魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost   作:hidon

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二週間以上かかってしまった……orz

・他作品とのクロスオーバー有ります。


FILE #62.5 警察と魔法少女 (※クロスオーバー有り)

 

 

 

 

 

 それは一か月以上前の時まで遡る――――

 

 

 ――――神浜町・中央区

 

 

 常盤ななかと面談を終えたやちよは、地元にある神浜市警察本部に足を運んでいた。

 それはある人物について確かめたいことが有ったからだ。

 

「ご足労だったね七海部長」

 

 入口の受付で尋ねると、すぐに応接室へ案内された。

 そこで待っていると、一人の実直そうな男性が姿を表し、笑顔で出迎えた。

 

 彼の名は、塚内直正という。

 

「君の方から赴いてくれるとは……何か重大なことが発生したと見ていいかな?」

 

 ボンヤリとした澱んだ大きな黒目のせいで表情だけ切り取れば愚鈍そうに見えるが、その滑舌は溌剌としており、肉体も制服越しながらガッシリ鍛え上げられているのが伺える。

 彼は、神浜市警察が誇る敏腕警部であり、七海やちよを始めとする治安維持部の魔法少女達とも積極的に連携を取り合い、『魔法少女による犯罪事件』の捜査に尽力してくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ※ここから先は警察と魔法少女についての長ったらしい解説なので、面倒に思われましたら読み飛ばしてくれて構いません。

 (上の“☆”をクリックすると、解説終了後までジャンプします)

 

 

 

 

 

 

 

 なお、全国の警察組織には「魔法少女の職員」はいない。

 『大事件』以降、これまで未解決だった犯罪事件が魔女・並びに魔法少女の仕業であることが、各地の良識ある魔法少女達の公言から続々と明らかになり、それを真実と受け取った警視庁は全国の警察署に直轄の『魔法少女の治安維持チーム』を創ろうと考えていた。

 

 ……が、頓挫した。

 

 大きな理由は2つ。

 

 1つ目は、魔法少女は魔法を使用できる、という点だ。

 彼女達は既に常識外の存在。

 つまり、雇用するということは、大量殺戮がいつでも可能な危険人物を懐に納めておくようなものである。

 例え善人であっても関係ない。ふとした気の迷いで、多くの人々の命に危険が及ぶのだ。

 一般人で構成されている警察組織では、万が一彼女達が暴走した場合、防ぎようも無い。

 以上から、「警察の倫理が世間に疑われる」として、内部から猛反発が挙がった。

 

 

 もう1つは、批判する団体が居た、という点だ。

 人倫保護団体のように、魔法少女に懐疑的な視線を向け、その危険性を訴える集団が、警視庁の提案に反対し、警察署前で抗議デモを行った。

 彼らだけではない。

 「大事件」以降、世界中で勢力と発言力を強めたのが「フェミニスト団体」だ。

 彼女達の意見によれば、「魔法少女とは、その全てが異星人によって騙された被害者」であり、「今日の社会と文化は彼女達の尊い犠牲によって成り立っているもの」だと主張。

 

 「国際連合、及び世界中の男性は早急に女性を崇め、その意志に沿った社会を構築すべきであり、魔法少女になってしまった者には、本人並びにその親族全てを生涯保障する保険制度を作るべきである」

 

 「魔法少女を警察機関に従事させるとは何事か。彼女達に人を撃てというのか。既に魔女を多数討伐し、命がけで社会に貢献してきた彼女達を法の下に束縛しようというのか。魔法少女の自由意志と人権は世界が尊重すべきである。よって我々は警視庁の提案に断固反対する」

 

 ……等と主張し、魔法少女に差別的な集団よりも、更に過激・苛烈な勢いで彼女達は、全国の警察署を圧倒した。

 

 確かに彼女達の言い分は分からなくもない。

 しかし、魔法少女が全て被害者というのなら筋違いだ。

 

 確かにキュゥべえは、言葉巧みに彼女達を扇動しただろう。

 だが、彼女達はキュゥべえの勧誘を断ることもできた。だが、自分勝手な願いをかなえてもらい、世界の理を歪めた――――加害的な一面も必ずあるのだ。

 それに、より大量のグリーフシードを得る為に縄張りを広げようと、他の区域の魔法少女から搾取・果てはその命を奪う者。

 魔法を使って人を陥れたり、お金儲けを企む者。

 “傭兵”と呼ばれる者のように、ヤクザと取引して、悪事の限りを尽くす者も数多く存在する。

 

 フェミニスト団体はあくまで魔法少女の存在を大義名分とし、自分達の活動にとって都合の良い看板として掲げているに過ぎないのだ。

 だが、既に血気盛んな彼女達を止められる者は、日本に居なかった。

 加えて、各テレビ局が彼女達の言い分を、さも正当な主張・弱者の訴えであるかのように偏向報道したことで、世間までもが彼女達に同調して、警察に日夜クレームを訴えた。

 

 

 結果として、全国の警察署の業務は遅滞し、事態を重く受け止めた警視庁は、その案を棄却せざるを得なかった。

 

 

 

 

 こういった経緯があった後に、神浜市役所で『治安維持部』が発足されたのだった。

 波乱の後に、魔法少女保護特区内で市条例の下、『魔法少女による法的執行組織』が正式に生まれたのだ。

 

 やちよ達は、特別司法警察職員であり、魔法少女に関してのみ逮捕権や捜査権が付与されている。

 また、警察機関との情報共有や捜査の協力もオフィシャルで行われている。

 

 無論、当初こそ市内各区内で反対の動きは見られたものの、所属する魔法少女はあくまで『地方自治体に属する公務員』であり、(保護特区の都合上、魔法少女が安全な存在であることを世界に向けてアピールする必要がある為に)社会貢献の方が主な業務であると公表されたこと。

 また、総責任者が夕霧青佐(女性)であり、フェミニスト団体にも融通が利いたこと。

 何より、七海やちよという英雄が誕生したことから、現状、魔法少女の治安維持組織は、世間一般に広く受け入れられる形となり、各地域への『魔導管理局』の設立も問題なく行うことができた。

 

 よって、反対運動は、人倫保護団体の極小規模な活動を除いては、抑えられていると言って良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 よーするに、

 

 ・警察内に魔法少女部隊創りたかったけど、色々うるさい人達が騒いだせいで無くなったよ!

 

 ・ゴタゴタの後に、神浜市役所内に魔法少女による治安維持部隊できたよ!みんな不安だよ!

 

 ・やちよさんの功績によって今は世間に受け入れられてるよ!やっぱり英雄は偉大だね!

 

 ……と、解釈して頂ければいいです。

 

 

 

 

 

 

「はい。実は深月フェリシアについて問い合わせたいことがありまして……」

 

 現在、警察署内にも魔法少女を危惧する者は多い。

 だからこそ、塚内警部のように、積極的にコミュニケーションを取ろうとする者は有り難いとやちよは思っていた。

 彼の働きかけがなければ、自分達と警察の関係は、まだ冷え切っていたに違いない。

 

「深月フェリシアって……先日解雇された、問題児の少女のことだな。彼女がどうかしたのか?」

 

 とぼけた様な声色ながらも、塚内の眉間には僅かに皺が寄っていた。

 何か知っていると見たやちよは、塚内の前にある物を差し出す。

 

「これをご覧ください」

 

 それは一枚のメモだった。お世辞にも綺麗とは言えない文体で何かが書かれている。

 

「これは、もしや」

 

「ええ、深月フェリシアが解雇された日、寮生活での世話を任されていた夏目かこに当てた書置きです」

 

 塚内は書置きを手に取り、文章を音読した。

 

 

 

 

   おまえに

   れいがいいたいんだ

   はっきりいって、おれにはちあんいじぶは むいてない

 

   こどもみたいな いいわけしたけど あえてかくよ

   きょうは どうもありがとう

   つまらないことばで ごめんなさい マジョやワルいやつらはおおいから

   ねくびかかれないように きをつけてね

 

 

 

 

「別に、普通の書置きに見えるが……」

 

 純粋に感謝の気持ちが伝えられた――――

 塚内は言いながらやちよに顔を戻した。口元をムッと結び険しい顔をしている。

 

「夏目かこは、私にこれを渡す時、周りを気にしている様子でした」

 

 塚内の大きな黒目が一瞬光った。

 

「チームメンバーがいないことを確認していたと?」

 

「そう思われます。そして、彼女は密かに(・・・)コレを私に手渡した後、こう言ったのです」

 

 

 

 『七海部長。意味、分かりますか?』

 

 

 

「……確信しました。この書置きには、彼女にしか分からなかった暗号のようなものが隠されていると」

 

「君は気づいたのか?」

 

「ええ、頭文字を縦によんでください」

 

 

    まえに

    いがいいたいんだ

    っきりいって、おれにはちあんいじぶは むいてない

 

    どもみたいな いいわけしたけど あえてかくよ

    ょうは どうもありがとう

    まらないことばで ごめんなさい マジョやワルいやつらはおおいから

    くびかかれないように きをつけてね

 

 

「おれは、こきつね?」

 

 塚内の瞳が驚いたように見開かれた。

 

「恐らく深月フェリシアなりの自己紹介かと思われます」

 

「全くの偶然の可能性もありえるが……」

 

「常盤ななかが彼女のことを話す時、微かな動揺が見られました。恐らく、『問題児』以上の何かを見たのでは無いかと思われます」

 

「…………」

 

 塚内は、しばらくムッとした顔で手紙を見つめていたかと思うと、

 

「分かった。この暗号に関しては、こちらのやれる範囲で調べてみよう」

 

 胸ポケットにメモをしまい、力強くそう言い切った。

 

「大丈夫なのですか?」

 

 万が一、フェリシアの正体がやちよの想像通りなら、塚内達にも危険が及ぶかもしれない。

 だが、彼は、自信を込めた顔でうん、と頷いた。

 

「警察を舐めてもらっちゃ困る。実は先日、明京町警察署に腕利きの二人組の刑事を配属させてね、密かにスラム街の調査を任せているんだ。彼らなら何か掴んでいるやもしれん」

 

 その二人組の刑事とやらは、元々横浜市港区警察署の捜査課に所属していた、表向きは一般的な警察官だが、マル暴として業務を専任で行っており、その筋(・・・)の大物や傭兵とも顔が利いた。

 蒼海幣の台頭により、力を失いつつある明京町警察の威信を取り戻す為に、塚内が署長と掛け合い、彼らを引き抜いたそうだ。

 

 塚内と自分が同じ考えに行き着いたことに、やちよは安心する。

 

「ご協力感謝します」

 

「いやいや……。ところで七海部長。突然だが、タイガーファングの一件は覚えてるか?」

 

「確か、2年前に大阪市一帯を守備していた、という」

 

「“伝説の魔法少女”に触発された者達だ。彼女の後継者として正義の味方を名乗り、過激な防衛手段と魔法少女への独善的な制裁行為で、地元住民から反感を買っていた。言ってしまえば、私人逮捕系動画配信者みたいなものだ」

 

 “タイガーファング”は3人一組のチームで、全員が20歳越えの大ベテランだ。

 だが、その経歴と活動は、正義の味方と自称するには余りに程遠く、“傭兵くずれ”と陰で囁かれていた。

 また、大阪市の魔導管理局の設立にも、彼女達は過剰な反対運動を行っており、局長として就任予定だった魔法少女を、魔女の仕業に見せかけて殺害した事もあった。

 それほどまでに野蛮な集団であった。

 

「聞いています。確か、リーダーの苅田(かんだ)紗理奈の父親は裏社会の大物……“金虎会”の会長であった事から、行政も、警察も迂闊に行動を抑制することができなかった、と」

 

 しかし、それだけの力を誇っていたタイガーファングは突然解散宣言した。

 以降、リーダーの苅田の行方を知る者も無く――――大阪市には、問題なく魔導管理局が設立される運びとなった。

 

 それが、深月フェリシアにどう結び付くのか。

 考えていると、塚内は「少し失礼するよ」と言って退室した。

 

 ――――そして、3分後に一枚のタブレットを持ってきて、やちよに見せる。

 

「これを見てくれ」

 

 塚内が見せたある映像を観て――――やちよは刮目した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 まず、はじめに。

 オーバードライブ先生。この度は、警察の設定について、細かなアドバイスを下さり、ありがとうございました。

 鐘餅先生。この度は、貴殿に設定を推して頂けた事で、執筆に自信が持てました。本当にありがとうございました。

 この場を借りて、感謝申し上げます。
 

 さて、今回のゲストキャラは、

 『僕のヒーローアカデミア』の『塚内直正』警部でした。
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