……茅場視点で見たくありません?
それにしても他の主要メンバーが出てこないから悲しいですね。
シリカとかリズベットとかユイとか。
三層に辿り着いた俺達は重要な問題にぶち当たる。
頭を悩ませるほど重要なことか?と問われれば、そこまで問題視するほどじゃないが、割と今後を左右してしまう案件なのも否めない。事実その問題にぶち当たったSAOプレイヤーも少なくないだろうし、俺たちもそのうちに数えられるわけだ。
そう──ギルド名。
「そんじゃギルド名に希望ある奴は発言どうぞ」
「「「「鉄華団」」」」
「そうかー、最終的に華々しく散りたいかー」
三層の某所にていつもの如く集まったキチガイ共とギルド名を考えていたのだが、誰一人として良い名前を出さず、そもそも考えようとすら思ってない。
俺は頭を抱えながら、円卓状に座りながら頬を机につけてだらーんとしている面々を蔑む。
確かにパーティメンバーだけしか加入しなさそうなギルドを作る理由もないし、結成したとして今後メンバーが増える予定もない。ならパーティだけ作っとけばいいのではないか?と、最年長者のハッタは宣う。
無理もないだろう。アホなことし過ぎて加入者どころか、攻略組の面々ですら距離を置くほど、俺達の悪名は知れ渡っているのだ。ぶっちゃけ『ビーターのキリト』よりもヤベー奴だと思われてる。
全く以て遺憾。名誉棄損で訴えるぞ。損害賠償責任モノだ。
まぁ、言っちゃ何だが最初からコイツ等をアテにはしていない。
なので開始数秒で切り札を召喚する。
「そんな訳で、イキリト君にアスナさん。おまけでアルゴさん。何かいい案ない?」
「……どうして加入しないギルドの名前を考えさせられるのだろうか?」
「私なんて部外者よ!」
「オレっち歩いてるだけで拉致られたんだがナ……」
さすがに自分達よりも年長者なエギルさんやクラインさん、攻略組で仲の良いキバオウさんを頼るわけにはいかないのだ。彼等だって自分のことに忙しい。
だから大人な彼等が推薦するメンバーを適当に拉致ってお呼びしたわけなんだが。どうにもアホ共よりもモチベーションが低いように思われるのは気のせいだろう。
あんま期待してないけど最初はイキリトゥ君だな。
腕を組みながら考えている黒コートの剣士をセンターに持ってくる。ここで最年少たる若さを見せつけて欲しい。
「うーん……そうだなぁ……『卍†幻影の旅団†卍 』とか『絶†影』とか……あ、『†
「どうだじゃねぇよ。誰がイキリト君と不愉快な仲間達の名前考えてるって言った? チッ、中学二年生に期待した俺が馬鹿だった……」
「うわっ、キリト君ってそんな趣味だったんだ」
「どうしてそこまで罵倒されなくちゃいけないんだ!?」
隙あらば卍や†を取り込むスタイルはどうにかならんもんか。
十年後のコイツに見せてやりたいわ。これには現役女子高生(センター入試は受けられなかったが)のアスナさんも、何歳かは知らんけどハッタよりは年下であろうアルゴさんもドン引きである。
しかもキリトは何が悪いのか分かってないし。
ならば次だ次。
俺達には同世代の女子がいないので、俺は真摯に耳を傾ける。
「えっと……その……『猫の足跡』、とか……どうかな……?」
「「「「ほう、ならば俺達は『猫の足跡』と名乗ることにしよう」」」」
「やっぱごめん。今のなしで」
アスナさんの考えたギルド名を聞いた瞬間、顔を上げた男共が声をそろえて彼女の考えた名前を暗唱する。全員がわざと野太い声を出したため、どこが問題なのかバーサク細剣使いは一瞬で理解して取り消した。
一光年譲ってクロが外見美少女だとしても、その名前を俺達で共有するには可愛げがあり過ぎる。悪くはないんだが、良くもなかった。
嘆息しながら肩を落とすアスナさんに、イキリキリキリキリトが苦笑いを浮かべる。
「何だよ、アスナも駄目じゃないか」
「貴方よりは数百倍マシよ。絶†影とか名乗れるわけないじゃない」
「カッコイイと思うんだけどなぁ」
──まさか十年後に俺達からそう呼ばれて「ア゛ァ↑!?(絶命) や め て く れぇぇぇぇえええええええ!!!」と叫んでのた打ち回るとは思わないキリト君だった。
「アルゴさんは何かない?」
「オネーサンでもコレはお手上げんだケド。クロっちがいるから凛々しい名前もいけると思ったんだけどサ」
「……アイツの二つ名が『《剛腕》のクローバー』だからなぁ」
「クロちゃんいつの間にそんな漢らしい二つ名つけられたの!?」
まさかのカミングアウトにアスナさんは青ざめて、キリトは引きつった顔を元に戻すことが出来ない。剛腕とか成人迎えてすらいない女の子につける異名じゃねぇし。
攻略組の間ではキリトに続く二つ名持ちなのだが、その話を聞いてクロが物凄く不機嫌だったのは同情した。
戦闘シーンを振り返れば嫌でも納得するけど。
「わ、私も気をつけないと……」
攻略組で数少ない女の子が凄まじい二つ名をつけられている事実を耳にして、同じ女性である細剣使いの少女は危機意識を持ち始めたようだ。アスナさん男よりも漢らしいプレイングだもんね。
……まさか『《狂乱》のアスナ』とか呼ばれてるなんて口が裂けても言えない。言い出したのが
こりゃダメかなーっと皆が諦めていると、ふとアルゴさんはボソッと四字熟語を呟く。本当に小声で分かりにくかったが、声だけは何とか掴むことが出来たレベルの小ささだった。
「……天壌無窮」
「ん? 何それ」
「いや、オレっちも詳しい意味は知らないんだけどネ。確か空や大地は永遠に変わらないって意味の言葉だったようナ。キー坊から聞く限り、ボス戦でも同じようにふざけてるって聞いたから、変わらないって意味の四字熟語が似合うんじゃないかなってサ」
キリトやアスナさんに確認してみたが、彼等も知らないと首を振る。
アルゴさんに文字を起こしてもらっても、どうにも難しい言葉の羅列としか思えない。かといって彼女が出鱈目を言うような人じゃないし──
「──日本書紀に出てくる言葉だねー」
「ん? 知ってんのかニート」
この言葉に反応したのは、顔を上げて眠たそうに目を細めるニート。
俺以外の起きてる三人も唖然とする中、ニートは知識をひけらかす様子はなく、ただ淡々と独り言のように説明し始めた。
「アルゴちゃんの説明であってるよ、多分。『
「ちょ、へ!? ま、待って!」
そこで待ったをかけたアスナさん。
……あ、キリトから聞いた話だけど、彼女って勉学に対する並ならない執着心みたいなのを持ってたとか言ってたような。そりゃ自分の知らない言葉を、さも当然のように語るニートは無視できない存在だろう。
特に今までの奇行を見てきたんだから。
「どうしたのアスナちゃん?」
「何で貴方がそんなこと知ってるのよ!」
「……興味があったから?」
馬鹿な行動を取る人間が必ずしも学力が低いとも限らない。
いや──馬鹿な行動を取るからこそ、そこには様々な知識と推測から成り立つ根拠によって動くのだ。要するにニートは勉強が出来るゴミ屑ってわけだ。
こうして俺達のギルドは『天壌無窮』となった。
天地とともに永遠に極まりなく続く。それこそ永遠に。
だから俺達はデスゲームで良くも悪くも変わっていくであろう人々の為に、変わらず馬鹿をやって楽しむ存在であろうと再確認したのであった。
「……う……嘘よ……こんな……こんなアホに……」
「あ、アスナ大丈夫か? 過呼吸状態になってるぞ?」
勉強の圧力から解放されたはずだった少女の心と引き換えに。
学力のあれこれ
《Hamutarosaan》……割と成績は良い方。だが『物理』が鼻水出るくらい壊滅的。
《Wurmple》……不良少年っぽいけど理数関連にめっぽう強い。文系など捨てた。
《neetsamurai》……文学大好きマン。興味のある単語・知らない単語は率先して調べるタイプ。
《Madhatter》……元学年主席。外面だけは良い。
《Clover》……実は帰国子女のハーフ。日本語以外にも五ヵ国くらいの言語を話せる。話せるだけで文明的な会話が出来るとは言ってない。