電子の世界を駆けるピーキーな少年(仮)   作:fallere

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技術と言う名の才能

コボルド王の縦斬りを間一髪で横に避ける。

 

素早く右手のスローイングダガーをコボルド王の顔目掛け放つ。

 

コボルド王はそれを左手で防ぐ。

 

そのコボルド王の後ろではキリトさんとアスナさんが間髪入れずに攻撃している。

 

時折、こちらではなく後ろを向こうともするが、それは全て封殺している。

 

攻撃はギリギリで避ける。でなければフェイント一つでお陀仏だ。

 

僕の装備は皮装備の上、動きやすさを最重視してキリトさんのような胸当てもつけてない。

 

あの鋭い野太刀に切り伏せられればそれまでだろう。

 

だが、僕の勝利条件は二つある。

 

キリトさんたちがコボルド王の体力を削り切るか、レイドが統率を取り戻すか。

 

どちらにせよ、こいつを倒す算段が立てばそれまでだ。

 

地面すれすれの大きな横降りを跳躍して躱す。

 

そこに、縦斬りソードスキルが飛んでくる。ライトエフェクトも初めて見る。

 

兎に角、着地してすぐに横に躱すのでは合わせられる可能性が非常に高い。

 

「だったらッ!」

 

僕は着地後すぐに、コボルド王の野太刀を握る右手に向かって飛ぶ。

 

同時、コボルド王の野太刀が動く。

 

ある程度身体を逸らすが、野太刀が足を切断するかに思えた・・・。

 

「ふんッ!」

 

そこから放つ裏拳がコボルド王の右手を大きく打ち、野太刀の軌道を逸らす。

 

まさに間一髪。

 

剣だけが武器じゃない。体も言葉も、何もかもが武器なんだ。

 

とは言え今のはかなりヤバかった。

 

軽業スキルは、熟練度次第でSTRの一部を跳躍力に変換する。

 

疾走スキルは、STRの一部を走力に変換するので疾走を選んでいれば死んでいた。

 

投剣は隙があれば投げているが、そんな余裕もほとんどない。

 

生と死の狭間で戦っている。あの子もあの時は同じだったのだろうか?

 

「いや、違うか」

 

あの子は自分の母親を守るために戦った。

 

僕は単に、あの子の傍に戻るという私欲のために戦っているんだ。

 

同じ物差しで計っていいものではないだろう。

 

剣は振られる。それは速い・・・が、荒いため躱すことは可能。

 

キリトさんたちがガンガン攻撃してくれるので、コボルド王のHPはすでに半分を切っている。

 

コボルド王は叫び、野太刀を上段に構える。

 

先程と同じエフェクト、パターンから同じ攻撃だろう。

 

今度は余裕があるのであらかじめ右に大きく躱して・・・

 

「ッ!」

 

構えは同じ上段、エフェクトも同じ。なのにモーションが違う・・・!

 

先程は単なる上からの縦斬りだったのに、今度は剣を下に回って斬り上げが来る。

 

このソードスキルの名は《幻月(ゲンゲツ)》。

 

後に知ることになるが、攻撃が上下に変化するフェイントソードスキルであった。

 

既に大きく動かしていた身体を修正する方法はない。

 

そのまま大きく右に滑り込むように飛ぶ。

 

だが、下に回すというモーションの間にあわされて、僕の両足が切断された。

 

「「ゼロ(さん)‼」」

 

マズい・・・足を切断された以上逃げることはできない。

 

キリトさんたちは前に回り込もうとするが間に合わない。

 

コボルド王ははすぐさま俺を狙って新たなソードスキルを発動する。

 

エフェクトは赤・・・いや、緋色。

 

偶然なのか意図してなのかその色は、

コボルド王がディアベルさんにとどめを刺そうとしたソードスキルの色だった。

 

これを食らえば、切り上げでレッドゾーンに陥った俺の体力は消し飛ぶだろう。

 

(ここで・・・こんなところで終わってしまうのか?)

 

もう回避する手段は残されておらず、キリトさんたちは間に合わない。

 

(絶対に現実に戻るって・・・あの子は何が何でも守るって決めたのに・・・‼)

 

あの日から足掻いて生きた。

 

親から空手と合気道の教えを乞い、必死に教えてもらって生徒からは守れるようになった。

 

その次の日には、もっと多くの数で相手され、殴られ、蹴られ、挙句脅された。

 

『あいつをいじめるのは楽しいから邪魔すんなよなぁ。

 もし邪魔するならこのはさみでお前を刺すことになるぞ。

 あ、でも人殺しと一緒にいるならそれも怖くないかww』

 

もっともっと教えてもらって、ようやくその集団も相手できるようになった。

 

すると約束通りはさみを向けられた。

 

流石に刺されはしなかったけど、数の暴力で抑え込まれて髪をぐちゃぐちゃにされた。

 

あいつらがやっておいて、学校に来ると笑いだす。

 

それでもよかった。

 

五分五分で倒すことはできるし、何よりその期間だけでもいじめは彼女から離れたから。

 

教えてもらったことを、何度も喧嘩するうちに自分の形にしていく。

 

やっと、子供の集まり相手に常勝出来るようになった。

 

すると、あいつらは大人に頼りだした。

 

『自分たちはいじめられている』と。

 

先生や保護者達は僕が言っても何もしなかったのに、それには動き出した。

 

うちの親は、それに必死に抗議したが、空手とか教えたのが悪いと言われた。

 

彼女が裏で手を引いているんじゃないかとまで言われた。

 

僕がどんなに自分の意見を述べても、聞かれはしない。

 

結局、自分も子供だと思い知らされた。

 

どんなに言っても、話しても、周囲の大人(ゴミ)には届かない。

 

どんなに力をつけても、大人が介入してくればどうにもならない。

 

あいつらは後ろ盾を得てしまった。

 

それ以降、僕たちに対することは黙認され、反撃すればすぐに大人がやってくる。

 

お父さんとお母さんが、どんなに言っても他の人は聞きやしない。

 

『こいつが先にやってきた』『こいつがけんか売ってくるのが悪い』

『どうして君はすぐに手を出す』『君みたいな生徒のせいで私の評価は・・・』

 

それでも必死に足掻いて、なのにその結果は出なくて・・・

 

 

 

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そして今、足を奪われて文字通り足掻くことも出来なくなった・・・。

 

(走馬灯って本当に見るんだな・・・)

 

何故かそんなことを考えていた。周りがゆっくりに見えてくる。

 

コボルド王の顔がにやりと笑ったように見えた。

 

それは、あいつらの顔と酷似して見えて、まるで、

『もう足掻く必要はないんだ』と言われているように思った。

 

・・・だからこそ、僕はナイフホルダーから投剣を一本抜いた。

 

足掻く必要がない? 足が使えないなら手でも口でも、何でも使って足掻いてやる!

 

こんなところで手こずっている間にも、彼女は傷ついているかもしれない。

 

僕は悩んでしまった。恐れてしまった。

 

彼女の味方でいると約束したのに、それをほんの少しでも破ってしまった。

 

だからこそ、僕は彼女の傍で守り続けなくてはならない。

 

手に持った投剣を思い切り投げる。

 

それは躱されるが、コボルド王の体勢が崩れて一瞬エフェクトが霧散しかけた。

 

ほんのわずかな時間を稼げたが、まだキリトさんたちは間に合わない。

 

すぐさま次の投剣をナイフホルダーから・・・

 

「⁉」

 

ないのだ。ナイフホルダーを装備していれば、ボタン一つでアイテム枠から補充される。

 

だが、メニューを開いている時間などない。

 

(今度こそ・・・終わりなのか・・・⁉)

 

振り下ろされる緋色の野太刀・・・そしてそれに打ち合う緑の両手斧。

 

「ぬ・・・おおおッ‼」

 

太い雄たけび。見ればその斧の持ち主は褐色の肌に大きな体、エギルさんだ。

 

二つのソードスキル、《緋扇(ヒオウギ)》と《ワールウィンド》がぶつかりコボルド王がノックバックする。

 

「ゼロ! 大丈夫か⁉」

 

そこにキリトさんたちもやってくる。

 

「は、はい」

 

そう答えることしかできなかった。

 

「あんたら、(タンク)は俺たちが引き受ける。さっきと同じく攻撃は頼んだぞ。

ゼロ、よくやった。後は任せろ!」

 

気づけば、エギルさんを筆頭にB隊や傷の浅かったものが回復を終えて復帰したのだ。

 

そして、言葉通りエギルさんたちは防御を引き受けてキリトさんたちが攻撃している。

 

その二人の攻撃は何と言うか・・・美しかった。

 

剣閃と言うより、剣舞に見えてしまうくらいに。

 

もたもたしてはいられない。

 

僕も回復ポーションを飲んで匍匐前進で離れようとすると、強く引っ張られる。

 

見ると、ディアベルさんが僕の手を握っていた。

 

「ありがとう、気のお陰で助k・・・って、なんで泣いているんだい⁉」

 

「え?」

 

目元を拭ってみると、確かに手がぬれていた。

 

そうだ・・・そうだった・・・。

 

足掻きが・・・努力が認められるって言うのはこういう事だった。

 

「いえ、何でもないです。ディアベルさんは大丈夫ですか?」

 

話しているうちにも、ディアベルさんは僕を他の待機プレイヤーの場所に連れていく。

 

「君のお陰でね。俺も体力が回復したらせめてセンチネルくらいは倒さないと」

 

見ると、センチネルは確かに数体倒されたのを確認したのに四体いる。

 

これは新たに湧いているという事だ。

 

つまり、長期戦は圧倒的に不利と考えるべきだ。

 

今僕が陥っている状態は《部位欠損》、数分すれば欠損部位は生えてくるらしい。

 

回復を待っている間にも、コボルド王の体力は残りわずかになっていた。

 

しかしそこで、コボルド王は《旋車》のモーションに入る。

 

キリトさんたちは軽装なので離脱したが、他のメンバーそうはいかない。

 

キリトさんはソードスキルを発動させた。

 

そして旋車のモーションの跳躍と同時、キリトさんの《ソニックリープ》が相殺する。

 

これで、コボルド王は転倒(タンブル)に陥った。

 

「いまだ! 一斉攻撃!」

 

キリトさんの声に、防御に回ってたエギルさんたちが攻撃に回る。

 

色とりどりのエフェクトを纏った武器がコボルド王に突き刺さる。

 

残り体力は僅か。

 

この間に奪い切れれば勝ちだが、回復されればすぐ旋車が飛んでくるだろう。

 

そして、ほんのわずかなところでコボルド王は立ち上がる。

 

それと同時、野太刀大きく振り周りのプレイヤーを薙ぎ払う。

 

「アスナ! 行くぞ!」

 

「うん!」

 

そこに、二人が突っ込んでいく。

 

それを見て、コボルド王もモーションを起こす。

 

「くッ!」

 

タイミングのいいことに足が復活した。

 

ならやることはたった一つ。

 

補充したナイフホルダーから二本(・・)抜く。

 

人差し指、中指、薬指で挟み、投剣ソードスキル《ツインショット》を発動。

 

コボルド王は、二人を見ていて完全に気づかなかった。

 

「グオォォォォォ‼」

 

狙い通り目に当たり、体勢が一気に崩れる。

 

そこにアスナさんの《リニアー》、そしてキリトさんの《バーチカル・アーク》が入る。

 

直後、第一層ボス《イルファング・ザ・コボルドロード》は無数の結晶片になり、

この瞬間、浮遊城アインクラッド第一層は攻略された。

 

 

 

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