私の生活環境が少し変わり、
長らく更新できなかったことにお詫び申し上げます。
これから、少しずつ投稿していこうと思っております。
どうかこれからもこの作品をよろしくお願い致します。
ドアを開けた先にいたのは、一人の男性―――提督のような―――だった。
海軍第二種軍装を着用し、執務用だろう机に座っていたその人物は、
入室した私を見て、徐に立ち上がった。
そして、私の目の前に来て、そこで立ち止まった。
……背が高い。
私より十五cm程は大きいだろう。
その所為で、少し緊張が走る。
やがて目の前の彼が口を開いて、こう言った。
「初めまして。そして、ようこそ。
ラバウル第一鎮守府へ。」
初めは少しだけ険のある顔だったが、今ではすっかり柔和な笑みを浮かべていた。
少しだけ、安堵する。
「私は『
海軍少将を務めている。
また、この鎮守府を預かる提督でもある。」
……?
どうして自分の名前を言ったのだろう?
前の提督は言っていなかったが、それが普通ではないのだろうか。
私の疑問は解消されないままだったが、
少し間をおいて、彼―――榊原提督―――が再び口を開く。
「一つ、聞きたいことが。
君にとって、提督とは、どのような存在なのだろうか?」
―――どのような存在……
少しだけ考えてみる。
思い出すのは、呉での提督。
思えば彼は、非常に出世欲が深い人間だった。
そして私たち艦娘は、その出世のための道具だった。
出世の為ならば……
私たちに愛想をふりまく。
私たちに優しく接する。
私たちに褒美を与える。
しかし、少しでも私たちが彼の満足のいく結果を出せなかった場合は……
私たちを虐げる。
私たちを罵る。
私たちを酷使する。
「私にとって、提督とは……
上手く言えませんが、ただ一つだけ言えることが。
それは、『上官』であることです。」
私がまだ『艦』だった頃。
『後方』で「死んで来い」、と命令する上官がいたことを覚えている。
危険な戦場へ兵たちを行かせ、上官である彼らはそこへは行かず。
ただ机上の空論で練り上げた作戦に従わせ、兵たちを殺していた上官がいたことを。
「今の私は、そのような感想しか言えません。
少なくとも、私が呉で見た提督は、それ以上の存在ではありません。」
気が付けば、自分は握り拳に力を強く込めていた。
……過去のことは、やはり忘れられない。
呉での出来事、
そして、『艦』の時に見た様々な光景。
―――自分も、その命令で―――
「君は、強いな。
しかし、それ故に、脆い。」
ふと、目の前にいる提督が口を開く。
俯きながら考えていた瑞鶴が顔を上げ、
その提督の顔を見る。
―――悲しんでいる?
彼は、沈痛な面持ちだった。
顔に浮かべているその表情は、瑞鶴にとっては意外だった。
提督という者が、こんな表情をするのか、そしてしていただろうか。
自分のこと以外で、こんなにも悲しそうにするものなのだろうか。
そもそも、たった二度の発言で、それもあの内容で、
どうしてそんな表情を。
『貴女が考える提督よりも、ずっと……』
ついさっき、翔鶴姉が話していた事を思い出す。
―――『軍人らしくない』―――
確かに、そうなのかもしれない。
それも、将官クラスの軍人が、だ。
「ありがとう。君の気持ちは伝わった。
君はそれを話してくれた。
ならば自分も、少しだけ、自分の事を話そう。」
一拍置いて、提督が口を開く。
「私は、君たちの『司令官』でありたいと思っている。
決して、『上官』でも『上司』でもない。」
司令官……?
上官でも上司でもなく?
「まだ、その意味が分からなくてもいい。
ただこれが、自分の所信表明だ。」
戸惑う表情を見せた私を見て、なのか。
提督はもう一つ言葉を添えた。
すると、ふと提督が手を差し出してきた。
「まずは、握手をしよう。
友好関係というのは、これからだろう?」
どうにも分からない。
彼が何を望んでいて、何を得たいのかが。
自分が知っている提督とは違う、ということだけは分かるが。
ただ、何となく。
あくまで直感だが、彼は手を取るべき人だと思った。
もし彼が『司令官』という『上官』でも『上司』でもない存在ならば……
「私は、貴方に少しだけ期待します。
ですがもし、私の期待にそぐわない人物であるなら……」
―――貴方を爆撃しますから―――
言おうとして、言わなかった。
初対面の相手、しかも提督相手だからだ。
まあ、気まぐれもあるが。
翔鶴姉が話す姿はとても楽しそうだったから。
翔鶴姉がそこまで楽しそうだった理由に興味があるから。
「フフッ。
君は中々面白い者のようだ。」
その言葉を聴いて、私は彼の手を握る。
「翔鶴型航空母艦二番艦、瑞鶴。
只今ラバウル第一鎮守府に着任しました。」
次回は、少しだけ戦闘シーンを入れたいと思っています。
私はあまり戦闘シーンを書いたことがないので、
そこはどうかご容赦ください。(~_~;)