アダムとイブの撃破。
敵ネットワーク基幹ユニットであった両名の撃破でネットワークを繋げていた機械生命体は混乱状態にあり、近々ジオンは残ったユーラシア、オーストラリア、北アメリカ、アジア方面の大規模侵攻を決定。
格アンドロイド達も奮闘せよとの命令に興奮する。
そして、ガルマ直属のヨルハ部隊は、
「2Bこれがシャトルですよ。感動するな!」
「9S、はしゃぎ過ぎ」
「僕だけじゃないですよ。スキャナータイプ達は皆、はしゃいでます」
ヨルハ部隊はサイド3に行く為にジオンが民間から徴収したシャトルに乗っている。
彼らの姿はサイド3に行くということでジオン軍から配給されたジオンの軍服を着ていた。
彼らにとって、排熱がやや悪いが人間から渡された事と戦いに行く訳ではないので喜んでいた。
「…これを着るのか」
「私も着るし平気平気」
軍服に文句を言いつつ若干嬉しそうな顔をしたA2。
素直にはしゃぐ4号。
黙って、ジオン軍服を着る4S。
「はぁー」
席に座る、ホワイト副指令が溜息を付く。
もう直ぐ、大規模侵攻作戦が始まる時に何故、自分達はシャトルに乗っているのか。
理由は解ってはいる。
あれは、イブを撃破して二日目の事だった。
『諸君の活躍によってアダム及びイブの撃破に成功した。私からも礼を言わせてくれ』
指令室の通信機からガルマの映像と言葉にヨルハ達は感激する。
正直、活躍したのは2Bと9Sだけの気もするがヨルハ機体の手柄は皆の手柄だと誤魔化す。
『ジークジオン』の声が暫く鳴りやまなかった。
少し、落ち着いたタイミングでガルマが再び口を開く。
『君達の戦果に私としても何か褒賞を送りたい。諸君らは何が欲しい?または何がしたい?』
その言葉にヨルハ達も騒めき出す。
アンドロイド達の願いは基本どれもが同じ。
即ち、「人間と共に居たい」か「人間の役にたちたい」だ。
特にヨルハ機体はその傾向が強い。
「どうする♪どうする♪」
ヨルハ機体の皆が楽しそうにしながら一人のヨルハ機体が手を上げる。
「はいっ!私、サイド3に行きたい!いっぱい人間さんに会いたい!」
6Oが元気に発言する。
その言葉に、「え?」という反応するヨルハ達。
『成程、サイド3か。これは私の一存では決められんな。暫し待て、兄う…総帥に交渉してくる』
通信が切れた後、6Oは他のヨルハ機体に文句を言われるがそこは割愛する。
まあ、仮にサイド3に行ける様になっても戦後辺りだろうと誰もが思っていた。
事態が動いたのは翌日だった。
「明日に到着するシャトルに乗り、ソロモン経由でサイド3に召喚せよ。ですか」
『その通りだ、ソロモン、ア・バオア・クーでそれぞれ論理ウイルスに感染してないか確認してサイド3に来るのだ』
通信機にはギレン・ザビが映る。
昨日、ガルマに話した事がギレンに伝わり、ギレンはサイド3に来る事を認めた。
「し…しかしギレン閣下、もう直ぐジオンの大規模侵攻作戦があります。無論我々もそれに参加する手筈の筈ですが!」
ホワイト副指令としてもサイド3に行きたくない訳ではない。寧ろ率先して行きたいぐらいだ。
しかし、今からサイド3に行っては大規模侵攻の作戦に間に合わない。
『ホワイト副指令、物事には順序というものがある。貴様は、命令書通りに従っていればいい』
そう言って、ギレンは通信を切る。
その後、ホワイトはギレンからの命令書を受け取る。
「はぁー」
ギレンとのやり取りを思い出したホワイトはまたもや溜息をつく。
命令とは言え、「人間のやる事は解らない」と思いつつ、ホワイトは席の後ろの方を見る。
其処には、赤い髪が特徴のデボルとポポルも居た。
ヨルハ機体ではない二人が何故居るのかと言うと、先日に決定したデボルポポルタイプのアンドロイドの生産の為にサイド3でデータを取る為であった。
地上からデータを送ればいいのではと思われたが論理ウイルスの可能性を否定できない事は危険と判断されヨルハ機体と一緒に運ばれる事となった。
ホワイトにとってやや気が重かった。
それでも、サイド3に行くのが楽しみなのは皆と変わらない。
もう間もなくシャトルは発進する。
シャトルは何の妨害も無くソロモンへと近づきつつある。
窓から見えるソロモンに感動する者や、あんな所を基地にするなんてと感心する者もいる。
一機のモビルスーツがシャトルへと近づき、モノアイを点滅させる。
「何してるの?」
「モールス信号ですよ、カ・ン・ゲ・イ・ス・ル・…『歓迎する』って言ってます!」
9Sの言葉にシャトルの中のヨルハ達は大はしゃぎ。
そのモビルスーツを見ようと誰もが窓側を奪い合う。
その様子を知ってか知らずか、モビルスーツは敬礼の格好をしてシャトルから離れる。
シャトルはソロモンに到着した。
ソロモンの格納庫にはヨルハ達を見ようと整備班だけでなくジオン兵士達も集まっていた。
「よく来てくれた、ソロモン要塞の副指令ラコック大佐だ。君たちを歓迎しよう」
シャトルから降りるとジオン軍の士官が出迎える。
ホワイト副指令をはじめヨルハ達も敬礼する。
それを見ていたジオン軍兵士達が歓声を上げたり口笛を吹いたりする。
尤も、ソロモンで働いていたアンドロイド達は面白くなさそうだったが、
「うおっほん、君達にはウイルス検査をした後、ドズル指令との面談だ」
その後、ソロモン内での論理ウイルスの検査をし終えたヨルハ達はソロモンの一室へと向かう。因みに、デボルとポポルも一緒である。
一際立派な扉が開き中に入ると巨漢の男性と腕に何かを抱える妙齢の女性が居た。
「おお!よく来てくれたヨルハ諸君。お前たちの活躍はガルマから聞いてるぞ!」
そう言うと、4Sを軽々と持ち上げる。
驚く4Sだが、その表情は何処か嬉しそうにも見える。
「もしかして、貴方が…」
「おっと、名乗りが遅れたな。俺はジオン公国宇宙攻撃軍司令のドズル・ザビだ」
ホワイト副指令に名乗るドズル。
ソロモンとの通信が無かったのでホワイト副指令もデータ上ですか知らなかったのだ。
「失礼しました」
「そう固くならんでいい。序でに紹介しておこう、俺の女房ゼナだ」
ドズルが妙齢の女性の紹介をすると女性が近づいて来た。
そこで、女性が持っていたものが分かった。
「!これは…」
「…赤ん坊ね」
ホワイトや他のヨルハが言葉を詰まらす中、デポルが赤ちゃんと口にする。
データ上でしか知らない「赤ちゃん」それが目の前に居る。
ヨルハの誰もがスキャナータイプ以上に興味を示す。
「先日にな、俺の可愛い娘でミネバと言う」
ドズルが嬉しそうに娘の名を教える。
ようやく授かった可愛い娘を自慢したかったのかもしれない。
因みに、ドズルがミネバの事をギレンに教えてギレンが頭を抱えたそうだが今は関係ない。
「ようやくにも手に入れたミネバの為にもこの戦争負ける訳には…ん?」
ドズルはそこでヨルハ達の様子に気付いた。
皆の目は女房のゼナ…の腕に抱かれているミネバに集まっていた。
少し思考したドズルはある提案をする。
「…少し抱いてみるか?」
「「「「「はい!!」」」」」
ヨルハだけでなくデボルとポポル、ホワイトまで即答で返事をする。
その声はどこまでも元気いっぱいだった。
「ちっちゃい!」「あったかい!」「かわいい!!」
ミネバが次々とヨルハ機体やデボルとポポル、ホワイト副指令にも抱かれていく。
中には二度三度抱こうとする者まで現れミネバがとうとう泣いてしまう。
赤ん坊の泣き声にオロオロするアンドロイド達にドズルの妻のゼナが笑みを浮かべてミネバを抱く。
泣いていたミネバも直ぐに大人しくなりアンドロイド達は感心した。
「ふむ、もう少し時間があるか。よし、お前達付いて来い!ミネバより劣るが凄いものを見せてやる!」
そう言って、部屋を出るドズル。
正直、もう少し赤ん坊と居たかったアンドロイド達もドズルの言うことに従い付いていく。
暫く移動するとドズルとアンドロイド達はソロモンの格納庫に着く。
格納庫の通路を進む中、ヨルハ機体とデボルポポルは周囲の整備されてるモビルスーツを見る。
「宇宙なのに…ドム?」
「あれは宇宙様に改装されたリック・ドムです」
2Bが格納庫でドムを見つけると9Sがリック・ドムだと説明する。
地上で使われていた機体も多いが宇宙ならではの機体も多い。
「見てください2B、ガトルですよ。戦闘爆撃機という種類でモビルスーツが造られる前から使われてたそうです」
「そう、赤いのね」
宇宙専用の戦闘爆撃機を解説する9S。
一目の印象が赤いと呟く2B。
「2B、あれはビグロですよ!モビルスーツではなくモビルアーマーと呼ばれてて高速移動での戦闘は評価が高いんです。因みに量産されるようです」
「大きくて平たいのね」
大型モビルアーマーで、
「おお!2B、ザクレロです!ビグロの原型となった機体でどうも期待通りの性能が発揮できず廃棄が決定していたらしいんですが、完成品があるなんて」
「黄色くて大きな口ね」
試作で終了したモビルアーマーで、
それぞれのアンドロイド達がはしゃぐ。
見たことあるモビルスーツから見たこともないモビルアーマー。
特に、スキャナータイプのヨルハ機体が目を輝かせる程に、
そして、ドズルは格納庫の最奥の扉の前まで来た。
「最後に貴様たちに見せたかったのはコイツだ」
扉が開き中に入った瞬間、アンドロイド達…ヨルハもデボルポポルも言葉を無くす。
そこにはいままで見たモビルスーツや機械生命体でも滅多に見ない程の巨体が佇んでいる。
周りには整備士のジオン兵やアンドロイドが忙しなく機体の整備をしている。
「で…でかい…」
「水没都市の超大型機械生命体には負けるかも知れないけど、それでも大きい」
「コイツこそが、ソロモンの最大の防衛機体となるモビルアーマー。ビグザムだ!」
9S達の目前に巨大なモビルアーマーが整備されていた。
巨大な二本の足に巨体の胴体。
機体中央部には大型メガ粒子砲を撃つ砲門。
アンドロイド達はまさに圧倒される。
「おい、誰かビグザムの仕様書を持ってこい!」
ドズルの言葉に近場に居たジオン兵の整備士が持っていた仕様書を手渡し、ドズルも渡された仕様書を9Sに渡す。
「特別に見せてやろう。まだデータベースにも登録されてない最新情報だ」
「は、はい!」
許可を貰った9Sは早速仕様書に目を通す。
9Sだけでなく他のスキャナータイプも覗くようにみる。
「高さ59,6メートル、重量1,936トン、出力35,000KWを4基!推力580,000kg!これ本当なんですか!?」
「本当だ。ビグザムが完成すればソロモンの戦力の三分の一を地上に下せる」
ドズルの言葉にヨルハ機体とデボルポポル、ホワイトも驚くしかなかった。
ソロモンでドズルとの会話を楽しんだアンドロイド達は名残惜しそうにシャトルに乗り、次の目的地ア・バオア・クーへと向かう。
「ア・バオア・クーへようこそ。私がア・バオア・クーの司令官ランドルフ・ワイゲルマン中将だ」
ア・バオア・クーに着いた2B達は早速司令官への挨拶を済ませる。
どうにも、ソロモンの空気と違うことに2Bが不思議に思う。
「9S、此処にアンドロイドは居るの?」
地上の昼の国もソロモンも結構な数のアンドロイドがいたが、ア・バオア・クーにはアンドロイドの気配があまりない。
「…一応、居るには居るんですけど、…ア・バオア・クーはアンドロイドに対して排他的なんですよね」
ジオン軍でも、全ての者がアンドロイドに友好的かと言われれば否定せざる追えない。
人間でもない機械を信用出来るのか?
機械生命体みたいに攻撃してくるんじゃないか?
自分達、人間と取って代わる気じゃないだろか?
etc.
理由など幾らでも出て来る。
ギレンは、ジオン軍内でアンドロイドに懐疑的な者を一か所に集めて自身の子飼いのランドルフ中将に指揮を任せていた。
アンドロイドと問題を起こさないように、万が一アンドロイド達が反旗を翻した時の切り札として。
「だから、ここでは大人しくしていた方が良いですね」
「…わかった」
結局、ヨルハ機体は検査が終わるまでシャトルで時間を潰す事となった。
スキャナータイプ達はぶーたれていたが人間に嫌われるのも嫌なので結局大人しくしていた。
数時間後、無事検査を終えたアンドロイド達はア・バオア・クーを後にしサイド3へと向かった。
「ふむ…8年後のMSは随分と進んでるな」
サイド3、ズムシティの執務室ではギレンがアクシズから送られたデータを纏めていた。
内容は、連邦との戦争時の大まかな動きやアクシズで作られたモビルスーツやモビルアーマーのデータ。
戦後の連邦の動きに、分裂したティターンズとエゥーゴの情報など。
「連邦め、随分と無茶苦茶な動きをする。グローブでの動きはガス抜きのつもりか?しまいには分裂して内戦か…」
幾つかの書類を片付けるギレンは一枚の書類に目をつける。
「ハイザック、連邦の技術を取り入れたザクか…武装はマシンガンとビームライフルの換装が可能…ビームライフル?」
その後、ギレンは急ぎゲルググの量産も推し進めた。
それだけ、一般兵士からのギャンの評価がよくなかった。
しかし、一部の兵からは好評ではあったのだが。
結局、ジオン軍はゲルググとギャンの両方を量産することが決定した。
ヨルハ機体達とデボルとポポル、ホワイトの忠誠度がMAXを突破しました。
ギレンがアンドロイド達を呼び出した本当の理由は?