電子の世界を駆けるピーキーな少年(仮)   作:fallere

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はい、始まりましたとも、デスガン編。

八月中に出せたから近日だよね?

そしてようやく出てくるキリト君、
ここまで出番ないなんて霧トじゃないかと思いつつ書きました。

あと説明云々って書いてて面倒くさいね!
解決法→聞き手をものすっごーく察しを良くする。

これはゼロ君の将来は探偵ですな。(適当)



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拳士と剣士は、別の世界で再び相まみえる。

だが英雄が現れたなら、それは冒険譚の始まりでもある。

先に待つのは妖魔か霊か? いずれにせよ、引く道などはとうにない。


デスガン編
英雄との邂逅 ~契り深いのは悪縁か?~


詩乃は自室のベッドの上で目覚める。

 

「ッ!」

 

シュピーゲルが言っていたことに間違いはない。

 

しかし、だからと言って後方の注意を甘くしすぎた。

 

いや、初撃を当てていればこんな失敗をしなかった。完全に自分の実力不足だ。

 

(話にならない。こんなんじゃあいつを支えるなんて夢のまた夢)

 

知っている。満留はそんなことを気にしない。満留にとって私を守るのは当然だから。

 

あいつは私のために何でもする。きっと本当に何でも。

 

元は何も出来なかった罪悪感から始まったんだろう。

 

(冗談じゃない。満留がいたから今までやってこれた。

 なのに何も返せてない・・・。満留を支えられるくらい強くならないと)

 

只々、自虐だけが積みあがっていく。

 

(告白しよう。次のBoBでどうなろうとも願いも想いも・・・。

 当然、絶対に優勝する。もう絶対に負けはしない・・・‼)

 

詩乃もまた決意を固め、次の闘いに備えるのであった。

 

 

 

2人が決意した数日後、巨大な災禍の種がまかれることになる。

 

 

 

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出場した《BoB2》からおよそ一月、十二月になって寒さも増してきた中、

僕は菊岡さんに呼び出されていた。

 

「やぁゼロくん、少々厄介ごとがあってね」

 

「それは結構ですが、なぜこのような店を? 僕の体質知ってます?」

 

「あはは~、いや今回はもう1人呼んでるからね」

 

銀座の高級ケーキ店、基本味覚が死んでいる僕にとっては価値がない。

 

「おや、来たようだよ? おーいキリトくん、こっちこっち!」

 

知っている名前、そこにいたのは《黒の剣士》キリトの生き写しだった。

 

「おっ、久しぶりだな!ゼロ!」

 

「お久しぶりです、キリトさん」

 

現実での名前を知らないのでひとまずそう呼ぶ。

先に本名を名乗る。キリトさんの本名は桐ヶ谷和人と言うらしい。

 

そこで菊岡さんに注文を進められた。

 

桐ヶ谷さんが値段に目を背けながら、菊岡さんは当然のように注文する中、

 

「エスプレッソ、以上」

 

ウェイター含む三人が白い目で見てきたが、ウェイターは一瞬で表情を戻す。

 

「かしこまりました」と言ってウェイターが席を後にする中。

 

「おい、こいつのことだから多少高いの頼んでも問題ないんだぞ?」

 

「僕、味覚障害なんですよね。精神性で信頼できる人のじゃなければ味わえません。

 むしろ気分が悪くなるから少ないほうがいいです」

 

なら注文するなというところだが、こういう店は値段にサービス料が入ってる。

それを考えれば注文しないほうが失礼と考えたまでだ。

 

「それで菊岡さん、桐ヶ谷さんだけではなく僕まで呼んで何の用ですか?」

 

「その前に桐ヶ谷さんって他人行儀な呼び方はやめてくれ」

 

「寧ろ他人じゃないんですか?」

 

僕らの関係は「四季満留」と「桐ヶ谷和人」であって「ゼロ」と「キリト」ではない。

そもそも「ゼロ」と「キリト」でさえ戦友以上ではない。

 

ならば僕たちの関係は他人、百歩譲って知り合いだろう。

 

「・・・せめて桐ヶ谷さんはやめろ」

 

「では和人さんで」と言えば和人さんは妥協したように頷く。

 

話を戻して菊岡さんに要件を確認する。

 

「バーチャルスペース関連犯罪の件数が増え気味だね・・・。

 仮想財産の盗難、毀損が十一月だけで百件以上。

 VRゲーム内のトラブルが原因の現実の傷害事件十三件、うち一件は傷害致死。

 

 模造の西洋剣を研いで新宿駅で振り回して二人殺したって事件ね。

 大きく報道されてただろ? 刃渡り120cm、重さ3.5kg。よくこんなの振れたね」

 

「ヘビープレイのためにドラッグ使って錯乱したらしいな・・・。

 その一件だけ見れば救われないが、全体で見ればその程度の件数だろ?」

 

「VRMMOゲームが現実で他人を物理的に傷つける事への心理障壁を下げる・・・。

 それは間違いないでしょうが、そういうのを関係なく傷つける人は傷つけます」

 

そこでウェイターが来て、ケーキとコーヒーをおいて去る。

 

「ふむ、質問だがそもそもなんでPKなんてするんだい?

 殺しあうより仲良くするほうがいいだろう?」

 

「あんたもALOやってるならわかるだろう?

 ネットゲームに人を駆り立てる原動力は優越感・・・だと俺は考える」

 

「ほう?」

 

菊岡さんは咀嚼しながら説明を求める。

 

「単純に言えば力ですよね。自分の手で相手を破壊できる力。

 相手を上回れるという優越感は麻薬と同じです。

 

 現実では力を持ちすぎれば恐れられます。ですがVRは仮想です。

 命の価値が軽いから恐れられにくい。浴びせられるのはほとんど尊敬です」

 

「それは君の経験談かな?」

 

「あなたも僕の経験談に入りたいですか?」

 

菊岡さんは怖い怖いと嘯き、僕の言った事をまとめる。

 

「要するにVRMMOの強さが現実を侵食すると・・・。

 しかしそれは心理的ハードルだけかな?

 何らかのフィジカルな影響現実の肉体に及ぼす事はないのだろうか?」

 

「ありえないです。僕は普段から鍛えてますが身体能力は寝てる以上落ちます。

 ですが、瞬間的となれば別です。要するに火事場の馬鹿力ってやつです。

 

 強くなったという自負、想像通り動かないと言う不安。

 この二つを要因(ストレス)に発生するのは不思議じゃありません。

 事実として僕はそこそこ意図的に火事場の馬鹿力を使えますし」

 

「・・・さっきから聞きたかったんだが、満留は武道家か何かなのか?」

 

「逆に和人さんは鍛えてなさすぎです。

 そんなに軟じゃいざという時アスナさんを守れませんよ?」

 

和人さんは弱みをつかれたのかぐっと言う表情を浮かべる。

 

「ふむ、満留君の言い分は分かった。遠回りになったがこれを見てくれ」

 

差し出されたタブレットには長髪小太りで銀縁眼鏡の男性が乗っていた。

 

「十一月十四日、都内のアパートで掃除していた大家が異臭に気づいた。

 発生源の部屋からは一切の反応がない。しかし明かりはついている。

 電子ロックを開錠して見るとこの男、重村保二十六歳が死んでいた。

 

 死語五日半経っていたらしい。

 部屋に荒らされた様子はなく、遺体はベッドで横になっていた。

 そして頭には・・・」

 

「アミュスフィア、か」

 

「その通り、変死ということで司法解剖が行われた結果、死因は急性心不全とのことだ。

 原因は不明。死亡してから時間が経ちすぎていたし精密な解剖は行われなかった。

 ただ彼はほぼ二日に渡って何も食べずログインしっぱなしだったらしい」

 

別段珍しい話ではない。仮想の食べ物を食べれば偽りの満腹感が発生する。

コアなゲーマーなら食費浮かせる意味も混みで一日二日に一食というのも珍しくない。

 

「悲惨な話だがよくある話だろ?」

 

菊岡は頷き、再び端末を見せてきた。

 

「この重村君のアミュスフィアにインストールされていたゲームは一タイトルだけ。

 《ガンゲイル・オンライン》、略称《GGO》知ってるかな?」

 

「まさかとは思いますが《ゼクシード》ですが?」

 

和人さんの反応を無視して質問する。話が一気にきな臭くなってきた。

 

「そういうこと、この音声を聞いてくれ。

 《GGO》内のある酒場で収録された音声なんだが・・・」

 

再度端末に新たな情報が開かれ、音声が再生される。

 

『ゼクシード! 偽りの勝利者よ! 今こそ真の力による裁きを受けるがいい!』

 

その後の銃声、しばらくゼクシードたちの会話がした後その音も消え・・・。

 

『・・・これが本当の力、本当の強さだ! 愚か者どもよ、この名を恐怖とともに刻め!

 俺と、この銃の名は《死銃》・・・・・・《デス・ガン》だ‼』

 

「・・・わざわざこれを聞かせるってことは《薄塩たらこ》さんも?」

 

菊岡さんは頷く。僕はわずかに黙祷する。

 

「どういうことだ? 俺にわかるように説明してくれ・・・」

 

「今GGOで話題になってるのがこの《デス・ガン》です。

 ゼクシードさんは一月前のBoBと言うGGO最強決める大会の優勝者。

 薄塩たらこさんはBoB上位の他、トップスコードロンの長でした。

 

 それが謎の黒マントに射撃されたらログインしなくなりました。

 引退ドッキリだったりの噂が流れてますが・・・まさか死んでたとは思いませんでした」

 

ここまで情報を出せば、僕がGGOプレイヤーなことは明白だろう。

 

「合点が行きました。

 要するにアミュスフィアの制限の網を抜けられるはずがない。

 だが、上記二名の前に現れた《死銃》が無関係とは考えがたい。

 なら人為的なものか? しかし現金目的や復讐にしては室内や遺体に痕跡がない。

 犯罪なら動機、手段の何もかもが分からない。

 

 だから僕らに《死銃》に接触、あわよくば撃たれて来いと言いたいんでしょう?」

 

「いや・・・うん、ハハハ・・・」

 

予想よりも目的を簡単に見破られたのか、少しごまかすような笑いを浮かべるが・・・。

 

「やだよ! お前が撃たれろ! 心臓トマレ!」

 

辛辣な和人さんの発言。僕も意見だけなら同感だ。

 

「死銃が狙うのはGGOでもトップクラスのプレイヤーばかり、

 自分じゃなれる気がしないから僕ら帰還者(サバイバー)を頼りたい。

 そこで僕と和人さんですか。僕はついでに案内役もやれと・・・」

 

「報酬としては各自3万円ほどを予定しているけど・・・?」

 

「・・・調査自体はするつもりでした。依頼は受けても構いません。

 ですが・・・貴方が推薦する和人さんの案内料として追加で3万円要求します」

 

言葉に嘘はない。きな臭い噂だが放置していい類じゃないと思っていた。

3万はかなり吹っ掛けたが。

 

「待って欲しい、倍額はさすがに厳しい。案内料は1万位で・・・」

 

「2万が下限です。

 銃の扱いに慣れない人を短期間でGGOで戦えるようにする受講料も込みなので」

 

「いや待て、そもそもの俺がその依頼を受けるとは言ってないぞ?」

 

「「どうせ和人さん(キリトくん)なら引き受けるでしょう(だろう)?」」

 

「というかこれは放置したら仮想世界規制推進派が暴れだすでしょうからね。

 見た限りですが和人さんもまだフルダイブゲームをやってるようですし、

 多分ですがゲーマーの和人さんには拒否権ないでしょう?」

 

ということで、和人さんは渋々だが依頼を引き受けた。

 

「あ、フルダイブは病院で行ってもらうけど・・・」

 

「僕は自分の家でやりますね。慣れない環境で命の危険がある仕事を受けれません」

 

「まぁ君はそういうと思ったよ」

 

その後和人さんと連絡先を交換して解散した。

 


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