電子の世界を駆けるピーキーな少年(仮)   作:fallere

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引っ越し先で少年たちの新たな暮らしが始まった。

慣れない場所は新たな刺激に満ちていた。同時、未知の悪意も存在する。

守りたいなら武器を握れ。刃を向けるものを退けろ。

それが少年の願いなら彼の影はいくらでも力を貸すだろう。



少年の闘志 ~斧上げる蟷螂~

あくびを一つ。どれほど日を跨いでも悪夢は消えない。

 

この手が血にまみれ、人殺しと罵られても戦い続ける。

 

それでも守る意思があるなら戦い続けられる。心が砕けてでも・・・。

 

「満留、あんたちゃんと寝てるの?」

 

「問題ない。必要最低限の睡眠時間は確保している」

 

ため息一つ。必要最低限は確保してるので問題ないとは言う。

 

それでも無理を平気でするような人間だ。

 

もっと自分の身を心配しなさいと言っても聞きはしない。それも心配をかけるのだ。

 

「まぁ気にするほどでもない。それよりも、だ・・・」

 

「あんたはトラブルを起こさないようにね」

 

「分かっている」

 

今日より学校が始まる。クラスは同じだが、話す機会は減るだろう。

 

それに、出来るなら詩乃にも同性の友人を作って欲しい。

 

 

 

教室で一人、読書にいそしむ。僕は友人などいなくてもいいのだ。

 

一人でも問題ないし、そもそも口下手だから友人などできないだろう。

 

自分は近づくなと言うオーラでも出ているのか誰にも話しかけられない。

 

一方で詩乃は多少他の女子に話しかけられている。

 

それでも馴れないからか上手く話せてる風ではないが。

 

ああ、因みに入学式は適当に今後のことを考えながら聞き流した。

 

まあどうせ大人のエゴについてでも語っていたのだろう。興味もない。

 

ただまぁ、何処にでもいるのだろう。クラスを仕切ろうとするような人は。

 

「これからみんなでファミレス行こうぜ!」

 

ワイワイガヤガヤと話し出す。耳も痛いので早々に帰るとしよう。

 

「ああ、ちょっとそこの君?」

 

無視をして歩いていく。鋭敏すぎる故に拒絶する味覚ではファミレスの飯など食えない。

 

どうにも本当にオーラでも出てるらしくそれ以降何も言われない。

 

自分は他人とはずいぶん違うのだろう。それを嫌なことだと思ったことはないが。

 

帰り道を歩いていると、後ろから声一つ。間違えるはずもない。

 

「どうしたの詩乃? 別に皆で食べてきたってよかったのに」

 

「じゃああんたは一体誰のご飯を食べるのよ?」

 

その通りであった。自分の食事も食えないわけではないがいい気分はしない。

 

「悪い、じゃあお願いできる? 多少は手伝うし」

 

「はいはい、分かってるわよ。でも先に買い物ね」

 

これもいつものことだ。買い物も料理も手伝う。

 

もし危険なことがなければ完全にこっちが助けてもらってばかりだ。

 

だから少しでも役に立つようにとやっているわけだが・・・。

 

「見れば見るほどに手際がいいわよね・・・」

 

買い物、調理と必要なもの等を憶えているだけなのだが・・・それが難しいとのこと。

 

どうとも答えずにサクサクと調理を進めていく。

 

包丁程度の扱いは慣れたものだ。一応母に教えてもらったし。

 

そんなこんなで入学式の日は幕を閉じる。

 

まあまだ慣れないこともあるが時間をかけて慣れていけばいい。

 

 

 

 

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一月ほどして暮らしになれてきたころだ。

 

少し詩乃の様子が悩みだしたような感じだった。

 

自分のできる限りの情報網とこの体を以て調査を決行した。

 

まず眼をつけたのは最近詩乃と仲良くしている三人組だ。

 

案外、saoの潜伏などのノウハウも役にたって情報を集めるのに苦労しなかった。

 

ただでさえ嗅覚などのお陰で察知能力は人一倍だ。

 

結果から言えば・・・案の上であった。

 

夜遊びは当然、詩乃の家に来るのも毎日のようになっている。

 

挙句、掃除の面目で詩乃の部屋に上がるとそいつらの物と思われるグッズが山ほど、

後は少なくとも・・・いい気分のしない臭いが立ちこもり始めていた。

 

「早くしないと・・・」

 

今まで気づけなかった自分が恥ずかしいほどだ。

 

もうこれ以上、彼女が傷つく結末は許しはしない。

 

恐らくもう間もなくだろう。もう間もなく、あいつらは終わりを迎える。

 

「あんた、最近夜中に出かけてるみたいだけど・・・悪いことはしてないわよね?」

 

調査のために少しばかり真夜中にも外出していたのだが、それがばれているみたいだ。

 

「大丈夫、今日で終わる」

 

詩乃にも友達が出来ればと望んだが、こんなことになるならもういらない。

 

僕が彼女を守り続ける。僕はもう、無力な子供ではない。

 

詩乃も何も言わなかった。意図が伝わったかなどは分からない。

 

だが、黙認されたという事実だけが僕には重要だ。

 

無意識的に僕は詩乃の指示を優先する。するなと言われれば僕にはそれまでだ。

 

体調が悪いことにして、詩乃に買い物をすべて任せた。

 

図書館にでも寄ってくるといいとだけ伝えて、後は家で待っていた。

 

ゲラゲラと言う声が聞こえる。女だけではなく低い男の声も混じっていた。

 

家から出てその集団の前に立つ。

 

「・・・遠藤だったか。悪いがここは通せない」

 

「は? あんた誰?」

 

「僕が誰かなどどうでもいい。君たちは金輪際詩乃の家に近づかないでもらおう」

 

沿道含む女たちは笑い出す。なんでお前に決められなければならないと。

 

後ろの男たちが笑いだす。ヒーロー気取りかと。

 

「笑いたければ笑え、こちらは無理矢理にでも追い返すだけだから」

 

戦闘態勢を取る。こちらの意思が伝わったのか、女共は少し怖気づいた。

 

男共は数の優位を使って簡単に勝てるつもりのようで、前に出てきた。

 

「悪夢は終わらせる。彼女の領域を汚すものは・・・この僕の(ケン)で打ち砕くッ!」

 

それを挑発ととったのか、ただ短気なのかすぐに拳を振り上げてきた。

 

体の動きがなってない。鍛え続けた僕からすればあまりに脆すぎる。

 

一人目は腹に拳を一発、二人目は鳩尾に蹴り、三人目は肘を胸に一撃。

 

三人いた男共は崩れ去り、それぞれやった部分を抑えていた。

 

「お・・・お前なにもんだよ⁉」

 

「今すぐ詩乃の家からお前たちの私物を持って、帰るべき場所へ帰れ。

 合鍵も半ば強引にもらっただろう。それも返してもらう。

 僕はあまり優しくないし、女相手でも拳を振るえる」

 

メスガキ共は震えて動けない。そんな中、近づいてくる足音が。

 

「あ・・・朝田! 助けてくれ! この男が・・・!」

 

「はぁ・・・満留、取り合えず説明しなさい」

 

それに了承した僕は、ありのままを話した。

 

「詩乃の様子が悪そうだったから何が起きたのか調査した後、

 このメスガキどもが原因と断定、今日勝手に来ることを見越して仕留めた。

 今、合鍵を回収して室内の私物を持って帰らせるところだよ」

 

「で、そこで寝てる男は?」

 

言うまでもないだろうが、否定して欲しいのだろう。

 

「そこのメスガキの連れだよ。通せんぼしたら殴りかかって来たから追い返した」

 

僕は優しくない。今詩乃が傷つくとしても、詩乃ならきっと乗り越えられる。

 

ただの僕の希望だ。それでもこいつらを放置する方がまずい。

 

「否定するなら勝手にするといい。墓穴を掘らない程度にな」

 

メスガキ共は反論できなかった。したとしても意味はなかったが。

 

「金輪際詩乃には近づくな。傷つけることは僕が許さない」

 

荷物をまとめさせた後、男共を連れさせて帰らせた。

 

 

 

「結局、私は弱いままだったのね・・・」

 

僕の部屋で詩乃は、そうつぶやいた。

 

「それは違うよ。あいつらが詩乃の優しさに付け込んだだけだ。

 詩乃は優しいままでいい。そこに付け込む奴は僕が倒すから」

 

優しさ=弱さではない。詩乃が強いのは優しいからだ。

 

誰にも迷惑をかけないようにと言う優しさが、詩乃を強くする。

 

だから詩乃は立ち直れる。心配することはない。

 

「大丈夫、また同じことになっても僕が守るから」

 

頭をポンポンと撫でてやる。昔からの癖だ。

 

「泣きたいときは泣いていいんだよ。どうせここには僕しかいないんだから」

 

泣くのを我慢してもストレスが溜まるだけだ。それは親からもよく言われている。

 

詩乃は泣いた。泣かせてしまったのは僕だ。守ると言っておいて何も守れていない。

 

「この拳で・・・必ず守り抜く・・・」

 

しかし、週明けにもっと大きい災厄が待っていることを僕らは知らない。

 

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