誓いは彼女の為に    作:ユリシー

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 前回も触れましたが、今回は戦闘回です。
 
 拙い部分も有るかもしれませんが、どうかご覧あれ。


五話 背水

 穏やかな波が立ち、心地よい風が吹いていた場所に、砲弾による水柱が立ち始める。

 つい先程まで南国の日常があったその場所は、一瞬にして崩れ去っていた。

 

 「回避に集中しろ!反撃のことは考えるな!」

 

 深海棲艦とそれに追われる艦娘達。

 その艦娘の先頭で声を張り上げて指示を飛ばしていたのは、軽巡『天龍』だった。

 

 ラバウル第一鎮守府で報告に上がっていた水雷戦隊は、天龍を旗艦とする第四水雷戦隊だった。

 軽巡二、駆逐四の小規模な戦隊。

 おまけに駆逐艦達はまだ練度が低い。

 天龍ともう一人の軽巡、『由良』は十分以上の練度が有るものの、駆逐艦を庇いながらでは実力を発揮出来ない。

 

 「天龍さん、どうする?このままじゃ、誰か追い付かれるかも。」

 

 由良が天龍に対して問いかけた。

 天龍はそれを受けて回避行動をしながらも考える。

 

 由良の言う通り、不味い状況ではある。

 駆逐艦達は戦場に慣れておらず、戦闘開始から十五分経った現在、疲労の色が見えてきている。

 また、それに加え、敵艦載機の姿が認識出来ていない。

 対空装備も十分とは言い難い。

 

 「回避に専念だ。提督はそう言った。」

 

 打開策が思い付くわけでもなく、苦し紛れにそれしか言えなかった天龍。

 だが、ただ一つ光明が有るとすれば、提督が来ることだ。

 

 ……アイツが来れば、間違いなく勝てる。

 それだけは揺るぎない事実だと、天龍は思っていた。

 

 「とりあえず、由良、お前は艦隊の最後尾へ。遅れてる奴を後ろから押してやれ。」

 

 「了解。」

 

 二つ返事で、彼女は了承した。

 最後尾が危険だとハッキリ理解した上でだ。

 

 ―――無茶はしないでくれよ。

 

 内心ではそう思いながら、改めて索敵と回避に努める。

 

 レーダーは装備していない。

 今回の出撃で、このような敵と遭遇するとは思ってもみなかったからだ。

 

 ……感覚を研ぎ澄ます。

 レーダーが無くとも、感覚を用いればおおよそ検討も付く。

 天龍はそれが出来る位には、戦場を駆けている。

 

 後方から、敵駆逐、軽巡合わせて十。

 戦艦はその部隊の更に後方から定期的に砲撃を加えてきている。

 

 空母は見えず。

 少なくとも、砲撃を加えている戦艦部隊の近くではない。

 

 ……定期的な砲撃?

 引っ掛かった部分はそこだった。

 

 決して砲撃後、再装填完了次第、順次砲撃、というわけでも無さそうだ。

 それにしては、砲撃の間隔が空きすぎている。

 

 

 

 

 ―――まさか!

 天龍がそう気づいたときは、もう遅かった。

 

 「敵機来襲!数四十余り!」

 

 由良が鋭く声を上げる。

 そしてその時にはもう、敵機が視認出来る距離まで近付かれていた。

 

 が、そこで天龍は致命的とも言えるミスをしていたことに気が付く。

 

 暗礁地帯。 

 彼女は回避を急ぐあまり、周囲の確認を疎かにしていた。

 そしてたどり着いた―――誘い込まれたの方が適切か―――場所が、そこだったという訳だ。  

 

 こんな所では回避行動など録に取れない。

 歯軋りしながらも、天龍は指示を飛ばす。

 

 「対空戦闘用意!死ぬ気で撃ち落とせ!!」

 

 その指示を受けて、駆逐艦達も対空警戒体勢をとる。

 しかし、その顔は戸惑いと不安で満ちていた。

 

 由良が、それを見て、先ず彼女から対空機銃掃射を始めた。

 駆逐艦も、それに続いて撃ち始める。

 天龍も勿論、その後に続いた。

 

 だが、それで撃ち落とせたのはほんの数機。

 撃ち漏らした急降下爆撃隊、戦闘機隊が、遂に攻撃を始めた。

 

 

 

 

 

 風切り音を帯び、爆撃機から、鋼と火薬の塊が落とされる。

 それは殆どが海中へと没し、盛大な水柱を立てたが、幾つかは艦娘達の至近距離へと着弾した。

 

 何人かの悲鳴が聞こえる。

 天龍は襲いかかる敵機を相手に、果敢にも機銃を打ち込み、何機か撃墜していたものの……

 

 「―――ッ!」 

 

 至近弾の破片が直撃し、体勢を崩す。

 思わず閉じてしまっていた目を開き、直ぐに敵機に追撃をかけようとする。

 

 だが、その少しの隙は、天龍を狙う敵にとってこの上ない僥幸であった。

 

 「天龍さん!!後ろ!」

 

 由良の声にハッとして後ろを見るも、もう遅かった。

 

 ……見下していた。

 こんな物なのかと。

 この程度で終わってしまうのかと。

 

 天龍と目が合った深海棲艦は、そんなことを感じさせるような目で、

 

 

 

 

 

 ―――砲弾を放った―――

 

 

 

 

 肌に感じる爆風と思われる風圧。

 それとともに感じる熱。

 

 感覚が残っている、ということは即死ではないのだと。

 我ながら冷めた分析だ、と思いながらも天龍は恐る恐る目を開く。

 

 しかしそこで目にしたのは、自分の体の一部に砲弾が刺さっている、という光景でもなく、

 また、そもそも自分の体が、もう見るに堪えない状態であった、という事でもなく。

 

 

 

 

 

 ただ目の前で、『刀を手に握りしめている』男の姿だった。

 

 

   

 

 

 「遅くなった。」

 

 短く謝罪の言葉と共に、男は口を開く。

 だがそのぶっきらぼうともとれる言葉とは裏腹に、彼の目には明確な怒りが表れていた。

 

 「提、督?」

 

 由良が気の抜けたような声で、その男に問いかける。

 男はそれに対し、ほんの少しだけ口元をゆるめて答える。

 

 「ああ。私は君達の提督だ。」

 

 そして、と提督は一旦区切り、改めて言い始める。

 

 「君達を護り通すと誓った『司令官』だ。」

 

 

 

 

 




 提督が本格的に戦うのは次回以降となります。

 それまでどうかお待ちください(-_-;)
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