機動戦士オートマタ   作:一種の信者

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2話

 

 

「どうぞ」

 

「え、ええと……ありがとう…」

 

 

 

2B達がケン達との接触後に彼等の上官と会うことになった。

場所はHLVの格納庫に簡易な椅子とテーブルが置かれただけであるが。

現在、ジオンの女性兵士が自分達の前にコップの中に黒い液体が入った物を目の前に置かれた。

2Bが一瞬、石油かとも思ったが隣ではしゃぐ9Sが興奮気味に説明する。

 

 

「これってコーヒーですよね!?確かカカオっていう豆を潰したり色々して粉にして熱湯を入れて飲むんですよね!?凄いな、データでしか見たことないよ」

 

 

S型ゆえか敬愛する人間が淹れたからだろうか、9Sは何時も以上に興奮してる。

そして、9Sがコーヒーを口に入れ「苦っ!」とバイザーの上からでも分かるほど顔を歪ませる。

その姿に何処か胸に温かいものを感じて私もコーヒーに口をつける。

 

……人間はよくこんな変な物を飲めるな。

 

 

 

 

 

 

 

「私がこの部隊の司令官、ダグラス・ローデンだ。部下たちの救援、心より感謝する」

 

 

「いえ、僕達は当たり前の事をしただけです。そして僕は、ヨルハ九号S型。9Sと呼んで下さい」

 

「…私はヨルハ二号B型。皆は2Bっていう」

 

 

 

ダグラスとケンが席に着き会談が始まる。

手の空いてるジオン兵が一部野次馬となっているが。

先ずは、ダグラスの礼に二人がそう返した。

 

 

 

「…ヨルハ…聞いたことない単語だな。少尉、君は?」

「いえ、自分も聞いたことありません」

 

 

「ヨルハ部隊が出来てもう数年は過ぎてる筈なんですけどね」

「…人類軍にはまだ私達の存在が認知されてない?」

 

 

「そもそも、その人類軍というのが分からん。地球連邦の間違い…でもなさそうだな」

 

「私達も地球連邦という言葉に覚えがない」

 

 

 

「ふむ、ならば情報交換といこうではないか。如何にも君達と我々の間に隔たりを感じる」

 

「情報交換ですか?分かりました」

 

 

ダグラスの案に9Sも快く返答し自分達の持つ情報を互いに伝える。

その直後にバンカーをとおさなかった事を後悔したが。

 

 

 

 

 

 

 

「宇宙世紀…!?宇宙移民者?サイド3」

 

「せ、西暦一万一千九百四十五年!?エイリアンに機械生命体!?そしてアンドロイド…」

 

 

 

あまりの自分達の情報との隔たりにお互い絶句する。

ダグラス達も2B達も一瞬、向こうが嘘をついてるのかとも思ったが直ぐにその考えを捨てる。

どちらにとってもメリットがない。

 

 

ダグラス達から見れば、サイド3以外のコロニー郡に月都市や連邦基地の消失。

更に、地上では見たこと無いドラム缶の様な機械生命体の襲撃。

 

2B達からはあの巨大人型兵器、モビルスーツなど今迄聞いたことも無い。

人類軍が秘密裏に製造した可能性も否めないが、それなら完成した後も隠す必要は無い。

あれなら並みの機械生命体は愚か、以前苦戦させられた超大型機械生命体とだってタメを張れるのに、他のアンドロイド部隊の士気も上がる筈。

 

 

 

 

 

暫しの、沈黙が場を支配する。

しかし、それを破ったのは野次馬の一人だったメイである。

 

「へ~、君はアンドロイドなんだ!ちょっと触らしてよ!」

 

「え!?ちょ、ちょっと君?」

 

アンドロイドと言う言葉を聞いたメイは9Sの了承も取らず頬などを触りだす。

いきなりの事で驚く9Sだったがメイを突き飛ばす行為はしなかった。

 

「ん~、シリコンとは少し違うかな。柔らかさの中に奥の方は機械の硬さも分かるし、人工皮膚もここまで進化したのか」

 

「や、ちょっと…君…本当に…ちょっと…あっ気持ちい」

 

メイの触り方に9Sも最初は嫌がったが人間に触れられてる事やメイの手つきに徐々に大人しくなる。

 

 

「ああ、カーウィン。我々はまだ会談の途中だ。そういうのは後にしなさい」

 

「ええ?ようはあたし達がタイムスリップしたって事でしょ?」

 

その言葉に一同がハッとする。

一見、SFだと笑い飛ばせるが現状が現状だ。

しかし、メイは更に続ける。

 

「あ、タイムスリップちょっと違うかな。ねぇ、君は『宇宙世紀』って言葉聞いたこと無いんだよね?」

 

「へ、え…ええ、聞いたことありません」

 

メイが先程まで頬を触っていた9Sにそう聞く。

9S自体もポッド等に調べさせてみたが情報が何処にもなくそう答える。

 

 

「ええとぉ、…こういうの何て言ったっけ……確か異世界……異世界転生!」

 

その言葉に野次馬のジオン兵の口から「…転生?」「え?俺達、死んだの?」と声が漏れる。

 

 

「あ、違った。間違えった『異世界転移』だ」

 

 

 

「…カーウィン君、その異世界転移というのは?」

 

「文字通り異世界に転移する感じかな。旧世紀に流行ったジャンルで私も昔読んだ程度だけどね。原因は…多分あの宇宙嵐じゃないかな?」

 

「う、宇宙嵐って貴方達、宇宙嵐にあったの!?」

 

「うん。太陽風と磁気嵐の合わさった感じの奴。サイド3全体と艦隊が飲み込まれたんだ。コロニーが凄い揺れたよ」

 

 

臆面もなく答えるメイに9S達も「はぁ…」と言うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、貴方達はこれから如何する?」

 

 

異世界の人間だろうがタイムスリップしてきた人間だろうと守るのが自分達の使命だと判断した2Bがダグラス達にそう切り出す。

出来る限り、彼等を守りたいと思ったのだ。

 

 

「ふ~む、取り敢えずは本国からの命令待ちになるが……怪我人が多数出ている。彼等を休ませてやりたいんだが」

 

「なら、アネモネさんのレジスタンスキャンプに行くのはどうですか?少なくとも此処よりかは安全な筈です」

 

ダグラスの言葉に9Sがそう返す。

一瞬、考えるダグラスだが外から「また出たぞ!」「何匹居るんだ、こいつ等!」という声に決意する。

 

「なら、此方のケン・ビーダーシュタット少尉とそこのメイ・カーウィンを連れて行ってくれないか。

それからザクも一機護衛で出そう」

 

 

 

これにて、2B達とダグラス達の会談が終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すまない、2B。もう一度言ってくれないか?」

 

『了解、私達は武装した人間たちを保護した。怪我人が多数出たのでレジスタンスキャンプへと向かうので代わりのヨルハ機体を残った彼らの護衛にまわして欲しい』

 

 

あの後、2Bは衛星軌道上にある自分達の基地、「バンカー」にことのあらましを説明した。

最初は敵の兵器の奪取か破壊したかの報告だと思っていた司令官が面を食らった。

最も、その報告を聞いた他のヨルハ機体が騒ぎ出していた。

 

「え?人間に会えるの?」「誰が行くの?ねぇねぇ誰が行くの!?」「私行きたい!」「オペレータータイプのあんたじゃ無理でしょ!此処はD型の私が」「いや、此処はB型のあたしに譲れ」「あんただとヨルハ部隊全体が勘違いされるわ!けが人も居る以上H型の…」「人間とアンドロイドの治療は違うんですけどね」「新兵器のモビルスーツってやつ見てみたいな。9S代わってくれないかな」

 

 

口々に「自分が行きたい」と言い出すアンドロイド達。

しまいにはアチラこちらで口げんかまで起こっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9Sがケンや2Bを待ちながら辺りを警戒する。

あの後も、何度か機械生命体が来たのか残骸があっちこっちに転がっている。

すると、HLVの方からエンジン音と巨大な足音がし9Sが振り向く。

其処にはモビルスーツも運べるでかいトラックとザクが此方へと近づく。

トラックの荷台に10人程の包帯を巻いたジオン兵を確認する9Sだったがモビルスーツもう一機あることに気づく。

 

 

「モビルスーツをもう一機持っていくんですか?」

 

「うん、あれ隊長さんのザクで念の為に持っていくんだって」

 

 

メイの答えに9Sは「…僕らってそんなに頼りないかな」といって落ち込む。更には、「人間が乗らなきゃ動かない機械の癖に…」っと呟く。

この時、9Sはモビルスーツに嫉妬してることに気づかなかった。

 

 

 

 

 

「9S、お待たせ」

 

丁度、バンカーと連絡の終えた2Bが合流する。

 

「あ、2B。バンカーとの連絡如何でした?」

 

「…大騒ぎだった。…本当に…」

 

2Bはそれ以上語ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンドロイドに機械生命体か」

 

 

 

サイド3。

サイド3の首都、1バンチのズム・シティ。

政庁の中の執務室に男が一人。

ジオン公国総帥、ギレン・ザビである。

 

彼は現在ダグラス達から送られてきた報告書に目を通し笑みを浮かべる。

っと、その時、ギレンの横と後ろにあるモニターから二人の男女が映る。

男の方は大柄で顎の部分に傷のあり、女の方は細身で口元を覆うマスクとヘルメット被っていた。

ギレンの兄弟、ドズル・ザビとキシリア・ザビである。

 

 

『兄貴!この報告書の内容は何だ!?完全にSFではないか!』

 

『とても国民に発表できる内容とは思えませんな。白昼夢の方がまだ納得出来ますぞ総帥』

 

 

「外人部隊が騙されてる可能性も否定できんが…こんな映像まであってはな」

 

そう言って、ギレンは二人に映像の内容を送る。

映像には機械生命体と呼ばれる敵がザクに粉砕されてるところだった。

 

 

 

『それで如何するんだ兄貴!他のコロニー郡が無い事で兵達が浮足立っている。士気の崩壊は時間の問題だぞ!』

 

『連邦との戦争の為に集めた物資がまだあるとはいえ、余裕がそれほどある訳ではありませんよ。総帥』

 

 

「…落ち着け二人とも。逆にこれはまたとないチャンスといえる」

 

 

『…チャンス?』

 

 

「そうだ、この世界の地球の資源を手に入れ、地上戦でMSを更に開発しパイロットも育成する。さすれば元の世界に戻った時、連邦なぞ一捻りよ」

 

 

『兄貴、一つ聞きたいんだが…元の世界に帰れる保証はあるのか?』

 

「逆に帰れない保証もあるまい」

 

『…兄上、それは屁理屈では?』

 

この時、ドズルとキシリアは考えは一致し『兄貴(兄上)は焦ってるじゃないのか?』と感じた。

 

 

「まあ、冗談はさておき、元の世界に帰る研究はさせる。実を結ぶかは分からんがやってみる価値はあろう。

それでキシリア、月面の調査は如何だ?」

 

『はい、艦とモビルスーツに調査させてますが古い施設が幾つかあるだけで到底「数十万の人間」が居るとは思えませんな』

 

『月面の表面に居なければ地下にいるんじゃないのか?地下都市なぞそう珍しくもあるまい』

 

「或いは、既に居なくなってるかだ。エイリアン共との戦闘に5千年は過ぎてるんだ。滅んでても不思議ではあるまい」

 

ギレンの言葉に黙る二人。

仮に生き残りがいようが自分達に何の影響もない。

例え、それでアンドロイドが全て敵になろうが勝つ自信がギレンにはあった。

 

「とは言え、まだアンドロイドには味方で居てほしいところだが、ダグラス達にはレジスタンスキャンプへ行かせる。其処を拠点として活用する」

 

『ですが無理にやればレジスタンスの反感を買うだけでは?』

 

「だからどうした。所詮は機械どもだ。その程度で敵になるのならば潰すだけだ。ドズル、急ぎ降下作戦の準備に入れ」

 

『分かった、兄貴』

 

ドズルとの通信が切れる。

続いて、キシリアも通信を切ろうとするが、

 

『…私だ、何か見つけたか?……何だと!?』

 

部下からの緊急の報告らしく珍しくキシリアは顔色を変える。

 

『兄上、緊急です』

 

「如何した?」

 

 

『月面で少女を保護したそうです』

 

 

 




モビルスーツに嫉妬する9S。
可愛いと思います。
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