さて、お察しの通りユニークスキル回です。
ついでに他のオリキャラの名前が出てきますが覚えなくてもいいです。覚えるだけ記憶領域の無駄です。
このゲーム世界にいると暦の感覚が薄くなってくるが、あれは2023年の10月頃だっただろうか。
珍しくキリトが俺達を呼び出したので、《天壌無窮》の仮のギルドホームである26層で落ち会った時、彼はトンでもないことを呟いた。
「──俺、ユニークスキルを獲得したかもしれない」
俺達のギルドホームの応接室で神妙な面持ちでキリトが告白したことに、ちょうど料理を持ってきた俺は目を見開き、他のメンバーも黒髪の少年へと向ける。
何かを探るような目付きのイキリキリキリキリト君に対し、俺は彼の言葉に対する感想を簡潔に述べた。
「え、お前も?」
「は?」
さすがに予想外の反応だったのだろう。
キリトはポカーンと間抜け面を晒した。
「ま、待て待て待て待て待て! もしかしてお前等もユニークスキルを手に入れたとか言わないだろうな!?」
「んー、どうなんだろ? 正確に言えば『ユニークスキルだと思われるもの』と、『ユニークスキルに限りなく近いスキルを手に入れた奴がいる』かな。ちなみに対象者はニートとクロ」
呑気にアハハと笑う白髪の少年と、無言で出された料理をバキュームの如く喰らっていくクロに、キリトは力が抜けたかのように肩を落として溜息をついた。
微妙に顔が引きつってる。
「け、結構勇気振り絞ったんだぞ……ユニークスキル晒すの」
「確かにテメェだけがユニークスキル持ってンなら、この前カンストした《投擲》スキルと派生型の《砲撃》スキルを披露してやるところだったがなァ」
「その《砲撃》スキルも初めて聞いたんだが。それもユニークスキルなんじゃないのか?」
「私も取得しているのでユニークスキルではないことは確認済みです。その他のプレイヤーが取得できるかと問われたら微妙なところですが。して、キリト少年のユニークスキルとは何なんでしょうか?」
最年長者たるハッタの問いに、キリトは素直に答える。
この言葉には先ほどのような慎重さは感じられなかった。
「──《二刀流》だ」
「ふーん、二刀流かぁ。あ、ちなみに僕のユニークスキルは《抜刀術》ね。二刀流ってことは防御に趣を置いたスキル構成なのかな?」
「あっさりとバラしていくな……って、どうして二刀流が防御型のスキルだと思ったんだ?」
「二刀流自体は剣道でも存在して、実際に公式大会でも使用は認められてるんだ。んで、イキリト君は剣道経験者だから知ってるだろうけど、剣道の竹刀って物凄く重いんだよね。それこそ両手で振るとか論外。公式で使う二刀流も片方の竹刀は短い」
ニートに賛同するかのように《二刀流》スキルを得た少年は頷く。
どうやらキリトのスキルは手数が半端ないほど多いスキルを放てるらしいが、そんなの現実では人間の筋力的に不可能であるし、やるくらいなら普通の剣道を極めたほうが強いとニートは語った。
そして二刀流の剣道の構えは、長剣を上段に構えることが多いが、古流剣術だと両手に持つ武器を交差する構えをすることがある。後者のような構え方をしていると、自然とどの攻撃も受け流したり受け止めたりしやすいので、ニートは《二刀流》のスキルを防御型だと推測したようだ。実際には違ったんだが。
「──まぁ、ゲーム世界だし二本の同じ長さの武器を振り回すのは簡単か。えー、ちょっと羨ましいんだけど」
「そういうニートも《抜刀術》を持ってるじゃないか。正直《二刀流》のスキルの扱い方なんて、誰に聞けばいいのか分かんないぞ」
「そういう意味ではニートのユニークスキルは適切と言えるでしょう。ちょうど《刀》スキルも熟練度が500超えたと言ってませんでしたか?」
こうやって和気藹々と楽しく共通の話題で語れるのは羨ましい気がする。キチガイ共の中で俺だけ特徴的なスキルを持っていないため、置いてけぼりをくらっている気分だ。
ユニークスキルを持つゆえの悩みとかあるだろうし、持つことが必ずしもメリットとは限らんが。
だが、少しくらいは手助けをしてやれないだろうか?
「あ、そういや近所のジジイが二刀流使ってたことあったな。見よう見真似でしか教えられないが、それでも良ければ基礎的なことぐらいは教えようか?」
「ホントか!? マジで助かる!」
光明が見えたと言いたげに顔をほころばせるキリト。そして俺の発言に反応したケムッソは「あァ?」と目を細くする。
「二刀流使いのジジイ? もしかして田ノ浦のジジイのことかァ?」
「あぁ、そん人。俺達もお世話になっただろ? ほら、裏山に現れた熊を九十八連撃の二刀流剣術で木っ端微塵にした近所のじーさん」
「ちょっと待て、聞き捨てならない発言が聞こえたんだが」
懐かしいな。
あのジジイ元気してるだろうか?
「彼のご老人も元気にしているでしょうか? まぁ、《町内四天王》の一人でありましたし、寿命でくたばる以外に死ぬ要因が見つからないんですがね」
「そ、そんなに凄い人だったのか?」
恐る恐る《町内四天王》について聞いてきたキリトに、俺は言葉を選びながら説明する。俺の住んでいた地域は特に人外魔境のビックリ老人の巣窟だけに、下手に説明すると信じてもらえない可能性がある。ぶっちゃけ実際に見てくれたほうが楽なんだが。
「身体能力的にも思考回路的にも、凄い人だったことには違いないな。簡単に説明すると──」
「説明すると?」
「クロが常識人に見えるレベルのヤベー奴?」
「それ存在しちゃいけない生命体だろ!?」
しちゃってんだから仕方ないじゃん。
あれを見て育ったから今の俺達があるといっても過言じゃない近所の方々だったんだから。このデスゲームにあの人達がいてくれたらと何度思ったことか。今頃ゲームクリアしていても不思議じゃない。
「あぁ、これ以上は説明するつもりはないぜ。『噂をするとどこからでも現れる堀之北のババア』が現れる可能性もあるし」
「そ、そうか。……そういえばクロは何のスキルを取得したんだ?」
学校だろうが修学旅行先だろうが海外旅行先だろうがネット掲示板だろうが異世界だろうが、とにかく噂をすれば概念を超越してまで現れる近所のババアが出てくることを畏れたため、俺は、この話題を唐突に打ち切ることにした。デスゲームにログインしてきても俺は驚かない。
話題を変えるようにキリトはクロのスキルへと話題を移す。
とっとこハムスターのように食べ物を両頬に詰め込んで、愉快な顔をしている仏頂面のクロは、器用にそのままの頬でしゃべり始めた。
「……《イキリト》」
「……? 俺の名前がどうしたか?」
「違う。スキル名」
「はい?」
断片的にしか説明しないクロの代わりにハッタが補足する。
「スキル取得条件がかなり厳しいエクストラスキルです。まず三十八層に現れる『キリトかなーやっぱww』しか連呼しないNPCと会話し、人でモンスターを1000体討伐と迷宮区ボスに二十回トドメを刺すことが前提条件としてクエストが進行します」
「……突っ込むところが多すぎて脳が思考を止めるんだけど。え、俺?」
「最後にクエスト内容が、クエストを受注している人物のみが行ける三十八層に現れる『イキリトの丘』に咲いている《イキリトの花》を入手して、クエストNPCに届けることでスキルを取得できます」
「ごめん、泣いていい?」
「ちなみにスキル効果は、《Kirito》の名前を持つプレイヤーを武器にした時に、攻撃する際の耐久値減少が著しく下がり、攻撃力も50%増加します」
「………」
ハッタが説明する間も、キリトは静かに顔を背けて泣いていた。
そして泣き終わった後に「かなり強くないか、そのスキル」と冷静に分析する辺り、強かになったなって思った。
ユニークスキル・エクストラスキル
《Hamutarosaan》……ちゃっかり敵の臀部に攻撃が当たった時にダメージ倍率が上がるエクストラスキルを持ってる。
《Wurmple》……《投擲》の派生型スキル《砲撃》を持つ。熟練度は300まで上げた。
《neetsamurai》……《抜刀術》のユニークスキル持ち。これ原作にも名前だけは出てるらしいよ?
《Madhatter》……《砲撃》スキルを取得した。エクストラスキルとして広めているが他に取得した人はいない。
《Clover》……とうとう彼女のメインウェポン《イキリト》の登場。彼女的には速攻で熟練度をカンストさせたい。