機動戦士オートマタ   作:一種の信者

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14話 人形と壺

 

 

 

 

一週間前。

 

「3,2,1…点火!」

 

隕石地帯で巨大な光が起こる。

数秒にも満たないそれが治まると幾つかあった巨大な隕石がバラバラになっていた。

 

「実験成功!報告書を纏めギレン閣下に提出するぞ」

 

隕石地帯から離れた艦で観測していた科学者が書類に実験結果を書き込む。

その書類には、「ジオン製ブラックボックス開発計画」と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暗い夜の星空って綺麗ですね」

 

「…そうだね」

 

キリマンジャロ基地に到着した2Bと9S達はユーリー・ケラーネ達の歓迎を受けた。

基地は目立たぬように鉱山の中に造られ、機械生命体への迎撃能力も高い。

この辺りの岩盤は非常に硬く、資源採掘に苦労するが機械生命体の地中からの襲撃も分かりやすい事から敢えて鉱山の中に基地が造られた。

現在、2Bと9Sは基地の外を散歩しては、夜空の星を見たりしていた。普段付けてるバイザーも外していた。

 

「昼の国では気付きませんでしたけど、星ってこんなに綺麗なんですね」

 

「うん、月もバンカーで見るより綺麗」

 

機械生命体の襲撃に一応警戒はしているが、二人は夜空の星を楽しむ。

任務を終えた以上、もう直ぐ昼の国のジオン軍基地へと帰るだろうと考えていた。

星や月はバンカーでも何度も見てきたが地上で初めて見た時は言葉も出ない程感動した。

敵の気配が無い事に二人は適当な草の上に寝転がり空を見続ける。

 

「こうしてると、デートみたいですね」

 

「…デート?」

 

『デートとは日付の意味』

 

2Bがデートの意味を知らず聞くとポッド042が答える。

 

「日付?」

 

「いえ、確かに日付が最初だったらしいですが、人類が居た頃は婚前の男女が一緒に遊びに行く事を言ったそうです!何でしたらユーリ少将に聞きましょうか!?」

 

2B達がユーリー・ケラーネとの挨拶時、軽く口説かれたが9Sや4Sがパートナーと知りアッサリと引いた。

それ以来、ユーリーは何かと9S達の面倒を見ていた。

 

「婚前?」

 

『婚前とは結婚前の意味』

 

2Bの質問に今度のポッド153が答える。

その、言葉に2Bの顔が少し赤くなる。

結婚という言葉の意味位、2Bも知っている。何より感情が出やすい9Sが昔から自分に好意を寄せてる事も。

そして、そんな9Sに自分も惹かれてる事を。

恥ずかしさから、身を起こし9Sの方を見る。

9Sも何時の間にか身を起こし2Bの顔をジッと見る。

 

「…ナインズ、今の私は君と一緒に居るだけで幸せ。それだけじゃ駄目?」

 

「僕も2Bと一緒に居られるだけで幸せです。でも駄目なんです。2Bは可愛くて綺麗だから…知ってました?アンドロイド達どころかジオン軍の中でも2Bのファンって多いんですよ」

 

ガルマの配下に置かれたヨルハ部隊のアンドロイドは容姿も優れてる事もあり軍内部でも人気は高い。

特に、2Bタイプの人気はトップクラスにありジオン軍人の間でも多くのファンと尻フェチが居る。

 

最も、一番人気があるのは9Sだった。

あの、生放送で撮られた泣き顔やガルマとのやり取りで「養子にしたい」「息子にしたい」「孫にしたい」「弟にしたい」「彼氏にしたい」など2Bを上回るに人気となっていた。

特に、サイド3ではどうやって撮ったのか写真が出回る程であった。

あの放送以来、テレビ局の中には、9Sと2Bをアイドルにしようと計画し、ギレンが潰す事が何度もあった。

最も、この事実は9Sも知らないが。

 

「僕は…僕は2Bがジオン軍の人に取られる気がして。分かってるんです、僕達アンドロイドは人類の為に存在してる。なのに、……僕は2Bが人間に取られるのが嫌なんです!」

 

「…9S」

 

「2B、そこはナインズって言ってほしいです」

 

二人がお互いの顔を見合わせて名前を呼ぶ。

完全に自分達の世界に入っていたが、ポッドから『報告;ガルマ指令からの通信』と報告され二人は慌てて離れた。

急ぎ、バイザーを付けてポッドからガルマの映像が映る。

 

『任務ご苦労だった、報告は603技術試験隊から受けている。……どうかしたか?二人とも』

 

「いえ…何も」

 

「ええ!何もありませんでしたよ!僕としてはもうちょっと空気読んでほしかったですけど!」

 

9Sが頬を膨らませながら、やや不満を言う。

一瞬考えるガルマだが、まぁいいかと思い直し話を続ける。

 

『報告では、ヒルドルブという新型戦車がかなりの戦果を上げたそうじゃないか。9S、後でヒルドルブのデータこっちにも送って置いてくれ。軍全体で共有されるまで時間が掛かる』

 

「分ったよ。それで僕達は何時戻れば良いの?キリマンジャロ基地のHLVで大気圏経由して戻るの?」

 

『ふむ…その事なんだが、君達に別任務に付いて欲しいんだ』

 

「別任務?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガルマとの通信後に2Bと9SにA2と4Sは最近生産されだした攻撃空母ガウに乗っていた。

行先は、ジオン軍地上最大軍事拠点オデッサへ。

 

「う~ん、中が明るいと外の星とか見えないな」

 

「君はアフリカで見たろ。僕なんてコムサイから降りる時もガウに乗る時も基地内部だったから星空なんて全く見てないよ」

 

ガウの窓から、外を見ようとする9Sと4Sだったが真っ暗な外と明るい船内ではアンドロイドといえど簡単に見えなかった。

その様子を見て、笑みを浮かべる2Bと不満タラタラなA2。

 

「ガルマ指令も人使い荒いよな。アフリカに来て少したってからヨーロッパに行けなんて」

 

「ぼやかない、それだけ指令が私達を頼りにしてる証拠」

 

「そ、そうだといいな」

 

人間に頼りにされている。

2Bがそう考えただけで、嬉しさが込み上げる。

A2も同じらしく、流石同型と思った。

ガルマの指令とは、オデッサの司令官マ・クベ大佐がヨルハを派遣して欲しいと要請してきたからだ。

通信越しでは、詳しい事は教えられないということで2B達はマ・クベ大佐に直に命令を聞くこととなった。

 

ガウは真っ直ぐオデッサへと向かう。

元々、オデッサ方面に補給品を載せて送ることがあり、ガルマの手配で2B達も乗せて貰った。

本来なら、ガウの護衛に飛行ユニットに乗って一緒に飛ぶべきだろうが、攻撃空母として造られたガウは飛行型の機械生命体が攻撃しようがビクともしない。

生産されだして日が経ってない為、まだ少数しかないが機械生命体との戦闘ではかなりの戦果を上げている。

護衛のドップ部隊もおりガウを本気で沈めるには機械生命体の大型飛行体が複数必要とまで言われている。

現に、キリマンジャロ基地から出発後、何度か機械生命体の襲撃を受けたが悉くを返り討ちにしていた。

 

「あ、見えてきましたよ。2B」

 

「明るい上に大きいな」

 

9Sと4Sの発言に2BとA2も窓から外を見る。

明るさの所為で見えにくかったが、暗い夜空に幾つもの光の柱があり、闇の中を幻想的に輝く。

そして、ガウは着陸態勢へと入る。

 

 

 

無事着陸したガウから階段状のタラップで降りようと出入り口から出ると、4人が一斉にブルっと震えた。

 

「思いのほか、寒いね此処」

 

「うん、アフリカの方も肌寒かったけど此処はもっと寒い」

 

ガウの中と温度差があった為、身震いしたがアンドロイドゆえにアッサリと対応した。

尤も、排熱の関係でむしろ寒い場所の方が動きやすかったりする。

ガウの荷物を運ぶジオン兵やアンドロイドとは別に一人のジオン兵が2B達に近づく。

 

「ガルマ大佐より派遣されたヨルハ部隊でしょうか?」

 

「はい、そうです」

 

ジオン兵の言葉に9Sが答える。

 

「マ・クベ大佐がお待ちです。ご案内します」

 

「あ、お願いします」

 

ジオン兵の案内で4人は基地の中へと入る。

 

 

 

 

ジオン兵の案内で基地の司令部に入った4人。

そこには、多数のジオン兵と薄い青色の髪型で前髪がヒョロっとした痩せた男が白い壺を見ていた。

 

「あの~、僕達ガルマ大佐より派遣されたヨルハ機体ですけど」

 

9Sが男と会話しようとするが、男は壺を軽く指で弾く。

壺から「ピーン」という音が聞こえ9S達が凝視する。

 

「良い音色だろ、北宋だ」

 

「…ほくそう?」

 

『北宋;嘗て存在した人間の国家のあった時代の名前』

 

「…ふむ、アンドロイドよりポッドの方が物知りだな。ガルマ大佐が送ったアンドロイドだからと期待したが…やはり機械に芸術は理解できんか」

 

2B達の反応に男がガッカリする。

折角、サイド3から自分のコレクションを持ち込んだが、アンドロイドの誰も壺の素晴らしさを理解できない事に。

それに申し訳なく思った9S達が謝罪の言葉を漏らす。

 

「よく分かりませんが、お気を悪くしたのなら申し訳ありません。ええ~」

 

「おっと、名乗っていなかったな。私がこの基地の司令官、マ・クベだ。君達の活躍は色々と聞いている。

何故、ガルマ大佐から君達を遣して貰ったかはブリーフィングルームで後程話そう。それまでこの基地の中を見てくるといい」

 

「は…はあ…」

 

 

 

 

 

 

マ・クベの許可を得て、4人は基地の内部を歩き回る。

基地内部はジオン兵とアンドロイドが一緒に何かしらの作業をしてる事が多く、その姿を見るたびに笑みを浮かべてしまう。

特に目標もなく歩くと4人は格納庫へと入った。

昼の国のジオン軍基地やアフリカのキリマンジャロ基地より大きい格納庫にはザクやグフなども多く9S達も見たこと無い機体まである。

タマネギみたいな形のモビルアーマーがテストで低空だが飛行するのを見て皆で驚いたりした。

しかし、進む内に格納庫に見慣れた物体を発見する。

 

「9S!あれ!」

 

「超大型機械生命体!?」

 

手足が無かったが天井から無数の鎖で繋がれた超大型機械生命体を見つけ近寄る。

そういえば、他のアンドロイドやジオン兵がオデッサ方面で超大型機械生命体の鹵獲に成功した話を思い出す。

格納庫の橋に乗って丁度、超大型機械生命体の顔付近に近づくと、目が光り起動する。

 

「この機械生命体まだ生きてるのか」

 

超大型機械生命体が起動した事にA2が反応する。

 

「珍シイナ、アンドロイドガ私二近ヅクナド。オ前達ハ、何処ノアンドロイドダ?」

 

 

「喋った!?」

「最近の機械生命体は喋る事が多いぞ」

 

超大型機械生命体が喋った事に驚く4Sと落ち着いて機械生命体が喋る事が多い事を伝えるA2。

 

「私達は、ヨルハのガルマ隊」

 

「ヨルハカ、少シ私ト話ヲ、シヨウ」

 

「お前と?何故」

 

「暇ダカラ、モビルスーツ喋ラナイ。アンドロイドハ、私ヲ無視スル。人間ハ、話シテクレルガ頻度ガ少ナイ」

 

人間がわざわざ話してくれてるというのに文句をいう超大型機械生命体にたいして腹が立つが、時間つぶしに話をする。

超大型機械生命体は自らをエンゲルスと名乗り、ジオンとの戦闘後に解体され徹底調査され、組み立てなおされる時に全ての武装を外され機械生命体のネットワークの受信装置も外されて自我に目覚める。

人間との会話は興味深い反面、モビルスーツと会話しようとするが自我どころか人が乗らねば動かない機械が喋る訳も無く、この基地のアンドロイドは敵の機械生命体と喋る者は居らず、人間と会話する以外、ずっと退屈だった。

 

「オ前達ハ、昼ノ国カラ来タノカ?」

 

「そうだけど」

 

「昼間ノ空ニハ、太陽ト呼バレル丸イ物ガ浮カンデルソウダ」

 

「うん、浮かんでるね」

 

「2B!?太陽は恒星で浮かんでるとは違うんですけど!」

 

「私ハ夜ノ国デ戦ッテキタ、ダカラ一度デイイカラ太陽ヲ見テミタイ」

 

言い終えると同時にエンゲルスの目の光が薄れていく。

 

「疲レタ、寝ル」

 

「こいつ…」

 

エンゲルスのマイペースさに2B達が呆れる。

 

 

 

 

 

 

そうこうしてる内に予定の時間も近くなり4人はマップにマークされたブリーフィングルームへと着く。

中へと入ると、既に髭の生えた中年のジオン兵を始めとした複数の人間と資料でみたアンドロイド。

 

「8B…」

 

「…ヨルハ2号と9号に4号か、あと一人は旧型か」

 

8Bを始めとしたバンカーを逃げ出した元同僚だった。

互いの視線が交差する。

 

「どうした、8B。知り合いか」

 

「はい、バンカーに居た頃の同僚です」

 

席に着くジオン兵の一人が質問し8Bがそう喋る。

2BやA2の顔を見て口笛を吹くもの居た。

4人はそれに構わず開いてる席に着く。

8Bの他にも22Bや64Bが2B達の方に視線を向けていたが喋ることも無く、ジオン兵の声だけが室内に響く。

アンドロイド同士の不仲な空気に髭の生えた中年…ランバ・ラルは溜息を漏らす。

 

時間が少し経ち、ブリーフィングルームにマ・クベと付き人らしい眉毛の太いピッチリとした髪型のジオン兵がジュラルミンケースを抱えて入る。

 

「全員いるようだな。これより君達を集めた理由を説明しよう。ウラガン」

 

マ・クベが付き人の男の名前を呼ぶと、傍に居たウラガンがブリーフィングルームのパソコンを操作し、モニターに基地の見取り図が映る。

その見取り図が徐々に小さくなり、基地の外の場所も映りだし、ある一定の場所で止まる。

そして、マ・クベは手にした棒で地図の一定の場所を指す。

 

「先日、敵の基地施設の入り口らしき偽装されたエレベーターを発見したが、到底モビルスーツが入れる大きさではなく、偵察として何名かのアンドロイドを送ったが音信不通となった。

君達には、施設の潜入し調査と無事なアンドロイドが居た場合の保護を頼みたい」

 

マ・クベの言葉に何人かが質問する。

 

「モビルスーツでの破壊は無理ですか?」

 

「先程も言ったがモビルスーツが入れる大きさではない。破壊できるのはエレベーターくらいだろう」

 

「送ったアンドロイドは何名ですか?」

 

「5名だ。それぞれ、潜入や破壊工作の訓練をした者ばかりだ」

 

「入り口を破壊して放置は?」

 

「それも無理だな。生産工場ではないとはいえ目標を放置できん」

 

「目標とは?」

 

「サーバーだ」

 

「!?」

 

サーバーと聞いた途端にやる気の見せなかったA2がジッとマ・クベを凝視する。

マ・クベが言葉を続ける。

今回の作戦は、オデッサ基地の北に位置する小高い丘の地下に置いてあるという機械生命体達のサーバー。

欧州の大部分の機械生命体達のネットワークを管理しており、これを無力化させれば機械生命体の弱体化に繋がる。

既に、出入り口のエレベーターを確保したが当然の様にモビルスーツが入れる大きさではなく、マ・クベは生存率の高そうなアンドロイドを選び送ったが定時連絡も絶たれ、マ・クベは一つの作戦を思いつく。

アンドロイドの精鋭と言われたヨルハ機体とゲリラ戦のプロであるランバ・ラル隊を送り込むことだった。

 

「策謀家の大佐にしては作戦が随分とおざなりでは?」

 

「私とて分かっている。だが情報があまりにも少ない、作戦が成功し無事に戻って来たら上に最新鋭のモビルスーツをまわして貰うよう要請してやろう」

 

「当然、私の部下全員分も、ですよね」

 

「……いいだろう」

 

ランバ・ラルの言葉にマ・クベも苦笑いする。

派閥の違う両者は当然仲が良い訳も無く、お互い出来るだけ借りを作らないようにしていた。

そこへ、A2が質問する。

 

「その情報の出所は!?」

 

「…妙なタレコミだ。私宛に基地にサーバーの情報と施設の位置情報がメールで送られてきた」

 

「送られてきた!?」

 

「それって敵の罠じゃ…」

 

「十中八九そうだろう。しかし、放置出来ないのも事実だ。降下作戦直後に妙な電波が飛んでいたのは確認していたが出所までは判明しなくてな。メールの情報を調べていく内にサーバーの位置情報と一致した。

このサーバーを確保又は破壊すれば現状の膠着した戦線も進む事になるだろう」

 

「サーバーの確保?」

 

「何か不思議かね?敵の罠とはいえサーバーは情報の塊だ。確保に成功すれば、今まで以上に機械生命体へのアドバンテージを握れる。切り札も一応用意してるがね」

 

そう言って、マ・クベは、ウラガンが持っていたジュラルミンケースを受け取りテーブルの上に置く。

確かに、サーバーを調べる事が出来れば機械生命体達のネットワークの内容も分かり機械生命体達の機密情報も筒抜けとなるだろう。

それどころか、機械生命体達の重要拠点も丸裸に出来るかも知れない。

 

2B達とランバ・ラル隊は共同作戦を行う。

 

 

 

 

 




やっぱり、動きが少ないと会話文ばかり多くなる。
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