フランがマスターに頼んだお願いとは一体.....!
ただただフランが好きすぎてついに自分で書いてしまいました!
初めての小説ですので誤字や読みにくい部分が多々あると思いますがご了承ください┏○ペコッ
「...............どうしてこうなった」
俺は静かに呟いた。
時間は深夜零時、普段はカルデアのスタッフや数多くのサーヴァント達によって賑わっているカルデアもこの時間になれば流石に静かになる。
俺もいつも通りマイルームのベットで睡眠をとろうとしたのだが今回はそうはいかないようだ。原因は分かっている。
その原因というのは、俺の隣で寝ている最高の、そして絶賛片想い中のサーヴァント、フランケンシュタインにある。
そう、俺は今マイルームのベッドで彼女と一緒に寝ているのだ。
余談だが、俺はマイルームを基本的に解放しているのでよくサーヴァント達が訪れている。
単なる暇つぶしに、悩み事の相談に、等と理由は様々だがこうやって自分の所へ来てくれるのはなかなかどうして嬉しいものである。
話を戻そう。四時間前、俺はメディアさんとの魔術の勉強が終わりマイルームに戻ると中でフランが椅子に座り机の上に置いてある観葉植物を眺めていた。
彼女は普段来ている花嫁衣裳のような服ではなくクイックのコマンドがプリントされた緑のパーカーに同じく緑のホットパンツを履いていた。
そんな服装のフランに可愛いな〜と口元がニヤけそうになったがそれを抑え一つ咳払いをし彼女に話しかけた。
「んんっ...あれ?フランじゃん。どうしたの?」
「............うぅ」
フランは俺を見て小さな唸り声をあげた。
彼女はバーサーカーの特性である狂化が原因で言葉を発する事が困難であるが、今では彼女が何を伝えたいのかある程度理解することができるようになった。
どうやら俺にお願いがあるらしい。
「俺にお願い?いいよ、なになに?」
俺がそう答えるとフランは何かを決心したような表情で俺に話しかけた。
「うぅ......う............ううぅ......」
フランが俺に頼んだお願いというのは、今晩俺のマイルームで寝かせてほしいというものだった。どうして他のサーヴァントの部屋ではなく俺の部屋なのか理由を聞こうとも思ったが、彼女は理由を聞かないでほしい、というような表情を浮かべていたので、俺は聞くのをやめた。
第一フランのお願いを断る理由もなく、大事なサーヴァントである彼女のためになるのならと俺はむしろ乗り気であった。
「分かった。でもまだ寝るには早いしオセロでもして遊ぼうか。」
「うう!」
フランはニコッと笑いありがとうと伝えてきた。
俺は暇つぶしとしてフランとオセロを楽しんだ。彼女は元々高い知性を持ち理性的であるため、狂化で喋れないのも相まってこういった頭を使ったゲームは好きなようである。
オセロ以外にもチェスや将棋を楽しんでいると、夜も十一時を回ろうとしていた。
「そろそろ寝ようか。俺は椅子で寝るからフランはそこのベットをつか」
「ううう!」
ベッドを使うようフランに話しかけると途中でフランに遮られた。そしてベッドを指さしながらフランは俺に話しかけた。
「あ......う......ううぅ.........」
「ええっ!?」
フランは俺に一緒に寝るようお願いしてきた。
これには流石に俺も驚いた。まさか片想い中の相手から一緒に寝るお誘いが来るとは。
俺はフランに誘われるがまま一緒にベッドに入った。
元々一人用のベッドということもあり二人で寝るとどうしても体が密着する。肌が触れているところから彼女の体温がダイレクトに伝わってくる。人造人間である彼女の体温は低く、とてもひんやりしていた。
それと反比例するかのように俺の体温が高くなるのを感じる。隣で俺の好きな子が寝ている。
それを脳内で自覚すると心臓の鼓動が早鐘のように早くなる。フランに聞こえないか内心心配だったがフランには聞こえてないらしく、すでに眠っていたようだ。
そして午前零時、俺の心臓もようやく落ち着きを取り戻し、ようやく眠りに落ちることができそうだった。
どうして今日俺と一緒に寝るよう頼んだのだろう、沈んでく意識の中俺はそれについて考えていたが、答えにたどり着くことは無く、俺はそのまま眠りについた。
気がつくと俺は見知らぬ場所に立っていた。
辺りを見渡した感じ地下の研究室といった感じだ。
そしてそこには俺以外にも二人、白衣を着た青年と全身を包帯で巻いた少女がいた。
「来るな!醜い失敗作め!!私が造りたかったのはお前のような化物じゃない!!!!」
青年は怯えた表情で手術台の上にいる少女に暴言を吐き続ける。そしてそのまま研究室から逃げるように出ていった。
少女は悲しそうに俯いている。そのまま小さな泣き声のような唸り声をあげた。
その時、ふいに俺の頭に何かが流れてくるのを感じた。
(お父様.........どうして私にそんなことを言うの.........駄目な所があるなら直します......だから......私を置いていかないで......)
「これは.........」
俺は理解した。これは目の前の少女、『フランケンシュタインの怪物』の生前の記憶だ。そして今流れてきたのはフランの感情だ。青年ことヴィクターフランケンシュタインに拒絶された彼女の孤独を恐れる感情が流れ込む。
そこからは漫画を飛ばし飛ばし読むかのように断片的に場面が進んでいった。野犬の腹を引き裂き臓物をさらけ出しそれをまるで宝石でも見ているかのように目を煌めかせながら眺めているフラン、化物と罵られながら人々に蔑まれるフランと、彼女の壮絶な人生が断片的に進んでいく。
そして、次第にある感情がフランを支配していく。創造主に対する怒りや憎悪といった負の感情だ。
(どうして......どうしテ.........憎い.....憎いにくいにくイニクイ!!!!)
フランの負の感情が俺に流れ込み頭痛が走る。
そしてまた場面が替わる。周りには大量の死体。そしてその中心にはヴィクターフランケンシュタインと返り血で全身血まみれとなったフランがいる。
フランは血まみれの手でヴィクターの胸ぐらを掴み叫んだ。
「私を拒絶しても構わない、だがその前に私の伴侶となる相手を造り出して欲しい。そうすれば私は二度と貴方の前に現れない。」
生まれてから拒絶され続けた彼女が願った唯一の願いを彼に告げるもヴィクターはそれを拒絶し、また逃げ出した。
ヴィクターは北極まで逃げた後、自ら死を選んだ。こうして彼女の願いは永久に叶うことはなくなった。
場面は切り替わり、フランは廃墟に火をつけその中に自らを投げ込もうとしていた。同時に、彼女の絶望が俺の中に流れ込み全身が張り裂けそうになる。
「フラン!」
俺は必死に叫びながら彼女に近づこうとする。しかしどれだけ走っても一向に近づくことが出来ない。その間にも彼女は業火の中に足を踏み入れていく。皮膚が焼ける匂いと業火の熱気だけがこちらに流れてくる。
「フラン!!!!」
俺は必死に叫んだ。これが彼女の記憶というのなら俺がどんなに声をかけた所で彼女に届くことは無い。
しかしこのまま黙って見ていることは出来なかった。俺は出せる最大限の大声でフランに呼びかけ続けた。
すると彼女はこちらに振り向いた。生気を失った虚ろな瞳がこちらを見ている。一瞬俺と目が合った気がした。しかしそれを確認する間もなく建物は崩れ落ち、フランの姿は消えた。そして俺の視界も次第にフェードアウトしていった。
「はっ.........!?」
俺は目を覚ました。辺りを見渡すがそこはいつもと変わらないただのマイルームだった。時計を確認すると時刻は午前二時を回っている。目元を拭うと生暖かい液体が手元に付いた。舐めてみるとほんのり塩の味がする。
「涙...?」
俺はどうやら泣いていたようだ。そのせいか酷く喉が乾いている。
俺は水を飲みに行こうとベッドから起き上がろうとしたが、左腕の違和感により起き上がることができなかった。横を見ると、フランが俺の腕を掴んでいた。
「うっ...ううぅ......」
フランは震えていた。目元に涙を浮かべながら俺の腕に縋り付き彼女はか細い唸り声をあげている。
フランはきっとこうなることが分かっていたのだ。
英霊にとって生前の記憶はその存在を英霊たらしめるものとして霊基に刻まれ永遠に消えることは無い。それが本人にとって良い記憶でも悪い記憶であっても。
彼女は多分誰かにいて欲しかったのであろう。過去の辛い事を思い出した時一人でいるのは辛いはずだ。そんな時ほど人の温もりが欲しくなる。
もしかしたらフランはその相手として俺を選んでくれたのかもしれない。自惚れかもしれないがもしそうならと考えると俺は少し嬉しかった。
しかしこうして魘されているフランをこのままにするのは嫌だ。
どうするか少し考えていると、ふと昔の記憶が蘇った。
俺も昔怖い夢を見た時に母親の所によく行き一緒に寝ていた。そして布団の中で母親に頭を撫でられながら寝ると不思議と悪夢も見ること無く眠ることが出来たのだ。
俺はあの時母親がしてくれたことを思い出しながら恐る恐るフランの頭に手を伸ばした。
「大丈夫...大丈夫...」
俺は優しく彼女の髪を撫でた。
「俺は絶対にフランを拒絶したりしないよ...他のみんなだってそうさ...だから今は安心しておやすみ...」
フランに囁きながら頭を撫でていると次第にフランの表情は和らぎ震えも収まっていく。どうやら効き目はあったようだ。
きっと彼女はサーヴァントとして現界し続ける限り永遠にこの苦しみから離れることは出来ないのであろう。
なら俺はその度に彼女のそばにいて助けてあげたい。彼女の心の拠り所として一緒にいてあげたい。
そしていつか...彼女が過去の苦しみから解き放たれて幸せになって欲しい。
彼女の寝顔を見て安心した俺はそんな事を思いながら次第に瞼を閉じていった。