その国には豊かな繁栄と大きな歴史があった。
名をエタニア、大いなる大樹の祝福を受け、繁栄を続けるその国に一人の少年がいた。
名をリベリオン、リベリオン・フューチャー。
この黄金期とも云われた時期にその大樹の巫女ダーナの幼馴染みに生まれ、王女サライの難病を人知れずに治した転生者であった。
このリベリオンは転生者であるという自覚はあったのだが記憶に関してはすっかり抜け落ちていた。
この知に生まれ落ちたときも前世の記憶は曖昧ではあったが与えられたらしい理力とは違った力を幾つもその身に宿していることは覚えていた。
だがそれも余りにも過剰である為に一部の者以外には教えていない。
無から有を創造する力、そして有り得ぬ程の力に満ちた器。
そして、異常な能力の数々。
もっとも使う機会も然程ないので彼は大人になり、友人達が役職に就いていくなかでよく言えば自由に、悪く言えばフラフラと遊びながらその生活を続けていた。
だが、ある日の事だ。
近くであった子供に広場で竹トンボを作りながら遊んでやっていると突然何もない所から雷が撃たれ、頭に極小の隕石が直撃するという大惨事が起こった。
多少周囲にも被害があり、偶々近場に抜け出して御忍びを楽しんでいた巫女ダーナがいなければ一緒に遊んでいた子供たちにまで被害が及んだかもしれない。
「だ、大丈夫?」
辺りが喧騒とするなかで彼女、大樹の巫女ダーナは幼馴染みに心配そうに声をかけた。
基本的にはなにしても大丈夫なくらいに頑丈な彼だが流石に今回は危ないのではないかと危惧しながら。
しかし、やはり彼は普通ではないのか何事もなく起き上がり、
気が狂ったかのように叫び出したのだ。
そんな彼を落ち着かせようと近場の衛兵とダーナは彼を抑えにかかるが彼は武術大会でも適当に参加しても優勝してしまうような実力の持ち主である。
生半可な方法では彼も自分たちも傷ついてしまう。
だが、ダーナにとって自分が傷つくというのは覚悟の上だった。
彼女はリベリオンに返しきれない程の恩があったのだから。
元来、彼女はその強すぎる予知の力に悩まされており、そんな母が娘のためにその力を抑える理法具である指輪を与えてくれたがそのせいで母がいる家が焼けるという事件が起きてしまうがその火の中に水を被って母を助け出したのが彼であった。
勿論、母も彼も無傷では済まず、母は半身を、彼は背中に酷い火傷の後が残っている。
だからこそ大樹の巫女見習いとして選ばれたときに彼女は決めたのだ。
この嫌っていたはずの予知で多くの人を救おうと。
だというのに。
何故彼がこんな目に遭わなくてはいけないのか。
だが、そんな考えは後だ。
(助けなくちゃ!!)
そう思考を切り替え、彼女は彼へと対峙する。
そこで彼女は狂乱している筈の彼の様子に違和感を覚えた。
(?、大樹と私を交互に見ている?)
更に詳しく見ていると彼は狂った奇声を挙げているのではなく規則性のある言葉を話していることに気づいた。
(……これは間違いなく言葉だ。エレニア以外の外国の言葉を喋っている)
昔癇癪を起こした時にそっくりだ。
どういうことだろうか、彼女は彼と長い付き合いがあるが彼が外国に行ったなどという話は聞いたことがない。
自分が巫女見習いの時も誰にも気づかれずに入って来て色々と世話を焼いてくれたこともある。
しかも頻繁に、だ。
だからといって彼が外国語を学んで話せないという話しでもないけれどあの癇癪の様子から察するにエタニアの言葉より使いなれている感じだ。
……そう考えていると彼の様子が大人しくなり、次第にぶつぶつと言葉を話始めた。
ようやっとエタニア語を話し始めた彼に声をかけようとして、ダーナは動きを止めた。
聞こえてしまったのだ、彼の呟きが。
ラクリモサ、大いなる大樹、最後の巫女、終わり、進化と淘汰。
知らない言葉と謎の単語、そして後の2つの言葉。
背筋を刺すような悪寒が走る。
だが知らなくてはいけない。
そんな使命心のようなものが彼女を突き動かし、
「逃げなくては、このエタニア、いや大陸から。
ラクリモサの届かない場所に……」
何かから逃げようとする彼の呟きを聞いた。
そこからはあっという間だった。
リベリオンは軽く周囲を見渡すと人間離れした脚力でその場から消えた。
無視できない言葉を残して消えた幼馴染み。
あの落雷も空から落ちてきた石も偶然とは思えない。
なにか巨大な嫌な渦に巻き込まれているのを感じる。
目に見えない巨大な渦に━━━。
「……リオ、君にいったい何があったの?」
周囲が口々に彼の事を話す中でダーナは悪い息を吐き出すように呟いた。
▽
「あわわわわ、これイースやんけ!
ラクリモサやんけ! ピンポイントでその関係人物の幼馴染みにとかヤバイわ!
あかん、このままでは滅亡するのは確定的に明らかッ!!」
先程の災害で転生時の記憶を取り戻した俺はひたすら走り続けた。
状況を確認するためだ。
現状、どうやらラクリモサによる淘汰まで時間はあるみたいだが対策を考えなくてはならない。
それに巫女になったばかりのダーナがいるということは隕石が落ちるまで少なくとも二年半は確実に大丈夫だということだが……。
「なにをすればいいんだ……!?」
このラクリモサと呼ばれる自然災害は種族の繁栄によって蓄積された歪みをその時代に生きる種族自身を淘汰することでリセットするという現象だ。
この現象はその歪みによって女神が目覚めてしまうことによりこの世界(夢)が消滅するのを防いだりするシステムらしいのだが正直どうすればいいのだろうか?
明らかに止めるのは無理な気がする。
転生した際に持たされた様々な能力は役にはたつだろうがそれで何をすればいいのやら。
しかし、あの神様は言っていた。
救済せよ、我等が神の意思を代弁せよ、と。
要するに俺の力は強すぎて干渉しづらいからお前に持たせた力を使って俺が通れるように道作っといて、という意訳な話があった。
つまりこの世界に対して何らかの事象や影響を与えると神様が通れるようになって何とかしてくれる、ということなのだろうか?
そこまで考えて空を見上げる。
勝利条件は恐らくエタニア、いやエタニア人の滅亡を阻止すること。
敗北条件は原作通りの滅亡。
「キツいなぁ、ということは幼馴染みのダーナも助けなくちゃいけないんだろ?」
原作でも相当辛い目に遇わされた彼女、何の因果か幼馴染みというポジションにいる自分。
第一目標は自身の生存、第二目標は知り合いの保護、第三目標はエタニア人の生存。
自分はあの終わりは認めていないし、認められない。
出来るだけ足掻いてみるつもりだ。
だから、
「まずは思い出した特典の確認をしないといけないなぁ」
自分がどこまでその力を扱えるのか、それを試す為に郊外へと向かって━━━。
近場の衛兵に取っ捕まって寺院に監禁されてしまった。
あの狂い様から流石に症状が重いと判断されて巫女直々に治療される始末である。
「……。 私、リベが話してくれるまで待ってるから」
そう言って彼女は悲しげな笑顔で自分に微笑んだ。
「何か赤い予言きたら教えて」
その言葉に戦慄するダーナ、なんかめんどくさくなって逃げようとするリベリオン。
いつの間にか増えていた訳知り顔の王女の影武者と王女。
なんか滅ぼそうとしてくるでっかい木!
大変だ! エタニアは滅亡すりゅ!?
「みんなに配る食料が足りない」
「そうか、それは大変だな……。(ずるずる)」
時には貯蓄して食べていたカップヌードルを奪われ、
「寒い、どうしてこんなことに。エタニアは(以下略」
「火に当たる前に服着ろよ」
そんなことを口にしてお気に入りのダウンジャケットを幼馴染みに剥ぎ取られ、更には数を揃えるように要求される。そして彼は━━━、
「サヨナラダーナ、オレチキュウカエル」
「なに言ってるの? リベは私達とずっと一緒だよ!」
そんなこんなで宇宙船を製造し、逃げようとしたところをヒロイン兼主人公に捕まり最終決戦。
そんな彼の明日はどっちだ!?
きっと続かない。