そんなシリカ登場回です。
とうとうアレが本性を露わにします。
「ここにはテイムしているモンスターが死んでしまった時に、それを蘇生させるためのアイテムが入手できるという情報があるんですよ」
「モンスターってテイムできたんやね。最近なんでか知らんけど、モンスターと顔を合わせたら逃げていくしさ、テイムシステムとか知らんわ」
「新しい行動パターンでしょうかね?」
第四十七層は花が咲き乱れる階層。
『ビーストテイマー』と呼ばれるプレイヤーが近づくと咲くと言われている『プネウマの花』の情報の信憑性を確かめるために、まずは下見として『思い出の丘』というマップに足を運んだ俺とハッタ。
なぜにむさ苦しい男同士でフラワーガーデンに足を運ばねぇといけないのかと思ったが、よくよく考えたら俺の知り合いに女の子がサチちゃんぐらいしか思い浮かばないことに気付いて諦めた。彼女は最近新しいポーション制作で忙しいとか言ってたし、邪魔しちゃ悪いよね。
はー、周り男と蛮族と神話生物とか悲惨な青春送ってるなー、俺。
せめてもの楽しみ方として、咲き乱れる花々を眺めながら歩いていると、最近親の顔より見てそうな黒いコートの中二病と、小柄な少女が並んで歩いているのが見えた。
セミロングの髪をツインテールにした、クロと同等かそれ以上に小柄な少女で……
「──ん? ハムタロとハッタ? こんなところでどうしたんだ?」
「とりあえず通報するわ」
「待て待て待て待てぇぇえええ!!」
さっそく中下層の自警団を営んでいる知り合いのリンドにメッセージを送ろうとして、それを素早い動きで制するロリコンの性犯罪者。そういやコイツAGI(瞬発力、反応速度)のステータス伸ばしてたな。これを見越して反応速度を上げていたとは……末恐ろしい奴だ。
ほら、隣のハッタも肩を震わせて怒ってんじゃん。
ひとまず性犯罪者の件は後程というわけで、俺は小柄な少女に自己紹介を行う。
「どうも、そこのキリトの友人のハムタロだ。気軽にハムタロサァンとでも呼んでくれ」
「は、初めまして。私はシリカって言います。よろ──」
「ブヒイイイイイイイイイイイイイ!! 幼女きたああああああああああああああ失礼。彼女の可憐な姿に欲望が漏れてしまいました」
「自重しろ変態」
シリカちゃんの自己紹介中にいきなり奇声をあげる変態に、シリカはもちろんのこと、割と長い付き合いのキリトでさえ目を丸くした。
いかにも紳士風の物腰を徹底しているハッタからは想像もつかなかったのだろう。
「あぁ、ごめんごめん。コイツ真性のロリコンなんだ」
「コイツこそ黒鉄宮に送ったほうがいいんじゃね?」
「前送ってみたけど、送り返されたわ」
「監獄すら拒否するレベルなのか」
SAOプレイヤーには少ないから露見することがなかったが、さっきからシリカの姿を見て鼻息荒く興奮する姿からご察しの通り、マッドハッターさんは真性のロリータコンプレックスを患っている変態なのだ。
露見したところで俺達には何の被害もなかったが、かの有名なビーストテイマーが最初の犠牲者とは、これは黙祷するしかないのが非常に残念だ。この犯罪者は犯罪者の牢獄と名高き《黒鉄宮》から一日で生還した、ハイレベルの変態なのだから。
ただハッタにも守るべきロリコン道がある。
それだけが救いとも言うべきか。
「大丈夫です。私とてブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイロリコンの端くれ。イエスロリータ、ノータッチの鋼のブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ掟は守り通す所存です。ゆえにシリカ嬢には指ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ一本触れませんのであしからず」
「──ってなわけで大丈夫だろ」
「「どこが?」」
キリトとシリカちゃんの声がハモるが、そこはもう信じてもらうしかないだろう。
この変態に対する法的拘束力がないんだし。
こうしてハッタとシリカちゃんの距離をなるべく保つような並び方をしながら『思い出の丘』を離れていく俺達。キリトからの情報により、ハッタが入手した情報の信憑性が取れたうえに、どこに咲くのかもマップ込みで教えてもらった。これで嘘ついてたらクロをけしかける。
どうもシリカちゃんの《フェザーリドラ》が不幸にもお亡くなりになったので、シリカちゃんだけはギリギリ助けたキリトと一緒にココまで来たらしい。後でアルゴさんに教えとこ。
なるほど、やっぱキリトさん優しいわ──
「……チッ。キリトてめぇ、巻き込みやがったな?」
「俺だけじゃシリカを完全に守り切れない。悪いが付き合ってもらうぞ」
「ったく、明日指定口座に振り込んどけよ」
刃渡りが比較的長いダガーを構えながら悪態をつくと、苦笑いを浮かべたキリトが長剣を抜く。彼女の左右を守るように布陣を展開し、戦闘面だけは信頼できるハッタをシリカの後方につけることで、彼女に万が一を起こさせるリスクを限りなく減らす。
この行動を皮切りにぞろぞろ出てくるオレンジプレイヤー。
そして緑アイコンの女性。
「見慣れない顔に、黒色の剣士様に自分を守らせるなんて、姫プレイが板について来たんじゃないの? さぁ、その花を寄越してもらおうか」
「ご挨拶ご苦労なことだな、オレンジギルド《タイタンズハンド》のリーダー、ロザリア」
「……っ、《タイタンズハンド》か。なるほどねぇ」
噂だけは耳にしたことがある。
このデスゲームにおいてPKを楽しむ、通称『オレンジギルド』。この協力が必要不可欠なソードアートオンラインで、背後を警戒しないといけないのは皮肉な話だが、ハッタからの情報でオレンジギルド自体の情報は頭に叩き込んでいる。
どうやら目の前の連中は結構大きなオレンジギルドの人殺し共らしい。
だが相手が悪かったな。
「おうおう、ロザリアさんや」
「何かしら、お姫様の護衛が私に用?」
「アンタも考えが甘かったなって話さ。とりあえず慈悲として聞いとくが──アンタ等、俺達《天壌無窮》と事を交えるって認識でOKか?」
俺の口から発せられる《天壌無窮》という言葉にざわめきが起こる。良くも悪くも攻略組きってのキチガイ集団の異名はソードアートオンライン中に響き渡っているらしいな。
「て、《天壌無窮》だって!? ラフコフですら畏怖した真性のキチガイ集団じゃないか!《豪気》のアスナや《武者》のクライン、《神聖剣》のヒースクリフや《イキリト》のキリトと並ぶ、攻略組のトッププレイヤーが何故……!?」
「俺達は別に今引いてくれれば危害は加えないよ。見逃してやってもいい」
「お、おいハムタロ」
「だがな──」
俺が振り向いた先は──まさに地獄だった。
怯えるシリカちゃんの前に立つのは、細剣を西洋の騎士の彫像が如く上に構え、直立不動のまま瞳孔が開いた瞳でオレンジプレイヤーを睥睨するマッドハッター。『一歩でも動いたら貴様等を刺し殺す』と、言葉で言わずとも威圧で示しているため、周囲のオレンジプレイヤーは動けない。
いつもよりもトーンの低い声色が響く。
「幼き美少女は地球の宝。それを汚す輩は神が許そうとも私が許さない。──さぁ、その命を(ロリコンの)神に返しなさい」
「──このロリコンが許すかな?」
事実上の死刑宣告を述べた後、キリトですら肉眼で捉えられない動きでオレンジプレイヤーをなぎ倒すハッタを前に、ロザリアさんは夢でも見ているかのように呆然とする。
──この後ギルド《タイタンズハンド》は案の定崩壊したのだが、そこら辺は大して面白くもないので割愛するとしよう。
キリトは彼等を黒鉄宮に送るよう依頼されたらしいが、依頼主は事の顛末を聞いて「あの連中に目をつけられたなら、死んで逝った仲間たちも喜ぶだろう」と述べたとか。そりゃ、あのロリコンに喧嘩売ったんだから仕方ないだろう?
外見のモデル
《Hamutarosaan》……『Fate』のギルガメッシュを黒髪にした感じ。髪逆立ってないバージョンのあれ。「ギル様に失礼!」って方はスマホ太郎でもイメージすればいいかと。まるでウルクだな。
《Wurmple》……『戯言シリーズ』の零崎人識がモデル。知らない人は調べてみよう。ヤバさが増す。
《neetsamurai》……『刀剣乱舞』の鶴丸國永をイメージしよう。一時期男キャラクターのイメージ掴むために作者が刀剣乱舞やってた。
《Madhatter》……『黒執事』のセバスチャンが元ネタ。今回の話で『物腰の柔らかいイケメン』から『カッコイイだけの変態』にジョブチェンジした模様。
《Clover》……『BLAZBLUE(XBLAZE)』のEsがモデル。検索してみて。めっちゃ可愛いから。