夏までにはこの作品を終わらせたいと考えている作者です(`・ω・´)ゞ
次回は皆さまお待ちかねのアレが主役です。次回のタイトル見ればわかるかと思いますが、覚悟はしておいてくださいm(__)m
紳士たる私の朝は早い。
とは言っても日が昇る頃に目が覚めるため、全国の社畜の皆様よりは起きるのは遅いと思われる。現実世界に戻っても、仮想世界よりも厳しい現実が待っていることを考えると、果たしてSAOをクリアすることが幸せなのだろうかと考えることがある。
まぁ、そのようなことを考えられる暇があるくらいには、死なないように生きよう。
個室から出てリビングへ赴くと、一足早く起きているギルドマスターが目に入る。作り置きしようとしているのだろうが、休日にまで精を出すとはご苦労なことだ。
私は黒髪の少年の元へと向かう。
「おはようございます、相変わらず胃袋を刺激してくる料理を作りますね」
「うっす、ハッタ。休日なのに今日も商業地区に遠足か? それとも新しいロリでも探す旅に出も出るんか?」
「両方ですね(即答)」
「いつも通りで逆に安心したわ」
こちらを見ずにロリコン扱いするハムタロに、私は少しばかりの不満を感じる。私は幼き少女を一人前の女性として認識しているだけであって、ロリータコンプレックスではないのだ。……あ、ロリコンか。
自問自答で自分自身がロリコンの典型的な思考に陥っていることに驚く。
はたして私はいつからロリコンになってしまったのか?
「……? 何か異物混入しませんでしたか?」
「さっすが性犯罪者。普通目視で認識できる速度じゃないんだが、麻痺付与した」
「性犯罪者ではありません」
体型が幼き女性を守護するために鍛え上げられた反射速度が生きたのか、ハムタロの指の動きをかろうじで認識することができた。恐らく対クロ用
私は麻痺の入っていない料理を食しながら、今回のハムタロの失敗を先に憐れむのだった。
♦♦♦
第五十層の主街区。
迷路のように入り組んだ街なため、ベテランプレイヤーや住人ですら迷うとも言われる場所。イキリト君も街の全貌を把握していないという。私は一度歩けば感覚で全貌を脳内に展開できますが。
転移してきた私は足を止めることなく最短ルートで目的の場所へと向かう。そして、とある店の前で止まり、何の迷いもなく開けるのだった。
「──失礼いたします」
「失礼するなら帰ってー」
「あいよー」
「……おいおい、本当に帰ろうとするな。お前本当にノリがいいな」
店に入る時の常套句に、猫の髭のようなペイントを頬につけた少女がニヤニヤ笑いながら新喜劇の如く返し、例にならって私も店を出ようとした。スキンヘッドの男性に止められたが。
猫髭の少女──アルゴ嬢は口だけの謝罪を述べる。
「悪かったって。コイツ等はいつもノリだけはいいからナ」
「そのノリでヒースクリフが熱湯風呂に突き落とされた件を忘れたんじゃないだろうな? 本人が楽しんでたから蒸し返す気はないが」
「あぁ、例の祭りですね。その苦情はクロに言って下さい」
アレに苦言を言っても仕方ないだろう?と肩を落とす店の店主──エギル氏。ヒースクリフ氏の雄姿により、彼の店の売り上げが伸びたのだから、エギル氏も同罪だ。
企画した上にイキリト君も熱湯風呂に叩き込むよう指示したのは私だが、まさかヒースクリフ氏がノッてくれるとは思わなかった。最前線でもトップクラスの実力を誇る《血盟騎士団》の団長は、圧倒的な強さとユーモアも持ち合わせているからこそ、ギルドメンバーの士気を高めているのだろう。
ぼっちの黒の剣士にも見習ってほしい。
「……まぁ、いい。で、今日は何の用で来た?」
「ある程度予想はしているはずでしょう? これが我等がギルドの寄付金と依頼内容です」
「お前が来る理由なんざそれだけなのは長い付き合いで理解してるさ。だか形式上の確認は必要だろう? 対等なビジネスパートナーなら尚更だ」
エギル氏にトレードを申し込み、先月頼んだ上層攻略に必要なアイテムと、今月の中下層への寄付金を交換する。そして今月必要な物資の依頼を申し込む。
その内容に目を通し始めたエギル氏は、特に変なモノはないことを確認して頷く。
「攻略組は中層の物資が頻繁に必要になってくるんだが、最近は下層の依頼が減っていてな。《風林火山》ぐらいしか斡旋してくれねぇんだよ」
「解放軍もできるだけ依頼を作ろうとはしてくれてるんだがナ。ここまで攻略が進むと下層の素材は需要がなくなっちまうんダ」
「悲しいことですがMMORPGの定めというやつですね。この依頼もハムタロの料理で使う素材ですから」
「趣味スキル取る奴が少ないご時世だもんな」
下層の素材がゲームが進むにつれて必要なくなるのはMMORPGだと珍しいことではない。ポーション類ですら、上層で手に入る素材で下層の素材を使ったモノよりも高品質なポーション類が生まれるため、それこそ《料理》スキル持ちぐらいしか下層の素材を使わない。
中層のプレイヤーが下層の素材を欲しがることも多々あるが、『エギル氏が斡旋したクエスト』という信頼があるためか、ハムタロの依頼は下層のプレイヤーに人気が高い。
解放軍も頑張ってくれているようだが、どうも治安維持だけでも厳しいというのが本音なのだろう。
定期的に行われる祭りや催しに加え、これも上層と中下層のプレイヤーとの亀裂を生まないための根回しなのだが、あまりにも長期化すると抑えが効かなくなる可能性も出てくる。
私はハムタロの使用する素材の個数を確認しながらため息をつく。
「これ以上の戦線拡大は避けるべきなのは、戦略的にも当然のことなのですが……」
「その戦線拡大ってのをしなきゃ、現実世界に帰れないだろうが」
「……早急にゲームクリアを目指すのがベスト、ですね。まだ攻略も折り返したばかりですけど」
加えて、私達プレイヤーの数は増えることはないが減ることはある。新規参入のないMMOなんて廃れる以外の未来はない。
この消耗戦に近い無益な戦いを楽しむことは、長期的に見れば非常に厳しい。それをハムタロも理解してるだろう。
思わず失言がこぼれてしまうのも無理はないだろう。そして、それを情報屋が聞き逃すはずがない。
「せめて《老人会》の面々が居てくれれば……」
「それってキー坊の言ってた、ハッタの住んでた町の高齢者のことカ? 確か田ノ浦がどうのこうのいってたような気が……」
「あぁ、《町内四天王》とは別の派閥ですよ?」
「町内に派閥があること自体が驚きなんだが」
エギル氏が呆れたように肩をすくめ、アルゴ嬢も表情を引きつらせている。
さて、《老人会》の説明なのだが……。
「そうですねぇ……各国の特殊部隊顔負けの陸戦部隊としか説明のしようが」
「その冗談笑えばいいのか?」
「そんなレベルの化物と住んでなきゃクロみたいなキチガイは誕生しませんが?」
不思議と自分で言っておきながら説得力のある言葉に、エギル氏は二の句が継げない。むしろアルゴ嬢にいっては「なるほど、そういうことカ」と納得までしていた。
「とにかく老若男女自由な方が多いんですよ、私達の故郷は。陸海空全てを押さえた地形や、放任主義が基本でしたので、やろうと思えば何でもできたってのが答えですね。お陰様で私達のような品行方正な人間が育つわけです」
「今世紀最大の嘘を吐くな」
バッサリ斬り捨ててきたスキンヘッドは置いといて、私は人差し指を口元に当てて悪戯っぽく微笑む。
「あぁ、《老人会》云々のことは御内密に。あんまり広められると怒られてしまいます」
「ん~? それなら渡す物があるんじゃないカ~?」
親指と人差し指で円形を作る少女に、私は別種の笑みを浮かべる。
こちらが何も対策してないとでも?
「ちなみに他人にゲロったら相応の罰は受けてもらいますよ?」
「例えば?」
「アルゴ嬢は体型的に見れば私の守備範囲内です」
「墓穴まで持ってくわ」
恐らく声色からして今の口調が彼女の素だったのだろう。
人物紹介
《Madhatter》……オリキャラ勢の一人。《天壌無窮》の外交担当。年齢不相応な物腰をした、笑みが胡散臭い、キチガイ共の最年長者。ぶっちゃけ『ロリコン』という言葉で説明が完了する真性の幼女愛好家。年齢よりも体形で見るため『のじゃロリ』とか『ロリババア』もドストライク。黒鉄宮に送られても自力で生還できる犯罪者。暇があればシリカをストーカーする。やましい気持ちなんてないよ?