なんでコイツ等楽しんでんの?   作:十六夜やと

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 今回は卍キリト卍視点でのボス討伐戦です(`・ω・´)
 いやー、シリアス書くのは大変ですね。次回でギルド関連の話を書いた後に、時間軸を結構飛ばします。正確に言えば、サチのところですね。

 ところで『オリジナルソードスキル』のタグは必要でしょうか……?


──第二層ボス討伐戦──

 ──第二層ボス攻略前に、俺はボス攻略の要の人物であるキバオウに告げられた。

 俺とハムタロ達はボスの取り巻きを押さえることに集中しろ、と。

 ボス攻略に参加できないかと思われた俺だったのだが、ビーターとしての戦闘経験はボス攻略に欲しいものであり、また取り巻きはボスを討伐するに当たって邪魔であるとした。少数精鋭で事に当たって欲しいと、最初はその言葉を真に受けたのだが、もう一人の指揮官・リンドとの会話でだいたいの事情は把握した。

 

『──取り巻きにもドロップアイテムはあるだろう!? なぜアイツ等に任せる!?』

 

『ほなら、あのキチガイ共を説得しに行け。前にアイツ等がワイとお前を物理的にブン回したのは覚えてるやろ? ワイは武器としてボス攻略には参加したくあらへんで』

 

『そ、それもそうだな……』

 

 あれってユニークスキルなのだろうか?

 ハムタロ達以外に使ってるプレイヤーを見たことがない。

 

 ただアレのソードスキル?の弱点は見ていて理解できた。

 人を持ちあげるほどのSTRが前提条件として、武器そのものの耐久性はプレイヤーのHPが参考にされる。PKに使われる可能性も考慮してみるが、モンスター蔓延る圏外で以上の方法でPKしたとして、その後はどうする? あのスキル発動後はかなり硬直が激しく、武器を変えることも結晶を使うことも、かなり致命的なタイムラグがあるのだ。

 だからアレを取得しようと思うプレイヤーがいないし、PK利用しようとも考えない。

 そもそも人を武器として使う馬鹿がいない。

 

「みんな、回復結晶やポーションの用意はしたか? 武器の耐久値は大丈夫か? 転移結晶だけは絶対に忘れるなよ? 自分の仕事はちゃんと理解したか?」

 

「……あ、今日の天気予報見てない」

 

「クロちゃん、今日は晴れだってよー」

 

「ん。ニートグッジョブ」

 

 ボス前は皆が緊張する。それは一層でも例外はなく、例え二回目のボス戦だろうと同じだ。HPが全損すれば死んでしまうわけだし、誰もが握りこぶしを固くして、武器を持つ手が震える。

 本来ならばその反応が正しいのだ。誰だって死にたくない。

 

 だが俺のパーティメンバーはどうだ?

 自分の明日よりも天気予報の心配を皮切りに、三層で立てられるギルドの名前を考え始め、ボスラストアタックは誰が取るか賭けを行い、あまつさえ暇ゆえに『しりとり』すら開催されるレベル。

 肝っ玉が据わっているとかの次元じゃない。ボス前の俺の脱力感は何なんだ?

 

 そんなこんなしているうちに目の前の大きな扉が開かれる。

 俺は思考を切り替えてボスの間へと歩みを進めた。

 

「ふ? ふ、ふ……『フィボナッチ数列』」

 

「『つ』かァ……『ツーリング』」

 

「また『ぐ』ですか? 『グーグルプレイストア』」

 

 ホント真面目にやってくれよ……?

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

 何だ。

 何なんだ。

 マジで何なんだコイツ等は!?

 

「やっぱりHP多いなコレ。ゲージ何本ついてんだよチートかよ」

 

「ちょーっと舐めてたかも、ボス攻略戦。あっちの方が強そうだし、一筋縄じゃいかないかもねー」

 

「このモンスターうっざい」

 

 ボスを討伐したことによる真のボス登場。

 アスナと詐欺鍛冶師の乱入。

 チャクラムを使う戦法に驚く攻略組。

 

 目まぐるしく変わっていく戦況をよそに、ボスレベルの強さを誇る取り巻きの一体を相手に、俺達六人は取り巻きとの死闘を繰り広げていた。

 正確には俺だけが瀕死になったりしただけなのだが。

 

 普通はタンク一人でボスの攻撃を防ぐことはできない。故にソードアートオンラインには敵をソードスキルで攻撃した時に発生する硬直状態を補うために、『スイッチ』と呼ばれるものが存在する。攻撃する人間が入れ替わると同時に、敵のターゲットもスイッチした人物に移るため、回復をしたいときやタゲを入れ替えるときなどに重宝するのだ。

 一層でも『スイッチ』が使われる場面は多く、そのためプレイヤー同士の掛け声が非常に重要となってくる。

 攻略前にも戦闘に関する大方のおさらいはして、ハムタロの「キリトは基本的に好きなように攻撃して。指示は出すから」とは言っていたが──

 

「今日の晩飯どォすンだァ?」

 

「三層に美味しい店はある?」

 

 こんな雑談をしながらケムッソはソードスキルを放ち、クロとスイッチを果たす。その鮮やかさは見事なもので、一層でアスナとやった時以上に洗練された動きだったのは認める。

 だが問題はそこじゃない。

 コイツ等は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「三層の街探索はハッタがやってたよな?」

 

「そうですねぇ……美味しい店というのはなかったような」

 

 加えて、コイツ等は戦闘で敵の動きを完全に読もうとしている。

 例えば取り巻きが行う範囲攻撃の条件として、一定距離にプレイヤーが三人いるときに発動する全体麻痺攻撃がある。それを一度か二度くらい発動していた取り巻きなのだが、その一・二回の攻撃だけでコイツ等は範囲・人数・タイミングを完全に把握し、今ではタンクと攻撃するメンバー以外は取り巻きに範囲攻撃をさせないギリギリの距離を保っている。

 俺の瀕死の理由はその条件に気付くのが遅かったからだ。これはβテストのときにはなかった。

 

 この条件を見つけるだけなら俺でも時間はかかるが出来た。

 しかし、コイツ等は誰一人その法則を言うことなく全員が把握した。

 

 そんなことを考えているとクロのHPがもうすぐイエローゾーンに入ろうとしているのが見えた。

 俺達は取り巻きを囲むように点在しているため、頭上のHPを見ることはできないが、パーティメンバー欄からは確認可能だ。

 まだケムッソは完全に回復していなかったので、すかさず俺が叫ぶ。

 

「クロ、スイッチ!」

 

「……あと五秒」

 

 五秒とは何だろうか?

 ソードスキルのCT?

 

 疑問符を頭上に浮かべていると、丁度五秒後にクロのHPが黄色に変色し、同時にクロが敵に向かってソードスキルをぶち込んだ。唖然としたのは一瞬で、どうにかスイッチは成功させられたが、同時に冷や汗が溢れてくる。

 もしかして敵の攻撃予測タイミングとHPの管理を自分で行ってるのか!?

 コイツ等全員が戦闘に関する才能が天性的なものなのか、言葉を交わさなくとも意思疎通が出来るくらい信頼し合っているのか、どちらにせよ並大抵のプレイヤーが一朝一夕で出来る技術じゃないだろう。俺にはちゃんと指示を口で出してくれるし、ここまで安定したボス攻略はβテストでもなかった。

 

 このようにHPが多いだけの大型モンスターを討伐する作業感で行っていた第二層ボス攻略は、残り一本しかないゲージが残り僅かにまで減っていく。

 焦る気持ちを必死に抑え、淡々と雑談するハムタロ達に耳を傾けていると、

 

「イキリト君、とりあえず回復結晶使ってHP全快にしといて。あとで使った分はこっちで補填するから」

 

「え、どうして……」

 

 ここで謎の指示を出してくるニート侍。

 早く早くと急かすため手持ちの回復結晶を使った瞬間、両足を掴まれて視界が反転する。

 

「よし、ラストアタックどーぞ!」

 

「任せて」

 

 ……あぁ、だからHPを全快させたのか。

 二度目となる光景に心で涙を流しながら、仄かに青白い光を纏って、俺の身体はHPがドットしか残っていない取り巻きの身体を切り裂いた。

 フルスイングと取り巻きの防御力のせいか、前はそこまで減らなかったHPを七割くらい失い、ついでに地面へと放り投げられた。

 

「うっしゃー! 取り巻き討伐完了っと」

 

「「「「イエーイ!!」」」」

 

 パーティメンバーが俺以外集まってハイタッチを行う。

 そして間髪入れずに真ボスが討伐されたのか歓声が上がる。

 ハムタロからしてみれば、最後の報酬は与えたから別にいーじゃん?ってことなのだろう。確かにレアアイテムは嬉しい。嬉しいのだが……。

 ラストアタックの報酬が俺に入ったことを確認しながら、その後もちょっとした問題があるはずなのに、それを見届けることなく俺の意識は暗転したのだった。

 疲れた。

 

 

 

 

 




キリトへの印象

《Hamutarosaan》……同世代に近い友人感覚。頼りにしている部分も多いが、いじり甲斐のあるキャラだとも思っている。
《Wurmple》……二層攻略でキリトの戦闘能力に一目置いた。だからと言って尊重する気は一切ない。
《neetsamurai》……女性関係を洗い出して『ハーレム築きそうだなー』と本質を見抜く。いい玩具が見つかったね。
《Madhatter》……割と作中関係ないところで情報交換を行っている。ラブコメハーレム大好き人間なのでキリトに期待している。
《Clover》……年下の女顔な男。武器リト。

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