七号鎮守府譚   作:kokohm

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川内型姉妹はそれぞれの職務を全うしていました

「――むう」

 

 不満だ、と水平線を眺めながら、川内型軽巡の一番艦、川内はつまらなそうにぼやく。そんな彼女に話しかけるのは、随伴艦である千歳型水母一番艦の千歳だ。

 

「そう不満そうな顔をしないでよ。安全に敵を倒せたんだからいいじゃない」

「そりゃそうだけどさあ。これは流石に思うところがあるっていうか」

 

 そう言いながら、じとりと川内は千歳を見やる。

 

 水上機母艦、千歳。川内たち巡洋艦と比べ、彼女の艤装は単純な火力こそ劣るものの、その装備は実に多彩だ。水上爆撃機の一種である瑞雲を用いた航空戦と、これに次いで艦隊から先行した甲標的――小型潜水艇による雷撃。結果として両大な射程を持つそれらは、両艦隊が砲雷撃を始めるより早く、一方的に敵艦隊を攻撃することが出来る。細かい装備や練度にもよるものの、うまくかみ合えば駆逐の一隻や二隻は簡単に落とすことも可能だ。

 

 つまりは、そういうことである。

 

「哨戒だけど旗艦だ、そして久々の戦闘だ、ってその気になってさ。実態は偵察していた瑞雲の爆撃と、発見と同時に出撃した甲標的であっさり終了。夜戦をやれないはまあ、まあまあ分かっていたけどさ。いたけどさあー……」

 

 敵の姿を見る前に終わるのは、どうなのか。そんな思いを、ため息に乗せて吐き出す。高まったやる気の行き場がない、と川内が肩を落とす中、まあまあとなだめる声が上がる。

 

「こっちの被害なく一方的に敵を倒せるってのは、戦闘での理想形みたいなものじゃないですか。相性が良かった、ってまず喜びましょうよ」

「うちの提督の考え的に、こういうのこそ望まれていることだろうし、あんまり気にしないほうがいいんじゃないかなー。動き足りないってんなら、帰ってから鎮守府内を走ればいいわけだし!」

 

 陽炎型駆逐艦一番艦の陽炎と、長良型軽巡一番艦の長良。二人の慰めの言葉に、それもそうなのだが、と頭をかく。

 

「理屈はそうだってわかっているんだけどね。こういうのは艦娘としての本能みたいなもんだし。それと目的なく走るのは面倒だからなしで」

「えー、割とよく走っているじゃん」

「あれは訓練として走っているのであって、走るために走っているわけじゃないから」

「走る云々は置いておいて、川内さんの話は確かに分かるんですよね。なんというか、こう、どうせなら仕事をしたい、的な?」

「そう、それ。ある程度は戦いたいんだよね、出たからには。存在意義ってのと、提督の役に立ちたいってのと、半々で。いや、どっちかというと、褒められたいのかな?」

 

 そう、川内が言うと、その場にいた全員が苦笑する。否定やそれに近い意味の笑み、ではなく、言われてみると否定できないものがある、という感じの、消極的肯定を示すものだ。同じ穴の狢、という言葉が浮かぶような、そんな表情だった。

 

「ただ、まあ、役に立つってのと、褒められるのは別なんだよね。それこそ、さっき長良が言ったみたいに、うちの提督が褒めてくれるのはこういうのだし」

「沈まない、が前提だもんね」

「かといって、過保護ってわけでもないのよね。戦うこと自体には肯定的で、忌避はしていないみたいだし」

「軍人で戦うのが嫌、って方が変じゃないです? まあ、今の世の価値観って良く分かっていないから、あれかもしれないけど」

 

 どっちでもいいんじゃない、と陽炎の発言に対し、川内は頭の後ろで手を組みながら言う。

 

「戦うことを望まれて、沈まないことも望まれて。そのどっちもが、私たちにとっては都合の良いことなんだから、さ。そこに提督に褒められることも加えて、それらを目的として頑張ればいいんだよ」

「自分が戦うことも含めて?」

 

 にやり、と千歳が付け加えた言葉に、川内は思わず苦笑する。お前が言うのは卑怯だろう、と視線で語れば、向こうはどうだと言わんばかりの笑みを返してくる。これは自分の負けだな、と降参の印として両手を挙げる。

 

「分かったよ。これからは自分の番が回ってこなくても不貞腐れないって約束する。そんなの、誰に望まれていることでもないしね」

「うんうん、それでいいんじゃないかな。私たちが活躍する場もいずれ来るよ」

「――あ、それ今かもです」

 

 ぽつり、とつぶやいた陽炎の一言に、弛緩していた空気が一気に引き締まる。反射的に陽炎を見ると、彼女は海の向こうをじっと見ているのが分かる。

 

「何か見えた?」

「たぶん。まだ不明瞭ですけど」

「千歳、艦載機は?」

「現在帰還中。ちなみに甲標的も同じく」

「どうする、川内? 進むか、待つか」

 

 長良の問いに、川内は次の行動を思案する。より早く状況を見るために距離を詰めるか、あるいはこの場にとどまって状況が動くのを見るか。先手を取るなら前者だし、哨戒範囲外ということを考えれば後者だろう。

 

「そうだね……」

 

 奇しくも、ネームシップばかりが集まった艦隊。その旗艦に任じられた身としては、それなりに功績も立てておきたい気持ちがある。だが、だからと言って、無理無茶無謀な行動をとるのはナンセンスだ。それが必要な場もあるが、今はそうじゃない。敵戦力を不明なままに突っ込む場面ではないはずだ。

 

 ならば、

 

「現地点で待機しつつ、状況を見る。陽炎はそのまま判別続行。千歳は鎮守府に連絡を回して。長良は私と周囲警戒。それと全艦、いつでも動けるように準備。もちろん、全方向にだよ」

 

 旗艦として、そのように指示を出した。全員が従っているのを確認してから、自身もまたその通りにする。

 

 いざとなれば引く、それが旗艦としてすべきことだ。そう思いながら周囲を見渡すこと、数分。

 

「――確認! 敵艦、駆逐イ級二隻!」

「周囲に艦影なし。敵増援の気配はないかな?」

「鎮守府、秘書艦の響からはこちらの判断を尊重すると来たわ。これからどうする?」

 

 三人の顔が、こちらに向く。どうする、と聞いておきながら、しかし、彼女らが浮かべているのは、好戦的な勝気な笑みだ。それに、川内もまた同じ表情を浮かべながら、決まっていると声を上げる。

 

「――私を先頭に、長良、陽炎で敵に砲雷撃戦を仕掛ける! 千歳は現地点から周辺警戒を続行!」

『了解!』

 

 弾けるように、三人で前に出る。長良、陽炎を率いての突撃。首筋を焦がすような緊張感に、川内は思わず笑みを浮かべる。こんな状況だが、妙に楽しい。あるいは、嬉しい。艦娘川内の身体が、戦いを望んでいると深く理解できる。

 

「さあ、仕掛けるよ!」

 

 さて、土産話にできるだろうか。相対の前の一瞬。自分とは違う仕事をしているだろう、二人の妹に対して、川内はふとそんなことを思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――それでは、このように」

 

 どうやら纏まったらしい。提督が握手をする姿に、川内型軽巡二番艦である神通は内心でホッと息を吐いた。七号鎮守府に隣接している、水崎町の役所で開かれた二度目の会議。漁業組合との連携を主題に、前回の補足を副題として小一時間ほど続けられた打合せの間、護衛として気を張っていた反動だ。危険性は限りなく低いとはいえ、まだ二度目かつ単独での護衛となると、流石に緊張するものがあった。

 

「では、私はこれで。神通」

「はい」

 

 一礼、そして退室。小さな役所の廊下に出てすぐ、提督は煩わしげに襟元を軽く弄る。それをちらりと見て、神通はそっと小声で話しかける。

 

「お疲れ様でした、提督」

「ああ。反発もあるかと危惧していたが、一応は想定通りで済んでよかった。前回からこの調子なら、どうにか信頼関係は築けて行けそうだな……貴官も、また一人で護衛をさせて悪かったな。やはり、今度こそもう一人くらい連れてくるべきだったか」

「いえ、現状の七号では仕方ないかと」

 

 総勢で十八名にまでなったとはいえ、今の七号はまだまだ人手が足りない状況だ。特に、提督の護衛として外に出られるのはほとんどいない。能力的なものもそうだが、選定において特に問題となったのが、それぞれの艦娘の外見だった。如何に艦娘が特異な存在とはいえ、それですべてを納得できる、あるいは飲み込めるかは別だ。つまり、艦娘だから問題ないといくら言ったところで、普通の駆逐艦娘などを護衛としてしまうと、提督が好印象を抱かれる可能性は低いという話である。多少は言い訳の聞く駆逐艦娘がいないでもないが、生憎と良くて叢雲か陽炎しかないというのが、今の七号鎮守府の面子だ。

 

 ただ駆逐艦以外なら大丈夫かと言うと、中々そう単純な話でもない。現時点では加賀と隼鷹しかいない空母勢や、重巡の足柄や水母の千歳といった同じ艦種の仲間がいない面子は、どうしても外に出しにくいものがある。そうした縛りのない軽巡艦娘にしても、また別の外見上の問題が出てくる。軽巡に限った話ではないが、この国において、赤やら緑やらの髪は奇抜すぎるのだ。黒か、あるいは茶色くらいでないと、こういう真面目な場には出しにくいものがある。軍主体ならともかく、あくまで一般の組織に出向くならなおさらだ。それこそ、光の加減によってはどちらにも見える、という神通の髪くらいが境界だろう。

 

 その上で、護衛としての適性や能力の問題もあった。神通の姉妹である川内や那珂がここでは分かりやすい例だろう。前者は性格的にこの手の仕事に向いておらず、後者は護衛にしては目立ちすぎる。このようにふるいをかけていき、危険度が低い案件であることと、第一印象も大事しておくべき、という前提も踏まえた上で残ったのが、神通だけだった。これが前回、そして今回の護衛として神通が選ばれた事情である。

 

「貴官の能力は信用しているが、それでも限界はあるだろう」

 

 疲れも多少見えるぞ、という提督の言葉に、神通は僅かにほほを赤らめる。見透かされていた、と思わず気恥ずかしさを覚える彼女に、提督は軽く咳払いをしてから続ける。

 

「やはり、次は北上か長良も同行させるべきだな。性格的にはどちらも少々問題があるが、どうにか出来ない範疇でもあるまい。その間にまた適性の高い新規艦が来ればそれでいいが」

「……その場合はまだ、北上さんの方が適任かと。長時間個室で立ちっぱなしと考えると、動的な長良さんにはやや酷かもしれません」

 

 自分なりに適性を見た上での考えを、提督に対し具申する。参考にならないかもしれないが、とやや後ろ向きに構えた発言であったが、そんな彼女の予想とは裏腹に、提督は納得したように顎を撫でる。

 

「まだ覇気のない北上の方がいい、と。確かに、秘書艦的な業務も兼任させるならそれもありか。むしろ、貴官と北上で護衛と秘書を最初から分けるのもありかもしれん……いや、これだと結局護衛が増えていないな。やはり人を増やすのが一番早いのか」

「しかし、このくらいの規模の会議であまりに同行者が多いのは、相手方に威圧感を与えないでしょうか?」

「それも一理あるな。その辺りは貴官らの容姿で緩和されると思うが、それも楽観か」

「男性よりは、ということですか」

「そんなところだ」

 

 ああだこうだ、と正面を向いて歩きながら――当然、周囲の警戒も続けながら――二人で互いに小声で囁きあう。まだ二度目の護衛だったため、その内容は反省と改善ばかりだ。むしろ、気を張りすぎ、そういう余裕が互いにあまりなかった一回目よりも、対策として語ることは多い。

 

 しかし、そんな会話に対して、神通は不思議と心地の良いものを感じていた。性に合っている、とでも言えばいいのだろうか。未熟なれど提督の護衛を全うした結果だ、という充実感があるのだ。

 

 思いのほか意見が聞き遂げられている、ということに対する満足感もあるのだろう。提督が真摯に、真剣に話を聞いてくれている。部下と上司、という前提は当然だが、その上で対等な話し合いにしてもらえている。そこに、認められているという安堵を覚えるのだ。

 

「……細かいところは帰ってから叢雲達と詰める必要があるが、大枠はこれでいくか。次回以降の会談も踏まえて、また任務のローテーションを見直さないとな」

「その際は、私のお手伝いいたします」

「助かる。貴官は秘書艦適性も高いからな。無理をさせない程度には働いてもらう」

「はい。それが私の、私たちの仕事ですから」

「そうだな。それが我らの仕事だ」

 

 神通の言葉に、提督が同じ、そして少し意味の変わる言葉を重ねる。そのことに、神通は思わず微笑を浮かべる。共に進んでいる、というその実感は、彼女の心に安堵を感じさせえる。

 

 ああ、なんと幸せなことだろうか。ふと、そんな言葉が神通の中に生まれる。

 

 不公平に使い潰されもせず、一方的に愛玩もされない。今回のように本分と違う時もあるが、全体として丁度よい、充足感を覚える仕事。鉄の船から人の身に変わり、提督の下で働くことになってから、神通の日々に不満はない。上を目指せばまだあるのかもしれないが、それも、さらにより良くできるという意味で捉えている。これを、幸せな日々と言わずなんというか。

 

 もし、これをさらに幸せにできるとするならば――――思わず提督の横顔を見てしまい、神通はまたほほを染める。不遜だ、と思いつつも、どうしても止められない、暖かな想い。これもまた、人の身を得た結果なのだろうか。

 

 帰ったら、それとなく相談してみるのもいいかもしれない。自分と同じくように、それぞれの仕事をしているだろう姉と妹のことを思い浮かべながら、神通はそんなことを思案するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うん、うん。分かった、じゃあ待っているからねー」

 

 それで締め、受話器を置く。ふむ、と人差し指を口元にあてながら、川内型軽巡三番艦の那珂はついと視線をずらす。見やるのは、七号鎮守府執務室において、陸側に備えられた窓の外だ。

 

 雲一つない晴天と、都会ではない程度の町の景色。なんとなしに、それらを数瞬ほど眺めた後、視線を正面に戻してから、那珂は再度口を開く。

 

「提督と神通ちゃん、もうすぐ帰ってくるって。会議の内容自体は、予定通り終わったみたいだよ」

「了解。第一艦隊の方も、もうすぐ帰還するみたいだ。タイミングが被るかもしれないね」

 

 そう、那珂の発言に返したのは、秘書艦席に座る響だった。手元に暇でも感じているのか、『秘書艦』と書かれた名札を弾いている彼女に、那珂は小首をかしげながら問いかける、

 

「その時はどっちを出迎えに行こうか? ここの習慣的には第一艦隊だけど、秘書艦……補佐、としては提督のお出迎えもしたいし」

 

 言いながら、那珂も自身の机の上の、『秘書艦補佐』と書かれた名札を軽くこつく。文字通りの役割として、少し前から設置されたその役職が、七号鎮守府における今日の那珂の立場である。文字通り、秘書艦の仕事を補佐したり、秘書艦が不在の場合は代わりを担ったり、というのが仕事だ。また、将来的に秘書艦をより広範囲なローテーション制にする際、スムーズな引継ぎが出来るよう、秘書艦になる前の予行演習的な意味合いも持っていると聞いている。半人前か控え、というのが那珂の解釈だ。

 

 故に、基本的には秘書艦の判断優先、と思いながら問いかけると、響は無表情のまま、また真似を返すかのように、コテンと首を傾げる。

 

「分かれればいいんじゃないかな。私と、那珂ちゃんの二人で。一時的に執務室は空になるけど、短時間なら大丈夫だろうし」

「ああ、それがいいかも!」

 

 響の提案に、那珂はやや大仰なしぐさで手を叩いた。演技っぽくも見えるだろうが、これでも那珂にとっては自然体な動作だ。艦隊のアイドルを自称している――那珂本人としては真剣な主張である――から、というのも多少あるが、単にこういう仕草が性に合うというのが大きい。まあつまり、好きだからやっていることである。人によっては多少引かれる時もあるが、それはそれ。大人しめの神通も含め、割と我が強い川内型の三女としては、アイドルのことも含めて自重する気はない。

 

 そういう意味では、実のところ、目の前にいる響などは那珂にとって好ましい人物の一人であった。那珂ちゃん、と那珂を『ちゃん』づけで呼んでくれる艦娘はあまり多くない中、彼女は那珂のことを希望する通りの呼び方で呼んでくれるからだ。どうも、見た目こそクール系なのだが、割とノリの良い性格をしているようらしい。いつか彼女をアイドル活動に引き込めないか、というのが那珂のひそかな野望である。

 

「んー、でもそれだと那珂ちゃん的にはどっちに行くべきかな? 川内ちゃんのいる第一艦隊か、神通ちゃんのいる提督の出迎えか。これはなかなか重要な問題かも!」

「そうだね――」

「なんなら、提督の方は私が行ってやってもいいよー」

 

 突如、第三の声が響の言葉を遮った。何とも重さのないその言葉を受け、心なしか無表情に拍車がかかった響と共に、那珂は入り口の方を見る。

 

「暇だし、提督にちょっと相談したいこともあるしね」

 

 壁に背を預けた体勢のまま、やはり軽い口調で続けたのは、軽空母艦娘の隼鷹であった。もう一人の秘書艦補佐、というわけではない。将来的にはともかく、現状では秘書艦も秘書艦補佐も椅子は一つずつしかない。彼女がここにいるのは、後学のために見学――という名の冷やかしだと那珂は見ているが――をしたいと、少し前から勝手に執務室にとどまり、那珂たちの仕事の観察をしていたからだ。非番ではないものの、特に仕事を抱えているわけでもないということで、静かにすることを条件に秘書艦組としては黙認していた形である。

 

 そういうわけで、要請通り今の今まで黙っていたため、意識の外に追いやっていた彼女だが、流石に会話に割り込まれれば再認識せざるをえない。どうしたのだろう、と思いながら那珂は頬に指をあてながら口を開く。

 

「暇ってのは置いておくとして、相談って何があったの?」

「あった、というか、これからある奴についてだよ。ほら、漁船の護衛の話さ」

「航空戦力をどっちに振るか、って話かい?」

 

 心当たりがあったのか、隼鷹の返答に響が素早く確認を投げる。

 

「そう、それ。あたしか加賀さんのどっちかと、千歳と足柄のセット。どっちを軸の護衛艦隊を組むかって奴」

 

 そこまで言われ、那珂もようやく納得する。近日中にまとまるだろう、水崎町での漁業における、七号鎮守府からの護衛艦隊の派遣。その編成に関して、早めに提督と相談をしたい。それが隼鷹の相談の内容であるようだった。

 

「航空戦力で一気に薙ぎ払い、万一残った場合は駆逐艦で処理をするパターンと、水母の豊富な偵察機による広範囲索敵からの、重巡軸の砲雷撃で叩くパターン。どっちがよりいいのかってのを、出来るだけ提督と詰めておきたいんだよね。まあ他の面々の言い分もあるだろうから、あくまで個人的意見を提出って形になるだろうけど」

「どっちもどっちで理があるからね。確かに、早めに突っ込んでおきたい議題ではある」

「提督はそっち系得意でもないみたいだしねー。まあ、その分艦娘の意見を尊重してくれるんだからありがたいんだけど」

「そういうこと。たぶん遠からず加賀さんと足柄がそれぞれの意見を出しに来るだろうから、先にあたしの意見を出して参考にしてもらおうかなってね。あんまりいっぺんに言っても邪魔になるだろうから」

 

 なるほど、と那珂は数度頷く。どちらかと言えばふざけ目の、響などとは明らかに真逆な態度を見せることが多い隼鷹だが、やはりこういうところに関しては真剣であるらしい。普段はそういうキャラだが、艦娘としては職務に忠実という意味では、那珂とも似通うところもあるかもしれない。

 

 はて、では彼女もアイドルに誘えばワンチャンあるのではないだろうか。客観的に見ればかなり不可思議な意見が那珂の脳裏をよぎる中、目の前の響と隼鷹はさらに言葉を交わしていく。聞く限り、実際にどちらの意見がいいのか、というのを議論始めてしまったみたいである。今ではないとも思うが、つい火がついてしまったのだろう。口調は常のまま、二人とも案外と真剣な調子で言葉を投げ合い始めている。

 

「……あれ? これ、那珂ちゃん一人で迎えに行くパターン?」

 

 さて、どうしたものか。白熱する議論を聞き流しながら、那珂は二人の姉のどちらを先に迎えに行くかを悩み始めるのであった。

 

 







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