機動戦士オートマタ   作:一種の信者

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10話 人形 工場墜とす

 

 

 

「これが例の宇宙生物の調査結果か」

 

ギレンが提出された書類を読む。

 

先日、見つかった宇宙人の死体とエイリアンシップの調査の内容だ。

通信機から調査した学者が話す。

 

『宇宙人の体組織を調べたところ動物よりも植物に近い事が判明しました。また声帯器官なども退化が見られ何かしらの通信方法があったかと』

 

「エイリアンの船は如何だったんだ?何か新しい発見があったか?」

 

『それに関しては調査中でして…何分、あの船が放置され数百年が過ぎ何処も彼処も経年劣化が激しく…現在、エイリアンの機械のデータサルベージを行ってますが未知の言語も多く中々』

 

科学者の言葉にギレンは継続して調査を指示する。

宇宙人の技術は是が非でも手に入れておきたかった。

ジオンの軍事力の底上げに、もしかすれば元の世界に帰る手段が見つかるかもしれないとも思っていた。

 

『承知しました。ところで調査の終えたエイリアンの死体は如何しましょう?』

 

「…防腐処理した後、博物館にでも送っておけ。いい見世物になる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元キャンプの巨大な広場。

そこにポツンとパスカルが立ち竦む。

遠巻きにアンドロイドやジオン兵がパスカルの姿を見ている。

そして、予定時間となり、轟音と共に突風がパスカルを襲う。思わず腕で目をかばう。

風が止みパスカルが視線を戻すと目の前に緑色をした巨大な物体が鎮座している。HLVだ。

HLVのハッチが開き機械生命体が降りてくる。

 

パスカルはガルマとの交渉で決まった約束通り機械生命体の捕虜を受け取りに来たのだ。

HLVから次々と降りていく機械生命体はパスカルの前に集まる。

その数は数十体おり、正直パスカルの村の人口より多い。

内心パスカルは「数聞くの忘れてた」と呟くが後の祭り。

 

「それでは皆さん、私の村へと案内するのでついてきて下さい」

 

「オオ、あれがネットワークから独立シタゆにっとカ」

「ワーイ、村だムラだ」

「エエ…モット人間ヲ観察シタイ」

 

パスカルの言葉に降りた機械生命体達は様々な反応をしつつパスカルの後に続く。

HLVの中からその様子を見るヨルハのアンドロイド達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元キャンプ内に作られたかなり広い一室。

ジオン軍がブリーフィングルームとして用意した部屋だ。

多数の椅子が並ぶ。アンドロイドが座ってもビクともしない特注品だ。

其処には、2Bと9S、A2が既に座っていた。

 

「A2もガルマ隊に入ったんだね」

 

「ヨルハのアンドロイドの殆どはガルマ隊に編入されましたからね。一緒に頑張りましょうねA2さん」

 

「…お前達と慣れ合う気はないが命令ならそうする。私の事はA2で構わない」

 

「分りました、A2。それにしても、A2の義体はボロボロのようですけど一度バンカーで見てもらった方が…」

 

「いや、既にジオンで軽く調整してもらった。今までより調子は良い方だ」

 

A2は既にガルマの命を受けメイを始めとしたジオンの整備士に調整が行われた。

新しい人工皮膚やジオン側が用意した制服もあったが其処等へんはA2も譲らず見た目は変わらなかった。

キャンプに来た時にアネモネがA2を抱きしめた時は2Bも9Sも驚いた。

三人が談笑していると扉が開きレジスタンスのアンドロイドやジオン兵、地上に来たヨルハが入って来た。

今迄ブリーフィングルームを使っていた事がある2Bと9Sも此処までの人数が集まるのは初めてであり、何かしらの大規模な作戦があると感じた。

 

「あ、9S」

 

「801S!?君も此処に?」

 

ブリーフィングルームに入った801Sが9S手を振る。

9Sもそれに気付き、801Sへと近づく。

 

「ええ、ガルマ指令から動けるヨルハ部隊の総動員を命令されましたから。僕もこうして此処に、メンテナンスはジオン兵に代わって貰いました」

 

「総動員?一体どんな作戦が」

 

「それから9S」

 

「なに?ウブッ!」

 

801Sの拳が9Sにヒットする。

2Bが立ち上がろうとするがA2が止める。

 

「今回、来ていないS型とB型、H型とD型の分です。テレビカメラの前でヨルハの秘密を喋って僕らの立場悪くした罰ですよ。甘んじて受けてください」

 

「…うん。「でも」ん?」

 

「あの放送で皆の心は救われたのは事実です。その点に関しては感謝します」

 

「うん、君もね」

 

そう言って、二人が握手をする。が、

 

「まぁ、僕以外にも殴る人居るんですけどね」

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、ブリーフィングルームにガルマと秘書役のデボルとポポルが入り、皆の居る正面に立つ。

 

「よく集まってくれた諸君。これより作戦説明を行うが……9S、何かあったのか?」

 

ガルマの視線が9Sに向く。

あの後、9Sはブリーフィングルームに来たヨルハ部隊に一発づつ殴られ、頭にコブができ頬が腫れていた。

 

「…皆に気合を入れてもらっただけです」

 

「そ、そうか…程々にな」

 

一瞬、虐められたかとも思ったが2Bが放置しないだろうし9Sもやられたままじゃないだろうと判断したガルマが話を戻す。

デボルとポポルが書類をアンドロイドとジオン兵に渡す。

紙の書類なんて珍しいなとアンドロイド達が思いつつ内容に目を通す。

 

「工場廃墟占領作戦?」

 

書類を読んだ誰かの声が室内に響く。

工場廃墟と言えば此処から西にある巨大な工場廃墟だ。

2Bと9Sが初めて超大型機械生命と戦闘した場所でもある。

内部を調査した2Bも全貌を把握しきれず9Sは自爆した時にデータのアップロードが出来ず覚えていない。

 

「諸君等も知っての通り、工場廃墟は未だに機械生命体の手にあり、今も新しい機械生命体を生み出している。

そこで、我々はこの工場を占拠し敵性機械生命体を排除する。この工場廃墟を墜とせばこの辺りの機械生命体の半分以上は減る計算となる」

 

その言葉に、アンドロイド達から「おお!」と声が漏れる。

今迄、爆撃などで攻撃はしていたが数の差から占領作戦が出来ず機械生命体とのいたちごっことなっていた。

 

「情報によればモビルスーツも歩き回れる巨大空間があるそうだ。現在、我が軍の水陸両用モビルスーツで海中からの侵入口を探してるが発見の報は未だにない。最悪、歩兵のみの占領となる」

 

「水陸両用ってあれかな?」

 

「あの可愛いの?」

 

「可愛かったか?」

 

2B達は二日ほど前に送られてきたモビルスーツを思い出す。

焦げ茶色をした全体的に丸みの形状をしたモビルスーツでザクに比べると三頭身ぐらいだが意外と女性型アンドロイドに変な人気が出てる。「モビルスーツの名は確か、アッガイでしたっけ」と呟く9S。

 

「あの、質問して良いですか?」

 

アンドロイドの一人が挙手して聞く。

9Sと同じスキャナータイプだった。

 

「ふむ、4Sだったな。何かね?」

 

ガルマがS型の名を言った直後にA2の目が鋭くなった。

 

「は、はい!如何して占領なんですか?破壊した方が手っ取り早いと思いますが」

 

機械生命体の拠点なら占領より破壊した方が早い。

何しろ、機械生命体はアンドロイドより早く出来る。

アンドロイドも機械生命体の拠点を占領しようとしなかった訳ではない。

出来なかったのだ。

占領しようと戦えば数に勝る機械生命体との消耗戦となり最終的には押し潰される。

それなら、中に居る機械生命体ごと拠点を破壊した方が断然いい。

アンドロイド側が機械生命体の情報が少ない原因の一つでもある。

 

「確かに破壊するだけなら数機のザクだけで事足りるのは事実だ。…ジオンではあるプロジェクトが立ち上がった」

 

「プロジェクト?」

 

「その点に関しては私が説明しよう」

 

ドアから一人の男性が入ってくる。

9Sと801Sはその男性の顔に見覚えがあった。

 

「ギニアスさん!」

 

「おお、ギニアス少将。君が直接来たのか」

 

「え?少将!?」

 

「ギニアス・サハリンだ。少将とはいえ技術少将だからあまり気にしなくていい。それで、プロジェクトの方だがこれを見るがいい」

 

「アプサラス計画?」

 

前方のモニターにプロジェクト名と機体の完成予想図及びスペックが書かれているが、それを見たアンドロイド達は驚くばかりだ。

 

「あんな大きさで空を自由に飛ぶのか!?」

「出力がとんでもないぞ。超大型機械生命ですら相手にならないんじゃないのか!?」

「こんな物本当に出来るのか!?」

 

「私のアプサラスが完成すれば機械生命体なぞ雑魚も同然。アプサラスのメガ粒子砲なら地面の下や山の中に隠れても無駄だ。だが、その為の研究開発にはかなり広い施設が必要でな。

此処の施設では手狭なのだ」

 

「本当にこんなものが出来るんですか!?」

 

9Sが質問する。

 

「無論だ、私の計算では一年以内に完成する見込みだ」

 

「一年!?」

 

ギニアスの発言に周りのアンドロイド達がザワザワしだす。

恐るべきジオンの科学力。

次々と新型を繰り出し一定以上の戦果を上げ機械生命体も震えあがる人間たちの軍隊。

アンドロイド達の期待の星。

ただ、心配なのはギニアスが説明の途中に何度も咳払いしていることだが。

 

「っと言うわけだ、諸君。今までアンドロイドが機械生命体の拠点を占領した記録はない。無いのなら我々が前例を作ればいいだけだ!」

 

ガルマの言葉にアンドロイド達が「おおおおおおおお!!」と歓声が上がる。

工場廃墟占領作戦が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達!今度の作戦は重要なものだ。他のアンドロイド達に遅れをとるな!」

 

「「「「おー!!」」」」

 

「ジークジオン!」

 

「「「「ジークジオン!」」」」

 

作戦開始の前に準備期間として3時間ほど時間があり作戦に参加するアンドロイドやジオン兵はそれぞれの時間を過ごす。

今のヨルハ達みたいに気合を入れる者。

武器やチップの整備する者。

作戦参加に命じられなかった者に自慢する者。

そして、2Bや9Sのように座って周囲を見る者。

 

「彼女たち、張り切ってますね」

 

「ガルマ指令の初めての大規模な作戦で浮かれてる。ところで9S,あの変なヘリは何?」

 

9Sが2Bが指さす方を見る。

其処には左右に大型のローターをつけたずんぐりむっくりな機体があった。

 

「あれはファット・アンクルですね。工場廃墟の外側の通路に行く別動隊が乗り込む機体です」

 

9Sの説明に2Bが「そう」と言う。

今回の占領作戦は二つのチームで行われる。

一つは正面から突入部隊、二つ目はファット・アンクルで工場内外側通路に侵入する部隊。

2Bと9Sは正面から突入する予定であった。A2は、ファット・アンクルに乗る別動隊となった。

 

「それにしても、工場廃墟か。……あっ」

 

「どうしたの、9S」

 

「いえ、以前にオペレーターさんに頼まれていた仕事を思い出しまして」

 

9S以前、専属オペレーター21Oに工場廃墟の端末に人類の過去記録を調べて欲しいと言われていた。

ヨルハの真実とかのゴタゴタで今迄放置していたのだ。

 

「そういえば私も」

 

「確か、16Dさんに頼まれた」

 

「11Bの遺品探し」

 

11Bとは、工場廃墟にある超大型機械生命の破壊の為に2Bと一緒に降りた仲間であり、途中で撃墜された。

その後輩であった16Dが11Bの遺品を欲しがった為、工場付近を探索しようとしていたが9Sと同じヨルハのゴタゴタがあった。

 

「あの、少しよろしいでしょうか?」

 

2Bと9Sの談笑に一人の女性が話しかける。

声のした方に向くと薄い緑色の髪の女性が此方に話しかけていた。

傍には変わった髪型をしたジオン軍人が居る。

 

「はい、何でしょうか?」

 

「貴方達も工場の占領に参加するんですよね?」

 

「うん、そのつもり」

 

女性の言葉に2Bが答える。

 

「この度は、兄さんの無茶に付き合わせてしまい申し訳ありません」

 

突然の女性の謝罪に焦る2Bと9S。

守るべき、敬愛する人間が自分達に謝罪するなぞ二人には耐えられなかった。

付き人の軍人が女性に喋る。

 

「アイナ様!そう人前で頭をお下げになるのはいけませんと…」

 

「そ、そうですよ。特に僕達みたいな人形に。もったいない!」

 

軍人に同調する9S。

それに首を縦に振る2B。

 

「いえ、身内の者が謝罪を示さねば兄さんは止まりません。それから貴方、人形とはいえ、同じ志を持つ同士。自分を卑下する必要はありません」

 

「は、はい!」

 

アイナ・サハリンの言葉に9Sが顔を赤くする。

それを見て、ムッとする2B。

それから、しばらく話して二人と話し終えたアイナは別の場所に行き、付き人のノリス(アイナが紹介した)も付いていく。

 

「…9S、鼻の下延ばしすぎ」

 

「え!?」

 

「美人だったもんね。あの人間」

 

「ええ!た、確かに美人でしたけど、高嶺の花と言うか!?僕的には2Bの方が好みと言うか」

 

「そろそろ作戦が始まる。行くよ9S」

 

「2B、待って下さい。僕の話を…トゥビーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦が開始され正面からアンドロイド達が入る。

同時刻には戦闘ヘリが護衛したファット・アンクルのハッチが開きアンドロイド達降下する。

 

「よし、敵の邪魔は居ない。降りるなら今のうちだ!」

 

中に入ったアンドロイド達は内部へと進み次々と敵性機械生命体の排除をする。

突然の襲撃に、機械生命体も対応が遅れたが相も変わらず数の優位で押し切ろうとするがヨルハ部隊が大多数参加しており機械生命体は次々とスクラップとなっていく。

工場の周りはミノフスキー粒子が散布され外は勿論、内部もネットワークが寸断され始め機械生命体は完全に烏合の衆と化す。

中には、戦いを放棄し降伏するものも出始め、その機械生命体を尋問なりハッキングなりして工場の地下空間をも制圧する。

途中に9Sが目的の端末を見つけてハッキングしたりとやり放題だった。

そして、2Bも目的の物を見つける。

 

『発見;ヨルハB型。11Bの義体』

 

「こんな所に居たなんて。あの時、居なかった筈」

 

そこは、嘗て2Bが工場内に侵入し、防衛用の大型機械生命体と戦った場所だった。

 

「あの後、此処まで来たんでしょうか?」

 

「ブラックボックス反応は…当然ないか」

 

『推奨;使用可能な武器の回収。また、記憶領域内に断片的な記憶データを確認』

 

ポッドの言葉を聞いた2Bは義体の傍にあった武器を回収し残された記憶データを見る。

その記憶データには「脱走計画」と書かれていた。

 

「脱走計画…」

 

「彼女もヨルハの秘密を知ったんでしょうか?だとしたら皮肉ですね」

 

「武器はバンカーにいる16Dに渡そう」

 

「…今更ですけど、渡す必要あります?11Bって人、新しく造られてましたけど」

 

2Bが依頼を受け三か月以上、11Bは新しく造られ任務をこなしていた。

 

「…多分、渡した方がいいと思う」

 

工場の占領は成功した。

地下に居た大型多脚兵器の破壊及び工場の頭脳と言える場所を占領しジオン軍が乗っ取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、バンカーに戻った二人。

 

「私の依頼、覚えていたんですね。偉いですよ」

 

「頭を撫でて子供扱いは止めてくれませんか?遅くなったのはすみませんけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩の武器ですか?もういりませんけど。それより聞いて下さいよ、2Bさん。新しく生まれた11Bが私の彼を奪おうとしてるんですよ!あ、彼っていうのはかっこいいジオン兵なんですけど…」

 

「……」

 

その後、30分程ジオン兵との馴れ初め話を聞かされる2B。

 

 

 

 

 

 

 

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