。俺と同い年くらいだから、無名のマジシャンっていう話だけど――」

 

 

「俺にとっては最高のマジシャンだね」

 

 ……土井塔さん、なんでちょっと動揺したの?

 ひょっとして、知ってる?

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 食事も終わって、とりあえずの自由時間。

 俺は土井塔さんとマジックの話から適当に広げようかと思ったら、そこに園子さんと蘭さんも乱入。

 結局4人で、俺の小泉邸での話をすることになった。

 

「それじゃあ、ご両親を失くされて施設で?」

「あぁ。それで施設を出てからどうにか生活していた所に、紅子様――先日までの主にお世話になりまして」

 

 いや、ホントびっくりした。公園のベンチでコンビニのパン食ってたら、突然ドえらい美人の高校生が隣に座って「私の屋敷に来なさい」だもんなぁ。

 

 そんで突然自分の執事服を仕立てられて、気が付けば使用人見習いをさせられて……。

 

 

 

――下僕、ソースの味付けが濃すぎるわ。15分で作り直してきなさい。

 

 

――下僕、掃除のツメが甘いわ。減俸。

 

 

――下僕、今すぐ私が今欲しいと思っている物を全て買ってきなさい。30分以内よ。

 

 

――下僕! 貴方下僕の分際でく……瀬戸瑞紀を口説いていたわね? 一か月食事抜き!

 

 

 …………。

 

 

「えぇ、まぁ。お嬢様に振りまわされる日々でしたけど、楽しい毎日でしたよ」

 

 ちくしょう、なんか色々と思いだしてしまった。

 最初の一年は、睡眠時間削って料理の特訓してたなぁ。

 

 食事抜きをくらった時とか、こっそり自転車で森まで行って適当な動物とっ捕まえて焼いて食ったり……。

 源之助が鼠とかとっ捕まえてきてくれて助かったなぁ。

 

 くそぅ、あんの女いつか覚えてろよ。

 絶対復讐してやる。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「なんか……すっっっごく顔が引きつってるけど」

 

 蘭さん、園子さんありがとう。

 とりあえず俺は今日も元気に生きています。

 

「えぇ、大丈夫です。ところで、園子さんはキッドのファンらしいですが――ん?」

「? 浅見さん、どうかしたんですか?」

「あ、あぁ……いや……」

 

 今、なんか聞こえたような……。

 土井塔さんも園子さんもキョトンとしているが、唯一蘭さんだけが、俺と同じく声がしたような方向に顔を向けている。

 

 来たか。

 

「あ、浅見さん!? 蘭も!!?」

「浅見君!」

 

 後ろから園子さんと土井塔さんの慌てた声が聞こえたが、こっちもそれどころじゃないんで勘弁してください。

 

「ちょっとごめん! 玄関見てくる!」

 

 蘭さんが園子さんにそう叫び返す。まぁ、玄関まですぐそこなのだが。

 

 もし、この場が本当に物語の舞台だとするならば、恐らくはキーパーソンだろう蘭さんが反応したんだ。何かあるのは確実だ。

 

(多分、お父さんの毛利小五郎がこっちに来たんだろ!)

 

 殺人や強盗、誘拐が多いんだ。それに関わった探偵がニュースなんかでピックアップされる事も多い。仮に探偵じゃなくても犯罪に関わる人間が主人公である可能性は高い。

 元刑事で、かつ探偵の毛利小五郎がそれに関わらないハズがない。

 

 玄関まではすぐそこだ。

 ひょっとしたら名探偵ではなく死体が転がってくる可能性もある。

 なにせ、未だ到着していない人間がまだ二人いるのだ。

 万が一にも女の子に死体をハグさせるのは不味い。とにかく先に扉を開けないと。

 

(死体だった場合が面倒だな……指紋とかを付けない様に、手術用の手袋はしてあるけど……)

 

 休憩時間にミステリーを読んでいた時に、紅子の友人だっていう白馬君っていう高校生探偵から教えてもらった現場保存の基本を思い出しながら、片手で蘭さんを制止ながらそっとドアを開ける。

 すると――

 

「こ、コナン君!?」

 

 そこには、俺がちょうどこちらに到着してからすぐに帰ったハズの眼鏡の少年が。

 

 江戸川コナンが倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え、毛利探偵は?

 

 

 

 

 

 

 

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