魔王の俺と勇者なクラスメイト[現在修復中]   作:無月・黒焔(現在萎えモード)

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投稿が1ヶ月空いてしまい申し訳ありませんでした!
就活やらなんやらでリアルが忙しく、執筆する時間がなかなか取れず難航していました。申し訳ありません!


同盟

「ファラン様、ご報告が」

「どうした?」

 

 戦争がファラン達魔王軍の敗走となってから十日。多少後となっているが傷つけられた傷も癒え、ファランが暇を持て余していた時、ハディンがファランの前に跪いた。

 

「勇者が魔王城に接近しております。如何なさいますか?」

「なに?」

 

 戦争は敗走となり魔王軍の領土が減ってきているのは分かってはいたが、それでも微々たるものであった。魔王軍の領土への侵入は少人数で行われており、人数から察するに人間は万全の状態ではないことが伺える。魔族も人間も互いに大きな傷を負っている筈である。それなのに何故、勇者を魔王城に攻めさせたのかファランは疑問に思った。

 

「幹部を集めろ。勇者を顔を拝んでやろうではないか」

「承知致しました」

 

 ハディンが消えるのを見届けた後、横腹の傷痕をさすりながらファランは玉座を離れる。王の間から出れば、ファランの後ろにはハディンと幹部達が歩いていた。

 

「久しいな加藤駿平。殺されに来たか?」

 

 エントラスに着いたファランは、丁度入ってきた勇者達に笑みを浮かべる。

 

「今回は殺し合いに来たわけじゃない。国王様が呼んでる。ついて来い……魔王」

「領土を奪っていきながらよく言うではないか。笑えない冗談だな」

 

 ピリピリとした空気が流れる。ファランは後ずさる勇者達を見て鼻で笑う。

 

「俺を呼びに来たのなら一人でもいいだろう? ああ、そうか──」

 

 真顔に戻ったファランは大鎌を担ぐ。勇者達の足は震えており、恐れていることがすぐに分かった。

 

「一人では怖いか」

 

 勇者達は奥歯を噛み締める。魔王軍には奇襲を仕掛けて撤退させただけであり、正面衝突を勇者達はやってはいなかった。切り札である〈勇者の戦撃(ブレイブ・イストリア)〉を受けてもほぼ無傷であった化け物に一人で会う勇気は勇者達にはなかった。

 

「わざわざ貴様らが呼びに来たのだから、よほど面白いことがあるのだろう? いや、なくては困るな」

 

 ファランは顎に手を当てうんうんと唸る。その間も一切警戒と解かないハディンと幹部達は目を鋭くして勇者達を見る。

 

「いいだろう。貴様らに着いていこうではないか」

「「ファラン様!」」

 

 怒声にも似た声がハディンとシルアから出る。ファランは若干驚いた表情をする。

 

「どうしたハディン、シルア?」

「ファラン様、どう考えてもこれは敵の罠です! 敵の罠にまんまと嵌まるような真似は!」

「敢えて、だハディン。確かにあの時のような奇襲を仕掛けられるかもしれんがそれはそれで面白い」

 

 ファランは大鎌をしまい勇者達を見る。

 

「だが、貴様らの要望だけを聞くというのは癪だ。条件をだそう」

「な、なんだ」

「ハディンとシルアを連れて行く。それが俺からの条件だ」

「それは「貴様らに拒否する権限があると思わないことだな」……分かった。ついて来い魔王」

 

 ファランは不敵な笑みを浮かべ、勇者達の後に着いていった。

 

◆◇◆◇◆

 

 どの国にも国民には言えない取引をしているものである。四つの王国の中で一番商業が盛んなアラン王国ならなおさらであり、それを国民に悟られないようにするものである。

 

 悟られないように考案したのが王城へ続く地下通路。勇者達とファラン達はそこを通り、王城へと入っていく。

 

「ここでお待ち下さい」

 

 アラン王国の執事と思われる人物に案内され、客室であろう場所で待機する。三人は余裕で座れるソファーにファランだけが座り、ソファー後ろでハディンとシルアが立っている。

 

「面白いものだな。地下通路があるとは」

「あまり褒められたものでもありません。あれを使って行うのは国民に言えない行為。我が国の唯一の恥です」

「ほぉ?」

 

 ファランの言葉に淡々と答えた執事に威圧をかけるが、どこ吹く風とあっさり受け流す。この執事もかなりの実力者と見ていいだろう。

 

「待たせたな【吸血鬼王】」

「待たせた者にその態度とは、随分といいご身分だな人間の王」

 

 ピリピリとした雰囲気の中、ファランとコペル国王は互いを見る。最初に口を開いたのはファランだった。

 

「いきなり何の用だ人間の王。つまらん内容なら、貴様を殺す」

「……今日呼んだのは、我々と同盟を組まないかという提案をするためだ」

「ククク、貴様自分の言っていることを理解しているのか? 俺達と貴様らが同盟だと? 俺達の領土を奪うだけでは満足できなかったか?」

 

 ファランの威圧にコペル国王は冷や汗をかく。勇者達の報告では、あの〈勇者の戦撃(ブレイブ・イストリア)〉を受けて立っていたという。あの時は奇襲をかけて撤退させることが出来たが、次にどうなるかは容易に想像できてしまった。故に、コペル国王は想像したことを起こさない為に魔族と同盟を組むことにしたのだ。

 

「そういう訳ではない。戦争で互いに負った傷は深い。国民を守るためにも我々は今、手を組まなければならないと思ったのだ」

「昔聞いたことがある。貴様ら人間は俺達魔族と同盟し、裏切った。裏切られた魔族と裏切った人間の戦争は随分と長かったらしいではないか。裏切りの過去を持つ貴様らを信用しろと?」

 

 厳密に言えば書物で読んだのと、先代の魔王から聞いたことであるのだが、ファランからすればそれはどうでも良いことであり、問題は簡単に裏切る者達と同盟を組めるかと言うことであった。

 

「それは重々承知している。それでもだ【吸血鬼王】。互いに王ならば分かるはずだ。王は民を守り導く存在であると。それを踏まえて同盟を組もうと思っている」

「民を守る、か。貴様は自身を守れない非力な存在であるにも関わらずよくもそんな言葉がでたな。貴様らの事情など知らん。そもそも、俺達は貴様らと違って強いのでな。わざわざ俺が守る必要はない」

「……けんな」

 

 ファランがコペル国王をひと蹴りすると同時に駿平が震えながらファランを睨む。

 

「ふざけんな!」

「よせ、ハディン、シルア」

「「ですが!」」

「構わん。さて、なんだ加藤駿平? 何か言いたげだな」

 

 駿平の声に反応し動こうとするハディンとシルアを手を挙げて制止したファランはニヤリと笑う。

 

「王なら、人の上に立つ者なら国民を守れよ! 確かにお前等が居なくなったら嬉しい! でも、それと今の話は別だ!」

 

 駿平の意見を聞いてからファランは驚いたような顔をする。

 

──ああ、懐かしいな。昔もこうして怒られた。

 

 無くなりかけた記憶を思い出していると、ファランはまたもや驚いたような顔になる。つい最近まで無くなっていた記憶も戻ってきたのだ。

 

──なんだよ。簡単に思い出せるじゃん。

 

 今までの苦労は何だったのかと、ファランは苦笑いする。

 

「ククク、いいだろう同盟の返事をしてやる」

 

 ファランは立ち上がり駿平に近づく。駿平は剣の抜く体制に入り、ファランを睨みつけた。

 

「そう睨むな加藤駿平。貴様だけに教えようと思ったのだ」

「なんでそんなことすんだよ。普通に伝えれば良いじゃんか」

「貴様から伝えるから意味があるのだ。大人しく従え」

「……分かった」

 

 ファランは口を駿平の耳元に近づけ返事を伝える。駿平は目を見開き、小刻みに震える。

 

「ゆ、勇者よ。答えというのは……」

「同盟は受け入れると言っています」

「そうか」

 

 駿平の発言で同盟は失敗したと思っていたコペル国王にとってそれは吉報であった。しかし駿平の顔は暗いままである。

 

「ですが」

「なんだ? どうしたのだ勇者よ?」

「その代わり国王様の、国王様の娘様……ティナ様を人質にすると」

「なんだと? それは真か!」

 

 驚いているコペル国王にファランはフッと笑う。

 

「貴様らが調子に乗らないようにするための策だ。ただの人間ならまだしも、人間の王の娘ともなると話が変わるだろう?」

「しかし、それは」

「私は大丈夫ですお父様」

 

 客室のドアから一人の少女が入ってきた。言葉の内容から察するにコペル国王の娘と見ていいだろう。長い艶のある金色の髪、エメラルドグリーンの瞳に幼い容姿でありながら王族の気品を漂わせる。

 

「なるほどな」

 

 部下達が揃いも揃って人間の王の娘が美しいと言う理由も分からなくはなかった。そこいらの者と比べれば雲泥の差はあるだろう。

 

「貴様が人間の王の娘か。俺達を恐れないとは面白い娘だな」

 

 そう言うとファランはイタズラをする子供のような笑みを浮かべて殺気を飛ばす。ティナの足は震えており、本能的に怯えているのが分かる。しかし、それでもティナは表情には出さない。

 

「私は誇りある王族、お父様の娘。貴女様の威圧を受けても折れることはありません」

「そうかそうか。ククク、ハハハハ! いい、実に面白い! 俺は貴様を気に入ったぞティナ。そのくだらん努力、なんとも道化のように思えて──」

 

 空を仰ぐように笑ったファランは髪をかきあげる。乱れた髪に隠れていたファランの瞳が赤く輝いた。

 

「滑稽ではないか」

 

 一気に冷めたファランの声。部屋全体を凍らせるような雰囲気を醸し出しながらファランは席に座る。

 

「さて、同盟を組むわけだ。俺達と貴様らで制約を作らなければならない。存分に話し合おうではないか」

 

 ファランは不敵に笑う。それから話し合いが終わったのは夕方頃であった。

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