魔王の俺と勇者なクラスメイト[現在修復中]   作:無月・黒焔(現在萎えモード)

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何でお前等が召喚されんだよ!

 アラン王国の商業街の少し外れ。冒険者達が蔓延る冒険者ギルドの二階。ギルドマスターの部屋にて、ギルドマスターと冒険者そして騎士団の中でも強者の域に居る者達がテーブルを囲み集まっていた。

 

「今回呼び出したのは言うまでもない。【豪腕】カヴィンの殺害の件についてだ」

 

 【豪腕】カヴィン。鬼神の加護を持ち、山すらも一撃で崩壊させる程の怪力を持つ男。悪人のような態度に、口が悪く、評判は良くなかったが冒険者としての実力は上位であった。そんな彼が殺害されたのだ。

 

「事件現場にはこのフランスパンが置いてあった。取り巻きも殺されている所から、相手はかなりの強者だ」

 

 ギルドマスターは血が付着している異常な程に硬質化したフランスパンを取り出す。硬さは鋼鉄並なのに対し、有り得ない程に軽い。これを武器にし、【豪腕】カヴィンを倒したのだから犯人は相当な実力者である。

 

 冒険者というものは魔族との戦闘をメインに生計を立てている者達であり、その中でも上位の実力者ならば危機察知能力が研ぎ澄ませれ、油断していたとしても直ぐに戦闘に移行できる。【豪腕】カヴィンもその中の一人なのだ。

 

「フランスパン……ですか?」

「ああ、そうだ。犯人はこれを使ったに違いない」

「ギルドマスター、今はふざけている場合では」

「ふざけてはいない。血が付着していて尚かつ、【豪腕】の頭部が壊れていたのだからな」

「そもそも、フランスパンを武器にする事自体間違っている」

「そうだ、不衛生ではないか! しかも食べ物を粗末にして!」

 

 一人の発言によって論点がズレ、話し合いが終わるのには時間が掛かった。【豪腕】カヴィンは魔族の幹部以上の存在に殺害されたと結論づけた。

 

「これにて会議は終わりにする。各自、勇者召喚に備えて持ち場に戻ってくれ」

 

 強者達は部屋から出て行き、ギルドマスターは椅子に深く座り込む。

 

「勇者召喚の前日に【豪腕】カヴィンの殺害……悪いことの前兆なのか、魔族からの宣戦布告なのか」

 

 昨日行われた勇者召喚の儀。今までのものよりも規模がデカく、召喚するには約1日掛かると魔導師達が離していた。もし、本当に【豪腕】の殺害が魔族によるものだったとしたら。魔族が今日攻めてくる可能性は低いとは言えず、仮に攻めてきた場合には尋常じゃない被害が出る。だが幸運なことに今日は快晴。太陽が天敵である吸血鬼が多い魔王軍は攻めてくる確立は低い。

 

ゴーンゴーン

 

 勇者が召喚されたことを知らせる鐘が鳴る。ギルドマスターは身体の力を抜くようにして背もたれにもたれかかる。

 

「なにもなければ良いのだが……」

 

 そう言いながら、ギルドマスターはパイプを吹かしはじめたのだった。

 

◆◇◆◇◆

 

「ファラン様。勇者が召喚されたとの報告が」

 

 魔王軍の監視部隊から報告が入り、(わたくし)はファラン様に報告する。如何なる情報も迅速に伝えなければなりません。それが執事である私の仕事の一つです。

 

「そうか……ハディン、馬車を用意しろ。勇者の顔を見に行こうではないか」

「承知致しました」

 

 昨日の事に関しては既に説教済みですので今日に引きずる必要性はないでしょう。それよりも、ファラン様か今回の勇者召喚に興味があるようですね。大勢だからでしょうか? そんな事を思いながら王の間から出ると、今一番会いたくない人に鉢合わせしてしまいました。いえ、違いますね。私の事を待っていましたね彼女。

 

「あら、ハディン。ファラン様と何を話していたの?」

「貴女には関係ありませんよシルア。わざわざ待っているような事をしているなら、持ち場に戻ったらどうですか? それに、ファラン様には鍛錬を怠らないようにと言われている筈ですが」

 

 金髪、赤目の彼女の名前はシルア。私とファランと同じ吸血鬼で魔王軍の幹部の中でもトップクラスの実力者です。ですが、ファラン様を愛しすぎるが故、ファラン様の前以外では涎を垂らしたり、ファラン様の下着を見ようとするなどの変態行為が目立ちます。最近は大人しいですが。

 

「持ち場は部下に実践経験として任せているわ。鍛錬は朝のうちに終わらせたわよ。ねぇ、良いじゃないハディン教えてくれたって。同じ側近でしょ?」

 

 シルアはファラン様の側近ではありません。ファラン様の側近は私一人で充分です。

 

「ファラン様の側近は私一人ですよ。貴女は幹部じゃないですか」

「そう……なら」

 

 シルアは私の胸ぐらを掴み上げ、ニッコリと笑う。

 

「ハディン、貴方より私の方が強いって事は分かってるわよね? 無理やり吐かせましょうか?」

「確かに私はシルアより弱いです。それで殺されるところまでいったとしても、私は何も言いませんよ?」

「あら、そう。言わないなら良いわ、それで? 何を話していたの?」

「ですから貴女には関係ありません」

 

 こうなってしまえば私が折れない限り、このやりとりはずっと続きます。もし、移動しようものなら拘束して来るでしょう。

 

「何をやっているハディン? 馬車は準備できたのか?」

 

 流石はファラン様。素晴らしいタイミングです。どうか、我が儘なシルアを罰してほしいものですね。しかし、先に罰せられるのは私でしょう。何故なら、馬車を用意していないのですから。

 

◆◇◆◇◆

 

 変装し終えた俺は、外に出るために王の間を後にする。少し進んだ先にハディンとシルアが話していた。もう、準備できたのかな?

 

「何をやっているハディン? 馬車は準備できたのか?」

「申し訳ありませんファラン様。馬車はまだ準備出来ておりません。如何なる罰も受け入れる所存です」

 

 ええ!? 準備出来てなかったの? ハディンの事だからとっくに終わったのかと思った。

 

「構わん、罰もいい。俺が急に頼んだことだからな」

「ファラン様! 今から何処へ行かれるのですか?」

 

 いや~シルアたん可愛いねぇ。おじちゃん興奮しちゃうよ全く。てか、今更だけど今の喋り方魔王っぽいのか? 一人称を我にするとかしたほうがいいのかな? それとも素で喋った方がいいのか? まぁ、いいか。今変えたら変な奴に見られそうだし。

 

「ん? 今から召喚された勇者を見に行くところだ。シルアた……シルア、貴様も来るか?」

「はい!」

「ファラン様、あまり人を増やさない方がいいかと」

「確かにそうかもしれないが、考えて見ろハディン。仮にバレたとして、俺と貴様だけの場合と俺と貴様とシルアの場合の方が出来ることは多い。安全な方を考えるならばシルアを連れて行った方がいいだろう。それに──」

 

 ファランは少し笑いながら口を開いた。

 

「人数が多い方が楽しめるだろう?」

「それも、そうですね。では、私は馬車を用意してきます」

「頼んだぞハディン」

「ハッ!」

 

 馬車を用意するために歩き出したハディンはやはりファラン様は子供っぽいと心の中で苦笑するのであった。

 

◆◇◆◇◆

 

 青空が広がり雲一つない快晴。太陽から受ける光の洗礼はアラン王国を歩くファラン達を多少なりとも苦しめていた。

 

「とてもいい……散歩日和だな」

 

 強がるようにファランはそう口にする。

 

──なんだよこの天気! 昨日はこんなに晴れてなかっただろうが! やめろよ太陽、俺見えないところが微妙に焼けてきてるんだよ。焼き肉になっちまうから!

 

 しかし、心の中で本音がだだ漏れである。ファランは念の為にと持ってきていた日除け用の傘を開きながら歩く。

 

「ん? あれは……?」

 

 道の先に異様な程人間が集まっている場所があった。小さいが「勇者様」という声も聞こえる。

 

「行くか」

「「はい」」

 

 駆け寄るように人間が集まっている場所に移動し、ファランは人間の多さに若干引き気味になる。

 

「ちょっとすみません」

 

 人間の間を縫うように通り抜け、一番前に来ると、ファランは固まった。

 

──なんで……。

 

「皆様! この方々が忌々しい魔王と魔王軍を討伐してくださる勇者様方です!」

「初めまして! 加藤駿平です!」

 

──なんで……。

 

 ファランの目は開き瞳は揺れる、明らかに動揺しているのが分かる。勇者の名前など耳に届かず、見える世界は黒白になっていく。

 

──なんでお前等が召喚されんだよクラスメイトォ!

 

 ファランは心の中で叫びながらヘッドバンキングをする。前世の記憶が多少あったファランは召喚された勇者達が、直ぐに高校生時代のクラスメイトだと分かったのだ。

 

「マジカヨ、アリエネェヨ」 

 

 片言で喋った言葉は人間の声援で辺りに響くことはなく、かき消されるのであった。




~インフォメーション~

【豪腕】
本名はカヴィン。鬼神の加護を持つ冒険者。ロリコン。ファランに殺された。

鬼神の加護
鬼神を彷彿とさせる怪力を持つ事が出来る。本気で腕を振るえば山を崩壊させ、地面にクレーターを作れる。
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