魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost 作:hidon
ストックが溜まりましたので、再投稿させていただきます。
――――2018/07/18(土) PM20:10
――――神浜市・明京町・大東区
――――工匠大祭会場・広場
――――かくして。
突如開かれた、『チーム赤竜隊』vs『チーム竜ケ崎』の試合は大盛況。
会場は歴史上類を見ない熱気を抱え込んだまま、閉幕することになった。
――――そう、最後の催しを以て。
「う、うおおおおおぉぉぉぉ~~~……」
「っ…………」
「ううう……」
「うっわぁ~……」
「―――――」
大勢の観客が見守る中、舞台に上がるのはチーム竜ケ崎の皆様。
緋華仙香は今にも火が消え入りそうで、繚蘭桃花は恥辱を歯を喰いしばって堪え、高菜舞桜は両目を><にしながらプルプル震えて、宮根灼は自分と周りの恰好を見て、ドン引き。そして、竜宮綾濃は何故か目を閉じて精神統一していた。
「ぐぬぬぬ……」
そして、監督役の大葉樹里も配下と同じ格好で舞台に上がっていた。
「ぎゃははははははは!!! 似合ってるじゃねえかKBG!!!」
強引に。
最奥に座っているにも関わらず、観客全員に聞こえるような大哄笑響かせる八坂おけらによって。
そう、最後の催し――それは、敗者となったチーム竜ケ崎(&大葉樹里)が被る、『罰ゲーム』である。
それはなんと……!!
『ご紹介いたします! チーム竜ケ崎改め……チームゴキブリの皆さんでーす!!』
ゴキブリの着ぐるみを着て、皆の前で挨拶することであった!!!
司会の紹介と同時に、大勢の観客から大喝采と大爆笑が鳴り起こる。当然、盛り上げてくれた彼女達への盛大な賛辞を込めてなのだが……
「うわ~~~ん!!」
「「~~~~~///」」
「うう~~っ!!(><)」
「――――」
「ぐぎぎぎぎぎ…………」
それを感じる余裕は無いくらい悲嘆に満ちていた。
仙香は泣き喚き、桃花と灼はトマトみたいな顔を伏せて、舞桜は青い顔で腹を抑え、綾濃は精神統一、樹里は今にもウェルダンが爆発しそうであった。
「くっ、くそっ!」
「お、親分!?」
「馬鹿にされたままおめおめと帰れるか!! こうなったらこの樹里サマ自ら、あの八坂おけらを直にウェルダンしてやる!!」
バッとゴキブリ姿の樹里が檀上から飛び降りて、一目散に駆け出したので、灼がギョッと目を見開く。
遠くでは、八坂おけらが『KBG!! KBG!!』とドでかい音声で合いの手を打っていた。それに合わせて観客もKBGKBG(多分意味は分かって無い)叫ぶものだから、樹里からしたら屈辱で堪らない。
「や、やめてくださいよぉ~」
「身も心もKBGになってしまわれたか……」
「うおぉ~!! 何が有っても仙香は親分に続く所存~!!」
「よしなに」
「はあ~あ……」
ゴキブリ姿の舞桜、桃花、仙香、綾濃、そして大きく溜息をついてから灼も、慌てて檀上を降りると、樹里(ゴキブリ)の後を追い掛けた。
『お~っとゴキブリさんたち!! 急にみんないなくなってしまいました!! 何があったんでしょーかー!?』
☆
「おい!! 八坂の!!」
「KBG!! あっそれKBG!!!」
八坂おけらは、ドでかい声で軽快に音頭を取って踊っていた……。
「や・さ・か・お・け・ら!!」
「KBg……あっ?」
八坂おけらが我に返って振り向くと、今にも噴火しそうな大葉樹里が居た。
「あんだKBG?」
「うるせえ!! こうなったらこの樹里サマ自らテメェをウェルd」「うるせえ負けゴキ!!」「ンなっ……!?」
おけらは勝者側、樹里は敗者側――それが答えである。
「ちくしょうふざけやがって!! 今すぐウェr」「ああ~~~~ん!!?」
つまり、もう勝敗は決定したのだ!
今更、樹里が挑戦したところで、おけらは利く耳を持つはずが無い!!
「え、いやだから、ウェr」
「ああ~~~~ん!!?」
「あの……ウェr」
「あああ~~~~~ん!!!??」
「ウe」
「ああああ~~~~~ん!!!!????」
何故だろう。
自分が段々小さくなっていって、逆におけらは段々でっかくなっている様な錯覚が、樹里には見えた。
人間に追い詰められるゴキブリの気持ちが、初めて分かったような……
「ウェ……っ」
じわり。
敗者、そう、どうあがいても大葉樹里は敗者なのである。しかも、ゴキブリである。そのうえ、KBGである。
彼女の視界が揺れた。その瞳に大粒の涙が浮かび、そして――
「ウエエエエエエエエエエエエン!! 覚えてろよおおおおおおお!!!!」
涙を滝のようにジョバジョバ流しながら、樹里(ゴキブリ)はその場から逃げ出した。
「親分それ敗けを認めたヤツのセリフですよー!」
「うっおおおおおおお!!! みんなで熱くなれば恥ずかしくなあああああああい!!!」
「うおー……って、仙香姐さんやっぱり無理ですぅ~~、ああもうトイレが有ったら籠りたい~~っ!!(><)」
「これも修行の一環だ……!」
灼、仙香、舞桜、桃花と、同じくゴキブリ姿のチーム竜ケ崎メンバーも、樹里の後を追う様に帰っていった。
そして、その場に唯一残った、ゴキブリ姿の竜宮綾濃はというと――
「……この度は、敗北を喫しました。しかし――」
バッと振り向き、おけらの隣で車椅子に乗る蒼海幇側の大将・
「次にお会いした時は、必ず勝ちます……!!」
「左様ですか。それまでに良き男性が見つかると良いですね」
ピキピキピキピキ……!!!
梅華は純粋に応援のつもりで言ったのだが、綾濃にとっては、そーいう意味では無い。
「っっ!!! ……では――」
ものごっつい血管を眉間に浮かべながらも、竜宮綾濃は背を向けた。そして――
「ハッ!!」
飛び上がり、地面に這いつくばると、四肢がカサカサカサ……と足音を立てて、凄まじいスピードで去っていく!
「ひいいいい!! なにアレ!?」
「ほ、本物かあ!?」
「気持ち悪い~!!」
その姿と、細かい動きは正にゴキブリそのもの! 周囲の客は悲鳴を挙げるも、心身ともにゴキブリとなった綾濃にはどこ吹く風!! 忍者流石さすが忍者である!!!
「気をつけて帰れよー!」
「…………」
おけらは、走り去っていく6匹のゴキブリ(一匹は4足歩行)に手をひらひらと振った見送り、梅華も彼女達の無事を祈りつつ、静かに拱手を送るのだった。
こうして、工匠大祭は、最後に色んな珍事を見せながらも。
大盛況のまま、幕を下ろしたのであった。
☆サイドストーリーへ
まず最初に、長らくお休み頂きまして申し訳ありませんでした。
しばらく本を読んだり、ドラマを見たり、作品創りの勉強をしていたのですが、やがてインプット作業も限界になり、執筆再開に踏み切りました。
ストックが続く限りは、毎週土曜日に投稿させて頂きたく願います。
改めて、今後ともよろしくお願いいたします。