次回はもっと早く投稿できるかと思います(`・ω・´)ゞ
……ところで感想の返信が来たら「あ、そろそろ次話投稿するんかな」とか思ってる人どれだけいます(´・ω・`)?
『第七十四層のボスを最大レイドメンバーの半分以下で攻略』という偉業を成し遂げてから数日経った頃。いつも通り七十五層のクエスト情報を集めていた俺は、血盟騎士団団長のヒースクリフにギルドハウスへ招かれていた。
攻略組の一人として赴いたことは多かれど、ヒースクリフに一個人としてギルドハウスに招かれたことは、俺の記憶の中では一度としてないはず。なんだか嫌な予感を感じながらも、ヒースクリフが待ち構えている部屋まで行く途中、すれ違った団員達の間で交わされた会話が耳に残る。
七十四層ボスと戦わずに済んだ安堵。
二十人そこらでボスを討伐したハムタロサァンへの称賛。
ボスの間で結晶が使えなかったことによる不安。
クォーターポイントの節目に対する緊張。
特に結晶の使用不可の波紋は大きかったようで、攻略組の間でも話題に上がることは多い。この数日だけでも効果量の高い回復ポーションの需要は高まり、大規模なレベリング大会も開催された程だ。
加えて、ボスの情報を直接探れない可能性が出てきたためか、第七十五層のクエスト情報は重要性を増し、それと比例するかのように攻略組迷宮区ボス討伐戦総指揮官の《天壌無窮》ギルドマスターの存在が大きくなる様は、端から見て「ざまぁ」と笑いたくなる。
「最前線から足洗って年金生活していい?」などとハムタロが言ってたなんて、口が裂けても言えない雰囲気が自然と出来上がっていた。
などと考えている間にヒースクリフの執務室へと着いたようだ。
礼儀として扉をノックし、あまり目上の人に会うことに気負うことなく開け、
「──あ、キリト君!」
「………」
「キリト君、流石に顔を見て扉を閉めるのは失礼じゃないかね?」
《お祭り男》ヒースクリフの二つ名は伊達じゃないなぁ。
……あれ?
ふと自然に流してたが、
凄いという感想よりも畏怖で手が震えてくる。
「……なぜキリト君は震えているのだろうか」
「久しぶりに私に会えてうれしいんですよ」
「………………仲が良いのはよいことだ」
咳払いをしたヒースクリフが真剣な瞳を俺に向ける。
「君を呼び出したのは他でもない、先日のボス討伐の件だ。ちょうど昨日のこの時間だったか、《アインクラッド解放軍》のキバオウ氏から謝罪の言葉と共に原因解明のメールが送られてきた」
「……一部の前線復帰派の暴走、か?」
「察しが良く手助かる。……いや、キバオウ氏のことを良く知っている君なら、彼が指示を下したかなんて考えなくともわかるかね」
確かに攻略組を引退したことを一番重く受け入れていたのはキバオウだった。しかし、私情程度で軍を動かすような真似をするような考えなしの男ではないのは、クロに武器扱いされてきた俺には口にしなくても分かる。あそこまで義理堅く、アインクラッド攻略のことを第一に考えている奴はいない。
そうなると、現段階で前線復帰するメリットがない軍がボス討伐に人員を動かすはずがない。キバオウの人柄的にも、軍全体の損得的にも矛盾が出てくるのだ。
つまり今回の独断は軍の総意ではないと推測できる。
「もちろん今回の独断行動の責任者は懲戒処分……という事実上の除名扱いだ。彼等が前線に赴いてくることはなくなるだろう」
「当たり前だ。同じようなこと起こそうモンなら、今度こそハムタロがブチ切れて攻略組から引退するぞ。クロもおまけで消えるだろうし」
「考える限りの最悪の未来よ、それ。『誰も死なないことを戦術目標とした作戦指揮』をするハムタロ君が居たからこそ、今まで攻略組が瓦解しなかったようなものだし、そう考えるとある意味ちょっとした奇跡よね」
俺の真実混じりの皮肉に、半分奇跡みたいな存在と化したアスナが肩をすくめる。本当によくもまぁアイツ等は馬鹿みたいにふざけながら七十五層まで来れたもんだ。あのキチガイ集団がいなければ、ボス攻略がもっとピリピリした空気だったであろうことは想像に難くない。
基本的に
「まぁ、君を呼び出した理由は他にある」
「ん? まだ何かあるのか?」
「正確に言えば君とアスナ君か。──ボス攻略における独断行動だな」
ヒースクリフ曰く、俺とアスナが行った行動は結果的には人命救助にあたる。しかし、独断行動で罰を課せられた軍の例を挙げるとするならば、あの時感情的に動いたアスナ(と何故か俺)にも何らかの処罰を与えなければならない……らしい。
分からなくもない言い分ではあるが、俺はとりあえず嫌な予感が拭えないので反論を示す。
「それじゃあ軍の連中を見捨てたほうが正解だったって言いたいのか?」
「ハムタロ君はそう考えていたらしいがね。彼等を命を賭してまで助ける義理と状況ではなかった上に、ボスの行動パターンをある程度見極めるチャンスであった、と。あそこまで私情を斬り捨てた考え方をする彼には、薄ら寒さを覚えてしまうよ」
「……ならクライン達は」
「彼等は『攻略組全体の利益を損なわないために、やむを得ず戦闘に参加した』との記録がされている。ちなみに記録したのはケムッソ君だ」
簡単に言えば責任を全部アスナ(と何故か俺)に押し付けたわけだ。後で覚えてろよコンチクショウ。
「しかし私も理不尽に思ったのは言うまでもない。アスナ君はともかく、君もクライン君達と同様に罪はない立場なのだから。キリト君には何の罪もない。うん、君は悪くない」
「どうしてそこを強調する?」
「そこで──だ」
ヒースクリフは机に肘をつき両手を組みながら、両手の上に顎を乗せる。
「私と君との決闘が開催されることになった。私に負ければ君はアスナ君と一緒に謹慎扱いとなる。逆に私に勝てば、君を謹慎中のアスナ君の監視役に抜擢させてあげよう」
「それ俺への死刑宣告ですか?」
横で「え、どっちも私へのご褒美じゃん」と呟くアスナの言葉は聞こえないようにして、どう考えても俺への罰ゲームが目的だと思わざるを得ない処遇に、思わず反射的に言葉を返す。
「私だって有能な副官を謹慎させるのは忍びない。泣いて馬謖を斬る思いだ。だから、せめて彼女と友好的な関係にある君に監視役を頼もうと思っているのだよ」
「『泣いて馬謖を斬る』か、ケッ。自分が犠牲にならずにすむなら、いくらだって嬉し涙が出ようってもんだろう?」
ヒースクリフの演技めいた悲壮感漂う表情に、俺はジト目で皮肉をぶちまけた。おそらくヒースクリフを始めとする攻略組全員で口裏を合わせていると確信する。
どうしてこう非常にどうでもいいことに全力を出すんだコイツ等は。
こうして俺とヒースクリフの決闘が開催されることとなった。
逃げた場合は「アスナ共々人生の墓場に屠ってやる」と脅されれば、受けざるを得んだろう?
将来の夢
《Hamutarosaan》……海外に逃げて、そこで職を探す。誰から逃げるとか言うまでもない。
《Wurmple》……農家の後を継ぐ。目指すは六次産業で儲けること。
《neetsamurai》……医者志望。このメンツでは一番マトモ。
《Madhatter》……#運対(人様の前では言えない言動)#
《Clover》……素敵なお嫁さん。