誓いは彼女の為に    作:ユリシー

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このサイトに作品を投稿するのは初めてです。
いや~緊張しますね。(笑)
なので、温かい目で見守って下さると幸いです。

では、どうぞ!




プロローグ

 ……戦いは終わらない。

 『あの日』から長い月日が経ったが、戦いは終わる気配を見せない。

 

 《深海棲艦》という強大な敵を前にして、人類は果敢に戦った。

 多大な犠牲を払った。多大な被害を被った。

 しかし、それでも終わらない。

 

 自分も、他の大多数と同じように、こう思った。

 

 ―――勝てないのだ、と。

 

 倒しても倒しても一向に戦力の衰えない《深海棲艦》に対して、

 彼は絶望していた。

 ―――いつになれば終わるのだ、と。

 彼は諦めていた。

 ―――どうしようもない、と。

 

 

 ある戦いで、彼は瀕死の重傷を負った。

 それまで彼は、決して深い傷を負った事が無かったのに。

 それは、彼が深海棲艦との戦いで絶望していたのが原因なのか、

 或いは、それまでの激戦からくる疲労故なのか、

 はたまた、彼の運がたまたま良かっただけなのか。

 

 どうでもよかった。

 事実彼の傷は相当に深いものであったし、すぐに処置が必要なものであった。

 勿論、最前線である彼の居場所に、応急処置ができる衛生兵などはおらず。

 

 だからこそ、どうでもよかった。

 どうせ、死にゆく運命。

 この世界に、未練がないわけではなかったが、

 もう、いいのだと思った。

 

 眼前に、《深海棲艦》、その戦艦旗艦型(フラッグシップタイプ)―――タ級―――が立つ。

 主砲を構え、自分の方へ向けてくる。

 この至近距離では、外すはずもない。

 

 嗤っているのだろうか、怒っているのだろうか。

 分からないし、最早それを判断するだけの余裕など無かった。

 

 目をゆっくりと閉じて、静かに最期を待つ。

 程なくして轟音が響き、そこで……

 

 

 彼の意識は途切れるはずだった。

 

 

 な、とつぶやきが零れる。

 眼前にいたタ級は、大きく姿勢を崩し、とっさに彼のもとから離れた。

 

 ―――そんな馬鹿な。

 周りを見渡しても、海軍所属の軍艦、駆逐艦などは見当たらない。

 

 では何故?

 答えは見つからなかったが、その代わりに一人の少女を見つけた。

 

 体に纏っているのは、戦艦の主砲を幾分か小さくしたようなものや、

 軍艦の船体を意識したかのような装甲。

 

 「さあ、やるわ。砲雷撃戦、用意!」

 

 余裕を含んだ表情を浮かべた彼女がそう言うと、彼女の装備品が火を噴いた。

 打ち出されたのは、砲弾。

 九発の弾道が、空に弧を描く。

 

 それは寸分違わずタ級に命中し、断末魔を上げながら、タ級は沈んでいった。

 

 ―――鮮やかなものだ、と。

 彼は内心呟く。

 いや、あまりの出来事に対し言葉が出ない、と言った方が正しい。

 

 

 段々と、その少女は、自分に近づいてくる。

 警戒しなかった訳ではないが、もう彼に体を動かすだけの力はなく。

 ただ彼女を、近づいてくる少女を見ることしか出来なかった。

 

 彼女の顔がはっきり見えた所で、彼女が口を開いた。

 

 「貴方を、助けに参りました。」

 

 ……助けに?

 ということは、少なくとも味方、なのだろう。

 少しだけ張りつめていた気を緩ませる。

 

 「名前、は?」 

  

 傷のせいでまともに話せない。

 頭の中に浮かんだ質問の中で唯一口にできるものがこれだった。

 

 彼女は少し考える仕草をとった。

 

 「……名前、ですか。

  私には、そんなもの……」

 

 名前が無い?

 自分のような戦場しか知らない自分にも―――識別の為にだが―――名前はある。

 ならば彼女は、人に語ることのできる名前を持っていないのだろうか。

 

 「何でも、構わない。君のことを、忘れないよう、に、したいだけだから。」 

 

 掠れた声で言う。

 情けない声だ、と自分でも思ったが、この際仕方がない。

 

 すると彼女は、もう一度考え始め、得心が行く結論を出したのだろう。

 自分の方を見て、言った。

 

 「では、私の事は、『大和』とお呼び下さい。

  在りし日の戦艦大和の如く、貴方を護り通しますから!」

 

 ……大和。

 確かに、彼女にはその名が似合う。

 護り通す、そう言ってくれるのであれば。

 ―――少しだけ、ほんの少しだけ、休んでもいいよな。

 

 その少し後。

 彼の意識は、今度こそ途切れたのだった。

 

 

 

 

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