兎に角、18年の夏は暑かった…
全ての存在は滅びるようデザインされている。
生と死を繰り返す螺旋に
僕達は囚われ続けている。
これは呪いか。
それとも罰か。
不可解なパズルを渡した神に、
弓を引いた僕達には最早関係無いのかもしれない。
「うわああああ!」
少年の悲鳴と鈍い打撃音が響く。
嘗て、廃墟地帯と言われた場所に数人の人影が居た。
「9S!」
地面に倒れる少年に急ぎ近づく少女。
少年は、頬が赤くなり口の端から赤い液体が漏れる。
少年を抱きかかえた少女が元凶に向けキッと睨みつける様に目線を向ける。
尤も、少年も少女も黒い目隠しの様な物を付けてて迫力は無かったが。
「何だ、ガラクタ共!その態度は!?」
「お前らの所為でこんな事態になったんだぞ!」
少女の視線の先には複数の男女が居た。
殴られた少年や少女も含め、全員人間ではない。
アンドロイド。
人間の姿をした人間の為に働く機械達。
本来は、敵である宇宙人の兵器、機械生命体と戦う為に作られた。
「ガラクタの癖に生意気だぞ!」
男のアンドロイドが少女の顔に蹴りを入れる。
それに合わせて他のアンドロイドも少女の体に蹴りを入れ出す。
「…2B…」
殴られた少年はそれを黙って見てるしか出来なかった。
少年と少女は此処にいるアンドロイドとは少し違う。
ヨルハタイプ。
最新鋭のアンドロイドでヨルハ部隊と呼ばれた彼等は膠着した機械生命体との戦争の為に作られたアンドロイド部隊だった。
それが、今では仲間である筈のアンドロイド達に殴られる存在となっている。
「…しょうが…ないよね。…僕達は…愚かで…出来損ないな…機械なんだから…」
少年の呟きは虚しく掻き消えた。
全ての始まりは半年前の事だった。
アンドロイドの様な機械生命体を見つけたことをバンカーに報告して砂漠から帰る途中に指令からある通信を受けた。
「エイリアン軍の増援ですって!?」
『そうだ。まだ、決まった訳じゃないがあの様な技術は人類軍の物じゃない。地球に何かを投下しようとしていたが何とか阻止に成功した。
お前達には其方に落ちてくるエイリアン軍の降下ユニットの調査を頼みたい。大気圏に突入する寸前に爆発したそうだが原型を保ちつつ廃墟都市に落下するようだ。レジスタンス達には此方が伝えておく』
了解と答え通信が切れると同時に巨大な火の塊が僕達の頭上を通り過ぎる。
2Bに視線を向けると丁度、2Bの視線に重なり僕と2Bは頷いた。特に言葉は無かった。
それから、僕と2Bは急いで巨大な火の塊が落下した廃墟都市へと急ぐ。
早くしなければ機械生命体が群がってくるかもしれない。
そう考えた僕達は砂漠地帯を抜け、廃墟地帯へと入りレジスタンスキャンプへと急ぐ。
全力で走った為、数分足らずでレジスタンスキャンプ近くまで来ると、キャンプ近くの平場に黒煙が上がってるのを見つけ、其処へと移動する。
丁度、落下物はキャンプの目と鼻の先に落ち多数のアンドロイド達がその周りを取り囲んでいた。
「ん?2Bと9Sも着いたか」
僕達に気付いたレジスタンスのリーダーのアネモネさんが話しかける。
「アネモネ、状況は?」
アネモネさんの下に近づいた2Bがそう聞いた。
軽く見回してみたが機械生命体の影は見えない。何時もの野良の動き回る機械生命体の影すら無かった。
「見ての通り、お前達の指令から一通り聞いた直後にコイツが落ちてきたんだ。コッチも急いで戦える者を集めて包囲したんだが…機械生命体の動きが無いのが妙だな」
アネモネさんが周囲を見回しそう言う。
確かに、機械生命体の動きがまるで無い。
せいぜい、数体の機械生命体が興味本位で見て来るだけだ。
直後に、落着した降下ユニットから小規模な爆発が起こる。
「爆発した!」
「何かに引火したんでしょうか!?」
墜落したユニットから尚も黒煙が上がり炎も上がる。
内部の温度はアンドロイドにも危険なレベルで上がり続けている。
「不味いですね。このままでは内部の全てが灰になるんじゃ…」
「調査出来るか疑問」
「内部ならあいつ等に行かせてる。何かあれば見つけるだろう」
アネモネの言葉に僕達は一瞬絶句する。
ユニットの内部の温度は危険領域だからだ。
「そんな、いくら何でもアンドロイドでも危険ですよ!」
僕の抗議の声にアネモネさんは「…分かってる」と呟く。
「…だが『自分達が行く』と言ったんだ。あいつ等には何時も面倒な事を押し付けてすまないとは思うが…」
アネモネさんの言葉に僕と2Bが燃え盛るユニットに目線をやる。
未だに炎を上げ黒煙が上がる。
数秒ほどだろうか?
炎が揺らめきから黒い影が二つ見えた。
直後に炎の中から赤い髪の女性アンドロイドが二人飛び出してきた。アネモネが言っていたアンドロイドだろうか。
「お前達、何か見つけたのか?」
慌てた様子の二人にアネモネさんが声をかけるが、赤い髪のアンドロイドの一人が僕達を見つけた途端、僕に掴みかかってきた。
「あんた達、一体何を攻撃したんだい!!」
「うわあ!?」
「9S!?」
赤い髪のアンドロイドの女性の怒声に僕は驚き、2Bが割って入る。
赤い髪のアンドロイドの見たこと無い剣幕だったんだろうアネモネさんが止めようとするが、
「アネモネ!急いで奇麗な水とお湯を用意して!早く!」
もう一人の赤い髪の女性アンドロイドがアネモネさんに指示を出す。
その様子に、アネモネは驚きつつ、赤い髪の女性アンドロイドが何かを抱えてる事に気付いた。
自分達の来ていた服を破いて包んだのであろう、二人の女性アンドロイドの服は胸から下が不自然に破れていた。
「それは一体……まさか!?」
「人間だよ。辛うじて生きてる子供みたいだ」
その言葉に僕は一瞬思考が止まってしまった。多分2Bもだろう。
僕達アンドロイドが守るべき人類が何故此処に?
人類は皆、月に避難した筈では?このポッドは機械生命体の物では無かったのか?
「ポッド!直ぐに司令部に報告を…」
僕は急ぎポッド153に司令部と通信を繋げようとしたが、
「お前達、其処を動くんじゃない!」
アネモネさんの声に止められる。
何時の間にかレジスタンス達が僕達の周りを取り囲み銃を突き付けていた。
「アネモネ!?」
予想だにしなかった仲間たちの態度に焦る2Bだったけど僕は何処か冷静だった。
アンドロイドは人間の為に存在している。
僕達には人間を愛するようプログラムが組まれ戦いの時はそれを糧にして機械生命体と戦う。
言わば人間とはアンドロイドにとって神だ。
そんな愛すべき人類を僕達は攻撃してしまった。知らなかったでは済まされない事だ。
「この二人を拘束しろ!」
論理ウイルスに感染したアンドロイドならともかく、通常の状態のアンドロイドを攻撃するのはご法度だ。
2Bもそれを感じてるのか僕達二人は大人しく拘束され何時もの部屋に軟禁状態となった。
「なんだって、もう一度言ってくれ!」
白い服を着た女性の声が辺りに響く。
それまで、喋っていた少年少女も椅子に座っていた女性達も言葉が出ない。
此処は『ヨルハ部隊』の基地であるバンカー。その指令室だった。
白い服の女性の目にはアネモネの顔がモニターに映し出されていた。
『何度でも言う、お前達が攻撃したのは人間達が乗っていた降下ポッドだ!死者が多数で少女が一人辛うじて生き残っているが五体満足とはいかない。お前たちが何をしたのか解ってるのか!?』
その言葉に次は、どよめきが響く。
バイザーで目元が見えない者たちもいたが、それに関係なく不安がってるのが分かる。
「し…指令、何がどうなってるんですか?私たちが攻撃したのは…」
その質問が一番知りたいのは司令官である自分であった。
そもそも、人類は”既に滅び存在しない”。
自分達は月面で人類が生き残ってる様に見せかける為の部隊。
それなのに何故死体だけでなく生きている少女が居るのだ?
機械生命体の罠?だが、あいつ等に人間を用意出来る訳がない。
分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない!?
「指令」「指令!」
「うるさい!!」
部下たちの問いに怒鳴る事しか出来ない指令。
ヨルハ部隊は完全に機能不全に陥る。
地上でもヨルハ部隊が人間を傷つけた情報が広がりアンドロイド達も間にも亀裂が生じる。
ヨルハ部隊が”デポル””ポポル”以上に嫌われることが決定した。
このアンドロイド達の浮足立ちに敵である機械生命体は不気味な沈黙を保っていた。
事が動き出したのは一週間近くが経ってからだった。
ヨルハの基地、バンカーに緑色の戦艦『ムサイ』数隻と赤い巨大な戦艦『グワデン』1隻の艦隊が迫って来た。
ジオンが等々動き出した。
ジオン軍の本拠地サイド3の首都ズム・シティーにある公王庁。その一室にジオン軍の総帥ギレン・ザビが報告書を片手にモニター越しの老人、父のデギン・ザビと話をしていた。
「突然、宇宙が変わり地球を調査しようとしたら謎の勢力による攻撃により100人ほど乗っていたHLVは破壊され、そのまま大気圏に突入。
痛ましい事件でした公王陛下」
『全て予定通りと言うことだろ。これで、堂々と地球に部隊を派遣し地球資源を巻き上げる。
ダグラス達はその為の生贄にしたのだろう』
「生贄とは人聞きが悪い。大気圏突入直前の襲撃は私も予想外でした。
最も、犠牲になったのはダイクン派と外人部隊が殆ど。大した損害はありません」
デギンの嫌味にギレンは表情も変えず返す。
ギレンとしても、ザビ家に逆らうダイクン派も忠誠を誓ってるのか疑問な外人部隊もそこまで必要な戦力とは言えなかった。
むしろ内乱の種になると疎ましく思ってたほどだ。
その言葉にデギンは「どうだか」と呟く。
ギレンは言葉を続ける。
「もう間もなくドズルの艦隊が敵勢力の衛星を包囲する手筈です。その後、地球侵攻部隊を編成し鉱物資源の確保が出来れば一息もつけましょう」
独立戦争をする前に別の宇宙に来た為、物資には余裕があった。
しかし、補給なしでは何時かは干上がってしまう。
今なら奇襲攻撃を受けた事で軍の士気も高い。国民の戦意も。
早めに動くべきだとギレンは考えていた。
『兄貴!兄貴、聞こえるか!?』
別のモニターに弟のドズル・ザビの顔が映る。
「どうした、ドズル。包囲にはまだ時間が掛かる筈だが」
『それだが、包囲する前に向こうが旧世紀の国際チャンネルで降伏してきた。どう対応する』
「なに!?」
突然の奇襲の後、即降伏。
ギレンの脳内に罠という言葉が浮かんだ。
一方、バンカーの方では酷いものであった。
職務の放棄に喧嘩、虚ろな目で宙を見続ける者。
自暴自棄に自分の頭を壁に打ち付ける。
中でも攻撃に参加していたアンドロイドは刀やペンチで自分の体を傷つけていた。痛みを感じる筈にも関わらず。
そんな折にオペレータータイプのアンドロイドの一人がジオンの艦隊に気づき、勝手に通信を入れていた。
『降伏します。そして、私たちを裁いてください』
もしかしたら、機械生命体やエイリアンの部隊かも知れない。
しかし、ヨルハにとってどうでもいい事であった。
人間を傷つけ殺してしまった。それを考えると自分達の存在意義は無い。
もはや、彼女達は自分たちの防衛すらどうでもよくなっていた。
バンカーにはもう誰一人仕事をしている者はいなかった。
「ふう~、どうするべきか?」
一方、艦隊の指揮官であるドズルはギレンとの通信を終え改めてモニターに映った衛星、「バンカー」を見る。
一応、ギレンも「注意しろ」とは言ったが具体的な指示はなかった。
要は現場で対応しろと言うことであろう。
突然攻撃してきた癖に一戦も交えず降伏。
兄貴からも言われたが罠の可能性が十分ある。
降伏したように見せかけての不意打ち。
旧世紀の戦場であったと聞く。
「とはいえ、手をこまねいていても仕方ないか。ランバ・ラル、いけるか?」
『ハッ、私の部隊ならばもしもの時にも動けます!』
ドズルの声に別のモニターから中年の男性『ランバ・ラル』が映る。
「うむ、貴様なら万が一があった時に直に対応出来よう。いざとなれば貴様のゲリラ戦で一泡吹かしてやれ」
もしも、降伏が嘘で騙し討ちされてもランバ・ラルはゲリラ戦のエキスパートでもある。
生き残る確率は自分の部下の中でもトップクラスだとドズルも信頼する程だった。
一隻のムサイが分離し、コムサイがバンカーへと近づく。
降伏の通信の情報通りに格納庫のハッチが開き中へと入り、宇宙服を着てコムサイを降りる。
その途端、格納庫のハッチが閉まり空気が入る。
一瞬、罠かと思い一斉に銃を構え辺りを見渡す。
しかし、10秒他党が1分経とうが何の反応もない。
ランバ・ラルが手でサインを送ると何人かの部下が辺りを探索しだす。
「…クリア!」「クリア」「クリア」
「中尉、妙な機械があります」
部下の一人の報告にランバ・ラルが慎重に近寄る。
そこで見たのは、整備中だったのか一見飛行機に見える物だった。
「…戦闘機にしては小さいな、無人機か?」
「長さは3メートルも無さそうですね。作りかけですかね?」
「まあいい、本国の土産に持って帰るか。コムサイの格納庫に運んでおけ」
「了解!」
数人の兵が集まり、その戦闘機もどきを運び出す準備に入る。
「中尉、奥にエレベータを発見。電力も生きてます」
「でかした!何人乗れそうだ?」
「詰めれば10人はいけるかと」
奥の方を探索していた部下の報告にランバ・ラルが急ぎ近づく。
「10人か……アコースとコズン、あと何人かはわしに続け。
クランプ、お前はわし達からの定期連絡が無ければコムサイで脱出してドズル閣下と合流しろ。時間は10分間隔だ」
「「「了解」」」
言い終えると同時にランバ・ラルを始めとした10人がエレベーターに乗り込む。
数秒もせずエレベーターが止まり扉が開く。
銃を構えたまま降りて辺りを見回す。
格納庫と同じく薄暗く、やたら白い廊下が左右に伸びている。
「…コズン、半分率いて反対側を行け。わし等はこっちに行く」
なるべく小声で指示を出す。
コズンは静かに頷くと4人の兵を連れ廊下を歩きだす。
それと同時に、ランバ・ラルも廊下の奥へと進む。
暫く、殺風景な廊下が続くがある物が目に入った。
「何だ、あれは?」
「…人…ですかね?」
廊下の端に黒いものが目に入り近づくとそれは黒い服を着た女性が座って項垂れてる姿だと分かった。
部下たちが銃を構え狙いをつけ、ランバ・ラルが女性に声を掛ける。
「君、此処の所属か?他の者は何処にいる?」
そう聞くが帰ってくる言葉は無く女性はブツブツと何か呟くだけだった。
ランバ・ラルが目で合図を送ると部下の一人が銃口で女性の頭をつつく。
「え?誰」
そこでやっと女性が反応し顔を上げる。
女性の顔を見て部下の一人が口笛を吹く。予想より美人だったからだ。
そこで、はじめて自分が囲まれてる事に気づく。
女性は一瞬不安げな顔をしたが、ランバ・ラル達の顔を見て少しずつ体が震えていた。
最初は恐怖かと考えたが顔が妙に嬉しそうな表情をしている。
「あ…貴方達は…人類ですか!」
女性に問いにランバ・ラルはアコースと顔を見合わせ「そうだが」と答える。
スペースノイドだが人類をやめたつもりは欠片もない。
その問いに何の意味があるのか分からなかったが女性の表情は更に明るくなった。
「ようこそ、バンカーに!」
「ば、ばんかー?」
少女の突然の反応に全員の目が点となる。
それでも女性は口が止まらずアンドロイドや機械生命体にヨルハ部隊の事まで喋りだす。
その勢いにランバ・ラルも「ま、待てぇ」と遮る。
「どうしました?」
あまりの情報量に脳が追い付かなかったのもそうだが、先ず聞き出さなければならない事がある。
「このバンカー?…の指令室か制御室を教えて欲しい「案内します!」んだが…え?」
ランバ・ラルの問いに女性は目を輝かせ答える。
そして、直に先導するよう「こっちです!こっち!」と案内しだす。
突然の申し出にランバ・ラル達は益々困惑する。
最も、16Dは唯々人類の役に立ちたかっただけで他意はない。むしろ、役に立って褒められたかったのだ。
自分達にはもうそれしか誇れる事が無いのだから。
「犬っぽい女性ですね」
部下の言葉に頷くランバ・ラル。
尻尾があれば振り千切れる程喜んでる犬に見えて仕方がない。
「こっちです!あ、因みに私の名前は16Dです。どうぞ、そう呼んでください!」
「16…D?」「Dって何だ?」「バストのサイズ…じゃ無さそうだな」
「…コードネームだろ。たぶん…」
ランバ・ラル達の戸惑いをよそに16Dと名乗った女性は見るからにウキウキな様子で歩いていく。
一応、警戒しつつ付いていくが、途中に16Dと同じように通路に何人も項垂れてたり体く座りして虚空を見つめる者達が居た。
不気味に感じつつも”それらを全く気にもしない”16Dに付いていく。
どうやら、此処は外から見た通り円形状で繋がってるようだと感じてると16Dが「着きました!」と言って立ち止まる。
視線の先には自動で開く扉が存在している。
立ち位置的に自分たちの方が早く来れる距離だ。コズン達は少し遅れて来るだろうとランバ・ラルは考えた。
そして、16Dを先頭に扉を開けて中へ進む。
二重の扉を開け進むとランバ・ラル達は言葉を失う。
大きな空間に左右に通信機が幾つもあり正面には巨大なモニターがありそこから指令を出すのだと分かる。
しかし、真面目に働いてるものは皆無で通信機の机に伏せる物や狂った様に奇声を上げる者などがいた。
「…地獄絵図だな」「何があったんだ?」
「私達はいけない事をしてしまったんです。大好きな守るべき人類を…」
部下達の言葉に16Dがそう答える。
いまいちピンと来ないがランバ・ラルは自分の役目を果たす為、懐から別の銃を取り出し天井に向けて発砲する。
念の為、空砲ではあったが大きな発砲音にその場にいた皆が一斉にランバ・ラル達の方を見る。
「…誰?」「何処かのアンドロイド?」『生命反応あり;推測;彼らは人間』「人間……!」
アンドロイド達が口々に喋り傍に居た浮いてる黒い箱が人間と言う言葉にアンドロイド達の目に光が戻る。
「私は、ジオン宇宙攻撃軍所属のランバ・ラル中尉だ!この時をもって指令室は我々が占領する。抵抗せず降伏を要求する!」
ランバ・ラルの声が辺りに響く。
暫くの沈黙後、指令室は歓声に包まれる。
「「「やったあああああああああ!!」」」「「人類だ…本物の人類だ!」」「「「「「人類に栄光あれ!人類に栄光あれ!!」」」」」
それぞれ喜ぶアンドロイド達に渋い顔をするランバ・ラル達。
「…何の騒ぎですかい、中尉」
っとそこへ反対側から回ってきたコズンの隊が合流する。
見れば、コズン達もアンドロイドを連れてきていた。
「…もう知らん、ドズル閣下に丸投げしてやる」
疲れた表情でそう呟く。
そして、ランバ・ラルは通信機を取り出した。
兎に角、自分たちの仕事は終わった。後は上にさせればいい。
ジオン軍はバンカーの制圧に成功した。
「ふむ、これが例の報告書か」
数時間後、ギレンの机にドズルからの報告書が届き目を通す。
西暦が1万年越えやアンドロイドの情報に機械生命体にヨルハ。読み応えは抜群であった。
既にドズルの艦隊が別のアンドロイドの衛星も占領しつつある。
司令官だったアンドロイドも処刑と言う名ばかりの解体。そして分解されて徹底的に調査される。
最早、邪魔者は居ない。
ギレンは通信機を操作する。
「デラーズ、例の物の準備は出来たか?」
『はっ、暗礁空域より手頃なものを幾つか』
その言葉を聞いてニヤリと笑みを浮かべる。
2週間後、ジオンは前代未聞の作戦を実行に移す。
暗礁空域より運び出した複数の隕石を地上に落とす。
アンドロイドや機械生命体すらやらなかった行いであった。
後に、ブリティッシュ作戦と呼ばれる作戦の開始である。
『これは、愚劣なら機械共にたいする裁きの鉄槌である。神の放ったメギドの火に必ずや機械共は屈するであろう!』
突然の事にアンドロイドは愚か機械生命体も対応が遅れる。
一部の機械生命体が迎撃に動くが重力の力で落ちて来る大きな隕石の破壊など不可能に近い。
機械生命体の戦力は大きく目減りする事になる。
「ブリティッシュ作戦の成功で地上に居る機械共の戦力は大いに減った。今こそ地球侵攻作戦の開始だ!」
『それは構いませんが兄上、今回の作戦は少々無茶だったのでは?下手をすれば地球が氷河期に突入するとこでしたが、それに市民に将兵やアンドロイド達の反発もあります』
ギレンの言葉にキシリアが反論する。
事実、地上に居たアンドロイド達も大きな被害が出ている。
「氷河期に関しては計算やシミュレーションを重ねた物だ、早々失敗はない。市民と将兵に関してはダグラ達の最後を宣伝してやれ、機械共に同情する者も減るだろう。
アンドロイドに関してはこれを見ろ」
そう言って、ギレンは手元のスイッチを入れる。
すると、キシリアのモニターに書類の写しが映る。
『ヨルハ部隊のアンドロイドの一部を優遇?……!!
成程、分割統治ですか』
「『分断して統治せよ』良い言葉だと思わんか?旧世紀のポピュラーな統治方だったそうだ。先人の知恵を使うべきだろう。ついでに月面人類会議の真実も教えてやればいい」
ギレンは笑みを浮かべ、キシリアは冷たい目で見ていた。
ギレンの企み通り、地球侵攻作戦は途中まで滞り無く成功する。
資源豊かなオデッサ、キリマンジャロなどの制圧にさほど手間は掛からなかった。
しかし、機械生命体はジオンの補給線の脆弱さを知り集中攻撃を行い戦いは停滞気味となる。
アンドロイド達もジオンの為に戦っていたが、ギレンの策略によりヨルハのアンドロイドを恨みジオン兵の見てないとこでは暴力沙汰も珍しくもない。
また、ジオン兵達もダグラスの一件で機械同士の争いごとを積極的に止める者も少なかった。
冒頭の2Bと9S達も暴力を振るわれた後アンドロイド達も鬱憤が晴れのか時間がきたのか仕事に戻る。
すると、其処に近づく人影が、
「また派手にやられたね、9S。ほら手を出して」
「…出来ればもっと早く来てほしかったよ”9S”」
その人影は倒れている9Sと全く同じ姿の9Sだった。
起こされた9Sが2Bの方を見ると、別の”2B”が肩を貸していた。
月面人類会議の真実をばらまき、主導権を完全に握ったジオンはヨルハにある指令を送る。
同型機の複数運用である。
今までヨルハは同型機があっても、それは任務中に破壊された時用に運用していた。何よりコストも掛かっていた。
しかし、ジオンにとってはそんな事はどうでも良かった。
コストもアンドロイド達を扱き使えばいいし、ヨルハ自体も良い囮になる。
記憶データの方も最後まで生き残った者が記録として残して置けばいい。
それに別の方にも評判は良かった。
9S達は今、寝床にしているコンテナに戻る。
隕石落としで廃墟地帯にも多大な被害が出たことで他のアンドロイドの手前住むことが出来なくなった9Sと2Bだったが偶々、ジオン軍の破棄したコンテナを見つけ其処で休む事にしたのだ。
前に住んでた部屋に比べれば熱いは埃っぽいはで、住みやすいとは到底言えない環境だったが、複数に増えた9Sや2Bにもう此処しかなかった。
「…お帰り」
「ただいま、2B」
見張りのつもりか入り口付近に立っていた2Bとの短い会話を済ませ4人はコンテナに入る。
其処には当然、自分以外の9Sや2Bが静かに休んでいたが、
「あれ、2Bが一人いないけど何処か行った?」
9Sの数に比べて2Bが一人足りない事に気づく。
「ジオン兵が連れて行ったよ。目的はたぶんアレだね」
「そうかぁ」
ジオン兵が連れて行った。
つまり、ジオン兵のお楽しみの道具ということだ。
地上に降りたジオン兵達にとってアンドロイドの女性タイプはそれなりに人気がある。
それに、相手をするアンドロイドにとっても人間との触れ合いはどんな形であれ嬉しいものだ。
「いいな、2B」
偶に物好きなジオン兵が9Sも連れていくが大抵は2Bばかりが連れていかれる。
それが9Sにとって少し羨ましかった。
内心、バンカーがスキャナー型も女の子タイプが出ないかなと思いつつ適当な場所で横になる。
戦線は停滞し自分達アンドロイドは囮や雑用に使われるが不思議と嫌な気持ちがない。
むしろ、前に比べれば人間に使われてる方が充実感がある。
この戦争が如何なるかは分からないけど、このままの生活も悪くないと感じる。
他のアンドロイドに殴られるのは仕事だと思えばいいかな。
でも、出来れば平和になった世界も見てみたいな。
僕たちは何処までも愚かなのかもしれない。
地球の氷河期にはギリギリならなったということで。
因みに、ギレンの策略が無くてもアンドロイドは勝手にジオンに懐きます。
一応、最後まで続けたいですね。
ただ、他のネタもあるのでそっちも書くかも…