朱に交われば赤くなる。これが黒色ならば、尚更影響を与えるわけですね。つまりはそういうことです。察してくださいm(__)m
ところで茅場晶彦サァンは賛否両論の多い方ですね。
その『否』が多い要因の一つを取り除いてみました。悪気はあります。
──何なんだ、コレは。
その程度の感想しか抱けない自分の表現力が恨めしいと共に、目の前に広がる光景を理解したくない自分が存在する。自分の想定していたものとは掠りもしない現象に、どのような言葉を使えばいいというのだ?
このソードアートオンラインを作った張本人である私は、二十五層のボス攻略には苦戦するだろうと予測していた。事実、二十五層はクォーターポイントとして設定しており、他の迷宮区のボスとは比較にならないほどの強さを設定していたのだから当然と言えるだろう。
ここのボスモンスターは双頭巨人型の大型ボスで、高い攻撃力で迂闊に生身で受けようものなら、最悪一撃で死んでしまうであろう凶悪な敵。
私はHPを半分以上は減らないシステムを組み込んでいる上に、このモンスターの行動パターンは読めてはいるので、死ぬことはないと断言する。
今回のボス攻略の指揮を執るのは黒髪の少年。名前は確か──ハムタロサァンと言ったか。
第一層以外のボス攻略に欠かさず参加する、ギルド『天壌無窮』のリーダー。短剣で相手を翻弄させる戦闘を得意とする、ボス攻略の古株といってもいいだろう。彼の評判は「良くも悪くも堅実的な戦い方をする、頭のぶっ飛んだキチガイ共の一人」だ。
今回のボス攻略が初である私だが、ボス攻略に関してはGM権限を使って見たことがない。
言い訳にしかならないだろうが、この戦闘を楽しみたいのだ。ラスボスとして君臨するため死ぬことが許されないにせよ、私の作った世界で彼等がどのように生き抜くのか、この目で確かめるために私は参加する。訳あって参加できなかったが、これからは私が直接この世界で生きる者達の軌跡を見ていこう。
さぁ、SAOプレイヤー諸君。
君達の軌跡を見せてくれ!
「くっ、尻ばっか隠しやがって! 正々堂々と戦うことが出チャーンスぅ! これが貴様のケツの最後じゃああああああああ!!」
「アスナ! スイッチ! そろそろ準備しないと間に合わない!」
「攻撃が重いけど……! というか女の子に壁役頼むとか男として(クロを見て)──あ、はい。頑張ります……」
「イキリト、キバオウ、HP回復に専念して」
「アルゴ砲発射用意──! オラァッ!!!」
「第二射。エギル砲発射致します。──撃てぇっ!!」
こんなの見せてとは言ってない。
執拗にボスの臀部を狙う総指揮官。
ボスの間の端で寛ぎながらポーションを飲んで雑談する、黒髪の少年とイガグリ頭の青年男性。
本来ならばプレイヤーを一撃で屠る攻撃を女性とは思えない雄叫びを上げながら、ガニ股で踏ん張る栗色の髪の少女。スイッチでボスの追加攻撃を《体術》スキルで押し返す人外の金髪少女。
プレイヤーを巨人の弱点に、的確に《投擲》スキルで飛ばす二人組の少年達。
激突した後に安全圏まで即座に退却していく、投げられたプレイヤー達。
どこから指摘すればいいのか分からない。
そもそも《投擲》にプレイヤーを飛ばすシステムはなかった筈だ。
何故だ。何故だ。何故だ!?
「というか何で俺まで呼ばれたんだ? 一介の商人やってる俺が何でクォーターのボス討伐になんて……」
「何でも『投げた時にダメージでかそうな前線に出られるプレイヤー』に声をかけたらしイ。オレっちは──まぁ、投げられ慣れてるからナ。最近《投擲》スキルに何故か補正が入るようになっタ」
もっとも理解不能なのは、この奇行としか思えないボス攻略を全員が素直に受け止めている点だ。安全性も信頼性もないはずなのに、どうして彼等は受け入れることができるのか。一層の絶望感は何だったのか。
確かに現実世界ではあり得ない光景だが、こんなの私が夢見た世界じゃない。
「うんぬらばあああああああっっ!! こなくそがああああああああっっ!! ど根性見せたるわああああああああっっ!!」
「アスナ、女の子の出していい声じゃない」
「声出さないとやってられるかああああああああっっ!?」
巨人の片腕を細剣で必死に食い止める可憐な少女は、喉から絞り出すかのように自分に喝を入れながら防ぐ。あれ彼女のステータスでは防ぎきれないはずなのに、どうして力が拮抗しているのだろうか?
もう片方のタンクを務める少女……?は、もうあれは視界に入れないようにしよう。
プレイヤー三人を同時に粉砕する片腕の攻撃を、華奢な片手でペシペシ受け流せるはずがない。しかも仏頂面で直立不動で。私は神話生物をプレイヤーにしたはずはないんだが。
「キバオウ、今レベル幾つだ? ……大丈夫か?」
「何言ってるんや。このボスの攻撃力は高いが、防御力は若干難があるっちゅう話や。ワイのレベルでも耐えられるに決まっとる」
「それなら大丈夫か。あぁ、今回はアンタにラストアタックを譲るよ」
なぜクォーターポイントのボスの前で胡坐を掻きながら雑談をできるのかは置いといて、どうして内容には若干の違和感のある会話でさえ、私の心をこうも掻き乱すのだろう。
これから大変なことが起こる、そんな気が──
「ちょいちょい」
「ん?」
呆然と立ち尽くす私に注意しに来たのかと振り返ると、そこには白髪の少年が立っていた。
彼は初対面の私にもにこやかに笑いかける。
「えぇと……誰だっけ? ハナヲホジッジ?」
「ヒースクリフだ」
「おぉ、そっかそっか。惜しかったなぁ」
彼らにとって文字数どころか一文字も合ってないは『惜しい』らしい。
そんな彼は私の手を引いて──未だにプレイヤーを発射させている少年達のところまで連れていこうとする。
「あ、大丈夫だよ。HP満タンでハムタロの面接に受かったのなら、だいたい三割くらいのHPは残る計算だから心配いらないぜー」
「──っ!?」
そこで私は重大なミスをする。
私はHPを半分以上を削られない設定になっており、このままだと私が『茅場晶彦』であると露見してしまう。この半分も行ってない階層で正体を明かすのはマズい。
そのためGM権限で一時的にその設定を解除して──再設定できないことを思い出す。
つまり、私は今後入手する予定の《神聖剣》のスキルだけで九十五層まで生き延びなければいけない。
以上のことまで考えて、今はそれどころじゃないことを思い出す。
私は今から人間魚雷となるのだ。
ちらりと視線を逸らして周囲を見て
少年と男性が悲痛な詠唱を行っていた。
これは覚悟を決めるしかないのか……!
「オイ、新入り。最初は怖いかもしれねェが、直に慣れる。さァ、逝ってこい──!」
胸ぐらをつかまれて投げられた私は、パァン!と甲高い音を立てながら、一直線にボスの顔面へと突っ込む。私が空気抵抗も考えて姿勢を伸ばしていたせいか、綺麗に速度を落とさず目的ヵ所に当たった。
ぶつかった瞬間、私は走馬灯を見る。
そして、私は理解した。
そういうことか。
私は人間魚雷になるために、ソードアートオンラインを作ったのか(洗脳完了)。
クォーターポイントでのボス攻略時の役割
《Hamutarosaan》……遊撃&タンク補助。AIが学習して自分の尻を守りだしたのが悪い。
《Wurmple》……砲撃手&タンク。外したことがほとんどなく、特にアルゴとは何だかんだ相性が良い。フラグか?
《neetsamurai》……サポート担当。カバー時に唯一スキルを正しく使う人物。人間を武器にした状態でスイッチできることを見つけた。
《Madhatter》……砲撃手&火力。遠距離攻撃の発案者。だってクォーターのボスは強くて近づくと危ないもんね。
《Clover》……タンク&トドメ担当。茅場すら諦めさせた脳筋。武器リトと武器バオウでトドメを刺すのが名物になってる。