物語の時系列順に作品を並べたかったのでこうなりましたが、そこはご了承下さい(ーー;)
今回はちょっと外伝的な感じです。
榊原提督が提督となる前の話。
彼の戦い方の原点となった、ある作戦の一場面です。
作戦記録 2032年4月20日 セレベス海
天候:豪雨後快晴
波:やや高し
風:南東に5ノット
作戦内容:第二〇一特務部隊による敵棲地の攻略
戦力:第二〇一特務部隊
隊長 榊原祐翔大尉
以下三名
敵戦力:戦艦 十(内姫級二隻)
空母 五(内鬼級三隻)
重巡 二十(内姫級一隻)
その他護衛艦多数
「こちらST1リーダー。各員応答願う」
『はいはい。こちらはST1-01異常なしでーす』
『こちらはST1-02。状態良好。01、もう少し緊張感を持て』
またか、と思いつつも思わず溜息をついてしまう。
いつも通りのやり取り。
定時連絡の時は必ず起きるシチュエーション。
ただ一つだけ、今回は違う所がある。
「……あのー……もしかして、いつもこんな感じなんですか?」
自分の様子を見たからか、横から一人の少女が声を掛けてくる。
前回の作戦時、自分の命を救ってくれた人。
自分に希望を与えてくれた人。
―――自分が、背中を預けられる人。
「あ、ああ。そうだな、いつも通りだ」
だがどうしてなのか分からないが、彼女と話すときは妙に緊張してしまう。
『あれ、リーダー何か変ですね』
『そうだな、アイツらしくない。歯切れが悪いな』
通信機から聞こえてくる内容は頭に入ってこず、ただ目の前の彼女との会話に気を取られていた。
「今はこんな感じだが、戦闘の時は良く行動してくれる」
「そうですか。貴方がそういうのなら安心ですね」
自分の事を見つめてにこやかにそう言う彼女。
あの時、自分を助けてくれた時の凛々しい表情から一転、満開の桜のように朗らかで……
いや、柄にも無いことを考えてしまっていた。
作戦前の思考ではない。
そんなことを考えている暇はないんだ。
「各員傾注。これより作戦内容について説明する」
『はーい』
『了解した』
「分かりました」
最初の二人は何か含んだような返答だったが……
まあいい。
とりあえず自分の役目を果たすべきだな。
備考:本作戦では、個体名『大和』、ひいては『艦娘』の初の実戦投入が行われた。
「大和、偵察状況は?」
「まだ、見つかってません」
作戦海域へ到着し、偵察を開始するも未だ敵は見えず。
しかし大和の持つ偵察機のお陰で大分気が楽だ。
今まで今回のような作戦では偵察機の援護は望めなかったが、大和の持つ艦載機のお陰で偵察が出来る。
肉眼での偵察程骨が折れることは無い。
一応他二人にも索敵を命じてあるが、彼らも気が楽だろう。
と、途端に大和の表情が硬くなる。
「敵艦を発見!数十二!」
ようやくか。
腰にある刀を握りしめる。
柄に手を掛け抜刀の用意をする。
「総員戦闘隊形へ移行。01と02にて先制攻撃」
『01了解。斬り込みます!』
『02了解。狙撃にて旗艦を狙う』
敵艦に最も近かった二人が先に攻撃を開始する。
まず響くは銃声。
02の放った銃弾が敵旗艦と思しき個体へと命中する。
敵艦隊に動揺が走った隙に01が肉薄する。
薙刀を手にした彼女は敵に一瞬で近付き、そしてひと振りで敵艦二隻を撃沈させる。
『ほらほら!そんなんじゃ私は止められないよ!』
敵陣地をかき回していく彼女に続いて、自分と大和が攻撃を仕掛ける。
「大和、砲撃を頼めるか」
「ええ。勿論です」
大和が艤装を完全展開し、主砲を敵艦に向け照準。
「第一、第二主砲。斉射、始め!」
凄まじい轟音が立ち、砲弾が発射される。
そしてそれはやはり正確に敵艦に命中。
敵艦は大破炎上。
一面炎で照らされる中、最後に自分が刀を抜く。
心は静かに、しかし動きは大胆に。
敵艦隊の混乱が収まる前に、敵艦隊に逃げられる前に。
「逃がさない」
最後に残っていた敵艦三隻を一閃にて切り伏せる。
発見した敵艦隊の全ての撃沈を確認した所で、新たに通信が入る。
『リーダー。八時の方向から敵艦隊。数からして敵棲地も近いはずだ』
02からの通信だった。
ちょうどいい。このまま突っ切れば敵棲地も見えるだろう。
「各員に告ぐ。引き続き新たに発見した敵艦隊への攻撃を開始する。先の隊形を維持しつつ敵中を突破する」
『よーし、まだまだ暴れるよー!』
『まったくお前は……リーダー、こちらも先行して敵艦を叩く』
「了解。いつも通りで構わない」
指示を終えてから大和に向き直る。
「大和、今から長丁場になる。準備は……」
「リーダー」
途中で遮られる。
もしかして、何か不具合が……
そう思っていた自分を見つめて、大和が言う。
「私は、貴方を護り通すと言ったのです。必ず、何処までも、一緒に行きます」
強い決意を持った瞳だった。
自分にはそれほどまでにさせる理由は分からなかったが……
「分かった。一緒に行こう」
そう言ってくれる人に、せめて自分は応えたいと思って、大和の手をとる。
それに対して大和は何故か少しだけ頬を赤らめたが、しかしすぐに頷いた。
『接敵!まずは一つ撃ち抜く!』
『こっちも負けないよー!』
聞くと、既に01と02が交戦を開始したようだ。
遅れるわけにはいかない。
「君が護ると言うのなら」
刀を抜きながら大和へ向け言う。
「自分も、この刀に誓って言おう」
自分に対して、大和に対して、皆に対して。
「『護り通す』、今はその為に、戦うと」
目の前の敵を切り伏せて、燃え盛る海の上を駆け抜けた。
皆さんお気付きかと思いますが、『護る』というワードがキーになってきます。
これからちょくちょくこんな感じの外伝を投稿したいと思っています。
01とか02はまたの機会に紹介していきます。