いつごろこの旅は終わるのか。
そんな事を考えてもこの悠久の旅は終わらないのだろう。
少なくとも世界が巡っているうちは。
なら今を存分に生きよう。
好き勝手に生きて、生きて、生きて。
最後は好き勝手に死ねる様に
僕が書いている、[ダークソウル~revenge of the knight]の36、37話を見ていただけると、ちょっとだけ面白くなるかも知れません
ーゴブリン…ー
あぁ、いつものアイツだ
ーいい加減あの小汚い鎧もなんとかしたらいいのになー
ー"小物"ばっか潰してりゃ銀になれるんだもんなー
そして耳に入る彼への嘲り
ーハァ…ー
魔物より何より人間が一番面倒なんだもんな
ーよっこらせー
食事を終えたので、俺もいつも通りに依頼を受けに行こうと思う
ー…アイツの鎧も相当だよな…ー
ー剣だって見てみろ。細いし刃こぼれは酷いし…金がよっぽど足りないんだろうなー
まぁ…間違いじゃない。
この鎧も、この直剣も全ては"前いた世界の物"をそのまま持ってきてしまったのだからボロボロなのは理解している。なまじこのままでも良かったが故に、使い慣れた物を捨てて新しい物を買おうとは思えなかったのだ。
今は煤けて真っ黒になった上に、付与されていた能力も消えてしまったこの直剣も、あちらの世界で肌身離さずに持っていた唯一無二の剣だ
それに、剣がなくてもある程度の魔法は使える。使える回数こそ少ないがまぁなんてことは無い
ーお嬢さん、今日はどんな依頼あるかなー
ーあぁベネフィットさん、今日の依頼は、そうですね…ー
ベネフィット、それが"今"の名前だ
ー…ん?なんだあんまり無いのか?ー
ーはい…ベネフィットさん程の方が向かわれるような依頼は無いですね…すいませんー
ー…そういうのは無しって言ったろ…嬢さんが上の奴らが決めた階位なんかを真に受けてたら、俺が行ける依頼が無くなっちまうよー
ーあっ、…すいません、何回も言われてるのにどうしても気にしちゃって…ー
ー前にそういう経験があって怒られたんだろ?それならまあ階位を過剰に気にしちゃうのも分かるけどな。それで?なんかあるかい?ー
ー…そうですね、ちょっとしたゴブリン退治が…ー
ー…ゴブリンねぇ…ー
この世界で言うゴブリンとは、魔物の中でも最下位のものだ。
しかし、いくら村が襲われようと、いくら村人が亡くなろうと、それ故に国はゴブリンの対応などはしない。
ゴブリンは自分より下のものを常に狙っている。
武器を持たない村人を殺し、犯し、その村を自分達の物にする
その代わりに冒険者がこうやってゴブリンを退治する訳だが…
ここはどうやら俺が元いた世界よりシビアの様で、その最下位の魔物でも大勢の冒険者を殺している
それでも結局の所、ゴブリンは倒される。そこが問題の根底なのだ
"倒されてしまうから、国から部隊を出す必要は無い"
要はそういう事だ。今のこの国はそれがまかり通ってしまうほどに緊迫した状態なのかもしれない
なんせ、魔王様とやらとの戦争中なのだから
だから部隊は出せないとの事だった
確かに、そうなんだろう
もしも魔王が勝ったとしたのなら、間違いなくこの世界は終わるのだろう。
しかし、ゴブリンを放置しとけば村が一つ一つ、善良な人達が一人一人殺されるのだ。
この目で、この耳で、何回か村が潰される所を俺は体験した
ーあいわかった。その依頼を受けるとしようー
ー分かりました。それでは~ー
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ー…この森か…ー
なんとも草が生い茂り、木々の背はまぁまぁ高い
人を罠に掛けたりするには絶好の場だ
ーこの森の中に、ゴブリンの群れがいるはずです。恐らく、私達の仲間もそこに…ー
今回、場所が場所なだけに、現地のエルフに地図を貸してもらうよう頼んだ
ーアンタの仲間が生きていれば、必ず助け出す。だが決して期待はするな。連れ去られてから割と経っているのだったら尚更だ。ー
ー…分かっていますー
ーそれなら良い。帰ってきたとしても、前と同じ様に生きていけるとも限らんからなー
そう言い残して俺は森に潜った
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ーこれは…ー
血塗れの鉄のロングソード
明らかに以前にも冒険者が入った痕跡がそこらに見受けられた
ーひっでェ…ー
よく目を凝らすと肉片らしき物を所々に落ちている
この腐敗臭は恐らく"そういう事"なのだろう
ーこんなのを放置するんだから国は信用出来ねぇー
そんな事を考えていると突然、頭に強い衝撃が襲った
ーッッ!!ー
幸い兜を被っていたから気絶こそしなかったが多少、足がふらつく
前を見直すとゴブリンが数匹
ーっざけんなァ!ー
ゴブリンの武器を奪い、最前の頭を貫き、後ろの2体に投げ飛ばす
その間に腰の直剣を抜き、3体のゴブリンを泣き別れにする
先程、何かを投擲してきたゴブリンには奪った武器を投げつけ、落ちてきた所に直剣を突き刺す
ーフーッ…ー
この調子だと、正直1人だと疲れそうだ
だが生憎とこんなボロっちい鎧を着ている人間に付いてこようなどと言う物好きは1人だって見たことない
あの
まぁ、仲間がいないならいないで、それでやっていくしかない。
もとより、俺は1人だったじゃないか
それはさておき、今のゴブリン共はただの巡回の様だ。
あの程度の人数でこれだけの肉片を作る事は出来ないだろう
それ踏まえて考えると…
ーちっとばかしマズイかな…ー
巡回まで置いてるとなると大規模かつ、拠点を持っているゴブリンの群れとなる
それほどの群れとなると1人ではキツそうだ
いくら雑魚中の雑魚といえ数で押されると死にかねないのは、前の世界と一緒だ。
油断すれば死ぬ、突っ込めば死ぬ、守りに徹底してもいずれは死ぬ
無双などは存在しない。そんなものは伝説でしかない。
前の世界の"彼"ならばやって退けるのだろうが
俺にそこまでの力は無い。チマチマと1体1体倒していくしかないのだ
ーよし…ー
殺したゴブリンの血を被り、自分の臭いを隠して、更に奥へ向かう
奥に向かえば向かう程に、腐敗臭が強くなる
よく見てみると木や草に隠れているが洞窟の様なものがみえる
ー…あ…あああ…ああ…!!ー
叫び声だ。しかも人間の
微かにしか聞こえなかったがそれは確かに人間のものだ
ーッ!!ー
思わず足が動き出した
生きている人間がいる。それだけで俺を動かすには十分な材料だった
言わずもがなゴブリン共はその道を塞いだ
しかし今は人間の救出が第一だ
ー退けェッ!!!ー
直剣でゴブリン共の首根っこを一閃しながら走り続ける
カァンと甲高い音が奥から響く
金属が岩とぶつかる音なのだろう。
ーや、止めっ…ー
それは今まさにゴブリン共に殺されるという所だった
ーマズッ…!!ー
腰の杖に手をかけ
これはこの世界には無い、前の世界の物。
ー離れろよ少年!ー
杖から拡散する青白い矢を放ち、少年を取り囲んだゴブリンを消し飛ばす
ーい、今のは…ー
ーんなことは後回し!とりあえず少年、剣を持て!ー
恐らくは少年のものであろう剣を拾い渡し、すぐさま臨戦態勢に移行する
俺が走ってきた方を見ると、そこから大量のゴブリンがこちらに来ているのが見える。横穴があったのだろう。あのゴブリン達はそこから出てきたと考えるのが妥当だ。
ーこ、こんな大量の…どうすれば…ー
少年は既に戦意を喪失していた。膝は震え顔も青ざめている
ー少年、見ると白磁の様だが、まさか1人で来たわけじゃないだろー
ーみんな他のゴブリンに連れていかれました…僕は助け出そうとして…ー
ーいい、これ以上言うな。それさえ分かりゃ十分さー
そう言いながら、腰の杖に手をかける
これ程、ここをうまく使える場面も無いだろう
杖を上に掲げ、術を唱える
すると、結晶の塊が浮かび上がる
ー消えてなくなれやー
次の瞬間、その結晶は弾け飛び、次々とゴブリンを絶命させていく
ー少年、仲間達が連れてかれたのは、この洞窟の奥なんだな?ー
ーえ…あ、そ、そのはずです…ー
ー分かった、ここは危険だ。まだゴブリンが残っているかも分からないからな。とりあえずはついてきてくれてー
ー分かりました…ー
ー…戦う意志が無いのは構わない。だが生きる意志だけは棄てるな。それを無くしちまったら、それはこの世で最も意味の無い死になる。それを努努、忘れるなよー
ーッ…はいっ…!ー
ー返事は良い。お前さんの仲間…助けるぞー
ー…はい!ー
少年を奮い立たせ、更に奥へと駆け出す
すると奥に木の扉が見えてくる。手前に何体かゴブリンがいるし、あそこにここの頭がいるのだろう
直剣でゴブリン共の首を切り落とし、木の扉に手をかける
開ければ、確かに群れの長らしきものはいた
ー…少年、覚悟決めとけ…!ー
ー…ッ!!ー
奥には木に磔にされた女が数人。
そしてソイツが食っている肉は明らかに人間の腕だった
ー手遅れだったか…ー
ー…あの糞共、たかが冒険者2匹程度に…ー
長の後ろを見ると、ホフゴブリンの中でも一際大きい…所謂チャンピオンがいた
ー殺れー
長がそう言うとデカブツがこちらへ走り出す
ー…やるかー
杖を持ち術を唱える
ー"古き月光"よー
杖が、月明かりの色をした大剣となり辺り一面が明かりに包まれる
ー…スゲェ…ー
ー…とっとと片付けなきゃいけないしな…ー
ーなんだ…その魔法は…!ー
ー知らなくていいー
大剣を振るい、デカブツを泣き別れにし、大剣から放たれた光波は長を消し飛ばした
ー…クソッタレが…ー
奥に張り付けられた女性達を見ながら吐き捨てる
ーシナ…!もう大丈夫だよ…!ー
ーごめんねアル…!私…私…!ー
どうやら少年の仲間がいたようだ
それにしても、この数、明らかに多すぎる
今いるだけでも5人、それ以前にも恐らく人はいたのだろう
そんな事を考えてもどうにかなる訳では無いが
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ーホントに…ありがとうございます…!ー
ー…助けられたのは良い。だが、絶対に前と同じ暮らしは出来ないぞ。1度植え付けられた恐怖や怒りはなかなか消えないもんだー
ーそれでも…生きてるのなら…いくらでもやりようはあります…ー
ー…それが分かってるなら大丈夫。ー
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ー少年、仲間はあの女の子だけかー
ーいえ…あと2人いたんですけど…ー
ー…なるほどな…ー
ーでも…シナだけでも生きてて良かった…ホントに…ー
ー…そうだな…ー
ーあの…助けてもらって、ありがとうございます!ー
ー礼なんて良い。新人君を助けるのは年長者の務めだー
ーあ、あと1つ聞きたいことがあったんですー
ーん?なんだ?ー
ーあなたが使ってたあの魔法、全部が全部、見た事も聞いたことも無いようなものばかりでした…ー
ーあぁ、だろうな…この世界にはあんな魔法は存在しないー
ーえっ…それってどういう…ー
ー少年、君は"世界は無数に存在する"。と言われたら信じる事が出来るかー
少年は困惑の表情を見せる
ーはははは、それもそうだろうな。だが俺は、"そういう世界を無数に見てきた"ー
ー…難しいなぁ…ー
ーなぁに、そのままの意味さ。ー
~~~~~~~~~~~~~~~~
…Benefit、と言う言葉には「恩恵」と言う意味がある。
しかし、他にも「恩恵」を示す言葉は幾つかある。
その中に1つ、こう言う言葉がある
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