魔王の俺と勇者なクラスメイト[現在修復中]   作:無月・黒焔(現在萎えモード)

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遅れてしまい申し訳ありませんでした!
修復するもう一つの作品の構成の見直しと、リアルの忙しさに挟まれなかなか書くことが出来ませんでした。また、今回も多少の変更と雑さがかなり残ってしまいました。見づらいとは思いますが、楽しんでいただけたら幸いです!


決着

 魔王軍と入れ替わるように地を駆けたファランは、大鎌を横に振るう。紫色の斬撃が飛び、何人かの首を切る。

 

──お~、綺麗に切れたな。

 

 ファランが呑気にそんなことを思っていると、幾つもの魔法がファランを目掛けて飛んでくる。

 

「くだらん」

 

 魔法を大鎌で切り、弾き、受け流す。魔法は止むことは無く、絶えず飛び続ける。ファランは笑みを浮かべながら地を駆けた。

 

「やはり、止められんな」

 

 本能が戦えと、憎き人間を殺せと囁く。ファランはそれに任せて大鎌を振るう。戦争に引き分け(互いに生存)というのは珍しい。勝つ(生きる)負ける(死ぬ)か。それが殆どであり、戦争を経験しているファランもそれを良く理解していた。

 

「本能に抗うことは出来んか」

 

 再度、ファランは笑った。駆けるスピードを早め、人間の目の前で止まる。

 

「わざわざ死にに来るなんてなぁ【吸血鬼王】」

「俺が死にに来ただと? 戯け。貴様等を殺しに来ただけのこと。当然、死ぬ覚悟はしているのだろうな?」

「殺しに来ただぁ? テメェこそ戯れ言吐いてんじゃねぇよ」

 

 ファランは「ククク」と笑うと大鎌をアラン王国に向ける。

 

「貴様等を殺した後、アラン王国を潰すのも悪くない。居るのは戦闘が出来ぬ者ばかり。さぞ、楽しくなるだろう」

「ふざけるな!」

「馬鹿、やめろ!」

 

 ファランの挑発に乗った一人の騎士が制止も聞かずにファランに襲いかかる。一閃。騎士の首と身体は綺麗に分かれ、ファランは騎士の頭を掴む。

 

「脆い、弱い、醜い。ハハハハ、なんとも人間は哀れだな!」

「ふざけてんじゃねぇぞ【吸血鬼王】!」

 

 ファランは天を仰ぎ、人間達を見下す様にみる。

 

「我が名は【吸血鬼王】ファラン! 我が混沌を持って貴様等の攻撃と下らない正義を飲み込んでくれよう!」

 

 ファランの言葉と共に人間は走りだす。ファランは大鎌を構えた。

 

「一つ、この世の災厄を再現する」

 

 無数のフランスパンが出現し、人間に襲いかかる。フランスパンは人間や地面に当たると爆発し、確実に人間を殺していく。

 

「二つ、地も天も生きる資格は無し」

 

 続けて無数の紫色の斬撃が人間を殺す。それでも人間は走る。

 

「三つ、深淵はこちらを覗き」

 

 棘が付いた血肉の鎖を出現させ、人間を穴だらけにする。しかし、人間の士気は下がるどころか上がる。

 

「四つ、荒れ果てた死界で汝を待つ」

 

 人間がファランの近くに到達したとき、ファランの周りには四つの巨大な赤い魔法陣が展開されていた。

 

「そんなに土の上が恋しいか?」

 

 ファランのそんな言葉と共に赤い魔法陣は光り輝き、周囲を爆発させる。

 

「ふん、こんなものか」

 

 周りで力尽きた人間を見てファランは鼻で笑う。だが、周りを見ても騎士団の二人と勇者は見当たらない。ファランは眉をひそめる。

 

「何処だ?」

 

 本音を言えばファランは勇者を殺したくはない。幼なじみの二人は特にだ。しかし、同族を殺すのであるなら容赦はしない。ある種のけじめとして一人で戦うことにしたのだが、ファランはため息をついた。

 

「馬鹿馬鹿しい。本当に下らんな」

「あぁ、本当に馬鹿馬鹿しいぜ」

 

 後ろからドレイクの声が聞こえるも、ファランは後ろを振り向かず大鎌を担ぐように後ろへ向ける。その直後、カキンッ! という金属音が鳴り響いた。

 

「はぁ!?」

「言っただろう? 下らんと」

 

 大鎌を前へ持ってくるように振るえば、ドレイクは弾かれ、後ろに下がる。

 

「ククク。どうした騎士団団長、この程度か?」

「人間様を嘗めすぎなんだよ魔族ぅ!」

 

 ファランとドレイクは互いの得物を打ち付けあう。シルアとの戦闘でのダメージもあるのかドレイクはよろけ、少し下がる。その隙を逃すまいとファランはドレイクに迫るが、一つの人影に阻まれる。

 

「それ以上は行かせません。貴女はここで、終わりにさせます!」

 

 ハディンとの戦闘で傷だらけとなったままの身体でレインはファランの攻撃を止める。傷口は開き、血はポタポタと地面に落ちる。ファランは笑い弾き飛ばした。

 

「久し振りではないか。いや、貴様にはこう言った方がいいか? ねぇ、優しい騎士さん?」

「っ! やはり、貴女がダビルを」

 

 レインは苦虫を噛み潰したような顔をして剣を構える。

 

「ダビル? ああ、あの時の追っ手ならハディンとシルアに始末してもらったが、それがどうかしたか?」

「これで分かりました。貴女は魔族この世界の悪だ」

「悪? 偽善を語り、正義を主張する貴様等の方が俺は悪だと思うがな」

「例え偽善であったとしても、人の為になることが本当の正義です! 貴女達は、命を奪うことしかしていない!」

「命を奪う、か。この世界は弱肉強食が理。貴様等は自分の力の無さを周りのせいにしている弱者でしかない」

「だからこそ助け合うことが出来る!」

 

 ファランとレインの戦闘は続く。復帰したドレイクもその場に加わり、二対一となるがファランは焦りを見せない。

 

「つまらんな」

 

 ファランは後ろへ下がり血肉の鎖を出すが、ドレイクとレインはそれを壊す。

 

「つまんねぇだぁ? ふざけやがって!」

「思ったことを言ったまでだ」

 

 ドレイクとファランが互いの得物を何度か打ち付けあった後、人間達が居る場所から声が聞こえた。

 

「準備、整いました!」

「む?」

 

 ファランはなんの準備かは分からない。だが、理解したことがあった。自身にとって危険になりうるであろうナニカが迫ると。

 

「レイン!」

「はい!」

 

 レインがドレイクと入れ替わるようにファランの前に立つ。ファランは後ろに飛び退こうとするが、それは間に合うことはなかった。

 

「導きの光よ──!」

 

 詠唱など聞く暇もなく、レインの詠唱の後、眩しい閃光がファランの視界を覆う。ただの目潰しだと割り切り、ファランは大鎌を横に振るう。切った感触も打ち付け合う感触もない。ファランは一瞬焦りを覚えた。

 

「行けぇ、勇者!」

「チッ!」

 

 閃光で閉じた目を無理やり開け、霞む視界でファランはそれを見た。

 

「「〈勇者の戦撃(ブレイブ・イストリア)〉!!」」

 

 混沌を、天を貫き光り輝く巨大な剣。その見た目からは想像できない速度でファランに迫る。

 

「……っ!?」

 

 目潰しで反応が遅れていたファランは迫り来る剣が放つ光に為すすべもなく呑み込まれる。勇者が仕掛けた〈勇者の戦撃(ブレイブ・イストリア)〉は約160年前伝説と呼ばれた勇者が繰り出した魔法である。伝説の勇者曰わく、〈勇者の戦撃(ブレイブ・イストリア)〉は歴代の勇者達の究極の一手を集約し、巨大な光の剣へと変える魔法。その強さ故に、膨大な魔力と高い光属性の適性が必要な為、伝説の勇者以外扱えないと言われてきた。

 

 だが、今代の勇者達はそれをやってのけた。自分達の削れるギリギリまでの魔力を一点に集め、光属性の適性の高さを全員で補う。一人のタイミングがズレてしまえば失敗となる一種の賭けに勝ったのだ。

 

 光の剣は地面に当たると凝縮した魔力が暴走を起こし爆発。それが地面をえぐり出す。もし、最初の一撃を防いだとしても爆発を直に受けた【吸血鬼王】は死んだだろうと、誰しもがそう思った。ならば残るのは魔王軍のみ。ジリ貧ではあるが、【吸血鬼王】の命を奪ったのは人間達からすれば士気が上がる出来事である。

 

「はっ、何でもありかよ勇者はよぉ」

 

 爆発による余波を全身で浴びつつドレイクは乾いた笑みを浮かべる。勇者達の繰り出した〈勇者の戦撃(ブレイブ・イストリア)〉は想像以上であり、高出力のそれにただただ見ていることしか出来ない。

 

「よくやったな勇者」

 

 ドレイクは倒れ込む勇者達に近づき、グットサインをする。勇者達は苦笑いをしながらグットサインを返す。

 

「本当に頑張ったね」

 

 ドレイクの反対側に避けていたレインも戻り、優しい笑みを浮かべる。

 

「もう、クタクタですよ……」

 

 苦笑いを浮かべながら駿平は降参のポーズをとる。それに続くかのように他の勇者達も俺も、私もと声を上げる。

 

「うし、後は魔王軍を……」

 

 ドレイクが魔王軍が居る方向を見ると、ゆっくりだった砂煙が高速に動き出す。

 

「あぁ?」

 

 砂煙は螺旋状に回転し始め、竜巻のように変化しいく。数秒間回転していると砂煙は消え、死んだと思われていた存在が仁王立ちしていた。

 

「なんでだ……【吸血鬼王】!」

「なかなか面白かったぞ。さて、次はどうする?」

 

──そんなもん、ねぇよ……。

 

 人間達は心の中でそう思った。だが、そんな事は知らないファランは笑う。再び絶望が人間を襲った。 

 

◆◇◆◇◆

 

~時は遡りファランが攻撃される前~

 

 霞む視界から見える巨大な剣。一刻を争う状況でファランは笑みを浮かる。

 

──面白い……正面から受けてやるよ!

 

 霧状の混沌が薄い布のように変化し、ファランはそれを纏う。太陽の光や、光属性を無効化する混沌なのだ。そう簡単には消されはしない。

 

「……シッ!」

 

 腕をクロスさせ、ファランは巨大な剣を受け止める。掛け声と共に腕を振り切り巨大な剣を弾き返そうとしたが、予想外の出来事が起きた。

 

──ん? 爆発!?

 

 凝縮された魔力の暴走。それによって起きた光属性の爆発。光属性が人間に祝福をもたらす属性であったとしても、暴走で起きた爆発は人間にも危害を加える。光属性を忌み嫌い、弱点とする魔族がそれを受ければ……その被害は計り知れない。

 

「ぐっ……!」

 

 爆発に身体が揺れる。体勢が崩れ、徐々に巨大な剣に押されはじめた。

 

「チッ!」

 

 仕方がないという表情を浮かべ、ファランは横へ飛ぶ。巨大な剣は地面に埋まり、更に爆発が起きた。受け身で起き上がったファランに爆発が襲い、ミシミシという音が聞こえた。

 

「なん、だと……?」

 

 纏っていた混沌に亀裂が入り、次第に大きくなっていく。再度混沌を纏おうと、行動に移したが時既に遅し。纏った混沌は祓われ、四方八方から爆発が盾を失ったファランを襲う。

 

「がっ、はっ!」

 

 全身に有り得ない程の衝撃。踏ん張るのがやっとの状態でファランは耐える。奥歯を噛み締める力が強くなり、今にも歯が割れるのではと思った瞬間、爆発は止んだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 自然と身体の力は抜け、ファランは膝をつく。幸いだったのが、砂煙で自身の姿を見られなかったことだろう。膝をついた姿を見られるのは屈辱でしかない。

 

「さて……」

 

 ファランがあるは立ち上がり、右腕を上に振る。そよ風がファランの頬を擽る。ゆっくりと動いていた砂煙はそよ風によって急に動き出す。そよ風は突風に変化し、砂煙を螺旋状に回転させた。

 

「次は何がくるんだろうな?」

 

 次に来るであろう攻撃にワクワクしながらファランは右腕を振り下げる。竜巻となっていた砂煙は消え去り、ファランは仁王立ちしながら笑う。

 

「なんでだ……【吸血鬼王】!」

「なかなか面白かったぞ。さて、次はどうする?」

 

 ドレイクの声を無視し、ファランは悪戯が成功した子供っぽい笑みを浮かべる。人間達の表情は殆どが絶望で染まっており、先程の攻撃がファランを殺すための手だったのは容易に予想できた。

 

「そうか……残念だ」

 

 ならば相手に残るのは死を待つ時間だけだろう。恐怖を煽ってもいいが、それは時間の無駄である。人間は既に切り札を出し切り、勝利の女神……否、勝利の邪神と言うべきか。どちらでも構わないが、その神はファランに微笑んだことだろう。

 

「出し切ったか。存外、呆気なかったな勇者よ」

 

 ファランは大鎌を担ぎ、勇者達を見ながら進む。

 

「これ以上進んでみろ。テメェの首が飛ぶぜ?」

「貴女を進ませる訳には行かない!」

 

 ドレイクとレインがファランに切り掛かるが、ファランはそれを弾き、口を開く。

 

「“止まれ”」

「く、そがぁ!」

「う、動けない!」

 

 その行動も虚しく、ファランの特典によって強制的に動きを止めさせられる。

 

「邪魔だ。貴様らに用はない」

 

 悠々とドレイクとレインの間を通り過ぎたファランは、笑みを浮かべながら勇者、駿平と沙耶に近づいた。

 

「くっそ! このっ!」

 

 駿平は魔法で作った剣を投擲するが、ファランはそれを弾くと笑みを更に浮かべる。

 

「もう余力は無い筈だ。何がお前をそこまで突き動かすのだろうな」

「決まってんだろ……俺達は全員でお前を倒して日本に帰る。全員で帰って、元の日常に戻るんだよ!」

 

 ズキリ、胸に刺さる痛みをファランは覚えた。それが、何から来たものかはその時のファランは分からないだろう。

 

「それは素晴らしい目標だな。だが、諦めろ」

 

 大鎌から大量の鎖が出現し、勇者達と人間達を拘束する。

 

「貴様らの今までの努力、それが身になってない訳ではない。それは賞賛に値する。だがな──」

 

 ファランの大鎌は駿平の首元に固定され、何時でも切れる状態となった。駿平は歯軋りをしてファランを睨む。

 

「俺には程遠い」

「ちく、しょう!」

「貴様ら勇者達は気に入っていたが、先程の力は厄介だ。不安の種は刈り取っておかねばな」

 

 ファランの大鎌が駿平の首を切ろうとしたとき、駿平は笑みを浮かべた。

 

「かかったな、魔王!」

「何? ぐぅ!」

 

 ファランが無防備になる瞬間を狙った奇襲攻撃。正面の戦闘を得意とする者が居るように、奇襲や隠密を得意とする者達も居る。後者の者達が限界ギリギリまで隙をうかがい、ファランを攻撃したのだ。

 

「くっ、邪魔だ!」

 

 奇襲した者達はファランに攻撃が通った感触を味わいながら殺される。奇襲した者達を殺したファランは大きく傷つけられたわき腹を押さえ、片膝をついた。

 

「これは、毒……!」

 

 身体が痺れ、倦怠感を感じる。ファランは己の未熟さに嫌気がさした。

 

「この程度で……俺を殺せると思うなよ?」

 

 ファランの顔の横に一口サイズのフランスパンが現れ、ファランはそれを食べる。フランスパンに付与させた効果は解毒。傷の修復も追加しようとしたが、上手く作れなかった。

 

「「ファラン様!」」

「ハディン、シルア。なぜ此処に来た?」

「巨大な光を見たからです。ファラン様、ここは退きましょう」

「ああ、貴女様にこんな大きな傷が……。ファラン様、今すぐここを離れ早く治療しましょう」

 

 いきなり現れたハディンとシルアに戸惑いつつも、ファランはわき腹を押さえる力を弱めた。

 

「そうだな、退くとするか……」

 

 ファランはハディンとシルアに肩を貸してもらいながら、魔王軍の元へと帰る。その途中でファランの意識は無くなっていた。

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