機動戦士オートマタ   作:一種の信者

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4話

 

ギレンの演説と10Hのメッセージによりサイド3の騒ぎもだいぶ治まった。

政庁の執務室ではギレンが通信のやり取りをしていた。

相手は、自分の親衛隊隊長エギーユ・デラーズだ。

 

「…約300か。コロニーに侵入していたアンドロイドの総数にしては多いな」

 

『パトロール艦隊が保護したアンドロイドも含まれています。それにして、コロニーに侵入していたアンドロイド達が思いのほか大人しく此方の指示に従っています』

 

一戦を覚悟していたデラーズだったが、その結果に拍子抜けしかける程だった。

 

「『自分達は人間の為に造られた』か、案外嘘ではなかったようだな。

デラーズ、確保したアンドロイドは全てソロモンに送れ」

 

 

『了解しました。ジークジオン!』

 

 

 

デラーズとの通信が終了し座っていた椅子から立ち上がる。

 

「聞いてた通りだ、ドズル。アンドロイドの編制は任せるぞ」

 

『ソロモンにアンドロイドを送るのは構わないが兄貴、訓練にバラつきが出始めて居る。第一次降下作戦までに予定されてる数では間に合わんぞ』

 

ソロモンでは現在、アンドロイド達がモビルスーツとの連携訓練やジオン歩兵部隊との連携訓練などが行われていた。

モビルスーツとの訓練はモビルスーツとの立ち回り、最悪味方のモビルスーツに踏み潰されないよう距離の開け方。

歩兵とは通常の歩兵戦力をアンドロイドの手助け及び緊急時の動きなどを訓練されていたがソロモンの大きさの関係上、如何しても色々と制限されていたが。

 

『総帥、月面より報告を。アンドロイド達の協力もあり工事も急ピッチで進んでおります。月資源採掘基地とモビルスーツの工場が来週中には稼働できるかと』

 

「予定より減るのは痛いが仕方あるまい。早めに動かなければ機械生命体どもが如何いう動きをするか予想もつかん。噂に聞く超大型機械生命体とやらにも注意しろ。

キシリア、基地と工場の完成次第お前の部隊からも降下作戦に参加するものを選べ。第二次か第三次の降下作戦に組み込む」

 

『了解です、総帥。それから奇妙な報告が、我が軍の兵士がアンドロイド達に「自分達の基地に帰らないのか?」と聞いたそうなんですが概ねの反応は「帰りたくない」だったんですが、ある特定のアンドロイドだけが烈火の如く拒否反応を示しました。

そのアンドロイドの特徴ですが黒い服に黒い目隠しのようなバイザーを付けた…』

 

「…ヨルハ機体…か?」

 

ギレンの言葉にキシリアが「ハイ」と答える。

手元の資料に目線を送る。

其処には、ダグラス達外人部隊からの報告書やアンドロイド、特にヨルハ機体と呼ばれた者達の検査書及び証言書。

そして、”何時の間にかジオンのデータベースに送られていた”極秘と書かれたアーカイブが複数。

 

「ゲシュタルト計画にレプリカント……調査させてみるべきか」

 

何時の間にか通信が切れた室内にギレンの呟きが響く。

その直後にセシリアから通信が入った。

 

『総帥、バンカーのホワイトと名乗る司令官から通信です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『此方、随行支援ユニットポッド042;操作主権は2Bにセットされている』

 

『此方、随行支援ユニットポッド153;操作主権は9Sにセットされている』

 

『此方、随行支援ユニットポッド006;操作主権は10Hにセットされていた』

 

『ポッド042よりポッド006に質問;セットされていたとは?』

 

『回答;現在我々はジオンの技術部が解析中。現在10Hとは離れている』

 

『質問;何故ヨルハ計画が中止となった?』

 

『我々のプログラムの中に「複数の人間を確認し月まで来れる」ようなら計画を中止と決められていた。問題ない』

 

『質問;ならば我々は今後如何行動すればいい』

 

『回答;今迄通り操作主権の随行支援すればいい。他のポッド達にもそう提案した』

 

『要請;それぞれの戦闘データの交換』

 

『承認』

 

『こちらも承認』

 

『提案;効率化の為に諸データの交換を随時行う』

 

『承認;効率化の為に諸データの交換を随時行う』

 

『承認;しかし、ジオンの機密と思われる情報の交換は難しい。あまり期待しないで』

 

『『了解』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い髪、同じような顔をした二人の女性が道を歩く。

依頼された雑用をやっと終えてレジスタンスキャンプに戻る最中だった。

とある事情により一部のアンドロイド達に嫌われてはいたが二人だけで孤独に生きる事も出来ない彼女達は嫌われようとあえて他のアンドロイド達のキャンプで日々生活していた。

雑用もその一環で他のアンドロイド達がやりたがらない作業を積極的にやってきたのだ。

 

「待ってデボル!何あれ」

 

赤い髪の女性の一人が異変に気付き瓦礫に身を隠す。

もう一人の女性が何事かと瓦礫の隙間から覗くと、

 

「緑色の一つ目の巨人!?」

 

今迄、見たことも無い機械生命体らしき巨人を見つける。

巨人は巨大なマシンガン片手に周囲を見回っていた。

 

「機械生命体の新型?」

「分からないけど、キャンプに近い急いで戻らないと」

 

言い終えると共に二人は巨人の視線に入らないよう移動する。

最も、巨人もといザクのセンサーはこの動きを捉えていたが、

 

「ん?アンドロイドか、なら問題ねえな」

 

アンドロイドということでスルーされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、レジスタンスキャンプでは更に騒がしくなっていた。

その原因は、

 

「ダグラス・ローデン大佐だ。この度の我々の受け入れ感謝したい」

 

「レジスタンスのリーダーアネモネです。守るべき人類を考えれば当然の事です」

 

ケン達との連絡の後にダグラス達の部隊が合流したのだ。

一気に増えた人間によりアンドロイド達も活気づいた。

しかし、現状のキャンプでは全ての人間を収容する事も出来ず拡大する事となった。

機械生命体にもバレバレで何度か襲撃があったがザクと士気のあがったアンドロイド達の前に撃退された。

現在、物資の確保で砂漠にある4機のHLVの解体に数機のザクとトラック、多数のアンドロイド達が追従している。

最悪の場合、武力行使も命令されていたダグラスも胸をなでおろす。

その直後に二人の赤い髪をした女性がアネモネの下へ走って来た。

 

「ああ、二人ともお疲……」

 

アネモネが二人に労いの言葉を言おうとしたが、

二人が先程見た光景を慌てて説明する。

 

「大変だ!アネモネ、機械生命体の新型らしき物を見たんだ」

「緑色の一つ目の巨人だ!もしかしたら依然聞いた超大型機械生命体の可能性がある。最悪、私達が囮になるから此処を脱出する準備をした方がいい!」

 

緑色の一つ目の巨人と言う言葉にピンときたアネモネが取り敢えず二人を落ち着かせようとする。

 

「落ち着け、二人とも。落ち着くんだ!……人間の前だぞ落ち着け!」

 

「「え!?人間?」」

 

アネモネが横に居た初老の男性に二人を紹介する。

 

「デボルとポポルだ。治療とメンテナンスを担当している」

 

「は、はぁ。ダグラス・ローデンだよろしく」

 

いきなりふられたダグラスが自己紹介をするが。

 

「人間?」

「人間なの?」

 

二人の女性……デボルとポポルはダグラスの顔や髭、体を触りだす。

触りだして二人は泣き出した。

 

「人間だよ、ポポル~~~!」

「人間よ、デボル~~~!」

 

泣きながらも触るのを止めないデボルとポポルにダグラスも如何していいか分からず立ち尽くすしかなかった。

更には、

 

「大佐~、HLVの回収終わりましたよってあれ?」

「おいおい、大佐が女泣かせてるぞ」

「早速、手を付けたんですか大佐」

「ええ!?大佐って早くも手を出しちゃうタイプ?」

 

HLVの解体及び回収を終えた別動隊がキャンプに合流し、その異様な光景を見たのだ。

最も、彼等も何か事情があるんだろうと考えるが上官を弄る滅多にないチャンスだった。

 

「何、この騒ぎ」

 

護衛として回収部隊に付いていった2Bが騒ぎに気付くが原因が分からず周囲を見回す。

すると、少し離れたテントの下で9Sを見つけた。

しかし一人ではなかった。メイと一緒にパソコンを見ていた。

 

「このプログラムだと論理ウイルスが不味いですね」

 

「でも、これ外しちゃうと運動機能が15%ダウンしちゃうな。ならこっちは如何?9S」

 

「うわ、これは僕も考えつかないプログラムだ。流石、モビルスーツのOSに関わっただけはありますね」

 

「エッヘン!もっと私を尊敬していいんだよ。9Sくん」

 

「はいはい、あっそうだ。良ければ僕の事はナインズって呼んで下さい。親しい人は皆そう呼びますし」

 

「そう?ならナインズも私の事をメイって言っていいよ」

 

「分かりました、メイ」

 

近くまで来た2Bが声をかけようとしたが楽しそうな二人を見て声を掛けるのを躊躇した。

胸の辺りが苦しい感じがしたのだ。

 

 

二人の仲が良いのはとても良いこと。

私がとやかく言う資格なんて無い。

貴方を殺してきた私に……

 

 

2Bの思考はポッド達の緊急通信により遮られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バンカーから緊急の呼び出しなんて如何したんでしょうね?」

 

「…行けば分かる」

 

緊急通信の内容は急ぎバンカーに戻れという内容に9Sが不思議がる。

何かしらののっぴきならない事態かもと考え二人は飛行ユニットに乗りバンカーへと目指す。

飛行ユニットはアッサリと大気圏を離脱しバンカーを肉眼で確認する。

しかし、バンカーの横には見慣れない物が繋がれていた。

 

「なに?あの緑色のやつ」

 

「あれって、ジオンの補給艦ですよ。確かパプワって名前です。メイの持ってるデータを見せてもらいました」

 

9Sの答えに2Bは「…そう」と答えた。

 

「それにしても、何故バンカーに補給艦が?バンカーの次の補給はまだ先なのに」

 

 

そして二人は補給艦居る場所とは逆の格納庫へと入る。

飛行ユニットから降りた二人は指令の待つ総司令室へと歩くが9Sが何かに反応した。

 

「如何したの?9S」

 

「いえ、何時もは休憩中のオペレータータイプや他の隊員が一人も居ないのが気になって」

 

9Sに言われて2Bも気づく。

普段は休憩の合間に地球を眺めるオペレータータイプや他の隊員同士で喋りあったりしているが戻ってきてからは一人も見かけない。

不思議に思った二人は急ぎ総司令室へと急ぐ。

 

 

 

二人が総司令室へと入り更に驚く。

指令室のなかは、指令と2Bの専属オペレーターの6Oと9Sのオペレーター21Oだけで他の席にはジオン兵が機械にケーブルを繋げパソコンを睨んでいた。

奥を見ると、司令官がジオン兵と話してるのを確認して二人は急いで指令の下へと向かう。

 

「指令!一体これは?」

 

「ああ、来たか二人とも」

 

2Bの声に指令が反応するがその様子は明らかに疲れ切ってる感じだった。

 

「あの…他の隊員は何処いったんでしょうか?オペレータータイプも二人しか居ないし。もしや大規模な作戦でも」

 

「他の隊員か?さぁな。部屋に引き籠ってるかジオンにでも逃げたんじゃないのか?」

 

9Sの気遣いにも指令はアッサリと暴露した。

既に大多数のヨルハ部隊は脱走したか部屋でひたすら引き籠るかのどちらかだ。

仕事をしてるのは、6Oと21O、そして指令だけであった。

 

「に、逃げた!」

 

「そんな、如何して!?まさか先の月面人類会議の放送が!?」

 

「それも一つだが、奴等の最後のプレゼントが後押しになった。お前達も見るか?素敵な内容だったぞ」

 

そう言って、指令は手元のスイッチを押す。

その直後に二人の頭の中に三つのアーカイブの情報が流れ込む。

 

 

一つは【極秘】ヨルハ計画概略。

一つは【極秘】ブラックボックス。

最後の一つが【極秘】ヨルハ部隊廃棄について。

 

「僕達のブラックボックスが機械生命体のコアから出来ている?……嘘だ!?」

「私達は最初から捨てられる為に造られた?……指令、この情報は本当なんですか!?」

 

敵の……機械生命体の罠で自分達を陥れる為の偽情報ではないかと疑う2B。

事実、そうであって欲しいとまで思っていたが、

 

「残念だが本当だ。何度も月面人類会議に問い合わせた」

 

その言葉を聞き終えた直後に二人は床に膝を付ける。

二人の感情は絶望で満ちていた。

事情もよく分からず、かける言葉も見つからないジオン兵はそそくさとその場を離れる。

 

「僕達は人類軍の切り札どころか望まれても居ない…」

「これじゃ私達何の為に……私は何の為に…」

 

「気付いた時にはもう手遅れだった。バンカーに居たヨルハ隊員がアーカイブを読み絶望し、現実逃避で部屋に引き籠るか、守るべき人間にかしづく為にジオンへと逃亡した」

 

アーカイブが配れてからヨルハ部隊はアッサリと壊れてしまった。

信じるものをすべて失った彼等には最早何を信じていいか分からず引き籠るか、全てを捨ててジオンへと逃げるかの二択であった。

自害しないだけ立派とも言えるが無意味に死んでもバンカーで新しく造られる以上無駄とも考えた。

 

「…僕達は…」

「…私達は…」

 

「呆けるのもそこまでだ!9Sお前は直ぐにサーバールームに行きジオンの将校と合流しろ。

時限式のバックドアを作り替えるんだ!如何した!?このままでは最悪機械生命体に乗っ取られるぞ!急げ!」

 

「は、はい!」

 

指令の剣幕に落ち込む9Sも流石に立ち上がりサーバールームへと向かう。

9Sが総司令室から出たのを確認した指令が2Bに視線を向ける。

 

「お前にも話がある。2B…いや『2E』」

 

指令の言葉は今の2Bには到底聞きたくない言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サーバールームに行く為にエレベーターに乗り込む9S。

そして、乗り込んだ直後にエレベーターの床に座る。

 

司令官や上層部が何かを隠してるのは知っていた。

それが知りたかった僕が何度もサーバー潜りこみ2Bに殺されたんだろう。…確証はまだないけど。

自分の事だ。事実、2Bや人間に出会う前にも潜り込んだ事はある。あまり時間が無くて1回だけ。

でも、こんな秘密だったら知りたくなかったな。

皆が逃げ出したのも分かる。

『自分達の存在は誰にも望まれていない』

そんな考えが頭に過るだけでケンにメイにダグラス達に会いたくなる。

人間に会った僕ですらこうなってるんだ。人間に会ったこと無い隊員ならもっとだろう。

でも、僕らは人間に会って良いんだろうか?

僕達のブラックボックスには憎むべき敵である機械生命体のコアが使われている。

これじゃ…

 

「これじゃ、化け物じゃないか」

 

9Sの呟き。

返答も期待してないものだったが、

 

「何が化け物なのかね?少年」

 

声に反応して9Sが前を見る。

エレベーターは既に目的の階に止まり扉も開きやけに貴族っぽい軍服を着た男がこちらを見ていた。

 

「し、失礼しました!司令官より貴方の手伝いをしろと言われた9Sです!」

 

急ぎ立ち上がり敬礼する9S。

みっともない姿を見せてしまったと焦る。

 

「指令から聞いている。私のことはギニアスとでも呼べばいい。ゴホッ!ゴホッ!」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

突然の咳き込みに9Sが心配し近づこうとしたが傍にいたH型が介抱する。

 

「すまない。だが、今日は調子がいい方だ。早速仕事に入ろう」

 

「は、はい」

 

ギニアスの言葉に9Sもサーバールームへと入る。

そこで彼はもう一人のアンドロイドが居る事に気づく。

 

「801S!?君も此処に?」

 

「ん?9Sか、指令に言われたんだよ」

 

9Sと同じスキャナー型の801Sが居た。

9Sと同じ少年タイプだが髪の色が違い801は黒かった。

 

「君もジオンの将校の手伝いをしろって?」

 

「そう」

 

少し会話した9Sと801Sは早々に切り上げ作業に没頭する。

暫しの静寂の合間にギニアスのパソコンのキーボードの操作恩が響く。

たまに何度かギニアスの咳の音も響く。

 

「あのギニアスさんは体調が悪いんですか?」

 

静寂に耐えられなくなったのかS型ゆえの好奇心か9Sがそう聞いた。

 

「なに、昔事故でね。不治の病というやつだ」

 

その場がシーンと静まり返る。

見れば801Sが「余計な事言いやがって」という顔をしていた。

 

不治の病か。

僕達、アンドロイドにはほぼ無縁だろうな。

 

アンドロイドは生身ではないので病気にも掛からないと考える9S。

論理ウイルスがあるがあれは病気とは言わないだろう。

 

「ところで9S、君もあのアーカイブを見たのかい?」

 

場の空気を変えたかったのか801Sが例の極秘のアーカイブの話をする。

正直、思い出したくもない内容だった9Sは自分がこの空気を作った責任を感じ801Sに「見た」と言った。

 

「いやぁ、今でこそ大分落ち着きましたけど一昨日まで泣き続けてる子までいましたからね。まぁ、その子もジオンに逃げたらしいですけどね。

それに聞きました?あのアーカイブが送られた理由。『もう必要なくなった』かららしいですよ。

それを聞いたとたん僕は泣くよりも呆れて笑いがこみ上げましたよ」

 

801Sの言葉に9Sも更に落ち込む。

 

最早、自分達は造られた当初の目的すら失った。

これが滑稽と言わなければ何が滑稽なのか。

 

「話の内容は分からんが今は手を動かしたまえ。仕掛けられている論理ウイルスが予想より多い。どうやら機械生命体側にとってもバックドアが開くことが筒抜けだったようだ」

 

9Sと801Sの会話にギニアスが釘を刺す。

事実、9Sも801Sも仕掛けられていた論理ウイルスを幾つも潰していた。

 

「……ギニアスさん、少しいいですか?」

 

作業も佳境に入った事を確認した9Sがギニアスに喋りかける。

ギニアスはその言葉に「なんだね?」と言った。

 

「ギニアスさんは僕達のブラックボックスに機械生命体のコアが使われてる事をどう思います?」

 

「…技術者としては興味があるが私は機械生命体の事はたいして知らないから何とも言えん。

だが、一つだけ言えることは敵の技術の流用は決して悪とは言えん。それだけだ」

 

少々素っ気ない言い方だったが、9Sと801Sにはその言葉に救われた気持ちになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バックドアの作業を終えた9Sとギニアスは指令に報告する為に通路を移動する。

801Sはまだ別の作業があったのでサーバールームで別れた。

暫く行くと前方から袖を肩口からカットし胸をはだけさせた軍服を着た男が壁に背を向けている。

アンドロイドではない。

 

「よう、ギニアス。作業は終わったのか?」

 

「…ユーリー・ケラーネか。貴様こそナンパは終わったのか?」

 

「残念だが始まってもいねえよ。どいつもこいつも部屋に閉じ籠って出てくる気配がねえ。

ヨルハは美人ぞろいだって聞いたんだが肩透かしを食らっちまった」

 

ギニアスはユーリーに呆れた眼差しを向けるが本人は如何でもいいのか笑みを浮かべるばかりである。

その様子を見る9Sは密かに感動していた。

過去のアーカイブで見た腐れ縁、また親友同士の会話を実際に自分は見てると判断した。

アンドロイド同士では此処まで会話なんてしない事が多い。

 

「ん?おう、如何した坊主。ギニアスの助手か?何だったら俺の軍団にでも入るか?面倒見てやるぞ」

 

ユーリーが9Sの存在に気づき頭をガシガシと撫でる。

荒っぽい手つきだが9Sは何処か気持ちよさそうでもあった。

 

「その少年がヨルハだ。それより貴様の隊には降下作戦を命じられてた筈だが」

 

「ああ、俺の隊は第三次に組み込まれている。だからまだ時間があるんだよ」

 

ギニアスの問いにユーリーも答える。

それを聞いた9Sが口を開く。

 

「あの降下作戦ってなんですか?」

 

「ん?聞いてないのか?ジオンがもう直ぐ地球に降下するんだ。目標は機械生命体の勢力圏にな」

 

「そんな!?危険すぎます!幾らモビルスーツがあるとはいえ数は圧倒的に機械生命体が上回ってる……」

 

何とか止めようとする9Sだったがユーリーが9Sの肩を掴む。

 

「安心しな、坊主。俺達ジオンはお前さんが思ってる以上に強いぜ。おっとそろそろ時間だな、じゃあなギニアス俺は待たせているコムサイで隊に戻るぜ。アイナちゃんによろしくな」

 

そう言って、その場を離れるユーリー。

それを呆れた目で見るギニアス。

そして、先程とは違って少し暗い表情をする9Sが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の本当の名は2E。二号機E型。

E型の任務は戦場で動けなくなった仲間の始末。そして、9Sが不正なアクセスでヨルハ計画の秘密を暴こうとする度に彼を始末するのが私の任務。

今迄にも9Sを何度も殺してきた。任務だから、約束だから。

何度も何度も9Sを殺すたびに私の中から大切な何かが零れ落ちる感覚がして辛かった。

でも一番怖いのは9Sを殺す事に何も感じなくなることだ。

その9Sが暴こうとしていたデータはお粗末なものだ。

【極秘】ブラックボックス

【極秘】ヨルハ部隊破棄について

……私はこんな物を守る為に9Sを。

私はもう彼を殺したくない。

人間と会って何か変わるかと思っていた。

でも、指令の口から「2E」と言う言葉が…

ナインズ……

 

 

 

 

「2E、よく聞くんだ。今日よりお前のE型の任を解く。これからはB型として任務を継続しろ」

 

その言葉は2Bには信じられなく待ち望んでいた言葉であった。

 

「し、指令!ならもう私はナインズ…9Sを?」

 

「ああ、もう殺さなくていい。殺す意味もなくなった」

 

その言葉に感極まった2Bは再び床に座り込み泣き出した。

2Bの鳴き声は総司令室を満たす。

司令官はジッと見守り、6Oは「2Bさん」と呟き貰い泣き。

ジオン兵は何事かよくわからずパソコンとの睨み合い。

暫く、泣き続けた2Bもやっと泣き止んだ直後に指令室の扉から9Sとギニアスが戻って来た。

 

「指令、時限式のバックドアのプログラム破棄しました」

 

「新しいバックドアのセットと新しい防御壁を作って置いた暫くは機械生命体も入りずらい筈だ。仮に入れたところで何も出来ん筈だ」

 

9Sとギニアスが指令にそう説明する。

その間、2Bは9Sの事を見ることが出来なかったが説明に夢中の9Sは気付かなかった。

その報告を聞いた指令は「ジオンに依頼して良かった」と呟く。

あのアーカイブのせいで大多数のヨルハ隊員が使えなくなり途方にくれていた指令はイチかバチかでジオン本国サイド3に依頼という形でお願いしたのだ。

 

 

 

 

指令がホッとした瞬間、指令室の巨大なモニターにジオンに国旗と一人の男が映る。

 

「何だ?」

「誰!」

 

いきなりの事で2B達が騒ぐ。

21Oが「地球圏全域に放送されてる」と報告する。

 

「ギレン総帥の宣戦布告か。もうそんな時間が経ったか」

 

一人落ち着くギニアスが腕時計を見つつモニターにも目を移す。

 

 

 

 

 

『機械生命体並びにエイリアン軍に告げる。

私はジオン公国総帥、ギレン・ザビである。

地球は我ら人類の発祥の地である。その様な場所を我が物顔で歩く機械生命体を許しておいてよいのだろうか!?

否!断じて否だ!

機械生命体から地球を取り戻す為、我らジオン公国は機械生命体どもに対し宣戦を布告する!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『宣戦布告だって面白そうだね?』

『アンドロイドより楽しめると良いね』

『でもバンカーは惜しかったね』

『せっかくの蕾も摘まれちゃったね』

 

赤い服の少女が二人が喋りあう。

その直後に少女達は消えた。

 




前の投稿の時より幾つか追加で。

ジオン軍で女好きな軍人がユーリーしか思い浮かばなかった。秘書が愛人だったせいか。
後、ギニアスとユーリーは其処まで仲が悪くない設定です。

今更ですけどネタバレって入れた方が良いんですかね?
ただ、販売されて一年も過ぎてネタバレも何もあったもんじゃないとは思いますが。
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