魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost   作:hidon

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皆様、大変長らくお待たせ致しました。

ストックが溜まりましたので、再投稿させていただきます。


FILE #86.5 祭りの終わり(短編) ―工匠大祭編 終了―

 ――――2018/07/18(土) PM20:10

 

 ――――神浜市・明京町・大東区

 

 ――――工匠大祭会場・広場

 

 

 

 

 

 

 ――――かくして。

 突如開かれた、『チーム赤竜隊』vs『チーム竜ケ崎』の試合は大盛況。

 会場は歴史上類を見ない熱気を抱え込んだまま、閉幕することになった。

 

 ――――そう、最後の催しを以て。

 

 

 

 

「う、うおおおおおぉぉぉぉ~~~……」

 

「っ…………」

 

「ううう……」

 

「うっわぁ~……」

 

「―――――」

 

 大勢の観客が見守る中、舞台に上がるのはチーム竜ケ崎の皆様。

 緋華仙香は今にも火が消え入りそうで、繚蘭桃花は恥辱を歯を喰いしばって堪え、高菜舞桜は両目を><にしながらプルプル震えて、宮根灼は自分と周りの恰好を見て、ドン引き。そして、竜宮綾濃は何故か目を閉じて精神統一していた。

 

「ぐぬぬぬ……」

 

 そして、監督役の大葉樹里も配下と同じ格好で舞台に上がっていた。

 

「ぎゃははははははは!!! 似合ってるじゃねえかKBG!!!」

 

 強引に。

 最奥に座っているにも関わらず、観客全員に聞こえるような大哄笑響かせる八坂おけらによって。

 

 そう、最後の催し――それは、敗者となったチーム竜ケ崎(&大葉樹里)が被る、『罰ゲーム』である。

 それはなんと……!!

 

 

『ご紹介いたします! チーム竜ケ崎改め……チームゴキブリの皆さんでーす!!』

 

 

 ゴキブリの着ぐるみを着て、皆の前で挨拶することであった!!!

 司会の紹介と同時に、大勢の観客から大喝采と大爆笑が鳴り起こる。当然、盛り上げてくれた彼女達への盛大な賛辞を込めてなのだが……

 

 

「うわ~~~ん!!」

 

「「~~~~~///」」

 

「うう~~っ!!(><)」

 

「――――」

 

「ぐぎぎぎぎぎ…………」

 

 それを感じる余裕は無いくらい悲嘆に満ちていた。

 仙香は泣き喚き、桃花と灼はトマトみたいな顔を伏せて、舞桜は青い顔で腹を抑え、綾濃は精神統一、樹里は今にもウェルダンが爆発しそうであった。

 

「くっ、くそっ!」

 

「お、親分!?」

 

「馬鹿にされたままおめおめと帰れるか!! こうなったらこの樹里サマ自ら、あの八坂おけらを直にウェルダンしてやる!!」

 

 バッとゴキブリ姿の樹里が檀上から飛び降りて、一目散に駆け出したので、灼がギョッと目を見開く。

 遠くでは、八坂おけらが『KBG!! KBG!!』とドでかい音声で合いの手を打っていた。それに合わせて観客もKBGKBG(多分意味は分かって無い)叫ぶものだから、樹里からしたら屈辱で堪らない。

 

「や、やめてくださいよぉ~」

 

「身も心もKBGになってしまわれたか……」

 

「うおぉ~!! 何が有っても仙香は親分に続く所存~!!」

 

「よしなに」

 

「はあ~あ……」

 

 ゴキブリ姿の舞桜、桃花、仙香、綾濃、そして大きく溜息をついてから灼も、慌てて檀上を降りると、樹里(ゴキブリ)の後を追い掛けた。

 

『お~っとゴキブリさんたち!! 急にみんないなくなってしまいました!! 何があったんでしょーかー!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!! 八坂の!!」

 

「KBG!! あっそれKBG!!!」

 

 八坂おけらは、ドでかい声で軽快に音頭を取って踊っていた……。

 

「や・さ・か・お・け・ら!!」

 

「KBg……あっ?」

 

 八坂おけらが我に返って振り向くと、今にも噴火しそうな大葉樹里が居た。

 

「あんだKBG?」

 

「うるせえ!! こうなったらこの樹里サマ自らテメェをウェルd」「うるせえ負けゴキ!!」「ンなっ……!?」

 

 おけらは勝者側、樹里は敗者側――それが答えである。

 

「ちくしょうふざけやがって!! 今すぐウェr」「ああ~~~~ん!!?」

 

 つまり、もう勝敗は決定したのだ!

 今更、樹里が挑戦したところで、おけらは利く耳を持つはずが無い!!

 

 

 

 

「え、いやだから、ウェr」

「ああ~~~~ん!!?」

 

 

 

「あの……ウェr」

「あああ~~~~~ん!!!??」

 

 

 

「ウe」

「ああああ~~~~~ん!!!!????」

 

 

 

 何故だろう。

 自分が段々小さくなっていって、逆におけらは段々でっかくなっている様な錯覚が、樹里には見えた。

 人間に追い詰められるゴキブリの気持ちが、初めて分かったような……

 

 

 

 

「ウェ……っ」

 

 

 

 

 じわり。

 敗者、そう、どうあがいても大葉樹里は敗者なのである。しかも、ゴキブリである。そのうえ、KBGである。

 彼女の視界が揺れた。その瞳に大粒の涙が浮かび、そして――

 

 

「ウエエエエエエエエエエエエン!! 覚えてろよおおおおおおお!!!!」

 

 

 涙を滝のようにジョバジョバ流しながら、樹里(ゴキブリ)はその場から逃げ出した。

 

「親分それ敗けを認めたヤツのセリフですよー!」

 

「うっおおおおおおお!!! みんなで熱くなれば恥ずかしくなあああああああい!!!」

 

「うおー……って、仙香姐さんやっぱり無理ですぅ~~、ああもうトイレが有ったら籠りたい~~っ!!(><)」

 

「これも修行の一環だ……!」

 

 灼、仙香、舞桜、桃花と、同じくゴキブリ姿のチーム竜ケ崎メンバーも、樹里の後を追う様に帰っていった。

 そして、その場に唯一残った、ゴキブリ姿の竜宮綾濃はというと――

 

「……この度は、敗北を喫しました。しかし――」

 

 バッと振り向き、おけらの隣で車椅子に乗る蒼海幇側の大将・(カウ) 梅華(メイファ)にキッと鋭い視線を送る。ゴキブリ姿の癖に、凄まじい気迫! 忍者流石さすが忍者である!!

 

「次にお会いした時は、必ず勝ちます……!!」

 

「左様ですか。それまでに良き男性が見つかると良いですね」

 

 ピキピキピキピキ……!!!

 梅華は純粋に応援のつもりで言ったのだが、綾濃にとっては、そーいう意味では無い。

 

「っっ!!! ……では――」

 

 ものごっつい血管を眉間に浮かべながらも、竜宮綾濃は背を向けた。そして――

 

「ハッ!!」

 

 飛び上がり、地面に這いつくばると、四肢がカサカサカサ……と足音を立てて、凄まじいスピードで去っていく!

 

「ひいいいい!! なにアレ!?」

 

「ほ、本物かあ!?」

 

「気持ち悪い~!!」

 

 その姿と、細かい動きは正にゴキブリそのもの! 周囲の客は悲鳴を挙げるも、心身ともにゴキブリとなった綾濃にはどこ吹く風!! 忍者流石さすが忍者である!!!

 

「気をつけて帰れよー!」

 

「…………」

 

 おけらは、走り去っていく6匹のゴキブリ(一匹は4足歩行)に手をひらひらと振った見送り、梅華も彼女達の無事を祈りつつ、静かに拱手を送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 こうして、工匠大祭は、最後に色んな珍事を見せながらも。

 大盛況のまま、幕を下ろしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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まず最初に、長らくお休み頂きまして申し訳ありませんでした。
しばらく本を読んだり、ドラマを見たり、作品創りの勉強をしていたのですが、やがてインプット作業も限界になり、執筆再開に踏み切りました。

ストックが続く限りは、毎週土曜日に投稿させて頂きたく願います。
改めて、今後ともよろしくお願いいたします。

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