ぶっちゃけ留年の危機だったのですが回避することができました。母親から物理的にも社会的にも抹殺されるところだった。
ところで余談ではありますが、『問題点を指摘し、その改善点を述べること』が批評であり、改善点無き批評って暴言と変わらないと思うんですよ。特に高圧的に言われると、表向きは柔らかに対応しても心の中では「おぉ、大きく出たやないかクソッタレが」と頭を下げてます。上の持論は飲食店の店長代理が反面教師で教えてくれたことです(●´ω`●)
今回は決闘回です。戦闘描写皆無です。
次回は話が飛んでユイちゃんとキチガイが出会う回です。とうとう出会います。
あと活動報告で本編とは全く関係のないアンケートを行ってます。興味がある方は一言いただけると幸いですm(__)m
第七十五層には古代ローマのコロッセオを彷彿とさせる闘技場がある。
満員となった観客席に見渡されながら、コロッセオの中央に立ち、マイクを持った《月夜の黒猫団》の団長──ケイタ君は空気を震わせる程の声を張った。
「──さて、この日雌雄を決するは迷宮区攻略を掲げる猛者達。ソードアートオンラインが約二年を費やし生み出した歴戦の覇者。二人の神話生物の前に『最強』の二文字は意味がないと知りながら、それでも男なら証明して見せたい! 今ここに、SAO最強を冠する英雄が降臨するっっ!!」
その熱気は今からガンダムファイトでも始めんのかという暑苦しさではあるが、それは今回のイベントが順調に始まろうとしている証でもあった。一番後ろでケイタ君の雄姿を眺めながら、同時に何が起こってもすぐ動けるよう周囲にも気を配っている。
隣にいる
「SAO最強決定戦の始まりだあああああああああああ!!」
「「「「「うぉぉぉおおおおおお!!」」」」」
某テニスプレイヤーの二分の一くらい熱そうな観客に苦笑いしながら肩をすくめていると、俺の後ろから声をかけてくるプレイヤーがいた。
どんな物好きかと振り返ってみると、
「久しぶりね、元気してた?」
「おう、ぼったくり鍛冶屋のリズベットさんじゃないか。見ての通り悪運よく生き永らえてるよ」
「ぼったくった記憶よりも、ぼったくられた記憶しかないんだけど……」
ピンクの髪とそばかすが特徴のマスタースミスがにこやかに立っていた。クロとも「クロちゃんも生きててよかったわ。こんにちは」「よっ」と意思疎通の取れる、SAOどころか人類史上でも珍しい娘だ。
俺の横にいるクロの横に立ってコロッセオの様子を見た彼女は、その熱に若干顔を引きつらせる。
「相変わらずイベントを盛り上げるのが上手よね、アンタ。あそこに立ってる男の子の台詞もアンタが考えたんでしょ?」
「いや、俺は関与しとらんよ。元々そういう才能があったんじゃねーの? ……それよりもリズベットさんがココにいる理由を知りたいんだけど。こういうイベには参加しないイメージがあったからさ」
協力はしてくれるけど、こういったデュエルやスポーツ大会などには参加してないことが多かったためか、俺は表情には出さないながらも内心結構驚いてる。
この疑問に対して彼女の反応は苦笑いを含む微妙な表情であった。
「そりゃあ、まぁ……キリトが絶望的な顔で鍛冶屋来たら気になるわよ」
「………………せやな」
何となく想像できるのが悲しいところだ。
原因は七割くらい俺だけど。
彼女曰く、昨日訪ねてきた黒の剣士様は「勝っても地獄、負けても地獄、逃げたら墓場……俺はどうすればいいんだっ……!」と頭を抱えていたらしい。そんな彼の様子を見せられたら、せめて最後くらいは見届けてやろうというリズベットさんの優しさよ。聖女か。
戦術において、敵の行動する選択肢を狭め、どの選択肢を選んでも
そんな悲しい会話をしていると、コロッセオに二人の選手が入場する。
周囲に手を振るくらいサービス精神あふれる《お祭り男》ヒースクリフと、目から光が消えている《イキリト》のキリトだ。彼の纏う雰囲気は『壮大な悲しい過去を背負っているラノベ主人公』に見えなくもない。悲しい過去というか悲しい未来背負ってるんだけど。
「私としては逃げて欲しいところなんだけどね」
「え、キリトに死ねと?」
「アンタ今アスナに対して物凄く失礼なこと言ってる自覚ある?」
クロの隣でボソッと呟いたリズベットさんに真顔で質問する俺。
だって事実だろうが。
「……まぁ、私も今から物凄く失礼なこと言うんだけど、ほら、アスナって外見だけは魅力的な女の子じゃない? それでも浮いた話がないって言うことは……まぁ、その……つまりは……そういうことでしょ?」
「外見『涼宮ハルヒ』で中身『島津豊久』みたいな女の子とは付き合いたくないって心理と同じか」
「失礼さでアンタに勝てる気がしないわ」
意気揚々と剣と盾を構えるヒースクリフと、力なく二本の剣を構えるキリト。
対比とも言える状況を面白半分で眺めながら、俺はリズベットさんの心境を自分に分かり易く変換する。
めっちゃ酷いこと言ってる自覚はあるけれども、事実を隠したところで仕方ないだろう?
確かにアスナさんは顔面偏差値は高いし、出会った初期の頃のような状態が続いていたら、今頃素敵な彼氏でも作っていてもおかしくない可愛さだ。それは否定しない。
けどキリトとは違って俺達男共は付き合う相手を選ぶ権利がある。『可愛いは正義』や『我々の業界ではご褒美です』と言えるような範疇を超えているんだよ、アイツ等は。前にアンケート調査を行ってみたところ、クロを可愛いと思うプレイヤーはいても、結婚したいと考えるプレイヤーはゼロだった。もう一度言う。ゼロだった。
「要するに貰い手がいなさそうなアスナと、一生フリーを貫きそうなキリトをくっつけたいってコトだろ?」
「……あのアスナが現実世界に帰ったところを想像しなさい」
「……親御さんに顔向けできねぇわ」
コロッセオの中央で二人の剣士が激しく剣戟を交わしているが、俺達はそれどころじゃなかった。
全ての元凶が俺の隣でハンバーガーを関係なさそうにむっしゃむっしゃ食ってるが、俺にも原因がなかったとは言い難い。まさかクロの類似品が生まれるとは思わねぇじゃん。
「関係ないと思う」
「どういう意味だ脳筋」
血盟騎士団団長と黒の剣士の試合を仏頂面で観戦してると思っていたSAO最強タンクは、その仏頂面を俺の方へ向けながら、意味深な発言を残す。
ちなみにヒースクリフとキリトの決闘の様子は実況しなくても分かるだろう。絶好調と絶不調じゃ勝負にすらならん。
「私がアスナならイキリトを力づくでもお嫁さんにする。アスナもきっとそうする」
「つまり私達が何もしなくてもアスナは自分で何とかする……って言いたいのね」
キリトに最初っから未来なんてねぇんだよと同義のクロの発言に、リズベットさんは困ったように頬を掻いた。
俺達がアスナさんを神話生物に変えた件は置いといて、リズベットさんが心配するようなことは起きないと、全ての元凶は思っているようだ。現実世界に戻ったところで、草の根搔き分けてでも見つけ出してやるってことなんだろう。
何そのホラー。
「むしろ貰い手がいないって考える方が不謹慎」
「ご、ごめんなさい、クロちゃん」
「あー……まぁ、その……悪かったよ」
「手に入れたいものは権力と腕力の全てを以て手に入れる。アスナにはそう教えた」
「なんてことを」
そういうとこやぞ金髪脳筋神話生物娘。
俺とリズベットさんが頭を抱える中、客席から大きな歓声が上がる。
そこには苦笑いを浮かべながら剣を掲げて歓声に応える勝者の姿と、絶世の美少女に抱きしめられて絶望に染まった青い顔をした敗者の姿が、そこにはあった。
アスナへの印象
《Hamutarosaan》……どうしてこうなった。
《Wurmple》……イキリト早く何とかしろ。
《neetsamurai》……こんなんだったけ?
《Madhatter》……いっそ我等の街に住んでみません?
《Clover》……お友達。