誓いは彼女の為に    作:ユリシー

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 毎度お詫びから始まる前書きもどうかと思いますが、
 先ず一言言わせてください。

 
 済みませんでしたっっっっっっっ!m(__)mゴメンナサイ


 皆さんに謝るべき事は二つ。

 一つ目は、投稿間隔が空きすぎていること。
 これは申し開きも出来ません。

 二つ目は前回の後書きでの一言。
 『戦闘シーンを入れる』ということ。
 これに関しては、同時に投稿する五話でご覧頂けると幸いです。

 前書きが非常に長くなりましたが、本編をお楽しみ下さい。 


四話 襲撃

 私の思考が中断されたのは、そのほんの僅か後の事だった。

 

 突然鳴り響くけたたましい音。

 聞くだけで人を不快な思いにさせ、とっさに防衛本能を呼び起こす音。

 そんな音の正体は、戦地に程近いここにおいて一つしかない。

 加えて、私が呉で何度も聞いた音。

 

 そう、警報だ。

 

 「提督、敵の襲撃です!」

 

 執務室の扉を開け放ち、そう言って来たのは大淀だった。

 そして私の予測も、外れていなかったのが分かった。

 

 「敵の座標、規模、そして周囲の味方艦隊の数の報告を。」

 

 提督はそれに動じた素振りは見せず、冷静に対応していた。

 ここは最前線であるから、だろう。

 歴戦の提督であることは、まず間違いはなかった。

 

 (呉の提督は、こんなに冷静じゃなかったな……)

 

 彼は、海軍に勤務してもう十年は経っていたはずだが、

 それでも突然の襲撃となると、かなり慌てふためいていた。

 そんな者はまず、この前線には配属されるはずがないだろうが。

 

 「了解です。」  

 

 大淀が、状況を説明を始める。

 

 その話をまとめると、

 まず、敵は当鎮守府より北西に五十キロに位置している。

 そして規模としては、戦艦五隻、空母二隻、重巡三隻、その他護衛艦二十隻余り。

 味方艦隊は、哨戒中の水雷戦隊一個で、戦力に不安があるという。

 また、すでに交戦を開始しており、救援に向かう必要があるとのこと。

 

 「私が出よう。」

 

 提督が短くそう告げた。

 すると、徐にそばの太刀掛から刀を取り、立ち上がった。

 

 「え……

  ちょっと待ってください。

  まさか、提督ご自身が出撃されるおつもりですか!」

 

 軍人という者は、刀を手にして戦場へ往く。

 それが礼節というもので、刀を佩しておきながら戦場へ往かぬ、ということは有り得ない。

 

 それを承知の上で刀を取っているのだとしたら……

 

 「ああ、勿論だ。

  言っただろう?

  私は『上官』ではなく、『司令官』だと。」

 

 ―――言葉が出ない。

 おかしい、余りにも馬鹿げているとしか思えない。

 直感で分かる。

 この提督は、―――他とは違うと。

 この提督は、―――常人(ただもの)ではないと。

 

 「大淀、鎮守府近海に、待機中の第三水雷戦隊を回してくれ。

  戦艦中心の水上打撃部隊は戦闘態勢へ。」

 

 「了解しました。」

 

 一礼をして、大淀は執務室を後にする。

 提督ほどとはいかなくても、彼女も十分に素早く対応している。

 前線部隊の実力を垣間見たような気がした。

 

 「それと……翔鶴、君にも頼みたい。」

 

 「はい、何でしょう提督。……私のこと、お忘れになっていたのかと……」

 

 冷静な所作ながらも若干食い気味になってそう答える翔鶴姉。

 ……うん。何だか変だ、翔鶴姉。

 私が知っている翔鶴姉は、自分の感情を表に出すようなことはしないはずなのに。

 

 その発言に対し、提督は、すまない、と気まずそうに謝罪していた。

 さっきまで冷静だった提督がそういう風にしているのは少し可笑しかったけれど。

 

 「それでだが、君に航空隊の編成を頼みたい。

  空母航空隊、必要であれば基地航空隊も。それを使って戦場への航空支援をしてほしい。」

 

 「了解しました。では、私からも一つ、御願いを。」

 

 そう言うと翔鶴姉は私に一瞬目配せをした。

 

 「瑞鶴を、出撃させても宜しいでしょうか。」

 

 「えっ……ええっ!?」

 

 思わず声が出てしまった。

 ―――ここに来て直ぐなのに、もう出撃!?

 

 「瑞鶴の驚き、もっともだ。こちらへ来てまだ間もない。その上慣れない環境だ。

  今回は待機させても良いのではないだろうか。」

 

 提督も私と同じで、その提案に驚いた様子だった。

 それに加え、出撃にも消極的だ。

 

 「ですが提督。瑞鶴の技量が何れ程か、一度ご覧になるべきです。

  将来は『飛鷹先輩』と肩を並べられると思うのですが。」

 

 翔鶴姉がそう言い終わると、提督の目付きが変わる。

 「本当か。」と、今までより少し低い声で尋ねる。

 

 ―――飛鷹さん、という人は、それだけ強い人なんだ。

 その人がとても気になったが、それと同時に、自分は翔鶴姉に其ほどの期待を持たれているということに驚いた。

 

 「ええ。私が保証します。妹の実力は折り紙付きですよ。」

 

 ………相当期待されている。

 お陰で私の緊張もどんどんゲージが貯まっていき、終いには顔がひきつりだした。

 

 「行けそうか、瑞鶴?決めるのは君自身だ。

  君の意見を尊重したい。」

 

 提督にそう言われて、漸く冷静になれた。

 自分の状態を客観的に分析していく。

 

 体調は……問題ない。機内は快適だったし、不調はないはずだ。

 艤装は……問題ないだろう。確認はしていないが、前と同じままであれば全く問題はない。

 心構えは……少し引き締め直そう。自分は瑞鶴。『航空母艦瑞鶴』だ。

       その誇りを胸に、今日まで鍛練をしてきた。その努力は、決して裏切らない。

 

 「……出撃、させて下さい。いえ、します!

  私は、今までよりも前に進みたい。立ち止まる、なんてことはしたくないんです!」

 

 気付けば口にしていたその言葉。それに勿論嘘はなく。

 恐らくここに来てから一番の声で言い切ったその言葉が、私の紛れもない真意だ。

 

 「……分かった。君が出撃するからには、この刀に誓って言おう。

  『必ず護り通す』と。私の戦い様、見届けてほしい。」

 

 行こう、と言って提督は執務室を後にする。私と翔鶴姉も、その後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




 ようやく提督の出撃です。
 (次も提督の出番が少ないのは内緒!)
 

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