機動戦士オートマタ   作:一種の信者

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久々の更新

熱いです! パソコンがヤバい…


22話 人形とパレード

暗い宇宙。

空気も無い僅かな岩石が浮かぶ宙域。そこへ、白と黒で塗装されたシャトルが進む。

シャトルは既に月を通り過ぎようとしていた。

 

「…見えた、アレがコロニーだ!」

 

ヨルハの誰かがシャトルの窓からコロニー郡サイド3を見つける。

それを聞いたヨルハやデボル、ポポルとホワイトも窓から外を見ようとする。

 

「あれがコロニー…」

 

「はい、あの円形状のシリンダーが人類の新たなる大地です」

 

窓の外を見た2Bと9Sが感動気味に話す。

この何もない宇宙空間でも人は生きている。

それが溜まらなく嬉しかった。

 

シャトルと行違うようにムサイが通りすぎる。

パトロール艦だ。

その時、9Sがある物を見つけ2Bに教える。

 

「大きい…9S、あれは?」

 

「以前、データで見たドロス級ですよ。実物で見ると大きいなああ」

 

9Sの言葉に他のヨルハの機体も窓から見る。そこには宇宙に浮かぶ巨大空母ドロスが遠目で確認でき周りの艦船から大きさが十分分かり茫然とする。

 

そしてもう間もなく、サイド3の首都1番地、ズム・シティの港につく。

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、ガルマ隊のヨルハの皆さん。サイド3へ!」

 

宇宙港に着き、シャトルから降りた9Sや2Bたちの前に歓迎の看板を持った少年と、その少年の態度にオロオロする少女、そして少年の行動に頭を抱えたジオン軍人が居る。

歓迎されてるのか煽られてるのか判断が出来ないヨルハ部隊だったが、何人かのヨルハ隊員がその少年が9Sに似てる事に気付く。

 

「2号、何故9号を止めなかった?」

 

「…私もあんな物持ってる事に今気付いた」

 

「え?これよくありませんか?歓迎ですよ、歓迎!人間ってこうして客人を迎えるんじゃないんですか!?」

 

少年…9号と呼ばれた少年の発言に軍人は溜息をつく。どうやら嫌がらせや煽りではないことを知り安堵するヨルハ隊員たち。

 

「はあ、まあいい。ホワイト副指令は居るか?」

 

「あ…自分です」

 

9号の事は無視して話を進めるジオン軍人。名前を呼ばれたホワイトは軍人名前に歩み、自分だと答える。

 

「…総督府でギレン閣下がお待ちです。それからデボルとポポルタイプのアンドロイドも私に付いて来てください」

 

「え?…あ、はい」

 

ホワイトを舐る様に見た後に軍人がそう言って歩き出す。その態度を呆気に取られつつもホワイトは軍人の後を付いて行きデボルとポポルもそれに続く。

三人とも突然の命令だが不満はない、元より人間の命令だ、逆らう気など始めからない。

 

「ありゃりゃ、じゃあ僕達は君達の止まる宿舎に案内するよ」

 

「…付いて来て」

 

上官のジオン軍人を見届けた9号は明るい口調でそう言って2号もそれに続く。

今一納得できない9Sや2Bだったが9号の案内で移動を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総督府、ギレンの居るオフィスでは丁度、ギレンが書類と格闘していた。

内容は、アクシズの帰還希望者のリストとドズルの娘、ミネバの成長記録などだ。

 

「…希望者の殆どはサイド3の者か、当然だがこっち(サイド3)の方が若いな、取り合えず保留だ。ドズルにはなんて説明するべきか」

 

書類には、未来のアクシズの人間達の名前が載っておりサイド3に帰りたがってる者も多い。

しかし、当然だが殆どが同姓同名の者であり、中にはこっちでは学徒兵にもなっていない子供と言える若者が多数いる。

ギレンとしては、同一人物同士が会おうがどうでもよかったが、旧暦のSFの話にある同じ人間が会えば対消滅する話を思い出す。

 

「杞憂だといいが…」

 

ギレンとしても創作上の話を鵜呑みにする気はない。しかし、万が一対消滅が起こればコロニーはただでは済まないかも知れない。地球の資源を楽に手に入れられる現状、そうなっては目も当てられない。

考えすぎともいえるが、現にサイド3群は別の世界に転移してるのだ。用心する事に越したことはない。

 

ミネバの件もそうだ。先日、やっと生まれたと喜ぶドズルにお前の娘はもう一人いるなどと、どう言えばいいのか分からなかった。

 

「…公王は喜びそうだな…」

 

ギレンの脳裏に二人のミネバを大事に抱き抱えたデギン・ザビの姿が映る。あまりのお似合いに思わず吹き出しそうになったが、扉がノックされてわざとらしい咳の後に顔を引き締める。

 

「何だ?」

 

「セシリアです。サイド3に到着したホワイト副指令とデボルポポルタイプのアンドロイドがお着きになりました」

 

時計を見て「予定通りか」と呟くギレンは秘書であるセシリアに入るよう命じる。

ギレンの入室の許可を出した直後に、扉が開きブラウンの色をした髪と赤いジオン軍服を着た美しい女性が入る。ギレンの秘書であるセシリアだ。

そして、セシリアの後ろには金髪の後ろ髪の長髪をした女性と赤い髪をした、それぞれ左右のコメカミ部分に白い花を付けた二人の女性が入る。

 

「地球方面軍、ガルマ隊所属ジオン特別軍ヨルハ部隊副指令ホワイト!命令により出頭しました!」

 

「デポルです」

 

「…ポポルです」

 

金髪の女性、ホワイト副指令が完璧な敬礼をする。特注で作られた白いジオン軍服がいやに似合っていた。

そして、それに続いて出赤い髪の女性、デボルとポポルもギレンに敬礼する。こちらは一般的なジオンの軍服だったがこちらも似合う気がした。

 

「よく来てくれた。知っているだろうが改めて名乗ろう。私はジオン公国総帥、ギレン・ザビである」

 

持っていた書類を置いてキリっと睨むようにアンドロイドたちを見るギレン総帥。

その様子にホワイトもデボルポポルも思わず見入ってしまう。デボルポポルはギレンの表情に見とれモニター越しで何度か話したホワイトもギレンに対する評価が限界突破する。

 

「…?」

 

アンドロイドたちの様子が少しおかしいと感じるギレンだったが、二、三話をした後にデボルとポポルにある話を切り出した。

 

「私達の記憶の…」

 

「サルベージですか」

 

「そうだ。月にあったユニットで『白塩化症候群』や『ゲシュタルト計画』までは突き止めた。しかし、それ以上のデータは見つからず調査は難航している。そんな時にデボルポポルのアンドロイドがゲシュタルト計画に関わっていたという情報が得られた」

 

ギレンはアレから10Hが出てきた場所を調べ幾つものデータベースを見つけていた。

それで、白塩化症候群やゲシュタルト計画までは突き止めたが具体的に何をしたのかは謎が多かった。

その時、デボルポポルタイプのアンドロイドが関わってる事を知ったギレンはデボルポポルを調べる事にした。

尤も、デボルポポルタイプのアンドロイドがゲシュタルト計画に関わり大きなミスをして人類に大打撃を与え、その所為でデボルポポルタイプのアンドロイドは殆どが処分され昼の国…ガルマ指令の側近をしている一組以外既に存在していなかった。

 

だからこそ、ギレンはヨルハ部隊を呼ぶついでにデボルポポルの二人を召喚させたのだ。

 

「…私達の記憶が蘇る事がジオンの利益になるのでしょうか?」

 

「絶対とは言い切れん。当時に何が起こったのか?歴史家気取りの馬鹿どもを納得させる為でもあるが、白塩化症候群を防げるのなら防ぎたいだけだ」

 

デボルの問いに冷静に返答するギレン。

ギレンとしては地球に固執してる訳ではない。寧ろ、地下資源しかギレンは興味が無く地球に対する思いなど無い。これは、宇宙に移民したスペースノイドも同じだ。

しかし、何事にも例外はある。

最近、地球に住んでいた記憶を持つ老人たちが地球に帰りたがっている。

父であるデギンは其処まででもないが、サイド3にいるのは若者だけではない。しかし移民時から三十年余りが過ぎ、若かった世代も年を取り地球に住んでいた頃を懐かしみ地球に帰りたがってるのだ。

 

ギレン自身も生産力の無い老人の面倒などアンドロイドたちに丸投げしようと考えるが、もし地球に降り立った年寄りが白塩化症候群にでもなられれば国民が騒ぎ面倒な事になると判断し当時の人間がどのように白塩化症候群に対処していたかが気になったのだ。

 

そんなギレンの言葉にデボルとポポルは頷く。

元より、ギレンの要請を断る気など二人にはなかった。

 

「もう直ぐ、技術部の人間が来る。お前達はそいつに付いて行くがいい」

 

ギレンの言葉に頷く二人。

それから間もなく技術部の兵士が来るとデボルとポポルは執務室から出て行き部屋にはギレンと秘書のセシリア、アンドロイドのホワイトが残る。

デボルとポポルの二人が部屋を出た事で改めて敬礼するホワイト。

 

「楽にしろ、ホワイト副指令。今からそんなに緊張していては本番で倒れてしまうぞ」

 

「はいっ!…本番?」

 

ギレンの言葉に引っ掛かりを覚えるホワイトは思わず呟く。

その声にギレンも反応した。

 

「はて?命令書にも書いていた筈だが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕達が軍事パレードに出るんですか!?」

 

9Sの声が大きく辺りに響く。

その場に居たのが仲間のヨルハ型だけならそれで問題なかっただろうが、

 

「! おぎゃああああ!!」

 

「あ!?ああ、ごめんねっ!!べろべろばあ!」

 

9Sの大声に抱えていた赤ん坊が泣き出し急いであやす。

数秒程の格闘の末に泣いていた赤ん坊がようやく泣き止み9Sの顔を小さな手でペチペチと叩く。

 

「9S、声大きい」

 

「うっ…」

 

その様子に丁度、別の赤ん坊のオムツを変えていた2Bが9Sに小さく注意して他の子供の世話もしていた。

 

何故、ヨルハのアンドロイドである2Bや9Sが子供の世話をしてるのかと言うと、現在ホワイト以外のヨルハタイプはとある孤児院に来ていたのだ。

宿舎へと案内されたヨルハ機体たちが何故孤児院に居るのか?

それは、一部のヨルハ機体に人間と会いたいと駄々をこねる者が続出した為だ。用意された宿舎で缶詰になる位なら人間の手伝いをしたいと思うのがアンドロイドでありヨルハ機体でもある。

そんな隊員たちの要望に頭を抱える2号だったが9号が閃いた。「自分達の仕事を手伝わせよう」

そうして来たのが孤児院だった。

2号も9号も現在は孤児院でボランティア活動として孤児たちの世話を手伝っている。更に、

 

「エーン、オモチャを盗られたよ!ジュウヘイチお姉ちゃん!!」

 

「ああヨシヨシ。ほらA君、C子ちゃんのオモチャを返しなさい。後、私ジュウヘイチじゃなくて10H(テンエイチ)だからね」

 

「飛んで、もっと高く飛んで!ポッド」

 

『これ以上高くは飛びません!!』

 

ギレン総帥の演説時に人気が出た10Hやポッドも孤児院で働いていた。

元から10Hが働いていたが2号と9号もそれに気付くと二人も10Hのように孤児院で働き始めたのだ。

尤も、二人共軍属ということで扱いはボランティアであったが。

 

その孤児院自体はデギンが出資して経営しているが、子供たちの殆どは当然親の居ない子供だ。

税金が払えず失踪や親が犯罪者やダイクン派で逮捕されたり様々な理由で孤児院に居る。

ギレンとしても、働き手になる前の子供の扱いは面倒であったが10Hがやりたいと言うなら特別に許可を与えた。

その所為でジオン国民のアンドロイドに対する好感度が上がったのは皮肉と言えよう。

 

最初の頃は子供相手に右往左往していたヨルハ機体も10Hの指導で段々子供の扱いにも慣れて来た。

そして、2Bや9S以外のヨルハ機体も孤児の面倒を見ている。

 

「お姉ちゃん、遊んで~♪」

 

「ご本読んで」

 

「待って、直ぐには無理だよ。もう、助けて2Bさ~~~~ん!!」

 

「ク~、ク~…」

 

「おや、寝てしまいましたか。可愛らしいですね」

 

ヨルハ機体のオペレーターである6Oは子供たちに引っ張りまわされ、21Oは膝で寝てしまった子供の頭を撫でる。

他にも子供にスカートを捲くられる4号や呆れた様子でイタズラした子供を抱えるA2、何人もの子供に圧し掛かられる4Sなどそれぞれのヨルハ機体が子供たちの相手をしていた。

 

「ブーラ、ブーラ♪」

 

『警告;危険な行動は止めて下さい』

 

「だあ、だあ」

 

『報告;私は食べ物ではありません』

 

彼女たちだけではない、随行支援支援ポッドもまた子供の遊び相手にされていた。

子供たちにとって無機物のポッドもまたかっこうのオモチャになっていた。

 

「アハハハ…」

 

隊員たちのようすに9Sも思わず乾いた笑い声が出る。

ヨルハ隊員は対機械生命体としては精鋭の筈だが子供の遊び相手をしているヨルハ機体たちは今までに無い疲労感を感じていた。

機械生命体と何度も戦った2Bも疲労感が襲うが今までになく充実してる気分だった。

 

そうこうしてる内に、子供たちの昼寝の時間になり皆が息を殺して見る視線の先には布団の中でグッスリと眠る子供たちの姿がある。

寝る直前まで滅茶苦茶グズったり2Bのスカートを翻してレオタードを見て9Sをイラっとさせたりもしたがこうしてると子供たちへの愛情が湧いてくる気分になるのも事実だ。

 

「…やっと寝たね」

 

「疲れた…」

 

「21O、寝かせるの上手くなかった?」

 

「逆にアナタが下手だったのでは?」

 

子供たちが寝むるのを見送ったヨルハ機体たちが後ろ髪を引かれつつ部屋を出て駄弁る。内容は疲れたやら一部の子がイタズラし過ぎと呟いていたが皆の顔は充実した表情でもあった。

周りには同じように子供を寝かしつけたと思わしきヨルハ機体が駄弁っていたりしている。

 

「皆さん、お疲れさまでした」

 

その時、ドアが開くとシスターの服を着た老婆がヨルハ機体たちに労いの言葉を出す。

この孤児院の院長だ。

 

「ああ、院長!」

 

「10Hさんもお疲れ様、暫く休んでなさい」

 

疲労でグロッキーぎみだった10Hも院長の言葉に笑みを浮かべる。

その後に、院長は2Bたちを見回して口を開いた。

 

「疲れたでしょ?遊び盛りの子供の相手は」

 

「あはははは…」

 

「…子供ってパワフルだって情報、間違ってなかった」

 

院長の言葉に苦笑いするヨルハ機体。

ある意味、地上で機械生命体と戦った後より疲労を感じていた。

そんなヨルハ機体達を見たシスターは笑みを浮かべお茶を出していく。

 

「粗茶ですがどうぞ」

 

「へえ、これが粗茶か…」

 

「ええと、粗茶っていうのは元々…」

 

「人間さんが出してくれたら何でも良いよう」

 

出されたお茶を珍しげに見る隊員に粗茶に関するウンチクを言おうとするS型。人間がわざわざ淹れてくれたお茶に感動しつつ飲む隊員など様々である。

 

「…ねえ、シスターさん」

 

「何ですか?」

 

「どうしてあの子達には親が居ないの?」

 

そんな空気の中、2Bがふと疑問に思ったことを聞く。

2Bは今まで地球に何度か足を運んだ際、様々な動物も見て来た。その動物は群れだったり単独だったりするが大抵は子供の傍には親が居て過ごしている。

自分達、アンドロイドは親という存在は居ない。だが、人間には親はいるとデータで知っている。

それにも関わらず、孤児院の子供たちに親が居ないのが不思議だった。

声には出さないが2Bの質問は他のヨルハ機体も気になるようだった。

 

自分の淹れたお茶を一口飲んだシスターはゆっくり語りだす。

 

「経済上の事情とか親が先に亡くなったのもありますが、孤児が増えた最大の原因は宇宙嵐です」

 

「宇宙嵐…」

 

シスターの言葉に9Sがオウム返しする。

一応、アンドロイドの間でも宇宙嵐はある意味有名であった。

謎の宇宙嵐に襲われたのはサイド3群がこの世界に来た原因でもある。

中には宇宙嵐に感謝するアンドロイドも少なくはない。

 

「此方の宇宙に転移した事で出稼ぎに行っていた親たちが帰ることが出来ず、子供たちはアッサリと親を失ったんです」

 

サイド3は月の裏側にあり必然的に地球と最も距離があった。

その所為もあり、サイド3の税金は高い上に物価も高い。それでザビ家が連邦への不満を利用し独立戦争を考えて居たが、一部の人間はギリギリまで稼ごうと月都市で働いており開戦後に戻る予定であった。

それが宇宙嵐でサイド3群がこの宇宙に転移して滅茶苦茶になった。一番の被害者である子供は一斉に親を無くしてしまったのだ。

 

「…そんなことが…」

 

「だいたいギレン閣下も無茶なんだよ、幾らダイクン派がやらかしたからって一斉に逮捕すれば子供を持った家庭なんてアッサリ没落するんだ!案の定、親を失った子供たちが続出して右往左往…それなのに連邦じゃなくて機械生命体との戦争を始めて、兵士も家族持ちが多いから戦死したら当然働き手なんて失うのに!オマケに夫婦そろって入隊してる所も珍しくないから両方戦死したら残されるのは子供ばかり、中には祖父や祖母が残ってる場合もあるけど食べ盛りの子供を養える程じゃない上に絶対数も少ない。なら残された子供はどうなるか?当然、孤児院に引き取られるか、ストリートチルドレンになるのさ。…尤もギレン閣下もストリートチルドレンを放置しなかったけどね…経済だってそうさ、今は戦争というお題目で無茶も出来るけど終戦後どうするのさ?支援金が少し上向こうが子供たちのお腹を満たせるとは言えないし、ボランティアをやってくれる人達も戦後は仕事に呑まれてどの位来てくれるやら。それにね…」

 

世知辛い世の中に9Sが呟いた後にシスターの口からドンドン愚痴が零れていく。

最初は黙って聞いていたヨルハ機体もシスターの愚痴にドンドン引いて行き、誰も何も言えなくなる。

本来なら軍事パレードの事で仲間たちと相談したかった9Sにとってこれは痛かった。

そして、シスターの愚痴が終わる頃には子供たちが起き出してヨルハ機体は、またてんてこ舞いに子供たちの世話をし用意された宿舎に戻ったのは日付が変わる直前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。

朝早くからコロニー内の空に祝福の花火が打ち上がる。

空気が貴重なコロニーでは本来花火は禁止されている。しかし、今日に限っては誰も文句を言わず軽快な音楽がコロニー内に流れている。

そして、街の一角では何人もの黒い服の人間…アンドロイドたちが整列し中央には車に乗った白い制服を着たホワイトが居る。

 

「パレードまで…5、4,3,…始まりました!」

 

「総員前進!」

 

運転席にいるジオン軍人の言葉にホワイトは周囲に居るヨルハ機体に命令を下す。

そして全身を始めるヨルハ機体たち。

その先頭にはジオン軍旗と人類軍の軍旗を持って歩く2Bと9Sが居り、その後ろには黒いドレスやタキシードのような制服を着たヨルハ達が続いている。

 

尚、2Bの逆方向には4SとA2が軍旗を握り締めており、直前まで仕立て直されたヨルハ機体の制服をA2は渋い顔をして着る事になった。

そして、行進するヨルハ機体の傍にはポッドも整列し一緒に進み異様な光景とも言えた。

A2は予備のポッドが配属されていた。

 

最後にホワイトが車の上に立ちヨルハ達を見守る様に配置された。

 

ワーーーーーー

        ーーーーーーーーーーー 

                   ーーーーーーーーーー!!! 

 

この瞬間、コロニー内にに歓喜の声が木霊し、まるでコロニー全体が揺れてるような錯覚を感じているようだった。

ヨルハ機体たちの行く手の道の端には何人もの人間が居り、皆がヨルハ機体を見て喜んでいる。

 

 

 

 

軍事パレード。

 

敵機械生命体アダム及びイブが撃破された事で一部の地域の機械生命体の戦線は崩壊し好機と見たギレンが計画したものだった。

とはいえ、人も碌にいない地球上ではなくジオン国民の居るサイド3でやる事になり、更にアンドロイド達の士気上げの為、そして度重なる国民の陳情によりヨルハ機体たちもこのパレードに参加させたのだ。

更にはベルファストで鹵獲したサーバーも使い地球上に居る全機械生命体にジオンの軍事パレードを強制的に見せ戦意を挫く狙いもある。

 

当然、地球にもこの映像が流れ地上のジオン軍もアンドロイド達も見ているのだ。

 

「おお! ヨルハの奴等が人間のパレードを歩いてるぞ!」

 

「羨ましいッ!!」

 

「私達も行きたかったな…」

 

テレビで軍事パレードの様子を見たアンドロイド達は口々にヨルハ機体たちを羨望の眼差しで見守っていた。

人間への思慕をインプットされたアンドロイド達にとってヨルハだけがジオンの軍事パレードに出てる事は嫉妬のような物を彼らの胸に抱えさせた。

実にギレンの目論見通りである。

 

 

 

 

 

 

「パスカルおじちゃん…凄いね…」

 

「ヨルハのアンドロイドも嬉しそう」

 

「…そうですね。 見た事も無いMSもまだまだありそうですね」

 

機械生命体のパスカルの村にもテレビが設置され大小様々な機械生命体がモニターを見守る。

人間の姿やMSを見てはしゃぐ子供たちとは違い、恐怖に震える機械生命体もいる。

その殆どはジオンのMSにコテンパンに降伏した者達だ。

もう逆らう気はないがその時の恐怖はどうにもならない。中には記憶であるメモリーの消去をする者までいた。

 

直後、パスカルはふと考える。

 

 

ギレン閣下も嫌な一手を思いつきましたね。

奪取した機械生命体のサーバーを利用してジオン軍の強大さをアピールして機械生命体の戦意を挫く気ですね。

降伏するなら良し。徹底抗戦なら殲滅も辞さないと。 

…人間とは恐ろしい。

 

 

 

ギレンの目的に感付いたパスカルは一度だけ身震いする。

 

 

 

 

 

場面は戻り、軍事パレードで歩くヨルハ機体はその殆どが緊張している。

見た目は全員寸分狂わず立派に行進しているがヨルハの誰もが人間に見られての行進に緊張している。

それは9Sもそうであったが、横で歩く2Bもそうであった。

 

 

 

…珍しく緊張してるんですか?2B

9S、勝手に機密通信を使わない

アハハハ…すみません。少しでも2Bの緊張をほぐそうとして

もう…

 

 

ヨルハ機体たちの行進はドンドンと進みその度に歓声があがる。

老人夫婦や学生たち、子連れの親まで声を上げている。

 

「おお、ヨルハだ。ヨルハ機体のアンドロイドだ!」

 

「テレビで見た通り黒いドレスよ!可愛いい!」

 

「頑張れよ、アンドロイド達!」

 

人々の歓声を聞いて頬が緩んだり手を振りたい衝動に駆られるヨルハ機体。それだけ人間達の声が嬉しかったのだ。

 

サイド3ではテレビでの9Sの叫び以降、ヨルハ機体の人気が高かった。

9Sの涙ながらの言葉にガルマの返答はサイド3のテレビ局では一番高い数字を誇りそれだけの人間が見ていたのだ。

人間の為に働く彼等をサイド3の人間達は喜んだ。例えそれがプログラムだとしても広い宇宙で孤立しかけていた彼等にとっても希望だったのだ。

 

 

━━━皆さん嬉しそうですね

━━━………

━━━人間の歓声も僕らにとって気持ちいいですね

━━━9S、今は任務を優先して

━━━は~い、…本当は2Bも嬉しいくせに

 

 

 

9Sとの座談を断ち切る2B。

9Sの言う通り照れ隠しもあったが、会話に夢中になり過ぎて何か失態をやっては目も当てられないからだ。

何より、人間の目の前での失態は絶対に嫌だった。

 

 

 

 

 

 

 

軍事パレードは予定通り進み、ヨルハ機体たちは予定されていた場所に到着し全員の足が止まる。

場所はジオン公国政庁であり、周りには既に多数のジオン兵とMSが並んでいる。

目玉でもあったヨルハ機体たちが最後だった。

 

 

━━━見て下さい、2B!あそこにいらっしゃるのは、ギレン閣下の親衛隊長エギユ・デラーズ大佐ですよ!あそこにはジオン公国軍突撃機動軍海兵隊隊長シーマ・ガラハウ少佐が!あの人が初めてアンドロイドに接触したそうですよ!

━━━…9S、落ち着いて

━━━あ!あれが僕達を参考にして作ったというジオン軍製のアンドロイドですか?性能的には僕達の方が上ですね

━━━9S、もう直ぐギレン閣下の演説が始まるから本当に静かにして!

 

 

声には出さないが周りのジオン兵を見てはしゃぎまくる9S。

2Bは知らなかったが、スキャナータイプの殆どは内心はしゃいでおり、ホワイトからの雷が数度落ちていた。

 

そうこうしてる内に用意された壇上の上に一人の人物が現れる。

ギレン・ザビだ。

壇上の上に立ったギレンは兵達を見下ろし黒い箱が飛んでくる。

 

「ポッド?」

 

「随行支援ポッド006ですね。ジオンに回収された後に先日に幾つかが司令官に配給されたそうです」

 

こそこそ話で2Bにポッドの正体を教える9S。

それは、紛れもなく月で回収された随行支援ユニットのポッド006だった。

そのポッド006がギレンの前を飛ぶとマイクのような物が飛び出す。

 

『それではギレン総帥、どうぞ』

 

「うむ」

 

ギレンがポッド006から出たマイクに向けて喋り始める。

 

 

『我が忠勇なるジオン軍兵士並びアンドロイド達よ、私の弟ガルマ・ザビ大佐並びアンドロイドたちの活躍により機械生命体のネットワーク基幹ユニットであった「アダム」及び「イブ」の撃破に成功した。

これは我々の大きな一歩であり、機械生命体にとって取り返しのつかない大きな打撃を与えた。決定的打撃を受けた機械生命体にいかほどの戦力が残っていようと、それはすでに形骸である。…敢えて言おう、カスであると!!それら、軟弱の集団が我々を止める事は出来ないと私は断言する。

機械生命体を導く役割のエイリアンも滅び、機械生命体の戦力は最早風前の灯火となった。

今こそ、地球圏を人間の手に取り戻し機械生命体に引導を渡す時が来た!優良人種たる我々こそが地球圏に未来を作れるのであーる!!

今こそ、人類の力を機械共に見せつけてやるのだっ!!全部隊に対し北アメリカ、アジア、オーストラリアに対し攻略作戦を発動させる!そして、地球を人類の手に取り戻すのだ!!正義は我々にありィ!!ジーク・ジオン!!』

 

 

「「「「「「ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!」」」」」

 

 

ギレンの「ジーク・ジオン」の言葉に誰もがオウムのように繰り返す。

特に、この場に居たヨルハ機体は熱心に繰り返し、地上のアンドロイド達もギレンの読み通り、並みの兵士以上に繰り返し士気を高める事になった。

 

反面、敵である機械生命体側は悲惨の一言だった。

鹵獲されたサーバーにより強制的に軍事パレードを見せられた上に既に幾つもの工場にはミサイル攻撃や月面に急造されたマスドライバーで仲間を増やす事も難しくなった。

 

決定的だったのは、ジオン兵が記録したパスカルの村の映像だった。

映像には、機械生命体を始めアンドロイドや人間が平和に暮らしており、その殆どは戦いから逃げた者ばかりだった。完全なプロパガンダだがジオンを恐れる機械生命体には効果的だった。

 

 

 

 

 

 

『カスだって』

『カスだってね』

『許せないね』

『許さないよ』

『本気出しちゃう?』

『本気だしちゃおっか』

 

 

尤も、それを面白くないと考える者達も居る。

ギレンの演説に沸くアンドロイドたちの背後で半透明な赤い服の少女たちは静かに喋る。

そこへ一台の軍用トラックが通り過ぎるとその少女たちは完全に消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素晴らしい演説でした。ギレン閣下」

 

「そうか」

 

演説後、政庁の執務室にてギレンは総帥の席に座り、呼ばれたホワイトが演説を褒める。

ギレンも表情には出さないが機嫌は随分と良かった。予定していた事が全て順調にいったからだ。

しかし、ホワイトの脳裏に一つの疑問が浮かぶ。

 

「総帥、一ついいでしょうか?」

 

「何だ?」

 

「我々はこれより地球に戻り敵性機械生命体の掃討作戦に参加しますが、アダムとイブ撃破直後に始めていれば……」

 

ホワイトはギレンがわざわざ自分達を呼び、軍事パレードに参加させて士気上げした事は理解してるが、そのためにアダム及びイブの撃破後、既に一週間以上の時間を機械生命体に与えてしまった。

幾ら、ネットワーク基幹の二人が消えようがそれだけの時間があれば浮足立った機械生命体も冷静になる可能性が高い。

そう思ったのだ。

 

「…覚えておくがいい、ホワイト副指令。勢いだけでは戦争に勝てんよ」

 

その疑問にギレンがそう答える。

今一ギレンの言った意味が分からないホワイトだったが、ギレンはやはり機嫌が良かった。

久しぶりに素晴らしい演説が出来たと思ったからだ。何よりこの演説は地球だけでなく広域に電波を流しアクシズや木星にも届くようにしていた。

ギレンが演説をしジオンは健在だと思わせる為だ。

 

そろそろ、ヨルハ機体を纏め地球に引き返すようホワイトに命令を出そうとするギレン。

その時、執務室に緊急の連絡が入る。

 

『兄上!一大事です、兄上!』

 

連絡してきたのはガルマだった。取り合えず、通信のツイッチを入れるギレン。

 

「どうした?ガルマ」

 

『兄上、エイリアンが乗っていた船の近くの陥没地帯から謎の建造物と三つの巨大な柱のような物が出て来ました!更に周辺で活動していた機械生命体が狂暴化して対応にあたってます!」

 

 

 

ガルマの居る昼の国に巨大な建造物が現れた報告が入る。

機械生命体の反撃が始まるのか?

 

 

 

 




大分遅れての更新。
一応は最終話まではプロットは出来てるんです。後はそれに肉付けしていくだけなんですが…三年ぐらい繋がらなかったのが痛かった!モチベーションが…

恐らくは亀更新になりそうですが一応最後までやる予定です。最後までお付き合いできれば…

2Bや9Sがサイド3に呼ばれたのは軍事パレードと演説の為です。
ギレンの演説はやっぱり「カスである!」と言わせたいね。

尚、このギレンの演説はアクシズや火星にも流れています。

ギレンは戦後、地球に帰りたがる年寄りをアンドロイドに放り投げる気満々です。
ヨルハ機体の就職先は孤児院がダントツかも。基本水さえあればよさそうだし。
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