その連絡は突然だった。いつものように拳藤とかくれんぼや鬼ごっこをしたりして、夕方家に帰ると、
「お帰り、勇護。」
「あ、お帰り。お父さん。」
父さんが早く帰っていた。父さんは、会社員でそれなりに高い地位にいるらしい。ちなみに個性は蟻で、怪力なのと顎が強く砲丸投げのボールくらいなら噛み潰せると言っていた。早く帰って来るのは珍しい。いつもは、夜なのに。
「どうしたの。いつもは夜に帰って来るのに。」
「うーん。ちょっとね、皆に話さなきゃいけないことがあるからね、早く帰って来たの。」
「そうなの?」
あれ、これなんかヤバいやつじゃね。当たんなきゃ良いけど。
残念ながらこの感は、正解だったことを俺は夕ご飯のあとに分かった。
ーーー翌日
俺は、学校終わりに拳道と遊んでいると、
「ねぇ、勇護。なんかあったの?」
「え?」
突然、拳藤からいきなり質問された。
「え、何で?」
「なんかアンタ朝から暗いからさ。イジメられたのかなって思ったけど、アタシが昨日からずっと一緒に遊んでいたから、何で暗い顔してるのかなと思ったんだけど。どうしたの?」
「い、いや!何にも無いよ。アハハ。」
すると拳藤はジト目で俺を見た。俺は顔を逸らし、見ないようにしていたがそれが仇になった。
「嘘つき!アンタなんか隠してるでしょ!さっさと言いなよ!」
うう、感が鋭いな(泣)あと、ジト目から睨むにレベルアップしてるし。
「うう、わかったよ。言うから睨まないでよ。」
「最初から言えば良いのよ。で、何隠してるの?」
「うん。実はね、
引っ越ししちゃうんだ。」
side拳藤
「え、今何て?」
「だから、引っ越ししちゃうの。この街から」
聞いた瞬間、頭が真っ白になった。勇護は、そのまま機の悪そうに下を向いていた。だけど、アタシの中ではそんなことはどうでもよかった。
「なん、で?何か、あったの?」
「お父さんが転勤になって家族みんなで一緒に行くことになったんだ。僕と蟻巣だけ置いていくのは、無理だって言われてね。だから一佳ちゃんとは離ればなれになっちゃうの。」
嘘だと思いたかった。だって、ずっとアタシが勇護を引っ張っていくのだと思っていたから。信じたくなかった。
「嫌だよ、そんなの。…一緒に居られないの?」
勇護は何も言わずに首を横に振った。
「そんなの…そんなの…信じたくないよ!」
アタシは、我慢出来ず叫んで、逃げた。
嫌だ、嫌だ、嫌だよ!アイツと離れるなんて!絶対に嫌だ!
side勇護
拳藤に一通りはなしていたのだが、走ってどこかに行ってしまった。突然だったため、追いかけることが出来なかったがそれどころじゃなかった。
「信じたくないか。こっちもその気持ちなんだけどな」
俺もこのことは渋っていたが、前世の感覚があるせいかある程度落ち着いていた。けど蟻巣は違った。拳藤と離れるのが嫌でわんわん泣いていた。一番あいつが仲が良かったからな。本当にどうすれば良いんだよ、このモヤモヤした気持ち。分からねぇ。
気がつくと近くの川の土手の上にいた。ここはよく拳藤と蟻巣と一緒に遊んだ場所だった。俺は、何故か悲しくなって土手に座った。体育座りで顔を伏せた。
全部嫌だった。なんで拳道と離れなきゃいけないのか。投げやりになっていた。泣きたかった。そして、
「どうしたんだい?こんなところで泣いて」
俺がヒーローを目指すキッカケになった人と出会った瞬間だった。
主人公のヒロインは拳藤ですが、二人はまだ恋愛感情はありません。とても仲の良い友達としての関係です。