なんでコイツ等楽しんでんの?   作:十六夜やと

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 いやー、投稿遅くなってスミマセンm(__)m

 今回はギャグ少なめのシリアス回です。
 次回は武器リトVS魚雷クリフの決闘ですね。


ソードマスターキリト~(人生)完結編~

 先に第七十四層迷宮区のボスの間に辿り着いたのはキリトで、俺は七番目くらいだったと思う。先についたはずの六人がなんで立ち止まってるのかと、開かれた扉から見える光景を目の当たりにした絶句した。

 

 HPが二割以上残っているプレイヤーのいない《アインクラッド解放軍》の面々。

 大きな両手剣をだらんと下げたまま幽鬼の如くプレイヤーを追いつめる《The Gleam Eyes》。

 

 誰もが瞳に威圧感を放つボスに怯えと恐怖を浮かべる。

 キリトは叫んだ。

 

「転移結晶を使え! 早く逃げろ!」

 

「だ、ダメだ……転移結晶が使えな──」

 

 そこまで言葉を紡いだ《アインクラッド解放軍》のタンクが、ボスの横薙ぎで吹っ飛ばされる。ただでさえ少なかったHPがドットまで減少する。頭の中がお花畑のクロですら、このままでは《アインクラッド解放軍》が全滅すると想像するのは難くない。

 扉の外にいる攻略組の猛者たちも、助けに行こうとしたい気持ちと、この少人数でボスと戦うことの無謀さとで、その場から動けずに拳を震わせる。

 

 俺は不快感で目を細めた。

 助けに行くことのメリットとデメリットを天秤にかけている自分に対する不快感だった。

 ここで《アインクラッド解放軍》──いや、プレイヤーの人数が減ることは無視できない。しかし、彼等を助けるために攻略組のトッププレイヤーを博打みたいな戦闘に投入する利点がないのは事実。むしろ転移結晶を使えないエリアだったはずのボスの攻撃パターンを目にする好機でもある。

 人を人とも思わない思考回路と、それを冷静に考えている俺は何なのだろうか? 非情なクソ野郎に違いない。

 

 考えている間にもボスの蹂躙は続く。

 体の動かない解放軍のタンクを見定め、大きく剣を振ろうとし──

 

 

 

「だめぇぇぇぇええええええええ!!」

 

 

 

 この光景に耐えきれなくなったアスナさんが突進し、ボスの背中に飛び蹴りをかます。普通のプレイヤーならダメージすら入らないだろうが、神話生物と化したアスナさんにより、衝撃波を生んだ飛び蹴りに当たったボスは壁にめり込む。

 マジであの人何なん?

 

 だが隙は生まれた。

 アスナさんに続く形でキリトもボスの間に入り、諦めたクラインの兄貴も《風林火山》のメンバーも参戦していく。考えなしの行動に腹が立つ一方、どこか安心している自分もいる。

 

「ケッ、これで助けないわけにはいかなくなったよなァ? え? ハムタロサァンよォ」

 

「うっせーよ害虫」

 

「さて、このろくでもない祭りを楽しむとしましょうか。情報が圧倒的に不足している中の作戦指揮、任せましたよ攻略組総指揮官殿」

 

「あぁ、もう。作戦も指揮もあったもんじゃねーだろうが」

 

 言いたいことだけ言って自分の役割を自己判断で行う《天壌無窮》メンバーに、俺は髪の毛をわしゃわしゃ掻いて激戦区へと身を投じる。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

 まずは《アインクラッド解放軍》の隊長格らしき人物へと近づく。

 呆然としているそいつにビンタをかまし、

 

「《天壌無窮》ギルドマスターのハムタロだ。解放軍の指揮官だな?」

 

「あ、あぁ……」

 

「現時点を以て《アインクラッド解放軍》メンバーの指揮権を頂く。要するに死にたくなかったら俺の言うことを聞けって話だ。はいかyesで答えろ」

 

 無理やり頷かせた俺はトレードでHPポーションを渡し、ボスの間にいる全員に大声で告げた。

 

「《天壌無窮》ギルドマスターのハムタロだ。現時点を以てここにいる全員は俺の指揮下に入ってもらう。ボスが動けるようになったと同時にクロはボスのヘイト集め、その間にパーティの組み換えを行う。アタッカーはニート侍かマッドハッターをリーダーとするパーティに、タンクは俺かケムッソのパーティに所属するように」

 

 皆が静聴しているせいか、叫んでいるわけでもないの、俺の声はボスの間に響く。

 

「《風林火山》はクラインの指揮下でサポートに徹しろ。アスナとキリトはクロとパーティを組むように。一分一秒が惜しい。俺の指示には即座に従い、生き残ることを最優先として考えろ。組み次第ポーションでの回復を行うこと。俺が指示を出すまではパーティリーダーの指示に従え。以上」

 

 さっそく集まった解放軍のタンクとパーティを組み、俺の簡略化した命令を、HPが減ったメンバーにポーションを飲ませながら説明する。生き残る希望と捉えられたのか、全員が素直に聞いてくれた。

 それからクロがHPを減らしたタイミングでハムタロPT(パーティ)をタンクとして全面に押し出す。

 

「ボスの横薙ぎが来るぞ! パリィ(反撃)用意! ……今!」

 

 パリィを使うと敵は強制的にスタンする。

 ある意味戦闘の基本ではあるが、先ほどの壊滅を見ていた感じだと、彼等はパリィのタイミングが掴めていないように思えた。なので俺がタイミングを指示することで確実にスタンを狙う。

 動けなくなったボスにニートとハッタのPTを始めとするアタッカーが総攻撃を仕掛ける。今回は今回なだけにキリトは最初から《二刀流》を開放し、ニートも自分のユニークスキルを使う。《風林火山》のメンバーも重要なダメージソースだ。

 

「攻撃止め! 深追いはすんじゃねーぞ!」

 

 そしてボスが起き上がる少し前にアタッカー組を下がらせることも忘れない。慎重に徹している故にアタッカーはスキルが一つしか打てないが、下手にギリギリまで攻撃するのは危険だ。特にロクな意思疎通もできていないような混成PTなら尚更だろう。

 タンクをケムッソのPTに任せながら、俺のパーティを下がらせる。

 

 タンクがタゲを取ってる最中、時折ニートとハッタ、クロやキリトがボスの攻撃範囲内に入ったり出たりを繰り返す。そしてボスの特殊技を観察するのだ。

 

「範囲7、数8、デバフ2!」

 

「クロとアスナがタンクの時は《風林火山》は五人で攻撃を行え! ボスの半径七メートルには入るなよ!」

 

 ニートが『範囲七メートルに八人以上プレイヤーがいるとデバフ二つを付与する範囲攻撃をする』という意味の報告により、新しい指示を出す。タンクの大半が解放軍なので不安に感じたが、アタッカーが攻略組のトッププレイヤーな為、ボスのHPが減る速度が想像以上に速い。

 これなら余程のヘマをしない限りは大丈夫だろう。もちろん警戒は怠らないが。

 

 アスナ&クロ、ハムタロPT、ケムッソPTをローテーションでタンクを回しながら攻撃のチャンスを逃すことなく戦うこと約二十分。

 《アインクラッド解放軍》を半壊滅に追いやったボスは、最後のクロによる《スターバースト・キリト》によって蒼い結晶片となって消える。

 四十八人を総動員せずにボスを討伐したのは初めてだろう。しかし、ボスを攻略したという達成感よりも、生き残ったという安心感から、糸が切れたように全員が等しく地面にへたり込むのであった。

 俺なんか仰向けになって倒れる。

 

「あーもうつっかれたぁ! 何が事前情報なしの迷宮区ボスじゃマジなめてんじゃねぇぞ二度しねーからな絶対しねーから家帰って寝たい」

 

 息継ぎなしに不満をたれ、子供のように駄々を捏ねる姿に生暖かい視線を向けられてる気がしたが、そんなもんは関係なかった。割と《The Gleam Eyes》のHPが低かったことが幸いしただろう。これが普通の迷宮区のボスだったら一時間ぐらいは同じ工程を繰り返していたに違いない。

 ただでさえ今ここに居る全員の命を預かっていたに等しい状況だ。長時間もボス戦やってられっか。

 無謀にもほどがある。

 

「……キリト」

 

「お疲れさん、ハムタロ。お前のおかげで死なずに済んだ」

 

「お前絶対ピナ食わせるからな」

 

「ピナあああああああああああ!?」

 

 だから八つ当たりしてしまうのもご愛敬だろう。

 

 

 

 




好きな異性のタイプ

《Hamutarosaan》……文明的な会話のできる人。
《Wurmple》……人妻。
《neetsamurai》……男の娘。
《Madhatter》……幼女。
《Clover》……×××。

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