電子の世界を駆けるピーキーな少年(仮)   作:fallere

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コボルド王の秘剣

キリトさんに詰め込み型教育された翌日、

いつもの広場にいつものメンバーが集まっていた。

 

そしてやはり、その中心に立つのは一人の騎士。

 

「みんな! 今この広場に全パーティー45人が一人も欠けずに集まった!」

 

その言葉に多くのプレイヤーの歓声、そして拍手が広がる。

 

「俺さ、一人でもかけたら今日の作戦中止にする予定だった。

でも・・・そんな心配みんなへの侮辱だったな!

俺スゲー嬉しいよ・・・こんな最高のレイドが組めて」

 

盛り上げ過ぎとは思う。緊張も余裕も過ぎれば毒だ。

 

だけどそれを言うつもりはない。

 

ベータテストの件は情報と言う有益性があったが、

少なくともこれは俺の生存に大きくはかかわらないだろうし。

 

「みんな! 俺から言う事はたった一つだ―――――」

 

騎士、ディアベルは剣を掲げる。

 

「勝とうぜ‼」

 

 

 

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レイドを組んでボス部屋まで行く道のり。

 

正直退屈だ、モンスターは消耗を抑えるためなるべく避けるし、

攻撃されても三人組のこっちには役が回らない。

 

「しかし・・・お気楽なものですね」

 

そもそも敵をひっかけるのは大体プレイヤーたちの話声である。

 

これから生死のかかった場所に行くというのに。

 

「これじゃあまるで遠足ね」

 

アスナさんが的確な表現をしてくれた。

 

「本物だとどうなのかしら?」

 

「本物?」

 

声を発したのはキリトさんだが、僕も首をかしげる。

 

「こういうファンタジー世界が本当にあったとして道中彼らはどんな話をするのか」

 

より詳細な説明が入る。僕は少し悩み、回答を出す。

 

「少なくともこのゲームのクリアはまだまだかかるんですから、

百層にでもたどり着けばわかるんじゃないですかね?」

 

「ま、そうだろうな。ボス攻略と言う究極の非日常を日常にできれば・・・な」

 

アスナさんは少しつらそうな雰囲気を漂わせた後、

 

「強いのね。私にはとても無理だわ。

この世界で何年も生きるのは、今日の戦闘で死ぬのよりずっと怖く思えるから」

 

・・・多分アスナさんもあの子と同じだ。何かしらつらい現実を抱えている。

 

だけど少なくとも、それは俺の手の届く範囲ではない。

 

現実であったのならともかく、ここは仮想世界である《SAO》。

 

僕が首を突っ込んでいい話でもない。

 

「上の層にたどり着けば、もっとすごいお風呂があるのになー」

 

キリトさんは何かよくわからないことを言う。

 

「ほ、ほんとに?」

 

それを聞いたアスナさんは何故かすごくうれしそうにして・・・

 

「思い出したわね・・・。腐った牛乳一樽、ほんとに飲ませるからね」

 

「なら少なくとも今日は生きて帰らないとな」

 

一体何の話をしてるやらだが、まあ悪い空気ではないだろう。

 

そこからは特に危なげもなく、と言うわけではなかったが無事ボス部屋前に着いた。

 

今は情報の再確認やパーティー間の連携を話している。

 

「俺が相手のソードスキルをパリィするから、そこにアスナがリニアー、

ゼロはその技後硬直を埋めるように攻撃してくれ」

 

基本戦術は文字通りだ。隊の編成も悪くなく、隙も無い。

 

とは言え、相手の実力はどれくらいかわからない。

 

気を抜かず、余裕を持って行動するべきだろう。

 

そして、突撃の時が来る。

 

「――――――行くぞ!」

 

小さな、だが全体に聞こえる声とともにディアベルさんは剣を扉に向ける。

 

同時にその部下が門を開け、先行部隊から入っていく。

 

直径100mほどの空間、そして周りにあるたいまつに徐々に火がともっていく。

 

そして奥にある玉座に、巨大な影が一つ浮かび上がる。

 

         《Gill Fang The Cobalt Load》

 

「戦闘開始!」

 

戦の火蓋は切って落とされた。

 

コボルド王の骨斧がA隊のひとりの盾に当たると同時、

周囲から担当のルインコボルド・センチネルが現れる。

 

まずは一体に投剣基本ソードスキル《シングルシュート》をのど元に当てる。

 

これで一体のヘイトを取った。そこにキリトさんとアスナさんが前に出る。

 

センチネルは斧ソードスキル《スマッシュ》を、

キリトさんの片手直剣ソードスキル《ホリゾンタル》でパリィする。

 

「スイッチ!」

 

バランスを崩したところに、アスナさんの細剣ソードスキル《リニアー》が襲う。

 

その技後硬直埋めるべく再びシングルシュートを放つ。

 

これらの行動でセンチネルのHPバーは三割ほど減っていた。

 

コボルド王の体力も、こちらほどではないが順調に減っている。

 

二人とも強い。

 

キリトさんは動きに無駄がなく、しっかりと相手の動きを見る勇気がある。

 

アスナさんの《リニアー》は速く、鋭く、重いためセンチネルの体力をごっそり奪う。

 

ダメージ乱数か、三回繰り返しただけでセンチネルは崩れ去った。

 

センチネルを三体受け持ったE隊G隊はその全てを残り1/4以下まで削っていた。

 

手助けは必要なさそうなので、コボルド王を見てみる。

 

ぱっと見た感じ情報通りだ。攻撃している部隊に余裕が見えるのがその証拠だろう。

 

「GJ」

 

キリトさんが声をかけてくる。

 

「そっちこそ」

 

「取り合えずこの調子なら問題なさそうですね」

 

この調子がどこまで続くかはわからないが。

 

「しかしゼロ、あんたホントに百発百中だな」

 

「まあ投剣しか使ってなかったら嫌でもこうなりますよ・・・」

 

今のところ不発はなく、全て喉元に当てている。

 

それに投剣は威力が低いだけではなく、他武器よりもヘイトを集めやすい。

 

だから下手な場所には命中させれない。出来れば確一を取りたいが最前線ではそれも難しい。

 

結果、シングルシュートを不意打ちで急所に当て、

距離を取りながら急所に当て続けるという戦闘スタイルを取っていた。

 

また、ほとんど使い捨てであるため武器費も馬鹿にならないのがつらいところ。

 

因みに初撃を外したら四の五の言わず即撤退である。

 

「一本目ッ!」

 

どうやらコボルド王の四本あるHPバーの一つが無くなったようだ。

 

それを合図に再び四体のセンチネルが湧く。

 

近い一匹を先ほど同じ手でヘイトを取る。

 

少なくともここまで苦労はしなかった。

 

 

 

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二匹目にアスナさんがとどめを刺す。

 

センチネルはボスではないものの、ここでしか湧かないモンスターなので、

経験値や金であるコルが結構な量入ってくる。

 

最大である六人パーティーであるE、G隊はできればその二隊だけで倒したいだろうが、

まあ僕が出た瞬間にヘイトとってるし先に倒しているので文句は言えまい。

 

まあE隊のリーダーであるキバオウさんは分からないが・・・。

 

「当てが外れたやろ。ええ気味や」

 

考えたそばから、キバオウさんが声をかけてきた。

 

「当て? 何のことだ?」

 

視線はキリトさんに向いていて、キリトさんは返事をする。

 

「とぼけおって、わいはちゃーんと聞かされとんねん。

あんたが昔、汚い立ち回りでボスのLA取りまくっとったことをな!」

 

LA・・・たしか《ラストアタック・ボーナス》だったか?

 

ネームドクラス以上のモンスターにとどめを刺した時、特別報酬があるそうな。

 

そして、ここでの“昔”とは恐らくベータテストの事だろう。

 

「キバオウさん、正直貴方の言ってる意味が分からないですね」

 

キリトさんは何やら考え事をしているが、少なくとも僕が思ったことを言おう。

 

「このゲームで最も重要なのは生きて帰ることです。

そして先日も言いましたが早い情報はベータテスターからじゃないとありえない。

キリトさんがそうだか知りませんが、少なくともそんな内輪もめを誘発するより、

ボスを倒すことを考えているキリトさんの方が正しいのではないですか?」

 

キバオウは舌打ちして持ち場に戻る。

 

「キリトさん、三体目が来ますよ」

 

「え、あ、おう!」

 

取り合えずスイッチは切り替えたようだ。

 

新たに表れたセンチネルに同じ手を使って倒すのは容易だった。

 

 

 

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「ラスト一本!」

 

歓声が上がる。浮かれるにはまだ早いが、喜んでしまうのも仕方ないだろう。

 

コボルド王は骨斧と盾を捨てて、腰から新たな武器である湾刀(タルワール)に・・・

 

「?」

 

まて、曲刀カテゴリ武器にしては細すぎないか・・・?

 

「おいゼロ! 次が来たぞ!」

 

「キリトさん! コボルド王の武器が!」

 

キリトさんがコボルド王を見る。そしてひきつったような顔をする。

 

「ダメだ下がれ! 全力で後ろに飛べ―――――――‼」

 

キリトさんの声はコボルド王のソードスキルエフェクト音にかき消される。

 

コボルド王は垂直に飛び、体をひねる。

 

そこから放たれる、カタナ重範囲攻撃ソードスキル《旋車(ツムジグルマ)

 

その攻撃はコボルド王を囲んでいた、ディアベル含むC隊をなぎ倒した。

 

C隊の平均HPゲージが半減を意味する黄色に変わる。

 

それだけじゃ終わらない。C隊が陥った状態異常《スタン》。

 

効果時間は数十秒だが、即時発動に加え治癒手段が存在しない。

 

本来ならここで、他の隊が入れ替わるべきだろう。

 

だが、動けるものは誰一人としていなかった。

 

今までの楽勝ムード、綿密な作戦会議、何よりリーダーのディアベルが指示出来ない。

 

「追撃が・・・!」

 

キリトさんが声を上げる。それを聞いてかエギルさんなど一部が向かうが、

既にコボルド王は技後硬直から抜け、次のソードスキルを発動していた。

 

そのソードスキルは《浮舟(ウキフネ)》。

 

野太刀が地面すれすれから高く切り上げられる。

 

そのターゲットは正面にいた、騎士ディアベルである。

 

これを受けたディアベルは高く打ち上げられる。

 

ダメージはさほど大きくないが、コボルド王の動きが止まらない(・・・・・)

 

コボルド王はさらにソードスキルを発動しようとする。

 

「行けッ!」

 

空中を蒼い一つの光条が放たれる。

 

僕の発動したソードスキル《ライジングシュート》。

 

平面では射程はシングルシュートに劣り、威力も低い。

 

だが特徴は上空に向けてはなった時、射程が圧倒的に伸びる。

 

ただ、威力は上がらないため当てても攻撃を止められない。

 

武器に当てても、投げる用途のため投剣の重量は軽く簡単に弾かれる。

 

ならば狙うは一点。《目》だ。

 

モンスターには恐怖はない。だが、疑似的な痛覚が存在する。

 

コボルドのように人型なら心臓の近く、昆虫などなら触覚。

 

だが、これらの動物系モンスターは必ず目と言う器官を持っている。

 

そして、今までのどの動物系モンスターも目を攻撃すれば一時的な盲目に陥った。

 

それは、第一層の主であるイルファング・ザ・コボルドロードも同じであった。

 

「グオォォォォォ!」

 

コボルド王は、バランスを崩し落下していく。

 

それは騎士も同じである。

 

僕はすぐさま、走ってディアベル空中キャッチから、

その力の方向を流してボス部屋門の方向にぶん投げた。

 

後ろから声が聞こえたが気にしてる時間はない。

 

投剣はヘイトを集めやすい。

 

ましてや攻撃のキャンセルや距離などでたっぷりと僕を狙っているだろう。

 

両腰に下げているナイフホルダーから両手に一本ずつ投剣を持つ。

 

コボルド王の起こした土煙から、巨大な影が立ち上がる。

 

レイドを落ち着かせる時間を稼ぐ。それが今の僕の役目だ。

 

「待て、俺たちも行く」

 

キリトさんとアスナさんが来ていた。

 

「攻撃は引きつけます。二人はガンガン攻撃してください」

 

キリトさんは少々渋った顔をしたが、結局任せてくれた。

 

時間を稼ぐのはやめだ、ここで仕留める!

 

 

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