なんでコイツ等楽しんでんの?   作:十六夜やと

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 この話は二、三話くらいには既に書いてました。
 やっとお披露目できると内心歓喜しております(`・ω・´)ゞ
 あと後半のアスナの台詞は全然改変してません。

 というわけで最終回どうぞ。


「さらば友よ」

 気づいた時に、俺は空にいた。

 夕焼けに染まる大きな入道雲。叩きつけるように、それでいて優しい風。遠くに見えるのは……あれはアインクラッド城だろうか? もう半分近くが崩れ去り、今も尚崩れている。

 地面に透明の床があるように、俺は空に立っていたのだ。

 

 俺は胡坐を掻いて座りながらぼんやりと城が崩れる姿を眺める。

 どのくらい時間が経過しただろうか。ふと、俺の鼓膜を男性の声が震わす。

 

「──ゲームクリア、おめでとう。ハムタロ君」

 

「どうもありがとう、茅場晶彦」

 

 俺は隣に立つ男性を見ずに言葉を返す。

 見なくても誰かは分かる。

 

「それはキリトに言うべき言葉じゃないんかね」

 

「さっき行ってきたよ。ちゃんと別れも済ました」

 

「……馬鹿だなぁ、茅場。俺なんかが最後に会う人間でいいのか?」

 

「あぁ、それこそ私が望んだことだ。君に一つ質問しなければならないと思ってね」

 

 顔も合わせずに質問を聞くのは野暮だろう。

 俺は立ち上がって、茅場の顔と向かい合う。白衣姿の茅場晶彦は、ゲーム世界で親しんだヒースクリフの姿よりは細身の身体だが、どこか雰囲気が似ていた。それも当然か。

 

「私はずっと思っていた。システムを君達が超越した……などという事実はもうどうだっていい。それよりも──なぜ君達はデスゲーム化させたソードアートオンラインを最後まで楽しむことができたんだね?」

 

「そんなん決まってるだろう」

 

 俺は目の前に立つ茅場を見据える。

 ヒースクリフのような威圧を纏った力強さは微塵も感じられなかったが──なるほど、あの()は清々しいほどに前向きで一直線。途中に曲がることのない芯の強さを感じた。

 このような人物に俺達の仮想世界──アインクラッドが作られたのか。

 

 同時に思わず笑みが零れる。

 俺だって長年疑問に思っていた答えを得ることが出来たのだ。笑いたくもなる。

 

「この仮想世界が大っ好きだったからだよ、茅場。広大なフィールドマップ、二度と同じ景色のない空、本物のように生きているNPC……例を挙げるにはキリがないほど、あの世界は()()だった。偽物なんて何一つありゃしない。アンタだって本気で作ったんだろう?」

 

「あぁ、そうさ。私は自分が思い描く──夢に見た浮遊城を再現しただけだ」

 

「自分の夢を形にする、か。いいねぇ、羨ましいくらいだ」

 

 本気で羨ましいと思った。

 自分の夢を形にするなんて何と素敵なことだろうか。確かに一万人を巻き込んだのは大変よろしくないだろうが、キチガイな俺にはそれが美しく見えた。俺はやろうとは思わんが。

 それが伝わったのだろう。茅場は目を見開いて驚く。

 

「ゲームで死んだら本当に死ぬような環境でも?」

 

「でも俺は死ななかった。死んだらどう思うかは知らんが……少なくとも今の俺は満足してるぜ。いやー、思い出しただけでも楽しかったわー」

 

 そうか、と茅場は呟くだけだった。

 彼の目(天才)には俺がどう映ったのだろう。

 少し気になったが聞く気にはなれなかった。

 

「まぁ、少し名残惜しい気もするが、くっそ楽しかったよ」

 

「……そこまで称賛してくれるとは思わなかったな」

 

「何だよ、アンタは楽しくなかったのか?」

 

「……いや、楽しかったさ。自分の世界で生きることよりも、君達と一緒にゲームをした思い出が。あぁ、本当に楽しかった」

 

 研究者とか技術者とか関係なく、無表情に見えた茅場の瞳は宝石よりも綺麗に輝いていた。まさかデスゲームで面白おかしく遊ぶなんてGMとして考えられなかったのだろうが、想像以上に楽しんでいたのだろう。

 自分の立場を忘れるくらいに。

 

 そんな茅場をよそに、俺は「それよりも……」と話を切りだす。

 

「もうゲームで生き残ってた面子は現実世界に帰ったんだろう? そろそろ俺を返しちゃくれないか? 待たせてる奴もいるんでな。下手に遅寝してると神話生物に捕食されちまう」

 

「……そうだな、それはすまなかった。現実世界に帰るといい」

 

 白衣のポケットに手を突っ込んだままの茅場が背を向けようとしたところで──俺は言い忘れてたことがあったことを思い出して、彼の背中に声をかけた。

 彼は不思議そうにこちらを向く。

 

「どうしたんだね?」

 

「いや、言い忘れてたんだけどさ──」

 

 俺は言葉を紡ぐ。

 心の底から。

 本心を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとよ、茅場。また馬鹿みたいに遊ぼうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉にポカーンと口を開いて固まった茅場は、意識を取り戻して苦笑いを浮かべる。

 まるで聞き分けのない子供を見る親のように。

 

「……言い忘れていたかな? このソードアートオンラインはHPがゼロになったプレイヤーは例外なく死亡する。つまり私はもう──」

 

「おいおい、野暮なことは言うなよ。ここは『OK、またな!』って言うところだぜ?」

 

 茅場の言い訳を俺はバッサリ切って、さっきと同じ言葉をかける。

 SAOを作った天才なのに言葉の真意すら見抜けないのかよ。困った天才だ。

 

()()()()()()()()()()鹿()()()()()()()()()

 

「………」

 

 俺は笑顔で同じ言葉を天才に言う。

 茅場は意味を理解したのか、仮想世界なのに彼の両目から涙の粒がツーっと流れる。今まで変化がなかった茅場晶彦に、初めて懐古以外の感情が浮かんだのだ。

 その涙に驚く茅場であったが、その涙を拭うことなく小さく笑った。

 

「……そうだね、また私のゲームを楽しんでほしい」

 

「馬鹿みたいに遊んでやるから覚悟しとけよ?」

 

 そうして俺の視界は真っ白に染まる。

 真っ白に染まってしまったが──

 

 

 

 

 

 ──あの時浮かべた茅場の笑顔を、俺は一生涯忘れることはないだろう。

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

「……お別れだな(歓喜)」

 

「ううん、お別れじゃないよ。ねぇ、最後に名前を教えて? キリト君の本当の名前」

 

「排泄物五郎三郎」

 

「桐ヶ谷……和人君。年下だったのかぁ。私はね、結城明日奈、十七歳です」

 

「待って待って待って、どうして俺の本名知ってるんだよ。というか俺は君の名前聞いてないんだけどぉ!?」

 

「いいよ……いいんだよ。私、幸せだった」

 

「俺はしわよせだったわ」

 

「和人君と会えて一緒に暮らせて、今まで生きてきて、一番幸せだったよ」

 

「俺の視点では、どんな単語にも(物理)がついてるんだが……」

 

「ありがとう、愛しています」

 

「なんちゅうタイミングで告白してるん!? え、ちょっと待って!?俺どうなるん!? 俺死ぬん!? ちょ、抱きしめないでマジで痛い痛い折れる折れる、いや、本当に背骨折れるから! 茅場ぁ!? 助けてぇぇえええええええええええええええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 愛して──

 愛しています。

 

「不吉な言葉残すの止めてえええええええ!?」

 

 

 

 

 

 




茅場への言葉

《Hamutarosaan》……「同じこと何度も言わせんな」
《Wurmple》……「悪くはなかったぜ。次回作に期待だなァ」
《neetsamurai》……「ストーリーの続きが気になるんだけど!? SAO世界をもっと楽しみたかったなー」
《Madhatter》……「茅場氏とは技術面で話を聞かせて欲しいです。機会があれば、また」
《Clover》……「武器の火力はイマイチだった。もっとレベル上げて出直してきて」
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