なんでコイツ等楽しんでんの?   作:十六夜やと

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 タイトル変更しました。
まだ『イキリト』な卍キリト卍君じゃないです。というか本作において彼は完全な被害者となります。割と好きなキャラなんですけどね。
 ついでにアスナさんも被害者となります。


とうとう出会っちまったかー

 あまりにも濃い日常を送っていたが故に、時間というのはあっという間に過ぎていくものだと、ふと聞いたことのある声を聞いた瞬間に思い出す。

 このゲームに囚われて早一ヶ月が過ぎようとしていた。

 とうとうゲーム内での死亡者数が2000人を超えたと共に、人間というものはこうも簡単に死んでいくものだと痛感させられる。多くのプレイヤーが「次は自分の番だ」と街が死んでいく姿は、見ていて気持ちのいいものではないな。

 確か近日中に迷宮区のボスを討伐するための攻略会議が開かれると小耳に挟んだ気がするが……。

 

 まぁ、俺達には関係ないけどね。

 

「──ん? キリト? お前もしかしてキリトか?」

 

「え、アンタ誰だ……?」

 

 一ヶ月程前に聞いたきりなのに覚えているものだ。

 いつものように迷宮区でモンスターと戯れていた帰りのこと、俺とクロは自分達の住処に戻ろうとしていた時に、聞き慣れた声がしたので、声の主とすれ違う瞬間に呼び止めてみた。他のメンバーは先に帰ってるはず。

 星々が輝きだす時間帯で若干見えにくいが、黒髪の少年は女性のような顔立ちと線の細いシルエットで、前見たときはもっと高身長のイケメンだった記憶があったが、その反応からして本当にキリトらしい。傍らにフードを被った不審者がハッピーセットの玩具の如く付属されていたが、俺は見たことも聞いたこともないので一旦スルーする。

 

 とは言っても彼は俺の名前を覚えているだろうか。会った時とは姿形がまるっきり違うし、何か印象的な出来事と合わせれば思い出してもらえるかもしれない。

 あぁ、あれがあった。

 

「俺だよ! βの時に四層でボス攻略時、ボスのケツにソードスキルぶち込んだ──」

 

「あぁ!? もしかしてハムタロか!?」

 

 その説明で理解してくれたのか、黒髪の少年──キリトは驚いたように笑う。

 疑問に思ったのは両方の連れも同じなようで、いち早く声を出したのはキリトの連れている不審者だった。ガラスのように透き通った綺麗な声から、不審者がSAOでは珍しい女性プレイヤーなのだと理解する。

 

「……貴方の知り合い?」

 

「あぁ、βテストの時に、四層攻略で一時的にパーティ組んだ奴だよ。テストでは十本の指に入るくらいの高レベルプレイヤーだったはずだが……今はどうなんだ?」

 

「さっき迷宮区で遊んできた」

 

「遊ぶって……」

 

 説明された俺は素直に答えて、彼女は訝しんでいる雰囲気を醸し出す。

 そしてアホにも『キリト』という人物を説明してやった。

 

 βテストの時にパーティを組んだ中で、その後も交流のあったプレイヤー。あんまり目立ったようなプレイを見ることがなかったが、堅実な立ち回りとソードスキルは俺に真似できるものではなかった。それこそMMO初心者だとは思ってなかったし、βテスト仲間の中では割と印象に残っていた。

 『四層の時のアレ』とは、ボスを討伐しようとしていた時に「このゲームってAIが優秀だよな。……コイツの尻に剣ぶっ刺したらどんな反応するかな?」という俺の素朴な疑問により、その攻略チーム48人全員がボスのケツを狙ってソードスキルを放った事件。最終的に言い出しっぺの俺がケツとラストアタックをゲットしたのだが、まさに『悶絶している化物の図』が見れたのは良き思い出。

 

 説明し終えた時の周囲の雰囲気は微妙なもので、特に不審者は呆れたように首を振っていた。

 まるで奇人変人を見るかのようだ。

 

「──で、コレがパーティメンバーのクロ。よろしくな?」

 

「あ、あぁ。……そうだ、ハムタロ達は一層ボスの攻略に参加しないのか?」

 

「あ、今日がボス攻略会議だったんだ。んー、今回はパス。明日は面白そうなマップの情報手に入れたから、パーティ組んでる五人で遊びに行く予定だし」

 

「貴方ね……真面目に攻略する気があるの?」

 

「……キリト、この人誰?」

 

「あぁ、明日ボス攻略の時に臨時パーティを組むことになった人で、プレイヤーネームは『アスナ』」

 

 フードの少女──アスナさんの声色には若干の怒りがあった。

 どうにも堅物そうな第一印象を受けた俺は、彼女の性格も考慮して怒りの原因に思い当たる。

 

「別に俺達がゲーム内で何しようが倫理的にアウトじゃなきゃ構わねーだろ。フィールドの小川で水遊びしようが、イノシシ型モンスターに無理やり乗ってみようが、迷宮区で鬼ごっこしようが、片手剣を両手で持ってソードスキル縛りしようが、俺達の自由だ」

 

「お前そんな事してたのか……」

 

「何やってんのよ……特に最後は命知らずの大馬鹿者じゃない」

 

「だってよ、クロ」

 

「訴訟も辞さない」

 

 さっきから無言だったクロの言葉に、アスナさんは唖然とした表情をし──ているのだろう。フードを深く被っているから判断しづらいが、そのような雰囲気は小さく呟かれた「え……?」の発言で推測できる。

 ただ彼女の不意を突かれた驚愕が、仏頂面で言葉を発しなかった彼女が口を開いたからなのか、それとも馬鹿な行動を行うような人間に見えなかったのかは、流石の俺も判断できない。ぶっちゃけ両方のような気もするが、正直間違ってても問題ない。

 あのキリトですら目を見開いていたのだ。

 

 うん、外見だけならば出るところは出て引っ込んでるところは引っ込んでる完璧美少女なのだ、クロは。寡黙な姿は深窓の令嬢を彷彿させるし、リアルでも密かに男子から人気は高かった。

 口を開けば知能チンパンジー以下が露見するだけで。

 

「話は変わるけど女性プレイヤーとは珍しいな。キリトのか──」

 

「違いますっっっっ!!!」

 

 全部言ってないのに否定された。

 とても悲しい。

 

「ふーん、じゃあ本当に即席パーティな関係なわけね。それにしても女の子が深夜に年頃の男の子と徘徊するとは感心しないなぁ。何かあったらどーすんのさ」

 

「それは貴方達も一緒でしょ? こんな小さくて可愛い子を夜に連れだすなんて……もしかして変なことしようと考えてるわけじゃないでしょうね?」

 

「え、可愛い女の子どこ?」

 

「………」

 

 ここにいるのは、パッと見女の子に見えなくもないキリト君と、勝気だが堅物そうな外見不詳なアスナさんと、頭の螺子が外れすぎて崩壊してる馬鹿が一匹だけだ。周囲を見渡しても年代様々な野郎共しか見当たらない。

 馬鹿には見えない女の子だろうか?

 本来見えないものが見える……まさかっ!?

 

「アスナさんって物凄く危ない人なのでは……?」

 

「そうそう! そうなんだ──ひぃっ!?」

 

 同意しようとしたキリトの眼球スレスレに細剣のソードスキルを遠慮なくぶち込むアスナさんに、俺は彼女の認識を『不審者』から『バーサクなヤベー奴』へと変更する。

 そしてクロと同じ目線になるようにしゃがんで、先ほどとは3600°()違う優しい声を出す。

 

「あの変な人にいやらしいことをされたら、すぐにお姉さんに言ってね。HPがゼロになるまでスキルを放つから」

 

「………」

 

「……クロちゃん?」

 

「……あ、ヘルシェイク矢野のこと考えてた」

 

「「「………」」」

 

 そりゃ優しさも相手に届かなきゃ意味ないわな。

 つかヘルシェイク矢野って誰だよ。

 

「話は変わるけどさ、アスナさんって何歳?」

 

「……15歳だけど」

 

「クロも俺も15歳だから同い年だぞ」

 

「「はぁっ!?」」

 

 良く間違われるがこのロリ巨乳は15歳だ。お陰様でアスナさんみたいに年下だと誤解する輩に説明する回数の多いこと多いこと。

 加えて、俺のカミングアウトにキリトは重大なことを悟ってしまった。

 

「……俺が一番年下なのかっ……!?」

 

「おいキリト、回復ポーション買って来いよぉ~」

 

「あ、私のもお願いね。ちょうど切れてたし」

 

 ちょっと調子に乗ってパシリみたいなことを頼んだら、堅物だと思っていたアスナさんも便乗して、回復アイテムを最年少のキリトに頼む。意外とノリが良いのかもしれない。

 半泣きのキリトは唯一の砦であるクロの方へと顔を向けるが──

 

「………」

 

「………」

 

 言葉を発さずに顎で「おら、はよ買って来いよ」と言いたげに催促したクロの仕草に、彼は泣きながら星空輝く街を走り廻ったとさ。

 

 

 

 




年齢・身長とか設定

《Hamutarosaan》……15歳。身長165センチ。
《Wurmple》……15歳。身長159センチ。
《neetsamurai》……15歳。身長164センチ。
《Madhatter》……16歳。身長173センチ。
《Clover》……15歳。身長148センチ。 88/59/80

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