機動戦士オートマタ   作:一種の信者

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18話 機械生命体とモビルスーツ

 

━━━これが■■■が考え僕がアレンジした計画の全貌だよ。

 

「…そうか…色々な疑問が解けたよ」

 

九号は謎の男の声と喋る。

久しぶりに他人と喋る事に九号は夢中だった。

途中、月面人類会議の正体がバレた事は九号としても残念に思う。

 

━━━疑問?

 

「人類会議が急増で造られた形跡があったからね。バンカーと人類会議のサーバーの不自然な繋がりもこれで判明したよ」

 

バンカー

次世代機の完成と共にバックドアを解放して機械生命体に壊滅させる予定の十三番目の衛星基地。

月面に人類が生きてるかのように偽装させる為の人柱でもある。

 

━━━その様子だと、まだバンカーはあるの?

 

「ああ、今はガルマ・ザビ大佐の直属部隊になってる。バックドアも新しく作り替えられて機械生命体も簡単には侵入出来ない筈だ」

 

━━━……そう。

 

まるで人間みたいな名前だなと思いつつ返事をする九号。

 

「君達が何処に配属されるかは分からないけどね」

 

━━━僕に義体は用意されるんですか?

 

「ああ、流石にブラックボックスは交換するけど、今の記憶データの殆どは移植できる筈だ。我々が調べた所、ブラックボックスにはエネルギー炉として以外にも記憶データと綿密な関係がある事が分かった」

 

━━━凄い、何が出来るんです?

 

「僕にも分からない」

 

━━━え?

 

「まだ実験段階だからね。量産しようにもコスト面でノーマルタイプのアンドロイドの動力炉で争ってるんだ」

 

━━━量産?でもブラックボックスは機械生命体のコアを採取して再構成したエネルギー機関なんじゃ…

 

「機械生命体のコア自体製造出来るよ。機械生命体の工場の制圧時にデータも取れたし、捕獲された機械生命体のコアも入手して調べたから製造しようと思えば出来るんだよ。ただ通常のアンドロイドの動力炉に比べるとコストが2~3倍に上がるらしいんだ」

 

その言葉を聞いて九号はホッとした。

人類軍が造ったコアなら自分達はれっきとしたアンドロイドだと思ったからだ。

 

━━━コストか、■■■もそれで悩んでいたな。

 

「少なくとも、その当時よりコストは下がってる筈だけどね。バンカーに9号と2号の義体を送ってくれるよう要請しないと」

 

━━━二号?二号も無事なんですか!?

 

「ああ、君のブラックボックスより状態も良かったから、先に彼女と話してたんだよ。ちょっと待ってくれよ」

 

男が言い終えると共に音が聞こえなくなった。

いきなりの事で九号も慌てて男に言葉を話すが何も聞こえない。

以前の静けさに戻り、九号にとって長時間放置された気分だった。

そんな気分の中に男の声が戻り、九号もホッとした。

 

「よし、これで接続出来た筈だ」

 

━━━接続って何と「九号?」!!

 

その時、九号に女性の声が聞こえた。

それは自分が聞きたかったアンドロイドの声だと直ぐに気付いた。

 

━━━…二号?

 

━━━うん。

 

━━━本当に…二号なんだね…。

 

━━━うん。

 

━━━二号…僕は…僕は…。

 

━━━言わなくていいよ。全部聞こえてた。九号の悩みに気付けなかった私にも落ち度はある。

 

━━━二号…!

 

その後、二号と九号は互いに語りだす。

まるで、数年間会えなかった時間を取り戻すように。男も気を使ったのか二人の会話に参加せずにいた。

それから暫くの時間が経ち、二号と九号が落ち着きだした頃に男は一つのデータを見せた。

二号と九号の関係者にして生みの親とも言えるアンドロイドの記憶だ。

 

それは、ジニアと言われたアンドロイドの記憶だ。

人類軍の技術開発主任担当だった。ヨルハ機体を家族みたいに思っていたが上の方針との板挟みに苦しみ、戦意の下がるアンドロイド達にある計画を考えついた。

しかし、問題があり過ぎた事で破棄しようとしたが偶然見てしまった九号が自分達の出生に絶望して自棄を起こしジニアの計画を完成させてしまった。

 

━━━ジニア…。

 

━━━ごめん…なさい…ジニア。僕は…勘違い…を。

 

「これを君達に見せたのは僕の独断…だね…。九号が勘違いしたままだと悲しいからね、君達に嫌な思いをさせてしまったら申し訳ない」

 

━━━いえ、貴方が謝る必要はありません。

 

━━━むしろ感謝している。…今更だけど貴方は誰?

 

ふと、二号は男が何処のアンドロイド部隊の所属か気になった。

 

「ああ、僕かい?僕はジオン軍・第603技術試験隊所属、オリヴァー・マイ技術中尉だ」

 

━━━ジオン軍?新しいアンドロイド部隊の名前?

 

━━━人間みたいな名前なんですね?

 

「人間みたいって人間だよ、僕」

 

━━━え?

━━━え?

「え?」

 

三人の声は見事に一致した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9Sが落ちた場所が分かった2Bは急ぎ、陥没都市へと向かう。

ガルマが居る可能性が高い事でダグラス大佐がモビルスーツ隊も同行させようとしたが、海に現れた超大型機械生命体の所為で部隊は再編成の真っ最中であった。

ダグラス大佐の気持ちだけでも受け取った2Bは、その思いを胸に陥没都市に到着した。

 

『報告;9Sのブラックボックス信号を検知』

 

ポッドのスキャナーが9Sの反応をキャッチする。

更に、

 

『モビルスーツ反応;あり』

 

一瞬、ダグラス大佐が送った機体かとも思ったが、自分は真っ直ぐ陥没都市へと来た。

その間、モビルスーツに追い越された覚えはない。

うだうだ考えても仕方ないと2Bは陥没都市の地下洞窟まで行く。どちらにせよ、9Sとガルマは助けなければならない。

 

地下洞窟の入り口のある亀裂まで来た時にポッドの言ったモビルスーツが目に入った。

2機のモビルスーツで一機はドム。もう一機はグフらしかったが今迄、自分が見たグフと微妙に違っていた。

通常のグフより色は薄く、左腕には巨大なガトリング砲が付けられていた。

 

「ポッド、あのモビルスーツのデータはある?」

 

『検索……データあり;型式番号MSー07B3。正式名所グフ・カスタム、別名「B3グフ」。グフの再設計により開発された新型モビルスーツ。グフの問題点であった汎用性の低さを克服した機体』

 

ポッドの回答に2Bがジオンの技術力に驚く。「アンドロイドだってこんなに簡単に新型なんて出来ないのに、新型モビルスーツはポンポンと出来上がる。これが人間の力なんだろうか?」と思った。

 

『ん?あら、お人形ちゃんじゃない。貴方も此処に用があるのかしら』

 

ドムのパイロットが2Bを見つけ喋り出した。

2Bは、ドムのパイロットの声に聞き覚えがある。ニアーライト大尉だ。

 

『人形?…ああ、2Bか。君も此処に来たと言う事は、やはり此処に何かあるんだな』

 

グフの方からはガトー大尉の声がした。

二人の口ぶりからして、やはりダグラス大佐が送った援軍ではなかったようだ。

 

「あの…此処で9Sを見ませんでしたか?」

 

二人が先に此処に来ていたということで、9Sやガルマを見てないか聞いた。

尤も、2B自体あまり期待は出来なかった。

 

『9S?私はまだ見つけていないな』

 

『あの可愛い子なら視界に入れば直ぐ見つけれる自信はあるのよ。ガルマ大佐と一緒ならいいんだけどね』

 

二人が見てないと言い2Bは予想通りだったとはいえ落胆する。

ジオン軍にとって、ガルマは重要な人物だ。発見されていればジオン軍全体に、それこそ自分達にも情報が流れる筈だ。

しかし、9Sのブラックボックス信号はこの辺りから出ていた。

 

『そうだ、2B。君もちょっと洞窟を見てくれないか?』

 

「洞窟を?」

 

ガトーの言葉に2Bは亀裂へと降り、エイリアンシップのある洞窟の方に目をやる。

一瞬、目を疑った。

 

「穴が…広がってる!?」

 

以前に自分達が突入した時より穴は大きく広がっていた。それこそモビルスーツが通れる程に。

哨戒中のガトーが偶然見つけ、近くにいたニアーライトも来た。

更に、

 

『報告;ブラックボックス信号の発信源は、地下通路奥』

 

「奥?」

 

狭かった洞窟の入り口が大きく広げられ、その奥に9Sが居る。

 

『罠ね』

 

ニアーライトが呟く。

納得する2B。9Sが一人だったら興味本位で行くかも知れないが守るべき人間であるガルマも一緒では9Sはそんな軽率な事はしない。

即ち、誰かに連れ去られたが妥当だと判断した。

そういえば、エイリアンシップでアダムと名乗る機械生命体が「横穴はモビルスーツが通れる程の広さが必要か」と呟いた事を思い出した。

 

『「虎穴に入らずんば虎子を得ず」。罠であるなら、それを食い破るのがジオンの戦士だ』

 

『…相変わらず豪快ね』

 

三人は洞窟の中へと入った。

 

 

 

 

 

 

 

暗く足場の悪い洞窟に二機のモビルスーツの足跡が響く。

暗く狭い上に足場の悪さにニアーライトもドムのホバー移動を諦め普通に歩行する。

そんな中、2Bはグフ・カスタムの肩に乗って周囲を警戒していた。

最初は、モビルスーツと同じく歩こうとしていたが、ガトーが肩に乗るよう言い躊躇う2Bに「足元に居られる方が邪魔。モビルスーツに踏まれたいの?」とニアーライトに言われ、グフ・カスタムの肩に移動した。

2Bとしても味方のモビルスーツに踏まれるのは御免であるし、人間の邪魔になるのは更に嫌であった。

広く掘られた洞窟は深く、このままエイリアンシップへと行くのではと錯覚する程だった。

 

途中、ガトーがエイリアンシップを調べてる科学者や護衛が気付かなかったのかとぼやくが、科学者はとっくに本国に帰ったか、基地で研究してるとニアーライトが言った。

エイリアンシップは既にもぬけの殻。

最早、重要視もされず見張りも居なかった事で誰も洞窟の洞穴が広がってる事に気付かなかったのだ。

 

 

 

 

『報告;ブラックボックス信号の発生源は、右方向』

 

途中、ポッドの報告に一同は納得する。

枝分かれした通路があるが、右側だけモビルスーツが通れる大きさでエイリアンシップの道はそのままだった。

罠であることは全員気付いている。

しかし、ガルマや9Sを見つける為には罠でも行くしかない。

右に曲がった一同は大きなエレベーターがある事に気付く。

 

『エレベーターか?』

 

『随分と大きいわね』

 

貨物用のエレベーター以上の大きさに一瞬止まる。

操作パネルを見つけるがモビルスーツに比べ明らかに小さく、ちぐはぐさを感じる三人。

 

「私が操作します」

 

そう言って、グフ・カスタムの肩から降りた2Bが操作パネルを弄る。

数秒もせずにエレベーターの扉が開き二機のモビルスーツが乗り込み、2Bも中へと入る。

下降する感覚が一堂も感じる。

随分と深いと考えてる内にエレベーターが不規則に揺れ停止した。

音を立てて開くと眩しい光が2Bの目に入る。

 

『何なんだ、ここは?』

 

「白い街?」

 

ガトーや2Bが戸惑いの声を漏らす。

予想外の明るさに白一色の街。

奇麗でもあり不気味でもある光景に足を踏み出す。

 

『検知;ケイ素と炭素が含まれる結晶状の物質。詳細はデータ不足の為不明』

 

街を見回す一同にポッドが報告する。

 

『地下にこのような街があるとはな…』

 

『見た感じ軍事基地でもなさそうね。機械生命体が造ったのかしら』

 

アンドロイドが造ったという記録は無い。地上の建造物と比べ風化もしていない事から機械生命体が造った可能性が高い。

地下に作られた奇妙な街にモノアイを動かす。2Bは再びグフ・カスタムの肩に乗り警戒する。

 

『ん?あれは』

 

暫く、道なりを進むとガトーがモニターである物を見つけた。

少し、遅れて2Bがグフ・カスタムの肩から降り、見つけた物に近づく。

白一色の中に複数の色を見つけたのだ。その中には見慣れた黒色も確認できる。

 

「これは…死体?」

 

其処には幾つものアンドロイドの死体があった。

ヨルハからレジスタンスに別の部隊のアンドロイドも居た。そのどれもが機能停止している。

更には、

 

「人間の死体も!?」

 

其処にはジオン兵の死体もあった。

ニアーライトが調べたところ、破壊された空母の搭乗員であった。

海からわざわざ拾ってきたのだろうか。

 

『それにしても妙ね』

 

『ああ、人間の死体だけやけに丁寧だな』

 

どういう訳か、ジオン兵の死体だけ丁寧に置かれていた。

他のアンドロイドの死体は乱雑に放置されていたが、ジオン兵の死体は丁寧に手も組み、周りに数本の花まで置かれていた。

それが、ガトーとニアーライトには不気味に映り、2Bは胸から熱い物が込み上げそうになった。

 

『この者達も、この街に来たのか?』

 

『それは無いわね。ヨルハやレジスタンスの多くは海の巨大機械生命体の戦いで行方が分からなかった子ばかりよ。後で回収班を呼ばなきゃ』

 

『予測;意図的に敵にとって配置されている』

 

この辺りは重要視されていなかった。見張りも居らず入ろうと思えば入れる状態だ。

しかし、アンドロイドの多くは人間の…ジオンの命令が無い限り独断での行動は少ない方であった。

自力で来た訳ではないと言う事は、機械生命体に拉致され連れてこられたということだ。

その考えが頭に過った時、2Bは奥へと走りだしていた。胸からの熱い物も引っ込ませる。

ガルマも心配だが、2Bの思考を占めてるのは9Sの存在だった。

 

『ごめんなさい、その記憶を僕は持っていません』

 

ふと、まだジオン軍と出会う前の9Sの言葉が蘇る。

ある作戦で超大型機械生命体との戦闘により自爆した後、バンカーの通路で9Sと話した時に2Bだけの記憶しかバックアップ出来なかった。

9Sがバンカーに記憶のバックアップしたのは何時か?もし、9Sが破壊されればまた記憶が巻き戻る。

2Bにはそれが耐えられなかった。

 

『ちょっと、待ちなさいよ』

 

突然走り出した2Bに驚きながらもガトーとニアーライトが付かず離れず追っていた。

 

 

 

 

9Sの微弱なブラックボックス信号を辿ると大きな広場にでた。

モビルスーツも余裕で動き回れる程の広場だ。

 

『ここは…広場か?』

 

『少年のお人形ちゃんは、この辺りにいるのかしら?』

 

2Bの後を追った二人も広場へとくる。

見た感じ、誰も居ないように見えたが、

 

『ん?』

 

センサーに何か動く物に反応した。

2Bの視線もそれを追う。

白い大小のキューブが転がっているのだ。まるで風に吹かれる枯草みたいに転がるさまに呆気にとられるが、そのキューブが一か所に集まる。

そして、キューブの山からアダムが現れた。

 

「ようこそ、我が街へ。我が名はアダム」

 

2Bは咄嗟に剣を構え、ガトーとニアーライトも武器を向ける。

 

「私は…私達は人間に興味がある」

 

しかし、そんな事にお構いなくアダムは喋り続ける。

そして2Bが少しずつ間合いをつめていく。

 

「愛や家族、戦争や宗教。人類の記録を読み解けば、他に類を見ない複雑さに魅了される」

 

その言葉に2Bは不快感を覚える。

守るべき人類を分かった風に言う機械に腹を立てていた。

 

「この街も、そうした人類への渇望が生み出した場所…」

 

不快感の理由がもう一つあった。

アダムが服を着ているのだ。以前に戦った時には上半身裸だった。

その姿が、人間とダブり不快でたまらなかった。

機械ごときが人間の真似をしている。

 

「私達は、人類の特徴を学び、模範する。ある者は愛を。ある者は家族を。私も模範した。過去の映像を視聴し、書物を読み、ジオンの兵士たちを見て、死体を弄り……あらゆることをして私は気付いた。人類の本質は闘争。戦い、奪い、殺し合う。それが人間だということに!」

 

アダムの声が次第に熱を帯びてくる。

まるで、演劇でもしてるように両腕を広げる姿に2Bは更に不快に思った。

 

「その口で、人類を語るなッ!」

 

もう沢山だ。そう思った2Bが力任せにアダムに剣を振る。

しかし、剣はアッサリと片手で止められる。

 

「なんだ2B、君も居たのか?悪いが引っ込んでてくれ」

 

今初めて2Bの存在に気付いたとばかりに反応し、2Bに蹴りを入れ後方に吹っ飛ばす。

後方に飛ばされた2Bは床に剣を突き立てなんとか止まる。

 

「さあ、そろそろ殺し合いをしよう!」

 

そう言うと、アダムは合図をするかの様に腕を振った。

瞬間、グフ・カスタムとドムのセンサーが何かを捉えると共に上から何かが降って来た。

 

『ちょ!?何よこれ!』

 

『何故モビルスーツが此処に!?』

 

それは、ジオン軍の量産型モビルスーツ、ザクⅡであった。

 

「君達と戦う為に用意したのさ。……さあ、始めようか」

 

ザクⅡに乗り込んだアダムが動き出す。ザクのモノアイが赤く光る。

こうして、この世界で初めてのモビルスーツ同士の戦いが起こる。

 

当初はジオン軍は損傷したモビルスーツの回収もしていた。だが、戦線が広がるにつれ回収する余裕も無く何時の間にか壊れたモビルスーツは放置され、密かに機械生命体が回収していった。

アダムが出したザクもその一体である。動力である核融合炉が生きているザクを入手し他のザクの部品を使って修復。さらに足りない部品は機械生命体のパーツを代用して修復された。

それ故に性能はお世辞にも高いとは言えなかった。

しかし、

 

『ウソでしょ!』

 

ニアーライトが驚愕する。

ドムのジャイアント・バズで破壊したザクの腕に幾つものキューブが集まり、それが腕となったのだ。

 

「ポッド!ミサイルを!」

 

『了解』

 

2Bはポッドで二人の支援をする。

本当はアダムに詰め寄り9S達の居場所を吐かせたいが、アダムがモビルスーツに乗り込んだ事で不可能に近い。迂闊に近寄れば踏み潰されるのがオチだ。最も、ポッドの支援攻撃も効果があるとは言いずらかったが。

 

ならばと、ガトーはグフ・カスタムのヒートソードを取り出し切りかかる。

対するアダムはザクのヒートホークで防ぎ激しい鍔迫り合いをする。

 

『アダムとやら、貴様の言ってる事は正しいかも知れん!』

 

「認めるのかい?ガトー大尉」

 

調べたのか、名乗ってもいないアナベル・ガトーの名を言うアダム。

しかしガトーはそれに居に介さず言葉を続ける。

 

『人類の歴史は戦いの歴史ともいう。戦いの始まりは全て怨恨に根ざしている…当然のこと!』

 

「嬉しいよ、ガトー大尉。君が私の考えに賛同してくれるなんて『しかし!』!?」

 

『怨恨のみで戦う者に我々は倒せん!我々は義によって立っているからな!!』

 

ガトーのグフ・カスタムのヒートソードがヒートホークを弾き一気にザクの胴体を切り裂こうとする。アダムが咄嗟にブースターを使って後ろに飛んでいなければアダム諸共真っ二つになっていただろう。

尤も、コックピットの入り口の部分が切られ外からでもアダムの姿が見えた。

 

『ちょっと、あたしは義とかは関係ないんだけど』

 

ニアーライトが文句を言いつつドムのバズーカで切り裂かれたコックピットを撃つ。

 

「うわあ!?」

 

バズーカは直撃しアダムの短い悲鳴が聞こえた。

しかし、

 

「素晴らしい!これが闘争!アンドロイド達との戦いとは比べ物にならない!」

 

『再生だと!?』

 

『これがネットワークって奴!?』

 

バズーカの直撃を受けたアダムは体の一部が掛け顔中に破片が突き刺さっていたが少しの時間で元通りになった。

今迄、多くの機械生命体と戦ってきたジオン軍であったが、こんな回復する機械生命体など見たことも無かった。ガトーたちの脳裏に長期戦が浮かんだが。

 

「ネットワークに繋がれた私たち機械生命体は無敵。しかし、これでは生の実感がない。死を理解できない。だから、私はネットワークから自分を切り離す。…最も、モビルスーツに乗るとネットワークの繋がりが悪くなるのだがね」

 

『なに!?』

 

アダムのザクの周りに浮かんでいたキューブが力を無くしたように地面へと転がる。

 

「さあ、本当の殺し合いといこうじゃないか!私に生きている実感を湧かせてくれ!」

 

『…最早、語るまい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アダムがネットワークを切断してガトー達が有利になったかと言えば、そうでもない。

ザクの両腕から金色に光る糸の様な物を出し、地面につけてガトー達の足元を爆破したり、数本のヒートホークを巧みに操る。

 

『ちょっと!ネットワーク絶対切ってないでしょ!』

 

「これは私の力だよ、ニアーライト大尉」

 

このアダムの戦い方にガトーとニアーライトは苦戦する。

ザクに比べ性能が上の二機だが、従来のザクの戦闘方とは明らかに違う動きに四苦八苦してるのだ。

2Bも何とか援護しようとするがポッドの攻撃は金色の糸に防がれ碌にダメージを与えられない。

イチかバチか接近戦を試みようと考えた2Bにニアーライトから通信が入る。

 

『お人形ちゃん、あんたに指令を送るわ』

 

「指令ですか?」

 

ニアーライトの口から「お人形ちゃん」と言われたが2Bは気にしない。

自分達は自動歩兵人形で人間を守り人間と共に戦うのが役目だと自負している。

 

『あんたは、ガルマ大佐と少年を探しなさい。まだ反応はあるんでしょ?』

 

「ありますが…援護が…」

 

『いいのいいの。あんたの援護は殆ど効いてないわよ。それより、ガルマ大佐と少年の確保が必要なの』

 

「了解しました」

 

ニアーライトの有無を言わせない迫力に2Bが返事をする。

通信が切れ2Bはニアーライトに「何か考えがあるんだろう」と考えポッドに9Sのブラックボックス信号の位置を聞きそこに向かった。

 

『さて、足手まといも別行動にさせたし、そろそろ本気を出さないとね』

 

ニアーライトは今迄、ドムの性能を抑えめにしていた。

ドムの強みはホバー移動による高速戦闘と言える。

この戦法によりドムは機械生命体との戦闘で多大な戦果を上げており、超大型機械生命体を最も撃破している量産機である。

噂では、宇宙用のドムも製造されてるらしい。

ニアーライトは今迄、2Bが近くに居た事でホバー移動はなるべく控えてはいた。

下手すれば轢いてしまうし、何よりガルマのお気に入りだ。もし、何かあれば自分達の評価にも関わる。

だから、ニアーライトは2Bにガルマ達の捜索を命令したのだ。

 

『さあ、見せてあげるわ。ドムの本当の性能を』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははは…如何したんだい?ガトー大尉。もっと本気を出してくれ!」

 

ガトーがグフ・カスタムの左腕のガトリング砲でアダムを撃つがザクの腕に纏わせた金色の糸のようなもので防ぐ。余裕を見せるアダムだったが、背後からの攻撃に後ろを向くとドムがジャイアント・バズを撃ったのだ。

 

『あら御免あそばせ。今更、卑怯だなんて言わないでしょ?』

 

「ははは、勿論だとも」

 

不意打ちを受けたアダムは、まだ余裕を見せるがザクの体勢が崩れる。

 

『今がチャンス、行くぞ!』

 

それを見たガトーは弾の切れたガトリングを捨て、ヒートソードを手にアダムに迫る。

アダムはザクに二本のヒートホークを持たせ構える。

グフ・カスタムのヒートソードをザクが持つ二本のヒートホークをクロスさせ防ぐ。激しい火花が散る。

 

「素晴らしい…素晴らしい戦いだよ。ガトー大尉!」

 

『貴様に語る舌は持たん!戦う意味すら無い男に!』

 

「…戦う意味?意味が無いと戦ってはいけないのかい?」

 

『それが解らない貴様は最早、戦士ですらない!そして、知るがいい!ジオンの崇高なる理想の邪魔だてをする者は私に討たれるということを!うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

ガトーが気合を入れると同時にザクの二本のヒートホークにひびが入る。

直後に二本のヒートホークが砕けヒートソードが迫る。

アダムは咄嗟に横に僅かに移動させ真っ二つになる事を防いだが右肩を切り裂かれる。

ザクの右肩が切り落とされ地面へと落ちる。

アダムが咄嗟に金色の糸を使って片腕を拾おうとするが、

 

「ぐわっ!?」

 

『あたしが居る事をお忘れなく』

 

ニアーライトのドムのジャイアント・バズの直撃を受ける。

更に、

 

『止め!』

 

ガトーのグフ・カスタムの右腕に内蔵されたワイヤを撃ち出す。ワイヤーはコックピットを貫きアダムに当たる。

ヒートワイヤー。グフの持つヒートロッドと呼ばれる電磁鞭の改良型。

敵の超大型機械生命体との戦闘に重宝され機械生命体キラーとしても注目を集める。

アダムが掴んで放そうとするが、それより早くワイヤーから高圧電流が流れる。

機械生命体であるアダムには効果が抜群であり、アダムの体から煙が噴く。

その電流はザクにもダメージがあり、モノアイが点滅を繰り返し遂に光る事が無くなり後ろに倒れる。

ワイヤーを戻したガトーはザクのコックピットを抉じ開け中を見る。

中には一部が黒焦げになり機械部分が見えるアダムが虫の息だった。

 

『まだ生きてるわね。撃ち込んでおく?』

 

『いや、この様子なら助かるまい。それに少々聞きたい事がある。アダム、死ぬ前に答えろ。何故ネットワークを切った?繋いでいれば我々にも勝てたのではないか?』

 

外部スピーカーの声に虫の息のアダムだがゆっくりと口を開く。

 

「言った…筈だよ。…ネットワーク…を繋いで…いては…生の実感が…ない。…死を…理解できない。…だから私は…ネット…ワークを切り…真剣勝負…をしたんだ。そこに…後悔はない…」

 

『そうか、それだけ聞ければもういい。お前とは別の形で出会いたかった』

 

そう言うと、ガトーはアダムの傍から離れる。

 

「これが…死か…暗くて…冷たい…」

 

死にゆくアダムの顔は満足そうだった。

ある種、憧れのような感情を人間に抱き、人間と戦い人間に敗れた。そこに悔いは無い。

そう考えてる内にくだらないと考えていた造物主に少しは感謝してもいいかと考え機能を停止した。

アダムは最後まで弟のイブが頭の中に浮かばなかった。

 

 

 

『ふぅー』

 

アダムと決着がつき一息入れるニアーライト。

そこへ、2Bから通信が入りガルマと9Sを見つけたと報告が入る。

 

『二人を見つけたなら、とっとと此処を出ましょ。あたし、こういう辛気臭い場所好きじゃないの』

 

「は、はあ…」

 

ガルマを確保した以上、此処にもう用は無い。

ガトーにガルマ発見の報を伝え、2B達を拾い大型エレベーターに乗って外へと出る。

外ではダグラス大佐が編制した部隊が居り無事に合流、ガルマの無事は直ぐにジオン軍全体に伝えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド3、政庁の執務室ではギレンが何か難しそうな顔をして何かしていた。

 

「『我々は一人の兵士を失った!』…これではガルマが一般の兵とごっちゃになるか」

 

ギレンはノートパソコンを開き「ガルマ国葬」用の演説の内容を書いていた。

父のデギンや弟のドズルは諦めていないが万が一ガルマに何かあった場合に用意していた。

紙ではなくノートパソコンに書いてるのはガルマが無事だった場合、内容を直ぐ消せるからだ。紙の場合、破いても丸めてゴミ箱に捨てても文字が残り、それを敵対派閥に拾われては面倒である。

 

「ふむ、『我々は一人の弟を失った!』…駄目だ、ドズルが拗ねる。やはり此処は無難に『英雄』にしとくべきか…」

 

演説の出だしに頭を抱えるギレンだったが突然のドズルの通信が入る。

 

『兄貴ッ!!!』

 

ビクっとしたギレンは急ぎノートパソコンを畳む。危うく親指を挟みかけた。

しかし、そんな事に気付かずドズルがまくしたてる。

 

『兄貴!ガルマが無事に保護されたぞ!!ガトー達がやってくれたんだ!ガルマは怪我の治療をされてたそうだが心配だ、腕の良い医者を遣してやってくれ。それから、ガトー達にジオン十字勲章をやってくれ!うおおお、もう我慢ならん俺も地球に降りるぞ!兄貴!』

 

ドズルは、言うだけ言って通信を切った。

暫しの沈黙の後に、ギレンはノートパソコンのデータを消し、仕事に戻る。

今頃、地球に行こうとするドズルと阻止しようとする部下達で混乱してるだろう。ソロモン内に居るアンドロイド達がどちらの味方になるかは知らないが。

ガルマの行方不明の混乱で溜まっていた書類を片付ける。

 

「統合整備計画か、これも進めておかねばな。…ニュータイプの実績もそろそろ見せて欲しいものだな」

 

キシリアから提案され月面に作られたフラナガン機関からの報告書を呼んでいると、秘書のセシリアが血相を変えて入って来た。

 

「ギレン閣下、緊急です!」

 

「落ち着け、ガルマの事は既に聞いている」

 

「いえ、ガルマ様ではありません。木星船団よりシャリア・ブルが帰還しました!」

 

その報告を聞いたギレンは持っていた書類をテーブルに叩きつけ思わず立ち上がった。




アダムと決着。

今更ですけど、二号や九号は「人形達の記憶」の朗読劇に出てくるキャラです。

ところで、シロッコっていつ頃木星船団にいたんでしょうね?ハイザック作る為に獲得しときたい。

次回は、ちょっとしたif話とかしてみたいですね。内容的にはもし、「地球を調査しようとしていたジオン軍にヨルハが攻撃していたら」といった内容です。
もし、読みたいという感想があったらやってみたいと思います。
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