魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost   作:hidon

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※2023/09/13 タイトル変更しました。


FILE #11 氷の部長と燃える副部長

 

 

 足早に市役所に戻りエレベーターの乗って一人きりになったやちよは、先の徳江との会話を思い返していた。

 

 

 

 ――――

 

 

 

【黒装束を纏った魔法少女とおもしき集団が、あらゆる区域で毎夜、確認されているようです。なんでも彼女達は自らを『羽根』と称しているとか。……情報通の間では「カラス」「蝿」「ゴキブリ」などと呼称されてますが】

 

『ええ、噂は聞いています。既に各地の魔法少女が数名、行方不明になっていると。それに……』

 

 やちよは顎に手を当てて、小声で徳江に告げる。

 

『ここ最近、人倫保護団体の運動が以前と比べて過剰傾向です。恐らくは、その反社会集団が彼らの不安感情を煽っているものと推測は付いています』

 

 徳江は何も言わずにコクリと頷いたが、表情は複雑そうに顔が歪んでいた。気になりつつも、やちよは更に続ける。

 

『治安維持部でも調査の方は進めています。……生憎、神浜町は私と八雲しかおりませんので、難行しておりますが……そちら(・・・)の方は?』

 

 聞いた途端、徳江の眼鏡が夕陽に反射されて白く光った。

 

【ご安心を。『春』と『雉』が、既に動き初めています】

 

『御老体様々ですね』

 

【ほっほっほ】

 

 やちよはフッと笑う。徳江も吊られて笑ったが、どこか不敵な笑みにも見えた。

 

【その『雉』ですが……『鶴』を引き連れています】

 

『…………』

 

 鶴、の単語が出た瞬間に、やちよの顔から笑みが消えた。口を結んで沈黙。

 

【七海部長。……いや、やちよくん。これは良い機会じゃないか?】

 

 徳江の口調が急に砕けた。やちよにとって、勉学の師であった頃の彼を彷彿とさせる喋り方だった。

 

【『鶴』と仲良くするチャンスだよ】

 

『徳江先生……そうは仰られても、私と彼女は……』

 

【二年前の事なら私も知っている。だが、君とあの子は考え方は違えど、目指している所は同じだと私は思う】

 

 それは分かる。だからといって簡単に手を取り合える筈が無い。自分と彼女の溝は深いのだ。

 やちよの表情は晴れない。徳江は、ふう、と一息付くと、

 

【……お節介が過ぎたかな? 申し訳ない。最終的に決めるのは君だ。……でも】

 

 ――――仲間は多いに超した事は無いと、私は思うがね。

 

 そう付け加えて、徳江は去っていった。

 

 

 

 ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 市役所前のドタバタ騒ぎをなんとか治めたやちよ。だが、彼女の仕事はここで終わりではない。寧ろこれからが本番だった。

 ここ暫く、神浜市のPRの為にTV出演や営業の仕事をメインに入れていたせいで、市外へ赴く事が多くなっていた。結果的に役所内での事務仕事が溜まりに溜まっていたのだ。

 それを片付けなくては――――環いろはとの出会いは、彼女に久方ぶりの刺激を齎したが、同時に過大な残業を齎してくれた。

 やちよは、はあ、と溜息をこぼし、どこか顔を重たそうに俯きつつも、治安維持部の本部がある市役所三階へと足を運んでいった。

 

「ただいま、戻りました」

 

 エレベーターの扉が開いて、一歩足を踏み入れた瞬間、白木が飛んできた。

 

「部長、おかえりなさいませ!」

 

 輝かしい笑顔で、深々とお辞儀をして迎える白木。

 

「遅くなりました。今から事務仕事を……」

 

 片付けます、と言い切る前に白木が顔を上げた。いつになく嬉しそうな笑みを見て、やちよは少しばかり不審に思う。

 

「部長、その前にお客様です」

 

 瞬時に時計を確認するやちよ。現在の時刻は17:30過ぎだ。市役所の窓口は既に閉まっているので、この時間に訪れるとしたら魔法少女だけになる。

 

「……どなたかしら?」

 

 緊張感が体を走った。果たしてよそ者()治安維持部(味方)か――――どちらにしても、部長たるもの真正面から相手をしなければならない。

 目を細めて、声色に若干の冷気を伴いつつ問いかけるが、白木は「ふふ~ん♪」と得意気な笑みを見せていた。どうやら彼女がよく知っている魔法少女らしい。

 

「都ひなの副部長です」

 

 盟友の名が彼女の口から告げられて、やちよは心の底から安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やちよが応接室に入ると、一人の少女が先にソファを陣取っていた。

 どっかりと腰を下ろし、足を組みながら、濃緑色のビジネススーツに身を包んだ、勝気に満ち溢れた顔つきの少女は、テーブルに置かれたコーヒーを口に運んでいた。

 

「ひなの」

 

 やちよが声を掛ける。普段の冷たさは微塵も感じられない、穏やかな声色で。

 

「おう、やちよ!」

 

 ひなのと呼ばれた少女は、勢いよく振り向くと、ニカッと笑顔を見せると、威勢の良い挨拶を返した。豪快にブンブンと手を振っている。

 

「久しぶりね」

 

 変わらない元気の良さを見て、やちよの顔も自然と綻んだ。穏やかな笑みを向けながら、彼女の向かい側にあるソファにゆっくりと腰を下ろす。

 

「まあな!」

 

「来てくれるなら、連絡ぐらいよこしても良かったのに」

 

 やちよは、目の前にいる都ひなのという少女に対しては完全に心を許していた。

 ―――――それもその筈、彼女との付き合いは長い。5年間も共に戦ってきた間柄なのだ。

 

「まあ、普通だったら、そうするんだがなぁ……」

 

 バツが悪そうに苦笑いして、頭を掻くひなの。

 

「どうしたの?」

 

「今日は、ちょっと野暮用でこっちに来ただけなんだよ。お前、今日出張だったし、忙しそうだったから寄るのは別に後でもいいかな、って思ってたんだけど……。さからの奴が『みたまに会いたい』って駄々捏ね始めてな……」

 

 すまん、と申し訳なさそうに頭を倒すひなの。

 やちよは「いいのよ」と手を振りながらも、彼女が入職した当時のことを思い出していた。

 あの時を思い出すと、今もこうやって対等に話し合っているのが夢に思えてくる。

 

 

 

 

 都ひなのは、治安維持部の【3期生】として入職した。

 

 小学生と見紛う様な体躯の小ささと、あまり端麗でない相貌。化学物質を調合して作り出した毒薬を相手に浴びせるという戦闘スタイル――――全てに於いて、あまりにも地味過ぎた。

 基本的に魔法少女は、容姿の優れた者が成る傾向が多く、戦い方も派手さを求められる事が多い。同期に入職した魔法少女達と比較すると、ひなのの存在はあまりに特殊過ぎて逆に目立っていた様に、当時のやちよには見えた。

 広報課の職員からは「宣伝には向かない」と下馬評を下され一切相手にされず、世間からは嘲笑の的にされていた。同期や先輩の魔法少女達からも散々コケにされ、業務では雑用、魔女退治では使い魔の掃討を押し付けられたことが幾度も有ったという。

 流石に心配になったやちよは、彼女に対してカウンセリングを行おうと考えていたが――――杞憂であった。

 

 ひなのは、くじけなかった。

 

 衆目を浴びているのなら、逆にそれを利用した。チャンスとばかりに、自分の真面目で精悍な所を世間にアピールしようと考えた。

 業務でも、雑用を押し付けられれば、一つ一つをきちんとこなして、魔女と戦えば、その都度、使い魔を一匹残らず退治していった。

 見た目のコンプレックスを諸共せず、周囲からの嘲笑もなにくそと撥ね退け、真摯に業務と向き合うひなのの姿は、次第に世間で高く評価されていく。特に同じコンプレックスを抱えた多くの老若男女が胸を打たれ、彼女を支持した。

 結果、三か月後には、3期生の中で、ひなのと肩を並べられる魔法少女は誰一人としていなかった。

 しかも、人気の方は尋常で無く、既に「女神」「英雄」「守護神」と称されていた七海やちよと比肩するほどにまで昇りつめていた。

 

 それが功を成してか、ひなのは、入職して僅か半年で、異例の出世を遂げる。

 治安維持部の幹部――――立政町のチームリーダーに抜擢された。

 そして、ここからひなのの本領は発揮される。

 

 元々、大人の男性すら根負けするほどの度胸と胆力、加えて明晰なる頭脳から発せられる優れたコミュニケーション能力を持つひなのにとって、リーダーという役職は正に、魚が水を得たのと同義だった。

 あれよあれよという間に、町役場の職員達から信頼を勝ち取っていくと、立政町に住む人々に向けてアブローチを展開。

 役場内に個人的な相談所を設けて、自分と同じくコンプレックスで悩む人たちのカウンセリングを行った。

 解決策や、恥ずべきそれを『個性』として向き合う為の方法を一緒に考えてあげたり、一般人の気持ちに常に寄り添える魔法少女で有り続けた。

 そのフットワークの軽さと、器量の広さはやちよですら、一目置く程であったという。

 

 今や、立政町に於ける彼女の地位は絶対的なものになっていた。

 治安維持部で、七海やちよの代わりを務められる魔法少女は都ひなのしかいないと、神浜市の誰も認識するようになった。

 ひなのが【副部長】の肩書きを持つのは、その証左であった。

 

「相変わらず元気そうで安心したわ」

 

「お前もな……」

 

 ふふっと穏やかに笑いあうやちよとひなの。

 容姿といい性格といい、二人は何もかも対極だが、仲はとても良かった。正反対であるがゆえに、お互いに無いものに惹かれたのかもしれない。

 

「……っていいたいところだけど、大変そうじゃないか」

 

「ええ、部長に広告塔、雑誌モデルに大学生も兼ねてるからね……」

 

「お前なあ、少しは割り振ったらどうなんだ!? PR活動なんかみたまにやらせろよ! あいついつも暇そうだろ!?」

 

 笑顔で過労死しかねない程の労働内容を語るやちよに、ひなのは、内心愕然とした。

 一頻り叱りつけると、はあ~、と溜息をこぼす。

 

「っていうか、いい加減、魔法少女の一人か二人……下に付けたらどうなんだ?」

 

「別にこなせているから平気よ」

 

「アタシの気持ちも考えろ。こっちは心配でならないんだぞ……」

 

 頭を抱えるひなの。

 ひなのが在籍する立政町には現在、彼女の他に、木崎衣美里、綾野梨花、五十鈴れんといった魔法少女達が居る。加えて調整員に『八島さから』という人物が居た。

 

 ちなみに、調整員とは、『調整課』に所属する魔法少女の事を指す。

 八雲みたまと同等の能力を持つ魔法少女が、神浜市管轄の各町役場に必ず一人は存在しているのだ。何れの人物も個性的だが、みたまと全く同じ服装を身にまとい、銀色に近い頭髪を生やしているという共通点が有った。

 八島さからは、その一人である。みたまと同じくモデルすら裸足で逃げ出す程のグラマラスな体系の持ち主で、オラオラ口調の姉御肌な性質の人物だった。

 

 ……余談はともかく、総勢5名もの魔法少女が居る立政町に対して、神浜町には七海やちよと八雲みたまの二人しか居ないのだ。しかも、みたまは基本的に、自身の店に籠っているので実質やちよ一人だけと言って良かった。

 

「気持ちは分かるけど、そういう訳にはいかないのよ」

 

「それは……繰り返したくないからか?」

 

 やちよが一向に仲間を作りたがらない理由をひなのは知っていた。

 昔は、やちよも4人のチームを組んで活動していたのだ。

 

 ――――しかし、一年前に、事件が起きた。

 

 チームメイトの二人が広報活動の一環として市外へ単身赴任中に、魔女の奇襲を受けたのだ。

 やちよとその相棒にして、ひなのの前任者であった魔法少女がすぐに駆け付けたものの――――既に、虫の息だったという。

 以降、やちよと前副部長は度々意見の衝突を繰り返す様になっていき……最終的に、前副部長が退職届をやちよに叩きつけて去って行ってしまった。事実上の喧嘩別れであった。

 以来、やちよは、『仲間』の存在を極端に恐れるようになった。現在の神浜市役所は、やちよの強い意向で、彼女以外の魔法少女を所属させていない。

 (フリーの魔法少女が、入職テストを受けること事態は可能だが、受かった場合、別の町役場へ配属にされる)

 

「それ以外に何か?」

 

「だとしてもだ……見ているこっちがやりきれん!」

 

 ひなのは勢いよく立ち上がる!

 

「お前、一人で抱え込みすぎだ! 成人になったら白髪が生えるぞ! ホルモンバランスが崩れて20代後半には一気に老けるぞ!」

 

「もう老けてるわ」

 

「なんだと……?!」

 

 フッと自嘲気味に笑っていうやちよに、ひなのは絶句する。

 

「この前、スーパーに行ったら、たまたま高級ハムのタイムセールをやっててね……迷わず突撃したんだけど、おばちゃん達にもみくちゃにされちゃって……変装用の帽子とサングラスが取れたのよ」 

 

「それで?」

 

「その瞬間を撮られたの。すぐにネットにアップされちゃってね……私は特に気にして無かったんだけど」

 

 治安維持部は命の危険が常に伴う仕事だ。基本給も一般的な公務員と比較しても倍近く支給されている。

 部長であるやちよは当然、かなりの高級取りであり、一般人から見れば雲の上のような存在。当然、贅沢三昧の暮らしをしているものと誰もが思っていた。

 故に――高級品とはいえ――たかがハムの為に、女神と呼ばれし少女が初老のおばちゃん達に紛れ込んで乱闘を繰り広げる姿は、神浜に住む人々に少なからずショックを与えた。

 それで、その姿を見た、心無い者が付けた渾名が……

 

「『ケチババア』。面白いでしょう?」

 

 そう言って笑うやちよだが、ひなのの顔がカーッと赤くなっていく。

 

「お前なぁ……!! 人が真面目に心配してるってのに……!!」

 

 そのまま、怒声を叩きつけられると思い、身構えるやちよだったが、ひなのは、はあ~、と再び溜息を付いた。

 顔から熱が引いていく。

 

「まあいいや、別にお前と喧嘩しに来たんじゃないし……」

 

 こっからが本題だ、とひなのは付け加えると、顔を上げた。

 

「……出張先で会ったんだろ、常磐ななかと」

 

 雰囲気がガラリと変わった。

 既に個人としての彼女は消え去り、治安維持副部長としての彼女が目の前に座していた。

 眉間に皺を寄せて、一切緩みのない張り詰めた低い声色で、やちよに問いかける。

 

「ええ」

 

 短く答えるやちよの肩が、微かに強張った。彼女も真剣な表情でひなのを見つめ返す。

 

「なんか言われたのか?」

 

「『貴女に神浜市を護る資格はあるのか』と――――そう問われたわ」

 

「お前、そんなこと言われて何も言い返さなかったのか?」

 

「いえ、何も……」

 

 やちよは首をふるふると振ると、ひなのはテーブルをバンと叩いて勢いよく立ち上がった!

 

「なんでだよ?! 言われっぱなしのまま帰ったってのか!?」

 

 身体が小さい為、立ち上がっても、やちよを見下ろす事は敵わなかったが、目線は同じになった。真正面からじっと見据えて言い放つ。

 

「彼女の言ってる事は正しいわ」

 

 声を張り上げるひなのに対し、やちよは、極めて冷静にそう返した。

 

「だとしてもだ! 治安維持部の部長はお前なんだぞ! お前がしっかりしなけりゃあいつは増々図に乗って」

 

「人々が求めるのは常に新しい風よ」

 

 その言葉に、ひなのは絶句した。呆然と目を見開いてやちよを見つめる。

 

「…………………おい、お前、今なんて言った?」

 

 しばらく沈黙してから、呟かれた言葉は、震えていた。激しい感情が存分に込められているように聞こえた。

 

「?? 何かおかしい事を言ったのかしら?」

 

「ああ、おかしいさ!!」

 

 ひなのがテーブルに上半身を乗り出してきた! やちよの胸ぐらを掴み、グッと引き寄せる!!

 

「まるで引退を考えてるみたいじゃねえか!?」

 

 ガアッと大きく放たれた口から火の粉が噴いた。だが、やちよは全く動じない。寧ろ、フッと微笑んだ。

 

「引退……。そうね、それもいいかもね」

 

「なんだと……!!」

 

 やちよの冷ややかな言葉に、ひなのは唖然とした。

 

 

「そろそろ疲れてきたのよ、ひなの」

 

 

 諦念混じりの言葉を呟かれて、ひなのは目を見開いてハッとなる。胸ぐらを解放すると、静かにソファに腰を下ろす。

 

「あいつらは……お前に後を託して逝った筈だ」

 

 顔を俯かせながら呟いた言葉には、微かな怒りの残り火が灯されていた。

 

「あいつらの死を、無駄にする気か……」

 

「…………」

 

 やちよは黙ったまま俯いたひなのを眺めている。

 

「治安維持部は、お前が部長になったから、纏まったんだ。みんなお前が希望だと思って付いてきた……それなのに……!」

 

 握り締めた両方の拳をブルブルと震わせるひなの。やちよがこれ以上、腑抜けた事を言ったらブン殴ってやろうかと思った矢先だった――――

 

「……まだ、すぐに辞める訳じゃないわ」

 

「っ!!」

 

 ひなのは顔をバッと上げる。何処か意を決した様な表情を浮かべるやちよが居た。

 

「まだ、やらなきゃいけない事があってね……」

 

「それは、今日この街に来た、環いろはって子の事か……」

 

「情報が早いわね」

 

「とっくにさからから聞いてる。調整課の情報共有力は半端ないかんな」

 

 ひなのは言いながら、スマホを開いた。神浜市公式HPを開き、保護登録魔法少女のページを閲覧。ずらりと並ぶ『登録済み』の魔法少女達の顔写真の中で一人だけ『仮登録』状態にある桃色の瞳の少女の顔が目についた。

 

「その子には気になる点がいくつもある」

 

「聞いてる。小さなキュゥべえを追ってきたんだってな」

 

「他にもいろいろと協力したいことがあってね……。あとは、『鶴』の件も」

 

「ああ、あいつともいい加減決着付けなきゃだよなあ。……ってか、まだあのことを(・・・・・)言ってなかったのかよ?」

 

「ええ……それらが済んだら」

 

 心置きなく引退できるわね、と告げると、やちよはソファからスッと立ち上がった。ひなのに背中を向けて、立ち去る。

 これ以上の話は無いから、と言わんばかりの態度だが、やちよの真意は違う。

 

 もっとひなのと話したかった。でも、彼女の辛そうな顔を見るのが嫌だった。それから逃げたかった。

 

 ひなのは再び顔を俯かせていたが―――

 

「七海やちよ、アタシはな……!」

 

 急に顔を上げるひなの。

 意を決した顔で吠えるひなのの言葉を、やちよは耳を研ぎ澄まして真剣に聞こうとした。

 

「ずっと、お前の事を羨んでた!」

 

 出入り口の手前で、やちよの足はピタリと止まった。

 

「でも、それは……お前が綺麗で、背が高くて、モデルやってて、みんなにちやほやされてるからだとか……そんな理由じゃないぞっ!!」

 

 やちよは振り向かない。それでも耳に届いているのだと信じて、ひなのは訴え続ける。

 

「お前が、誰に対しても“平等”だったからだっ!! 魔法少女とか一般人とか関係なく……誰に対しても真正面から向き合おうとするお前の姿勢が、アタシは好きだった!!」

 

 ひなのの甲高い声は、恐らく部屋の外まで響いている。他の職員にも聞こえているだろう。

 だが、今のひなのは恥も外聞も一切気にはしなかった。

 

 

「でも……今のお前は、逃げてる……。あいつらから……かなえとメルから……」

 

  

 最後まで、ひなのの話は聞こうと思っていたやちよだったが、それは叶わなかった。

 かなえとメル――――その二つの名前が耳に入った途端、足早に部屋の外へ出ていった。

 

 

 

 

 その名を耳にして、平然としていられる余裕は――――今のやちよには無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆サイドストーリーはこちら☆

 

 

 ※血液型妄想

 

 いろは=O、やちよさん=B、鶴乃=A、フェリシア=AB さな=A 

 

 ひなの=A、ななか=O。

 

 本編だと……まどか&さやか=A、ほむら=O マミさん=AB、杏子=B

 

 そんなイメージです。

 




 ※血液型妄想

 いろは=O、やちよさん=B、鶴乃=A、ひなの=A、ななか=O。

 本編だと……まどか&さやか=A、ほむら=O マミさん=AB、杏子=B

 そんなイメージです。


 あと、ここまでお読み下さった皆様に、小生から要望したい事がございまして……活動報告の方で告知しておりますので、お答え頂ければ嬉しいです。


 → https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=184953&uid=122139

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