誓いは彼女の為に    作:ユリシー

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 はい。今回は日常編です。
 しかし次回からはまた戦闘入るかも……

 どうも自分、日常を描くのが苦手らしいですね。
 拙い物ですがどうかご覧あれ。


八話 母港

 鎮守府に着任してから三日が経った。

 依然慣れない部分はあるが、決して苦しい訳ではない。

 当然呉とは比べるまでも無いほどだ。

 

 出撃任務は着任初日以来一度も無い。

 この三日間で提督や手の空いた艦娘たちに鎮守府を案内してもらった。

 

 特に不思議なところは無かった。

 南洋方面最大級の鎮守府と聞いていたから、呉と同規模な設備を持っていることにもさして驚かなかった。

 空調も各部屋にまで完備されているし、間宮食堂のメニューも内地と寸分違わなかった。

 しかしやはり南洋とあってか氷菓は他鎮守府よりも人気だそうだが。

 

 総じて快適な鎮守府だと思った。

 それに加えて提督が驚くほど仕事に熱心だ。

 これ以上の鎮守府は中々ないはずだ、と思う。

 最初は最前線の鎮守府ということで身構えていたが、最近はその緊張も解れつつある。

 

 「お、おはようさん、瑞鶴」

 

 「おはようございます、龍驤さん」

 

 鎮守府を案内してくれた艦娘の一人、『龍驤』さんが挨拶しながら手を振ってくる。

 彼女は明るく気さくな人柄で、私にとっては頼れる先輩空母と言うような存在。

 気が楽になったのも、この人のお陰かもしれない。 

 

 「どう、ここにはなじめそうかいな?」

 

 「ええ、先輩のお陰で」

 

 「ほほーう!それはちょっち嬉しいなー♪」

 

 少し上機嫌になってくれたようだ。

 顔が綻んで嬉しそうにしてくれる。

 

 「ああ、それはそうとして……」

 

 と、龍驤さんははっ、となってこちらに向き直る。

 

 「司令官が呼んどったみたいやけど」

 

 「提督が、ですか?」

 

 ……?

 何かまだ私に伝えてなかったことがあったのだろうか。

 

 「そうや。会わせたい娘がいるとかなんとか」

 

 まあ、多分あの娘やろうけどなあ、と呟きが聞こえてきたが、どうやら誰かと会う必要があるらしい。

 

 「分かりました。早速行ってみます」

 

 「おう、また後でなー」

 

 終始にこやかな表情で接してくれた龍驤さん。

 ……今から会う人もこんな人だったらいいのだけれど。

 少しの期待と非常な緊張を持ちつつ、執務室へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねえ、提督」

 

 「何だ?」

 

 「才能って何だと思う?」

 

 「何だ、藪から棒に」

 

 「いや、何となく聞きたくなっただけ」

 

 執務室。

 鎮守府を一望できるこの場所は提督の作業場。

 提督自身は基本的にここで事務処理をしているが、私は彼が何時も鎮守府の様子に気を配っていることを知っている。

 『気』が必ず鎮守府全体にも向けられている。

 これは常人では中々出来ない事。

 彼の場合、鎮守府の何処かで何かがあれば、すぐに駆け付ける用意が出来ている。

 書類を片手にした状態でも。

 

 「私は提督みたいな人が『才能』を体現してると思うけど」

 

 「何を言う。私など、ただ努力を積み重ねただけの凡人だ」

 

 「私はそうは思わないけどね……」

 

 彼は何時もこうやって否定する。

 自分の事を必ず卑下ないし尊大に扱おうとしない。

 自分の事を誇らない。

 自分の事を認めない。

 

 決して悪いことではないが、当然良い事ではない。

 彼は自分の持つ美点がそのまま欠点に繋がっている典型例だろう。

 そんな彼を見てると少し悲しくなる。

 

 「それよりどうだ、瑞鶴は」

 

 「ああ、あの娘!」

 

 若干話が逸らされたようで少し不満はあるが、それよりも大きなことを思い出した。

 そうだ、彼女だ。

 提督に何度も頼んで、そしてようやく今日会える。

 彼女の初陣からまだ一度も話せてない。

 話したいことは沢山ある。

 三日も待ったのだから色々こっちは考えてきたのだ。

 

 「……珍しいな、君がこんなに人と会うのを楽しみにするなんて」

 

 「少し失礼よ、提督」

 

 提督はさっきの事といい、今の事といい、一度はっきり言わなければならないだろう。

 でもそれは、彼女と会ってからでも遅くはない。

 

 「さっきの話の続きだけどね」

 

 提督に向き直って口を開く。

 

 「彼女、瑞鶴もその『才能』を持ってると思うのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 執務室前にたどり着いた。

 まだ慣れないので一瞬迷いかけたが、無事到着。

 

 「―――どうだ―――は」

 

 「ああ、あの娘!」

 

 扉の向こうから聞こえてくる声から察するに、合うべき人物は中にいるようだ。

 緊張、緊張、そして深呼吸。

 

 「よし!」

 

 決心を固めて執務室の扉に手を掛ける。

 ……早くここにも慣れたいなあ。

 

 「翔鶴型航空母艦二番艦、瑞鶴!入ります!」

 

 少々勢いよく扉を開くと、そこには提督ともう一人、艦娘がいた。

 

 軍服に巫女袴。

 奇妙な組み合わせの衣装だが、不思議と彼女からはその奇妙さを感じない。

 そしてその体から溢れる何か。

 闘気、覇気、はたまたオーラというものか。

 彼女のそれは他の艦娘とは一線を画していた。

 

 「……貴女が!」

 

 と、その彼女が顔をパッと明るくする。

 そして自然な手つきで手を差し出してくる。

 

 「はじめまして。飛鷹型航空母艦一番艦、飛鷹よ。どうぞよろしく」

 

 笑みを浮かべて挨拶をしてくれる。

 慌てて私も彼女の手を取る。

 

 「よ、よろしくお願いします……」

 

 若干気後れしつつも、返礼をした。

 ……あれ、この人今、『飛鷹』って……

 

 「早速だけど、一ついいかしら」

 

 飛鷹さんが口を開く。

 もしかしてこの人が、翔鶴姉の言っていた人……?

 

 

 

 「貴女、私と戦ってみる気、ある?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 飛鷹の強さは如何に……!

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