機動戦士オートマタ   作:一種の信者

17 / 28
17話 アダム

 

 

 

あれからどの位、時間が過ぎただろうか?

僕は■号に殺された筈だ。

まだ死にきれていないのか……それともアンドロイドが死んだらこうなるんだろうか。

だとしたら、少し早まったかな。■号に会いたいな。僕を殺した■号だけど、狂った僕を止める為だったし、ああしなきゃいけなかったのも分かる。

 

 

 

 

何度目の思考だろうか?

もう何百回も繰り返した。後悔してるんだろうか?■■■が考えた計画を僕が弄って、アンドロイドにとっての神を作り出した。僕達、■■■機体は神の為に殉教する。

いや、後悔は無い。僕達は殉教者となって他のアンドロイド達の希望になれた筈だ。そうでなければ僕達の生まれた意味が……機械生命体のコアを流用した動力を持つ、僕達の存在って何なんだろう。

 

ねえ、■号。

僕達の生まれた意味ってなんだろう

 

「…生まれた意味が欲しいのかい?」

 

!?

誰!初めて聞く声だ。

また、僕の幻聴かと考えるけど、

 

「もう一度聞く、君は生まれた意味が欲しいのかい?」

 

欲しい!機械生命体と同じ仕組みで動いてる僕達に生きる意味が!

そうすれば、■号も皆も生きてられる。

 

「そうか、君の名前は?」

 

僕は、僕は…九号。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に聞こえてきたのはノイズだった。

やけに五月蠅いノイズだと思ったが、それが怒号や悲鳴だと気付くのに時間は掛からなかった。

 

「う……」

 

クラクラする頭を押さえ上半身を起こす。

そこで、2Bが自分が簡易ベッドに寝ていた事に気付いた。

 

「ここは…」

 

周囲を見回す2B。此処は間違いなくレジスタンスキャンプのジオン軍基地。

周りには、他のアンドロイドやジオン兵が横たわっている。

中には、治療中らしく怪我をしたジオン兵を治療する医者と暴れないように押さえつけるアンドロイドの助手も居た。

自分が何故ここに居るのか、考える2Bだが同時に記憶が巻き戻る。怪獣の口にガウが突っ込み怪獣の破壊に成功するが、同時に発生したEMP爆発により飛行ユニットが停止して海に投げ出された筈だ。

死んだという訳じゃない。死んだらバンカーで復活する筈だ。

そこまで考えた時に、2Bに声が掛けられた。

 

「2B、目が覚めたのね。良かった」

 

赤い髪の二人の女性アンドロイドが話かける。デボルとポポルだ。

二人に状況を聞こうとしたがそれより早くデボルが口を開く。

 

「悪いけど、目が覚めたなら退いてくれるか?他にもベッドが必要な奴はわんさか居るんだ」

 

デボルとポポルの背後に別のアンドロイドが支えるジオン兵に気付いた。

頭に包帯が巻かれ苦しそうに見えた。

急ぎ、ベッドから降りると、そのジオン兵がベッドに寝かされ上半身の軍服を脱がされる。

 

治療の邪魔になると判断した2Bは治療所の外に出る。

そこで、2Bは目を疑った。

治療所に入りきらなかったアンドロイドやジオン兵がまだ複数いたのだ。

さらに、丁度降下してきたファット・アンクルのハッチが開くと怪我のしてないアンドロイドが急いで駆け寄る。

 

「急には動かすな!脳にダメージ受けてる可能性が高い!」

 

「この足じゃもう切断しかない!急げ」

 

ファット・アンクルで治療をしていた医者がそれぞれのアンドロイドに指示を送る。

 

 

 

一瞬手伝おうかと考えた2Bだが、9SやA2達が傍に居ない事に気付く。

周囲を見回しても姿が見えず、ポッドにバンカーと通信を繋ぐよう指示する。

 

『2Bさん!良かった目を覚ましたんですね!』

 

何だか、久しぶりに聞く気がした6Oの声に2Bも安堵する。

 

『地上の連絡で2Bさんが運ばれたって聞いたから心配していたんですよ!それで大丈夫なんですか!?』

 

「軽いボディチェック済み。問題は見られない」

 

その言葉に6Oも「良かった」と返事をした。

6Oに多大な心配を掛けた事を反省しつつ2Bは冷静に言葉を続ける。

 

「現在の状況の説明を」

 

『はい、海岸に襲来した超大型機械生命体は五時間前のガウの特攻で機能を停止しました。』

 

その言葉に、2Bも「五時間!?」と叫ぶ。

6Oが心配したのも分かる。五時間も前に負傷して治療所に運ばれたと聞けば誰だって心配する。

 

『その際のEMP爆発により多数のモビルスーツや一部の通信施設が停止して、現在復旧作業に入ってます』

 

2Bが意識を失う前に見た爆発を見て納得する。

あれ程の規模だ。アンドロイドが全滅する可能性だってあったのだ。

 

「9SとA2達の居所は?」

 

『……A2さん達は海岸で救助作業を手伝っています。超大型機械生命体との戦いで多数のジオン兵とアンドロイドが戦死して、……9Sさんはガルマ指令を救助した情報があるんですが、通信にも返事が無く行方が分からないんです。かすかなブラックボックス反応はあるんですが…』

 

現在、ガルマ大佐の安否が不明である。

ヨルハ9号S型がガウから連れ出したという目撃情報があるが、超大型機械生命体の爆発でその行方が分からなくなっていた。ガルマが行方不明の間にヨルハ部隊はホワイト副指令が、地上はアネモネとダグラス・ローデン大佐が代理を務めている。

 

「9Sの捜索に入る。副指令に承諾申請を」

 

『既に命令が出ています。ヨルハ部隊も捜索隊として何人かが地上に降りています。9Sさんを見つければガルマ指令も居る可能性がありますから』

 

既に命令が出ていた事に2Bも安堵する。

急ぎ、9Sを探す為に走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド3。

執務室に男の怒号が響く。

ドズル・ザビの声だ。

 

『兄貴!まだガルマは見つからんのか!?』

 

「捜索はしてるが、海辺で戦った超大型機械生命体の爆発で現場が混乱している。続報を待て」

 

その言葉に、ドズルはモニター台を叩く。

ガルマがMIAとなってからドズルの心が休まる事はなかった。やはり地上に行かせたのは失敗だったとも考える。

映像で見た超大型機械生命体の戦闘及び爆発の光景が脳裏に過る。

 

『なら、ソロモンの全戦力を送ればガルマを見つける事も…』

 

「落ち着け!現場が余計混乱する。少し休めドズル、お前は少し疲れてるんだ」

 

ギレンがドズルに休むよう言うと通信を切り椅子にもたれ掛かる。

 

「ふぅ、例のゲシュタルト計画やレプリカントの情報も碌に分からん内にこれか」

 

少し前にギレンが命じた調査が一向に進んでいない。

アンドロイド達は協力的だったが人類サーバーの調査に苦戦していた。ジオンの所有してるコンピューターでは力不足なのか中々解析が進まなかった。

せめて、アンドロイドの生き証人が居ればと考えるが5千年以上稼働している可能性は限りなく0に等しいだろう。

少し目を閉じたギレンは一枚の書類を取り出す。

 

「とは言え、準備はしておくか」

 

そう言って溜息をつくギレン。

書類には、「ガルマ国葬の準備」と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9Sを探す2Bは手掛かりを探す為に海岸の水没都市へと来ていた。

其処で、目にしたのは沖合の上半身が吹き飛んだ超大型機械生命体の残骸とジオン兵の怒号だった。

 

「瓦礫の撤去急げ!潰されたマゼラアタックの中に生存者が居るぞ!」

 

「早くファット・アンクルを呼べ!このままじゃ切断行きだ!」

 

ジオン兵の指示に従うアンドロイド達。

ふと、2Bは道に置かれた黒い袋に気付く。人一人入れる大きさの袋2Bが近づく。

まるで、好奇心旺盛の9Sみたいだなと2Bも自分自身に呆れる。

ジッパーの部分が空いており覗き込む。次の瞬間、息を飲んだ。

ジオン兵の遺体だ。黒い袋が死体袋だと気付く。

更には、袋は一つではなく、無数に置かれていた。

 

ジオン兵が戦死している事は2Bも知っている。

機械生命体とジオン軍が戦争し出して、もう半年となる。しかし、人間の死体を見たのはこれが初めてだった。

2Bが恐る恐るジオン兵の死体に触ろうとした。

 

「止めとけ、悲しくなるだけだ」

 

背後からの声に振り返ると、A2が悲しそうな顔をしていた。

 

「A2…」

 

「機械生命体が破壊した空母にも多数のジオン兵が乗り込んでいたんだ。脱出する間もなくな。それから、戦闘機のパイロットやモビルスーツのパイロットも運悪く死んだ人も多い。今、ジオンの水陸両用モビルスーツが海中に投げ出されたジオン兵とアンドロイドの捜索をしている」

 

そう言って、A2は開いていたジッパーを閉め、死体袋の上にそっと手を置く。

 

「シャア少佐に礼を言っておけよ。海中に投げ出されたお前を助けたんだからな」

 

「私を…」

 

守るべき人類に逆に助けられた。

その思いが2Bの胸に宿る。「人類の足を引っ張ってるんじゃないか?」と不安になった2Bは「その人は何処に?」と聞く。

 

「あそこにモビルスーツが止めてある。ザクとは違って特徴的だから直ぐわかるだろ。赤いモビルスーツの傍で変わった仮面を付けてる軍人が少佐だ」

 

「ありがとう」と返事をして2BはA2が指差した方向に行く。

すると、直ぐに見たことが無いモビルスーツが目に入った。

ザクやグフのような首がなく胴体の上部分にモノアイがあり、腕には指の代わりにカギ爪が付いたモビルスーツだ。9Sが見たら目を輝かせるだろうなと考えつつ2Bは赤いモビルスーツを探す。

そして、見つけた。

気を失う前に見たモビルスーツだと確信する。

A2の言う通り赤いモビルスーツの足元に妙な仮面とヘルメットをかぶった赤い人が居た。

 

「ん?君は」

 

2Bの存在に気付いたシャアが近寄る。

 

「やはり、あの時のアンドロイドか。もう動いて大丈夫なのか?」

 

「はっ、助けていただいてありがとうございます!…ところで、私以外の少年タイプのヨルハ機体を知りませんか?」

 

2Bが敬礼してシャアに礼を言うと同時に9Sを見てないか聞いた。

 

「少年タイプ?残念だが、私も私の部下も女性タイプしか見ていないな。…海に落ちていた人工皮膚の剥げたアンドロイドも複数、陸に上げたがそれも違うのだろうが…確認しとくか?」

 

9Sの手掛かりになるかと「はい」と返事をし回収されたアンドロイドの義体を見せて貰う。

しかし、どれも古く9Sとは到底かけ離れている。

シャアに礼を言ってその場を離れる。

 

 

 

 

2Bの背中を見送るシャアは一人物思いに耽る。

 

ガルマはあのアンドロイドに任せておくか。出来ればこんな所で死んでほしくはないが…ザビ家への復讐は宇宙世紀の世界でやりたいものだ。無事に戻れる保証もないが、その時は…。

 

「少佐、ズゴックの補給完了しました」

 

「了解した、もう暫く生存者の捜索を行うぞ」

 

部下の声にシャアも思考を止め自分の専用機のコックピットに乗り込み海へと出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、4号と4Sにも話を聞いたが9Sの手掛かりは得られず2Bはレジスタンスキャンプのジオン基地へと戻る。

ポッド042のセンサーでは限界を感じ、それと同時にポッドからある報告を聞いた。

微弱な信号を検知できる特殊なスキャナーがレジスタンスキャンプで使われた事があるらしいのだ。

アネモネにそれを使わせて貰おうと戻ったのだが、治療所の方から怒鳴り声が聞こえる。

 

「彼の治療を急いでよ!目を覚まさないの!」

 

「残念だけど人間はアンドロイドのように丈夫じゃないわ。命に別状はないけど意識は何時戻るか…」

 

一人の女性アンドロイドがデボルとポポルに早く治療をと訴える。

軽い診断だったがポポルが命に別状はないと言う。

 

「暫く寝てれば意識も戻るさ」

 

デボルが宥めかすように言うが、女性アンドロイドの目が鋭くなった。

 

「嘘よ!そう言ってあんた達は、また人類を見捨てるんでしょ!」

 

その言葉に、デボルとポポルは愚か周囲のアンドロイドも動きを止め、そのやり取りに目を向ける。

もちろん2Bもだ。

 

「何も知らないと思ってるのかい!あんた達、双子モデルが何らかの計画に関わって同型が暴走して人類が絶滅したんだろ!」

 

「ど…どうしてそれを…」

 

「少し考えたら分かるさ。あんた達、双子が如何してあたし達アンドロイドに嫌われ迫害されてるのか。あんた達は知らないだろうけど一部のアンドロイドの間じゃ有名な話だよ!」

 

デボルとポポルの双子のアンドロイドは初期に作られた。それこそ、この世界の人類がまだ居た頃まで遡る。

双子のアンドロイドはある使命の為に双子モデルとして量産されていた。しかし、とある事情から失敗し、この二人以外のタイプは殆どが処分された。

詳細は、記憶を消去された為、殆ど分からないがデボルとポポルは使命の失敗で他の全てのアンドロイドに憎まれている。

今の生産されてるアンドロイドにデボルとポポルの罪を知らない。

しかし、勘の良いアンドロイドならある程度は推測できる。

そして、そんなアンドロイド達にある憶測が生まれた。

「デボルとポポルはわざと人類を見捨てたのではないか?」

証拠はない。しかし、人類が絶滅して暫く経った頃に人類への忠誠心を持たないアンドロイドが現れたという。

疑うには十分だった。

彼女もその一人だ。

 

「私達は…」

 

「その反応…如何やら本当みたいだね」

 

女性アンドロイドの言葉にデボルとポポルは視線を逸らす。その態度に女性アンドロイドが苛立つ。

「こいつらの所為で人類が滅んだ」そう考えると女性アンドロイドの心に怒りが湧いてくる。

女性アンドロイドが武器に手を掛けた。

 

「いい加減にせんか、貴様たち!此処が何処か忘れたか!」

 

ジオン将兵の怒鳴り声にデボルとポポルに女性アンドロイドがピタリと止まる。

ダグラス・ローデン大佐が青筋立てて近づく。

 

「しかし大佐、この二人の所為で人類が…」

 

「今更責めた所で人類が戻って来るのか!?それより、君にはやるべきことがあろう」

 

ダグラスの目線がベッドで眠るジオン兵に向く。

それに気づいた女性アンドロイドが頷くと寝ているジオン兵の手を取り、ジオン兵の顔をジッと見つめ続ける。

 

「そ…そうだ、それでいいんだ」

 

あっさりと身を引いたアンドロイドにダグラスも苦笑いをする。他にやるべき事もあったが静かになるなら、それで良いだろうとも思う。

 

「すみません、大佐。助かりました」

 

ポポルがダグラスに礼を言う。

 

「いや、君達の治療に多くの将兵が助けられてる。異邦人である我々を受け入れて貰ってるんだ。これ位の事はさせてくれ」

 

「私達は治療・メンテナンスに特化したモデルです。私達の力が貴方方の役に立てるのはとても光栄です」

 

「昔は私達のタイプは大勢いたんです。ですがあのアンドロイドの言葉通り…」

 

「具体的に何があったの?」

 

今迄、傍観していた2Bが口を挟む。

9Sを探す為にアネモネに特殊なスキャナーを借りたいが、主であり敬愛する人類に何があったのか知りたかった。

 

「当時の記録は消去されてるわ、何があったか分からない。私達のモデルは……過去に暴走して事故を起こしてる。それで同型機は事故後に殆どが処理された」

 

その言葉に2Bは残念がる。9Sが居たら多分、自力で真相を暴くだろうか?

人類絶滅の原因がデボルとポポルの同モデルが起こした暴走が原因だと思うと2Bとしても複雑な思いだが、ダグラスの言う通り今更だ。

 

「それで2B、9Sは見つかったの?」

 

「その事でアネモネに頼もうと思ってる事がある」

 

2Bがポッドに聞いたスキャナーの話をする。

それを聞いたデボルとポポルの二人は「ああ」と言う。

 

「何かと思えば前に作ったやつか。アネモネに頼まなくてもそれ位くれてやるよ」

 

そう言い終えるとデボルが立ち上がるが、

 

「9Sって、貴女と一緒にいた男の子?」

 

治療所の簡易ベッドで横になっていた別のヨルハ部隊の一人が2Bに聞く。

髪の色は2Bと似ているが2Bよりも短髪の女性型だった。

 

「貴方、まだ運動系の神経センサーがおかしいから横になってないとダメよ」

 

ポポルがベッドの上で安静にしろと言うが、2Bが彼女の近くに行く。

 

「どんな情報でもいい。知ってる事を教えて」

 

「あの子は爆発時に飛ばされたわ。誰かジオン軍人を抱えてたと思う」

 

彼女が爆発時に9Sを目撃したのは本当のようだ。

ジオン軍人というのは恐らくガルマだろう。

 

「落下予測地点のデータを転送する」

 

「ありがとう。此処は…」

 

ポッドが受け取ったデータを見た2Bは、驚くと同時に納得もする。

9Sの落下予測地点はあの陥没都市の宇宙人の船の方角だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知れば知る程、わからなくなる。調べれば調べる程、遠くなる。人類という種は、何という不思議さ、不条理に満ちている事か。

この世界の人類もそうだが、ジオンの人間も実に魅力的だ。

 

「さあ、もっとだ!もっと教えてくれ!」

 

さあ、“ガルマ・ザビ”大佐。もっと君達の事を教えてくれ。

 

「…怪我の治療をして貰って恐縮だが、我々は敵同士の筈では?」

 

「承知しているさ。だが私達、機械生命体は人類に興味がある…いや、憧れていると言った方がいいか」

 

調べても調べても興味の尽きない人類。

生憎、別の世界の人類だが人類には変わらない。

 

「ガルマ!こいつ等を信用しちゃいけない!機械生命体は人類にとっても敵だ!」

 

同席させてる9Sがうるさいな。首から下は動けない癖に生意気な奴だ。

やはり、隔離しとくべきだったか?だが、9Sが此処に居なかったらガルマは此方を警戒して口を開かない可能性もある。

 

「にぃちゃん、こいつは壊してもいいんじゃないの?」

 

「待て、イブ。私は冷静に話をしたいんだ」

 

イブを鎮め私は改めてガルマに向き直る。

 

「手始めに君達が宇宙移民者…スペースノイドになった理由を聞きたいな」

 

解体して調べても無駄だった。

以前にジオン兵の死体を入手したが、調べても主な構成物質がタンパク質なことが分かった程度だ。

我々の技術では人間の脳を調べる事は不可能なのかもしれない。

何故、母なる地球から出て行ったのか?

 

「…それ位なら話しても問題ないか、あまり面白い話じゃないんだがな…」

 

それからガルマが話す内容も実に興味がそそられた。

人間の数が増えすぎて地球環境の悪化により、地球の各国は地球連邦政府を組織し宇宙移民計画を始動させる。

逆らう者への弾圧に地球の人口がある程度減ってからの計画の破棄。特権階級の多くの者が地球に残る。

それに対する不満で独立機運が高まるが地球連邦政府は軍を派遣して力で阻止。

地球から最も遠いコロニー郡、サイド3も独立すべく地球連邦政府に宣戦布告しようとしていた矢先にこの世界に来てしまったのか。

 

「ふむ、分からないな。人間はそんなに独立したいのか?」

 

「君達で言うならネットワークの支配からの自由と言った処か」

 

「その為には戦争も辞さないか、やはり人間は変わってるな。『ブリティッシュ作戦』もその一環かい?」

 

「!如何してその単語を知っている?」

 

今迄、冷静だったガルマの顔に初めて焦りが出てきたな。

9Sは初めて聞く単語の「ブリティッシュ作戦?」と呟く。

 

「ガルマ、9Sに教えてやったらどうだ?君達の空前絶後の作戦を」

 

ガルマが9Sの顔を何度も見ている。

9Sも知りたそうな顔にガルマも決断したようだ。

 

「…スペースコロニーを巨大な弾頭に見立てて地球に落とす作戦だ。目標は連邦軍本部ジャブロー…」

 

「え!?」

 

ガルマの予想外な言葉に9Sも言葉を詰まらせたようだ。

 

「聞いたかね、9S!人間とはやはり素晴らしい。機械生命体やアンドロイドが考えもしなかった作戦を思いついたんだ!」

 

機械生命体は単純に宇宙に出ていないし現状やる必要もない。

アンドロイド達はいずれ地球に帰ってくると信じてる人類の為に地球を傷つけるのを嫌がる。

まさに人間しか考えつかない作戦だ。

 

「そんな…コロニーを地球に落とすだなんて…」

 

「言い訳はしない、9S。だがこれだけは言わせて欲しい。地球連邦に比べ我がジオン公国の国力は三十分の一以下だ。兄さん…ギレン総帥は戦争を早期に勝つために、この作戦を考えついた」

 

まさに追い詰められた人類の考えか。

やはり、種としての在り方が我々機械生命体と人類では違い過ぎる。

ネットワークを持たないのに彼等は群れたがる。ギレン・ザビと呼ばれる個体も私を惹きつける。

しかし彼等は個としての自己への執着が気薄にも見られる。

例えば自己複製だ。彼等の自己複製は極めて杜撰で精度が低い。この世界の人類もジオンも完璧な複製を造る技術は持っている。

しかし彼等はその技術を積極的に使わず「生殖」という不完全な自己複製しかしていない。何故だ?

 

「聞きたいことがあるんだが、君達人類は何故、完璧な複製を造らず生殖などと言う不完全な自己複製をしてるんだい?」

 

突然の私の質問にガルマも顎に手を当て考える。何だろうか?この姿をずっと見て居たい気分になる。

 

「完璧な複製……もしかしてクローンの事か?」

 

「人間が残したと思われる記述にもそう書かれていたな」

 

「私もそこまで詳しくはないが、クローン人間はコストと人道的な側面で禁止されてた筈だ」

 

「コストはともかく人道とは?」

 

「人として守らなければならない道のようなものだ。ヒューマニズムと呼ばれてるらしいが、さっきも言ったように私もそこまで詳しくはない」

 

ヒューマニズムか、また調べたい事が増えてしまったな。

人間の考えは我々には想像もつかないのかも知れない。

それは、彼等がオリジナルとコピーを同一視する事を禁じていたのも解せない。

オリジナルを「親」と呼びコピーを「子」と呼ぶ。わざわざ別個の存在と見なしていたらしい。

創造主と被創造物の関係に近いのかもしれない。

人類には、アンドロイドという被創造物があったのに、わざわざ自らの複製を被創造物と同格に貶める必要もないだろうに。理解出来ない。謎と言える。

しかし、好感を持てる。それに比べて我々の創造主の程度の低さよ。

何の謎も残しはしない薄っぺらで多様性もない独創性もなく、ただただつまらない連中だ。

 

人類を理解したい。

その思いが私を突き動かす。その為に私は人類の遺した書物を大量に読んだ。そして一つ気付いた。

人類の書物に頻繁に登場する言葉。「死」だ。

人類もジオンも命懸けの戦いを好む事が多い。その割に死を遠ざけようとする。

人類は死を克服しようと様々な物を生み出した。しかし、克服できなかった。

十分な技術もあったが人類は死と共に在り続けた。

それ程までに死とは手放しづらいのか?魅力的なのか?

 

死。我々機械生命体が理解しずらい概念だろう。

ネットワークに繋がれた我々に死は存在しない。仮にコアを破壊されてもネットワークで繋がっていればバックアップも十分と言える。

しかし、それもミノフスキー粒子の登場により無意味になりつつある。あれは、我々のネットワークを無力化して分断させる。

ジオンとの交戦時に何度もネットワークを無力化されたか。

しかし、これは私にとってもチャンスだろう。

 

「ガルマ、9S、もう直ぐ君達を助ける為にジオン兵や2Bが此処に来るはずだ」

 

「「!」」

 

「私はそこで命を賭けた戦いをする。ネットワークを切った戦いで私は死ぬかもしれん。だがその時こそ私は人類を理解できるかもしれん」

 

「にぃちゃん?」

 

イブが私の顔をジッと見つめる。

当たり前だ。イブにも悟られないよう心に決めていたからな。

 

「アダム、やはり君達は生命とは言えない」

 

突然のガルマの発言に私は思わず絶句する。

 

「9Sから聞いたよ。君達は長年の闘争と学習進化で新たな意識を獲得したそうだな」

 

「そうだ」

 

「命を持つ者は基本、命のバトンを後世に残す為に生きている。死ぬことを目的にしている生物はいない筈だ」

 

「…なら君達、ジオン兵はどうなんだ?命を賭けて戦っていないのか?」

 

そんな筈はない。ジオン兵は常に戦場で戦ってきた。モビルスーツが入れない場所はアンドロイド達に任せてはいたが常に彼等を盾にしてきた訳ではない。

一緒に戦い、勝利してきた。そんなジオン兵にアンドロイド達も人類に従うプログラム以上にジオン兵に忠誠を誓ってる。

 

「確かに、我々兵士は死を覚悟しつつ戦っている。だが、死のうと思った事は一度も無い。私自身、生き残る算段をつけてから行動してるつもりだ」

 

一見矛盾してるような言い方だ。やはり人類の考えは理解出来ん。

だが、同時に惹かれる。何故こうも我々は人類に惹かれるのだ?

人間と殺し合えば答えは見つかるのだろうか?

 

「にぃちゃん…」

 

「イブ」

 

「命を賭けた戦いなんて嘘だよね?嘘だといってよ。にぃちゃ…!」

 

イブを共に連れていく事は出来ない。

私の目的にイブは邪魔になる。ゆえにイブを気絶させた。暫くは目を覚まさない筈だ。

 

「アダム…君はいったい…!」

 

「ガルマ!…!」

 

ガルマと9Sの意識を奪った。

この二人を助けようと2Bやジオン軍人が来るはずだ。

そして、戦いの果てに私は人類を死を理解できるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~NGシーン~

 

「命を持つ者は基本、命のバトンを後世に残す為に生きている。死ぬことを目的にしている生物はいない筈だ」

 

「…」

 

私の言葉にアダムは沈黙している。

出来れば生きて帰りたいが逆上する可能性もあるか。

 

「命のバトンか…興味があるな」

 

ん?

心なしか声が高くなってるような?

 

「ガルマ、私に命のバトンというものを教えてくれないか」(CV植田佳奈)

 

何時の間にか胸に谷間の出来たアダムが私に近づいてくる!

 

「ちょっと待て!アダム、君は男じゃなかったのか!?イブ、早くアダムを止めて…」

 

イブの方を見ると上半身裸の顔立ちが少女になっていたイブがアダムと同じく私に近づいてくる。

 

「にぃちゃんだけ、ずるい。俺も」(CV水樹奈々)

 

お前もか!?

 

「ナ、9S!」

 

私は藁にも縋る思いで9Sに視線を向ける。動くことが出来ない彼に助けを求める程、私も一杯一杯だった。

しかし、9Sは顔を赤らめつつ私の姿を見るだけだった。

 

「止めろ!止め…あ…ああ…ああああああああーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

関係あるか知らないが、ジオンと機械生命体は、この数日後に和平したそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




先ず初めに誤字報告の二度手間、すいませんでした。そして、ありがとうございます。
この場を借りてお礼を申し上げます。
名前を書いていいのか分からないので伏せときます。

ガルマの「命のバトン」とかはNGシーンがやりたかっただけで深い意味はあるいません。適当です。

さて、アダムは誰と戦わせよう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。