今週も忙しいのでもう一本は正直厳しいです。
遅くなりましたが楽しんでいってください!
少年は自らの願いのために動く。
それでも、少年は恩だけは裏切らない。
そこにいくつかの感情が入り混じっても・・・。
始まりの街の転移門で待っていると、すぐにキリトさん達がやってきた。
「じゃあその教会に案内してもらえるか?」
「分かりました、ついてきてください」
始まりの街は第一層だが、それ故にすぐに街から出たプレイヤーには地図が浮かばない。
「ユイちゃん、見覚えのあるものとかある?」
「うー・・・わかんない」
始まりの街は恐ろしく広い。回っていたら何か見つかるかもしれない。
「ところでキリトさん昨日は聞きそびれましたが、
ヒースクリフさんとの決闘でおかしなことはありませんでしたか?」
「え? お前見てたのか?」
「見てなかったから聞いてるんですよ。
正直キリトさんがヒースクリフさんに負けるとは思ってませんから」
「・・・アスナ、少しユイを見ててくれないか?」
「え? うん、分かった」
ユイちゃんの世話をアスナさんに任せて話を聞くと、
最後にとどめをしようとした瞬間、まるで時間が止まったような感覚に陥ったそうだ。
対価になるかはわからないが、僕も感じている不信感について話した。
「と言うかお前の例え・・・生々しすぎやしないか?」
「そう言われてもそう思ったものは仕方ないじゃないですか」
そうこう話しているうちに教会にたどり着いた。
「じゃあ入りますか。サーシャさん、いますか?」
そう言ってノックする。すると、中から声が帰ってきて一人の女性が出てきた。
「ゼロさんこんにちは。って・・・失礼ですが後ろのお方は?」
「こちらからキリトさん、アスナさん、それからユイちゃんです。
今日はサーシャさんの力を貸してもらえればと・・・」
事情を説明すると、取り合えず中に入らせてもらった。
「あ! ゼロの兄貴⁉」
その声をスタートに子供たちが集まってくる。
「今は忙しいんのでね、おもちゃはやるから遊んどいてください」
ストレージから昨日の余りを大量に出す。
子供たちはそれにがっつき始めた。
「いつもありがとうございます。おかげで子供たちも暇してませんよ」
「教えてもらってる身としてはこの程度では足りないと思うんですけどね」
それに子供は
「それで、ユイちゃんですけど・・・私も毎日1エリアずつ子供がいないか調べてるんですが、
残念ですけど始まりの街にいた子じゃないと思います」
「そうですか・・・」
アスナさんは少しうつむきユイちゃんを抱きしめる。
「それだけでもありがたい情報です。サーシャさん、ありがとうございます」
「いえ、私こそ力になれなくてごめんなさい」
そうこう話しているときであった。
「サーシャ先生大変だ⁉」
子供たちがすごい勢いでなだれ込んできた。
「ギン兄ィたちが軍の奴等に捕まった‼」
「え⁉ 場所は⁉」
「東五区の道具屋裏の空き地、軍が十人ぐらいでブロックしている」
「分かった、すぐ行くわ」
「まだやってるんですか・・・そろそろお灸をすえてやらないと」
「一体どういうことだ?」
事情の把握できてないキリトさん達に軽く説明する。
サーシャさんたちは教会を借り続けるために比較的多量のコルを稼いでいていること。
軍が一層で徴税と称して恐喝まがいの事が行われていること。
「そう言う訳ですが流石に今回ばかりは見てるだけにはいかないですね」
サーシャさんについて行く。サーシャさんには教材を用意してもらった恩がある。
これでも(悪い意味ではあるが)顔は通る。役には立つだろう。
「お? 保母さんの登場だぜ」
「・・・子供たちを返してください」
空き地にいたのは子供が三人、軍は十人以上。
「人聞きの悪いこと言うなよ。
納税の義務って言う社会常識を教えてやってるだけなんだからよ」
「皆! お金なんていいから全部渡してしまいなさい!」
「先生、それだけじゃダメなんだ!」
「あんた等はだいぶ税金を滞納してるからなぁ・・・金だけじゃな足りないよなぁ」
どうやら軍は防具含む装備等も置いて行けと言っているらしい。
僕は発動待機していたソードスキル、チャクラムでのシングルシュートを発動する。
「がッ‼」
軍の一人が犯罪防止コードを煌めかせ、ノックバックで倒れる。
「君達、逃げなさい。あなたたちも、ほどほどにしないなら僕も手を出しますよ」
「ゼロの兄貴⁉」
「いいから行きなさい。こいつらは僕がどうにかしますから」
「う、うん、ありがとう」
子供たちは一人倒れたところから逃げていく。
「テメェ! 軍の任務を妨害するのか⁉」
「まあ落ち着け、あんた見ない顔だけど解放軍にたてつく意味わかってんのか?」
「そう言うあなた方こそわかってないのですか? 自分たちの目の前にいるのが誰か?」
「はは、剣も持たない奴の名前なんて知ったこったねぇな」
ふむ、ならもう一度ヒントを与えるとしよう。
「武器はチャクラム、暗緑色のコート、名前はゼロ。これで分かりますか?」
それをすべて聞いた瞬間、軍の人間たちの顔が引きつるのが目に見えた。
「ま、まさか⁉ あのゼロファイターって言うのか⁉」
「ば、バカ! そんな奴が一層に降りてくるわけねえだろ!」
「だが仮にそうなら・・・PKの攻略組・・・⁉」
「落ち着けって、そのゼロだか何だか知らないがそんなにやる気なら圏外行くか?」
これはつまり、死んでもいいかと聞いているわけなのだが、わざわざ出る必要もないだろう。
「その必要はない。ここで決着をつけよう」
一瞬で一人に接近して思いっきり殴る。
防止コードが発生するが、こっちはステータスの問題でノックバックはほとんどない。
「安心してください。HPは減りません。ただ、いつまでも続きますが」
次から次へと迫ってくる敵だが、剣筋は甘いし速さもない。
捌き、反撃することさえ容易であった。
「覚えていろ。もしサーシャさん達教会の家族に手を出すようなら僕が相手になる。
この『拳』でお前たちの悪行は打ち砕いてやる」
軍の人たちは大慌てで帰っていった。
「・・・もう出てきて大丈夫ですよ」
子供たちも出てきて・・・。
「ゼロの兄貴強え!」「カッコいい!」
「な⁉ 君達くっつくな!」
子供は些細なことでわちゃわちゃするから嫌いなんだ・・・。
だが、一人だけ近寄ってこない。ただ怯えているように・・・。
「お、お兄さん・・・さっき人を殺したって・・・」
あぁ・・・そういやそんなこと言われてたな。
「そ、そんなのあいつらの言ったでたらめだろ⁉」「だよな、ゼロ兄ぃ!」
「「「・・・・・・」」」
キリトさんとアスナさん、サーシャさんも何も言わない。
「いいえ、僕は確かに人を殺しました。数は12人、この拳で吹き飛ばした」
子供たちは顔を引きつらせる。そして・・・。
「に・・・逃げろ!」
一人がそう言うと子供たちも逃げていった。
「ゼ・・・ゼロ君・・・」
「僕はこのことについて嘘をつくつもりはありませんよ。
むしろ彼らが襲われたら殺してもいいと思わないんですからよかったと思いますよ」
これだけで、サーシャさんは事情を察したようではあった。
「にぃに、大丈夫?」
ユイちゃんは心配してか僕に近づいてきてくれる。それを手で軽く制止する。
「悪いけど僕はここまでだからパパとママの言う事を聞いてあげるんだよ?」
「う、うん」
「じゃあキリトさん、申し訳ないですが僕は最前線の攻略に戻りますので、
ユイちゃんの家族を見つけてあげてくださいね?」
「・・・ああ、わかった」
では、と一言残し転移門に向かう。
聞いた話だと今日で迷宮区のボス部屋には到達できそうだと言った所だ。
すぐに発見できれば今日中にはボスの偵察まで行けるだろう。
早く終わらせないと・・・必ずこの層を攻略してゲームも踏破する。
必ず生き抜いて・・・必ず帰らないと。