「よし、P1、P2、P3、今日の試験は終了だ。帰艦しろ」
オリヴァー・マイが通信機で返って来いと言う。
第603技術試験隊は、現在別の宙域でP1を始めとしたアンドロイドの操縦試験をしていた。
「前よりだいぶ、動きも良くなりましたね。新型のモビルスーツを廻して貰ったかいがありますね」
「新型と言っても強行偵察型ですけどね」
三人が乗っているのは、偵察活動が目的のモノアイを大口径カメラに変えた強行偵察型のザクだった。
偵察型ゆえ戦闘能力は高いとは言えないが機動性が中々あり、三人も最初は四苦八苦と操縦していた。
「新型を廻して貰えるだけありがたいと思いなさい。…あれ、P3が動いてないわね」
モニク・キャデラックの言葉にマイがモニターを見ると、P1、P2のザクは此方に向かっていたがP3のザクだけは微動だにせず一点を見続けたていた。
「本当だ、P3、如何した?P3、戻ってくるんだ」
マイが呼びかけるがP3に反応はなく、P1、P2に引っ張って来るよう命令するかと考えた時にP3が反応を示した。
『ごめん、中尉。私、行かないと』
P3の乗るザクがヨーツンヘイムとは別の場所にブースターを加速させる。
「なに?脱走?」
「待つんだ、P3!止まれ、止まるんだ!P1、P2!P3を追え!艦長」
「ああ、もう。全速前進!P3のザクを追え」
内心、反抗期かと思った艦長だったが追わない訳にも行かず3機のザクに続きヨーツンヘイムを進ませる。
追跡は数分以上続き、ヨーツンヘイムのモニターに人工物が映る。
「衛星?」
「アンドロイドの衛星か?」
モニターには衛星が映る。
ジオンで造られた記録はなくアンドロイドの物であろう。
しかし、その衛星は放棄されたのか所々ボロボロであった。
「…アンドロイド側のデータにあったわ。衛星の名は『ラボ』。アンドロイド達の兵器の実験研究用の施設みたいね。
この世界の8年前に大規模な火災が発生して多数の死傷者が出たようね。その後、修理するより新しい衛星を造った方が早くコストの関係でこの衛星は破棄されたそうよ」
データベースを検索したモニクが内容を説明する。
マイが「火災か」と呟く。
宇宙に住む彼等にも火災事故は他人事ではなかった。
衛星の周囲にP1、P2のザクを見つけ通信をかける。
「P1,P2、P3の行方は分かったか?」
『はい、中尉。P3はザクを降りて廃棄衛星に侵入しました』
P2が指さす方にP3の乗っていたザクがあった。
丁度、衛星の陰になってる場所でヨーツンヘイムからは見えにくい場所だった。
「お前達は其処で何をしていた」
『はっ、ザクを降りて探せとは言われてませんから』
その言葉にマイとモニクは眉間に皺を寄せる。
P1とP2は命令に忠実だ。忠実過ぎて命令通りの事しか出来ない。想定外の動きに臨機応変な対応が出来ない。
本来ならP3がその穴埋めをするのだが、P3が居なければこれだ。
「今後の課題ね」
モニクが呟く。
今のままでは正式に量産できない。
「しょうがない、僕が行くよ」
溜息をついたマイが宇宙服を着る為にこの場を後にする。
「それで、何で俺も行かなきゃならないんでしょうね?中尉殿」
「どうせ暇だったろ?ワシヤ中尉」
「暇じゃねえ…確かに暇だったけど…」
廃棄された衛星にマイと同僚のヒデト・ワシヤが中に進む。
廃棄されただけあり、中もボロボロで無重力で進む。
最も、宇宙暮らしの長い彼等にとって無重力は慣れたものである。
『中尉、その辺りにP3が居ると思うよ』
衛星の一部屋一部屋調べていくと外に居るP1から通信が着た。
そのもう一つ奥の部屋の扉付近にP3を見つけ近寄る。
「P3!此処に居たのか」
「全く、脱走なんて本来は軍法会議ものだっつうの。…聞いてるか?ん?」
二人の声に反応しないP3にワシヤがP3の視線を追うと黒焦げとなった人型が幾つもあった。
「げっ、これって!?」
「アンドロイド達の死体か?再利用出来ないと放置されたのか?」
マイの言葉にワシヤは「うへぇ」と言葉を漏らす。
人間の死体じゃないとはいえ見ていて気分の良い物じゃない。
ワシヤもマイもさっさと艦に帰りたかたが、P3が中に入り死体を触る。
「おい、P3」
「平気で触るな!おい」
二人の声を無視してP3は全員の遺体に触り、その内の二体に寄り添うように座る。
「中尉、この子達を助けてあげて」
「助けてって、そいつ等、死んでるか壊れてるんじゃないのか?」
ワシヤの言葉にP3が首を振る。
「分からない。でもこの子達を放置できない」
P3の言葉に暫し思考を巡らせるマイはP3の触る死体に触れる。
「!?これはブラックボックス!?」
死体となったアンドロイドの動力炉を見たマイは息をのむ。
ヨルハのブラックボックスが何故此処に?
施設が放棄されてから8年ということは、このアンドロイド達はプロトタイプ?
他のアンドロイドは、……駄目だ、核となるブラックボックスもメモリーも破壊されてる。残りの一体は普通のアンドロイドのようだな。…記憶データの破損があるがまだ動かせるか?
この二人は……幸いブラックボックスに外傷は無い。一体の方は攻撃されて破壊された痕があるが急所が外れてたようだ。
「運ぶぞ。手伝えワシヤ。P3もな」
「中尉」
「ええ!運ぶの!?本気かよ!?」
マイの言葉に笑みを浮かべるP3と嫌そうな顔をするワシヤ。
文句を言いつつワシヤが手伝い、二体のアンドロイドをヨーツンヘイムへと運び。
「艦長の許可位取れ」
「貴方は一体何しに行ったの?」
同僚や艦長の冷たい視線を受けるマイだが、「P1達の評価試験もあるから合間合間でしか調べられないか」と考えるだけで気にもしなかった。
その後、独断専行したP3は叱られヨーツンヘイムのトイレ掃除を一月やる事となった。
砂漠地帯。
今日も今日とて砂を含んだ風が吹く。
そんな中、9Sが空を見る。
「9S?如何したの?」
同行していた2Bが上の空の9Sを見て、そう聞く。
「あ、いえ。ちょっと月が見えたので」
9Sの言葉に2Bも空を見上げる。
太陽で明るく確認しずらいが薄っすらと丸い白い物が見えた。
「見えた」
「月の裏側の宇宙に10億の人類が居るんですよね。2B、もしもジオンがこの世界に現れずヨルハ計画が進んでいたら、僕達ヨルハ機体はどうなってたでしょうね?」
「仮定の話をしても仕方ない。でも、そうなっていたら君も私も無事じゃなかったと思う」
計画通り、時間が来たらバンカーのバックドアが解除され機械生命体に乗っ取られて全滅。
晴れて、月面に人類が居るという嘘が完成する。
想像に難しくない。
「たぶんそうなっていたでしょうね。2B、今だから言えるんですけど、偶に僕達が何の為に戦ってるのか分からない時があったんです。
顔も知らない人類の為に戦え。地球を取り戻す為に戦え。人類を大地に返す為に戦え。
そうインプットされ戦って来ましたが、ふと考えてしまうんです。自分達が何の為に誰の為に戦ってるのか?先も見えない、終わる事のない戦争。戦って戦って戦い抜いて僕達は死ぬ。
それが頭に過ると悲しいという気持ちが溢れてくるんです。たぶん、感情を持つことを禁止にした理由の一つだと思います。こんな気持ちで戦うのは辛すぎる。
でも、今は違うんです。
ジオンと…人間と一緒に居るのが楽しい。人間と一緒に戦うと勇気が湧いてくる。そんな気がするんです」
「うん。私も同じ」
9Sの言葉に同意する2B。
事実、2Bも人間に会えたおかげでE型の任は解かれ9Sと一緒に居られるだけでも十分であった。
「それにしても、バンカーに戻った時は凄かったですね」
「ジオン兵が沢山いて他の子も忙しそうだった」
現在、バンカーはガルマ隊の宇宙拠点として改造されモビルスーツの保管場所や小さいが製造ラインも造られヨルハ部隊とは別のジオン兵の為の部屋の建造などで遥かに大きくなっていた。
関係ないが、ジオン兵と同じ部屋がいいと言い出すヨルハ隊員も居たらしい。
「物資とか大丈夫なのかな?」
バンカーで消費する物資は貴重だった。
宇宙開発をしていないアンドロイド達は地球から物資を打ち上げ使用している。
機械生命体の防空システムに何度、貴重な物資が潰されたか。
「聞いた話では、月や隕石から鉱物資源を取り出してるとか、それからオデッサ、ジャブロー、中央アフリカの物資打ち上げも順調でジオン本国からも結構な量が送られてるらしいです」
つまり、以前のように物資の少なさに悩まなくていいという事でもある。
最も、上層部は出来る限り節約したいのが本音だが。
「余裕が出来るのは良い事」
「そうなんですけどね。本当なら僕達も休暇を貰っていた筈なんですけどね」
そう言って、9Sが溜息を漏らす。
本来なら、工場制圧したアンドロイドやジオン兵には褒賞として休暇が与えられる筈だった。
しかし、ガルマの作戦成功及びアンドロイド達にとって初めての偉業ということでガルマが祝いとして本国から酒を大量に取り寄せ兵達に振舞った。
お祭り騒ぎとなりジオン兵はアンドロイド達と酒を飲みまくった。
幸い、デボルとポポル以外のアンドロイドは酒を飲んでも酔う事はなかったがその分酔っ払いの相手をする事になった。それでも、酔っ払いの相手をするアンドロイドはどこか楽しそうだった。
その結果、ジオン兵の半分近くが二日酔いでダウン。
アンドロイド達は、今度は二日酔いの看病をする事になったが、やはりどこか楽しそうだった。
少し気になるのは、アンドロイドの女性が酔い潰れた若いジオン兵を連れて何処かに行った位だ。昔、アーカイブで読んだ「お持ち帰り」だろうか?
その中には、今日別の任務があったジオン兵が居たのだが二日酔いで動ける状態ではなく、やむなく2Bと9Sに依頼することとなった。
「いいじゃない。人間の役に立つのが私達の使命」
「それはそうなんですけど、ガルマから『あまり兵を甘やかさないように』とも言われてるんですけど。
まぁ、オペレーターさんからの依頼も出たんで別にいいんですけどね」
9Sが何度目かの溜息を零し砂漠を走る。
目的地の懐かしき「マンモス団地」へと。
現在、マンモス団地では数機のザクが行き来する。
その内の一体が一棟の団地の前に立つ。
すると、団地の中に入っていたジオン兵とアンドロイドが出てくる。
「OKだ。もう中には目ぼしい物はない。開始してくれ」
ジオン兵が通信機でそう言った直後にザクが団地を解体しだす。
複雑な表情でそれを見るアンドロイド達。
彼らが何をしてるかと言えば、此処をモビルスーツの砂漠試験場にする為にモビルスーツも余裕で通れるようにしていたのだ。市街地戦の戦闘シミュレーションにうってつけだと判断された。
だが、それとは別に団地で使われている鉄筋及びコンクリートの回収もしていた。少しでも物資の節約をする為だ。
アンドロイド達としても、人類遺産再生管理機構の名目で残して置きたかったが、資源の再利用及び人間の命令で従っていた。
その代わり、団地の内部にある物は欲しければ持ち帰っても良いと許可されたが。
そして、9Sも探し物を見つける。
「…家計簿って書いてあるな。これも写真に撮っておくか」
9Sが汚れた家計簿のを写真におさめる。他には小さな靴や壊れた玩具なども記録した。
「ポッド、記録したデータをオペレーターさんに送って」
『了解』
ポッドがデータを送信してるのを確認して9Sが場所を移動する。
その直後に、ザクが9Sの近くにあった団地を解体する。
移動した9Sの下に専属オペレーター21Oから通信があり、お礼と人間の家族制度について聞いた。
「家族か」
アンドロイドには程遠い言葉だと9Sは思った。
以前に、ケンの家族の写真を見せて貰った時は、これが家族かと納得もしたが「羨ましい」とも思った。
家族の話をするケンの顔が今でも忘れられない。
「機械に家族なんて……。家族か」
9Sが一人呟く。
2Bは、別の手伝いで9Sと別れていたため聞かれなかった。
「もし、2Bに『家族になってください』って言ったら、2Bはどんな反応をするかな」
『解答;不明』
9Sの言葉に答えるポッドの声が何時もより虚しく感じた。
「よいしょ」
一方、2Bはある物を持ち上げ移動していた。
自分とほぼ同じ大きさと重さの機械の塊。
アンドロイドの死体だ。
死体を担いで2Bはジオン軍のトラックへと乗せる。
アンドロイドの死体や機械生命体の残骸も資源である。
こればかりは、ジオンが現れる前から変わらない。
既に、トラックには大量のアンドロイドの死体と機械生命体の残骸が積まれてる。
「おう、2Bご苦労さん。アンドロイドの義体とかはまだあるのか?」
トラックの運転手のジオン兵が2Bに話しかける。
「理由は分からないが、機械生命体がアンドロイドの死体を集めていたからまだ沢山ある」
「そうか、このトラックも満杯になったから一旦荷台をカラにしてくるから俺らが戻って来るまで休んでていいぞ」
「了解」
2Bの返事を聞くと、トラックは駆動音を鳴らしてその場を後にする。因みに電動カーなので排気ガスは出ない。
トラックを見届けた2Bが移動しようとして、用事を終えた9Sが合流する。
「2B、トラックは?」
「荷物が一杯になったから運んで行った」
「じゃあ、仕事は終わったんですか?」
「まだ、奥に沢山のアンドロイドの死体と機械生命体の残骸があるから、それを運ぶのが私達の仕事。次のトラックが来るまで休息をとれって」
仕事が終わってない事にゲンナリする9Sだが2Bの休息と言う言葉に反応する。
「休息なら少し歩きましょうよ、2B」
「でも、トラックが来た時に待ってないと」
「此処から、基地までの結構あります。それまでに帰れますよ」
9Sの説得に「しょうがないな」と思いつつ手を引っ張る9Sに付いていく2B。
因みに、アンドロイドの死体を運ぶトラックは途中でファット・アンクルに荷物を移して戻って来た為、9Sの想定よりも早く戻ってきて待ちぼうけとなり2Bと9Sが謝罪する破目になる。
砂だらけの砂漠。
そんな砂漠に砂ぼこりを上げ、猛スピードで移動する物体が居る。
黒い装甲にザクやグフより太くガッシリした体形、足裏に内蔵されたホバー推進装置により、砂漠でも猛スピード移動できる。
ジオン軍の最新量産型モビルスーツ『ドム』である。
幾つか、量産したドムがガルマの下に送られその内の一機はケンが譲渡した。残りはニアーライト大尉の下に送られる事になったが。
ケンの目前に大型の機械生命体がエネルギー弾を飛ばすが、ドムのホバー走行に次々とかわしヒートサーベルを構え擦れ違いざまに切り捨てる。
切られた大型機械生命体は、轟音を上げ爆発する。
「ふぅ」
最後の大型機械生命体を撃破しケンが一息つく。
すると、離れていた部下の乗るザクも合流する。
「隊長、こっちの小型の連中も片付けたぜ。降伏した奴はなしだ」
ジェイクの報告にケンは「そうか」と答えた。
機械生命体との戦闘で降伏する機械生命体の割合はかなり少ない。
ジオンとしては機械生命体が死兵になられても面倒なので降伏は受け入れていた。
しかし、機械生命体の中には「家族の仇!」や「我々がお前達に何をした」と逆恨みも少なからずあり慎重でもあった。
「それがケンの新型?かっこいいね」
通信機から9Sの声がし、ドムのセンサーが2体のアンドロイドの反応を捉える。
ドムのカメラが9Sと2Bの姿を映す。
「9Sと2Bか、二人とも仕事は終わったのか?」
ケン達も二人が二日酔いで潰れたジオン兵の代わりをしてる事は知っている。
「ちょっと休憩です」
「休憩するんだったら、簡易テントに行ったらどうだ?この日差しは人間にもアンドロイドにも厳しいからな」
休憩と聞いたガースキーが二人に簡易テントに行くよう促す。
この日差しで、ジオン兵とアンドロイドの中には既に熱中症で休んでる者もいた。
「休憩時間をテントで過ごすのもな…まあ歩くと砂が靴の中に入ってうっとしいのは確かなんですけど。あ、そうだ2B。帰ったら一緒にお風呂に入りましょうよ」
「!人前で言う事じゃない、9S」
「お、二人とも仲いいね」
9Sの発言に注意する2Bと冷やかすガースキーとジェイク。
その様子に、ケンがやれやれと呟く。
直後に、団地方面から砂煙が上がり、センサーが敵の反応を捉える。
「敵!?」
「敵の反応だけじゃない、誰かを追っている?」
油断した。
近くにアンドロイド達が居るからといって警戒を解いた途端、機械生命体に追われる事になった。
「はあ、はあ、急げ!」
「は…イ…」
手を引っ張り少年タイプのアンドロイドと一緒に逃げている。
俺の家族であり子供だ。
アンドロイドが人間のように子供を造れる訳がない。
だから、俺は砂漠で壊れかけていたヨルハ機体を修理して自分の子供にした。
いけない事だと言う事は解ってる。後ろめたさに数か月間、俺は仲間である筈のアンドロイドと連絡もとらず会ってもいない。
多分、仲間たちは俺が死んだと思ってるだろうが、それでも構わないと思った。
敵の機械生命体が家族として互いに寄り掛かる姿に感化された俺は仲間達が如何見るかなんて解ってるつもりだ。
だから、他のアンドロイドが滅多に寄り付かないマンモス団地で静かに暮らしていた。
この辺りは、機械生命体も多く普段は警戒していたが、近くでアンドロイド達が居る事で機械生命体もそっちに行くだろうと油断した。
機械生命体に見つかり俺達を殺す為に追跡してくる。
最早、仲間の居る場所にも戻れない俺達は、何とか機械生命体を振り切ろうと逃げに徹していた。
戦おうとは思わなかった。数の差は勿論、武器も無い俺とパーツが足らず動きもぎこちないヨルハ機体では勝負にすらならない。
俺達に出来るのは連中が諦めてくれることだけだ。
「ハア…ハア…アっ!」
ヨルハ機体が地面の砂に足をとられ転ぶ。
俺は、足を止め駆け寄る。
こう言う場合、倒れた奴を囮にして逃げるのが鉄則だろうが糞くらえだ。
仮に生き残ろうが俺はまた孤独になっちまう。…それだけは死んでもごめんだ。
「に…逃げテ…ニゲテ…」
「俺だけ生き残っても意味ねえだろ。家族は一緒に居るもんだ」
目前へと迫る機械生命体に俺は覚悟を決めヨルハ機体、俺の子供を抱き締める。
もし、あの世があるなら一緒に行きたいものだ。
覚悟を決めた俺は目をつぶり最後の時を待つ。
轟音と強風を感じるが覚悟をした痛みは一向に訪れず俺は目を開ける。
其処には俺達を追っていた機械生命体の残骸と黒い巨人が佇んでいた。
「な、何だ!?」
「オ…大きイ…」
機械生命体の新手かとも思ったが傍にアンドロイドが居る事に気付く。
俺の子と同じヨルハのようだ。
「大丈夫ですか?敵性機械生命体は全滅しました、負傷してるならあちらにあるテントで見て貰えますよ。ところでそっちはヨルハ機体のようですが…」
俺の子と同じヨルハ機体の少年タイプが話しかけてきた。
俺達の逃避行は此処までのようだな。
俺は全てのあらましを二人のヨルハ機体に話した。
壊れかけていたヨルハ機体を拾い修理し、家族にしたこと全てを。
「家族にですか?こういう場合はガルマに指示を貰いますか」
「ガルマ?」
聞いた事のない名前に訊き返す。
新しい、アンドロイドだろうか?
「新しい司令官です。現在のキャンプの司令官でジオン地球方面軍司令官で人間です」
はっ!?
後日、俺達はキャンプへと戻ったが以前と比べ大規模な基地に改造された事に唖然とし、人間の司令官に挨拶する。
そして、俺は完璧に修理されたヨルハ機体、32Sとコンビを組んで任務を遂行する事になる。
「それじゃ行こうか、父さん」
「そうだな、32S」
32Sは俺の事を「父さん」と呼んでくれる。
新しく俺に生きる意味を感じた。
砂漠での任務を終えた9Sが服を脱ぎ、シャワー室に入る。
元々はそこまで大きくはなかったがジオン兵が大量に入れるように改造され大人数が利用できる。
それまで、アンドロイド達もそこまでシャワーを浴びる事はなかったが人間と一緒なら入る者が多数居た。
「ふう」
シャワーのお湯を頭からかぶる9S。
砂漠での暑さとは違う心地よい暑さを感じる。
不快な砂粒も全て流れていく感覚が9Sにも感じた。
すると、入口の方からガヤガヤとした賑やかさと人の気配を感じた直後に、多数の人影が入って来た。
今日の任務を終えたジオン兵達だ。
「ん?先客か」
「てか、9Sじゃね?」
その中には、9Sの親しい者もいた。
「あ、ガースキーさんに…えーと」
「ジェイクだ」
「ああ、ノーマルスーツを着てないから分かりませんでした」
「シャワー浴びるのにノーマルスーツ着る訳ねえだろ。そっちこそ眼帯してねえから分からなかったぜ」
「嫌だな、眼帯じゃなくてバイザーですよ」
軽口を言いつつ、シャワーを浴びるガースキー達。
その間も喋るジオン兵達に9Sが笑みを浮かべる。
人間と共に日常を過ごす。人間の為に造られたアンドロイドの願い。
「それにしても、9S。お前細いな」
何を思ったかジェイクが9S抱き上げようとするが、
「…重っ!?」
「僕の体重は130キロ近いですよ」
「宇宙じゃないと無理そうだな」
ガースキーの言葉にシャワーを浴びるジオン兵が笑い出し、9Sも笑う。
人形達の日常は今日も人間と過ぎていく。
「因みに2Bは僕より重いですからね」
「だろうな」
設定本で「ラボ」が火災後、どうなったか書かれてなかったので今回の設定に。
あんまり日常って感じでもないですがその辺目をつぶって貰えれば。