なんでコイツ等楽しんでんの?   作:十六夜やと

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 Abemaの劇場版オーディナルスケールは面白かったですね。内容的には「ん?」って思うところが多々ありましたが。ちなみに劇場版では端折っているところが結構あり、アニヲタwikiとか見てみると多少納得するかと思います。特にエイジ君への印象がかなり変わります。
 さて、分かってますよ。
 私に劇場版を見せたということは……ハッピーエンドにしてみろっていうことですよね?

 あと明日明後日は投稿できないかと思います。主に就活関連ですね。
 投稿しなかったときは「あ、就活大変なんだな」と、したときは「頑張って投稿したんだな」って思ってくださいm(__)m


ライブの時間じゃオラアアア!!

「──ったく、自分のスキルの特徴くらい把握しとけっての」

 

「……ハァ……ハァ……ハァ……!」

 

「エ……の、ノーチラス!? だ、大丈夫?」

 

 なんでこんなことしてんのかねぇ……と空を仰ぎつつ、俺はモンスターに集団リンチされそうになっていた男女二人を一瞥する。ついて来てモンスターを無双したクロは、まったく毛ほども興味がないのか、まだ周囲に闊歩しているモンスターを駆除しに行っている。

 平原フィールドの柔らかい雑草に尻餅をつき、呼吸荒く冷や汗をかきっぱなしの少年──ノーチラス君と、吟遊詩人みたいな服装をした楽器を持つ少女──ユナさんに、俺は彼等に背を向ける形で声をかける。遊びとはいえデスゲームなため、また死にかけられても困るし、周囲の警戒は怠らない。

 

「その《吟唱(チャント)》は補助効果が強力なスキルだが、効果範囲内の敵のタゲを集めるデメリット効果がある。そりゃ、知らんのは仕方ないよ? 割と珍しいスキルだし? でもさ──《フルダイブ不適合》のプレイヤー一人で護衛は無理あるんじゃね?」

 

 その言葉に落ち着きを取り戻し始めたノーチラス君は悔しそうに俯く。

 あのSAO最強と名高きヒースクリフの設立した《血盟騎士団》のユニフォームを着ているのだから、戦闘に関しては腕はあるのだろう。だがユナさんの話によると、彼は軽度の《フルダイブ不適合》を持つのだとか。簡単に言えば、本能的な恐怖を感じた時に動けなくなる……みたいな? これはどれだけ本人の意思が強くとも、ナーヴギアが彼の本能的意識を読み取って二の足を踏ませるのだとか。

 普通にゲームするのなら別に気にしなくてもいいだろう。エンジョイ程度なら、な。

 だが状況が悪かった。そうとしか言いようがない。

 

 だが淡々と言う俺が気に食わないのか。

 俺を睨みながらノーチラス君は呟いた。

 

「……アンタに何が分かる」

 

「分からんことだらけだな。ただ──このまま俺達がこのマップを通らなかったら、ユナさんは確実に死んでたことは断言できる」

 

「………」

 

 きつい言い方になるかもしれんが人命が懸かっている。なので、ノーチラス君には悪いが現実をつきつけるような形で反論させてもらう。

 

「ごめんなさい……私がこのスキルを把握してなかったばかりに……。あの、助けていただいてありがとうございました!」

 

「払うもんは払ってもらうよ。そっちの方が『無償で助けた』って言葉より信頼できるからね。あと、くれぐれも今回のようなことは起こさないようにな?」

 

 平謝りしてくるユナさんに、少なくはないが命の対価としては安すぎるゲーム内マネーを提示し、その場で交渉を成立させる。ついでに釘をさしておくのも忘れない。

 

「……俺は……彼女を守るためだけの力が欲しかった……だけなんだ」

 

「なら圏内にでも籠ってろ。そっちの方が数百倍安全だぜ」

 

「それじゃあ逃げてるだけじゃないか!」

 

「生きるための『逃げ』は正しいよ」

 

 俺の即答にノーチラス君は息を飲む。

 こういう日本人は結構多い。『逃げること』を『悪』だと思う輩は。

 実際には立ち向かったところでダメなもんは大抵ダメだ。そう根性論がまかり通るほど甘い世界じゃないし、引き際を覚えない人間は潰れやすい。

 逃げたっていいじゃないか。死ぬよりゃマシじゃん。

 

「血盟んとこに入ったってことは、ユナさんをデスゲームから早く解放させたいって想いがあったからじゃないの? そこんとこどうなん? んー?」

 

「なななななななな、何を言って!?」

 

「……意外とわかりやすいんだな。なら彼女の傍に居たほうが彼女を守れるんじゃないか? ──あ、思い出した。ユナさんこの前一層のコロッセオでストリートライブやってなかった? あれの手伝いしてやったほうが堅実だと俺は思うぞ」

 

 ちょうどクロがモンスターをブン回しながらモンスターを倒す様子を確認できたので、話は終わりだと打ち切るかのように二人へと近づく。とうとうプレイヤーだけでなくモンスターまで振り回すようになったか、あの神話生物は。

 

「あぁ、ゲームクリアに関して、ノーチラス君やユナさんが気負うことはねーよ。少し時間はかかるかもしれんが、俺達攻略組が適当に100層クリアしてやっから、それまでデスゲームライフを満喫するといい。このゲーム作り込み凄いから、街を散策してるだけでも楽しいんだぜ?」

 

「………」

 

「まぁ、俺の個人的な意見だ。参考にするかどうかはご自由に」

 

 二人だけだと危ないので、帰りも俺とクロが先導して街まで帰す。

 その間はノーチラス君がやけに無言だったが、果たして彼の心に届いたのだろうか?

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

「──というわけで、私が《歌姫》のユナと《バックダンサー》のノーチラス主演のライブを企画することになりまして」

 

「……俺は何を間違ったんだろうね」

 

 彼等と出会ったのが何か月前かは覚えていなかったが、ギルドホームでハッタの相談を受け、若干遠い目をしながら話し半分で聞く。

 《血盟騎士団》から脱退した話は耳にしており、それ以降は目にしなかったため気にしなかったが、まさかバックダンサーを極めているとは思わなかった。むしろ誰が予測するんだコレ。

 

「つか俺に何で話を?」

 

「その主役二人に言われたんですよ。人生の恩人たるハムタロサァンには是非とも見てほしいと。まさかノーチラス君ともかく、ユナ嬢とも知り合いとは思いませんでしたよ。彼女の歌は聞いていて心躍りません?」

 

「ん……まぁ、そうだなぁ……」

 

 何せ、以前聞いた歌が頼りなだけに、曖昧な返答になってしまう。

 ぶっちゃけ歌聞いて「バフありがと」みたいな印象しかなかったから

 

「バックダンサー……バックダンサーねぇ。SAOにそんな機能あったっけ?」

 

「そこはケムッソが教官として」

 

「アイツがバックダンサーできたことが今日一番の驚きなんだが」

 

「ちなみに作詞にはニートも関わってますよ」

 

「俺達関わりすぎてない?」

 

 俺の知らないところで、俺が助けたプレイヤーがギルメンとヨロシクしてた件について。

 下手にノーチラス君が暴走して、悲惨な結果を生むよりは遥かにマシかと、ポジティブシンキングで気持ちを切り替えていく。

 

「歌の力というものは侮れません。特にデスゲーム下における娯楽の減少、一層から出ないプレイヤーの無気力化は、自警団のリンド氏に以前から相談されておりましてね。このライブは《アインクラッド解放軍》や《風林火山》といった攻略組も一枚絡んでます」

 

「ふーん、いいんじゃねぇの? 歌云々かんぬんは知らんが、お祭り騒ぎは大歓迎だ。どうせなら一層で本当に祭りでも開催するか?」

 

「お、いいですねぇ! 《料理》スキルを持つプレイヤーで屋台を開いてみたり、低レベルプレイヤー参加型の催しを企画してみましょうか!」

 

「んで最後に打ち上げ《イキリト》だな」

 

「素晴らしい!! 企画主任のヒースクリフ氏と広報担当のキバオウ氏にも相談せねば」

 

 アイツ等も関わってたのかよ、という俺の苦笑いは、速攻でギルドホームから出ていったハッタの耳には届かなかった。こういうお祭り騒ぎ大好きなのは、《天壌無窮》メンバーの数少ない共通点の一つでもある。

 入れ替わりとしてギルドホームに帰ってきたクロが、ハッタが出ていったほうを見ながら仏頂面で俺に尋ねてくる。

 

「何かあったの?」

 

「こっから忙しくなるなってコトよ」

 

 俺は近くにあったソファーに仰向けにダイブしながら、彼等二人のことを思い出す。あの彼女を守る必死さだけは、状況を把握できなかった俺が唯一理解することができた。

 さぁ、彼は《バックダンサー》として、()()()()()()をどのように守っていく(成功させる)のだろうか? ……なるほど、こりゃ楽しみだ。

 

「お祭りやるんだってさ。クロも行くか?」

 

「当たり前」

 

 俺は未来行われるであろうライブに思いを馳せるのであった。

 

 

 

 




お祭りでの行動

《Hamutarosaan》……屋台で《料理》スキルを振る舞った。彼女等のライブと打ち上げキリトはちゃんと見た。
《Wurmple》……ノーチラスとバックダンスを披露する。一人だけバックダンスのキレが違ったとか何とか。
《neetsamurai》……SAOの雰囲気に合った曲や、現代で当時流行ってた曲をユナと作ってみた。密かにユナがノーチラスへの想いを綴った曲も入れたらしい。
《Madhatter》……運営で忙しかったが、彼なりに楽しんだ模様。途中シリカに会って黒鉄宮に連行されたが問題ない。
《Clover》……ハムタロサァンと自由気ままに祭りを楽しんだ。最後の打ち上げ《イキリト》は全力で頑張った。

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