機動戦士オートマタ   作:一種の信者

8 / 28
8話 9S爆発

 

 

「なに、エイリアンの居所が分かっただと!」

 

『はい、技術部の方でも電波発信源の解析を進めています』

 

サイド3。

政庁の執務室ではギレンがホワイトからのエイリアン発見の報を聞く。

 

「昼の国か…ガルマを派遣した直後でこれか。今現在、使えるヨルハ部隊は誰だ?」

 

『…2Bと9Sだけです。他の者は未だに…』

 

ギレンの質問にホワイトが申し訳なさそうな顔をして答える。

ヨルハの秘密暴露から3か月以上が過ぎるが引き籠ってるヨルハ隊員は未だに多い。

ブラックボックスの反応から生きてるのは確かだが部屋から一歩も出てこない。

 

「ふむ、こういう時アンドロイドは不便だな。人間ならば空腹で部屋から出る事もあるが……せんなきことか。その、二人に調査させよ」

 

『了解です』

 

ホワイトの通信が切れるとギレンは「地下か」と呟き机の引き出しを開ける。

十数枚の書類の中から一枚の書類を取り出し軽く読む。

 

「報告によれば機械生命体の多くは地下や山の中に基地を造る事があるか…」

 

そう呟いた、ギレンは通信機に手をかける。

その書類には「アプサラス計画」と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ガルマ大佐。言い訳を聞こうか」

 

「い、言い訳とは酷くないかい、ダグラス大佐」

 

ガルマが基地へと戻った直後にダグラスを始めとしたジオン兵がガルマに用意された執務室へと通される。

其処にはダグラス他二名のジオン兵士が待ち構えていた。

一人は、ドズルの部下のアナベル・ガトー大尉。

もう一人は、姉のキシリア直属の局地戦戦技研究特別小隊、別名「マッチモニード」と言われる部隊の隊長ニアーライト大尉である。

そして、先程のダグラスの言葉であった。

 

「ガルマ大佐、貴方は自分が何をしたのか分からないのですか?」

 

「うっ、確かに軽率な行動ではあったのは認めるが…」

 

「あの赤い人見たいに、若さゆえの過ちって言うつもり?なら、若すぎるわね。キシリア様にもちゃんとお伝えしないと」

 

「二、ニアーライト大尉!其処で姉上の事を言うのは反則では…」

 

「それもこれもガルマ大佐の独断専行が招いた結果かと」

 

「うっ、ガトー大尉も手厳しい」

 

ダグラスだけでなく部下の筈のニアーライトとアナベル・ガトーの説教をくらうガルマ。

最も、この二人はキシリアとドズルがお目付け役とも言えるが。

 

「そ、そもそも司令官とは言え私がお飾りだと言う事は知っているだろう?少しでも手柄を上げねばと」

 

「手柄を上げる為に焦ったと?」

 

「私が焦ってる?私は冷静だ!「冷静なら余計悪いんですけど」…すまない」

 

ダグラスの突っ込みにガルマは視線を逸らす。

ああは言ったがガルマは内心焦っていたのは確かだ。

兵学校の同期が次々と戦場で手柄を上げていく。

特に、親友とも言えるシャア・アズナブルは単機で超大型機械生命のエンゲルスを5体も倒し少佐にまでなっていた。

対する、自分は碌に権限の無い司令官大佐。それも親や兄達の七光り付き。

それを嫌って手柄を上げようと無茶をして現在叱られている。

 

「はあ、とにかく出撃するなとは言いませんが今後は我々も連れて行くとお約束ください」

 

ガルマの気持ちも分からなくはないガトーがそう提案する。

これにはニアーライトもダグラスも頷きガルマも「分かった」と返事をした。

取り敢えずこれだけ注意すれば十分だろうと判断しダグラスが終わらそうとした時、ドアが開きジオン兵の緊急報告がはいる。

 

「ヨルハ部隊がエイリアンの住処を発見したそうです」

 

「なんと、ヨルハ部隊となるとあの二人か。よし突入部隊を編制する。皆の者私に続け!」

 

エイリアンの住処が見つかったところでアッサリと執務室から出るガルマ。

その様子を見た3人は頭を抱えつつ付いていく。

最も、その3人は口々に「やっぱキシリア様に報告ね」「ドズル中将に後で報告を」「ギレン閣下に後で報告しておくか」と言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エイリアンの反応はこの辺りですね」

 

エイリアン発見の報に司令官から情報収集せよと命じられた2Bと9Sは崖を降り、すり鉢状となった底に付く。

周囲を見回すとエイリアンの反応が強まっている場所にモビルスーツが2体見えた。そこにはあの青いモビルスーツもあった。

よく見ると、真新しい機械生命体の残骸が確認出来る事から戦闘後に調べてるようだ。

自分達も調査の為に近づく。

すり鉢状となった地帯の更なる大穴を調べていたグフのパイロットが二人に気付く。

 

『ん?2Bと9Sか、君達も此処を調べに?』

 

「あ、やっぱりケンでしたか。ええ、僕達も指令に命令されて」

 

「何か解った?」

 

『今、ガースキーの奴が調べてる最中』

 

よく見れば穴の中にもザクが居る。

ガースキーのザクだろう。

その直後に、ガースキーのザクはブースターを使い穴から出てくる。

 

『隊長、駄目ですわ。横穴を見つけたが到底モビルスーツが入れる大きさじゃなっすね』

 

『……歩兵のみが入れるか…厄介だな』

 

ガースキーの報告にケンが呟く。

ジオン軍の強さはモビルスーツに乗ることで発揮されると言っても過言ではない。

モビルスーツから降りたら只の人間に過ぎず機械生命体の相手をするのも難しい。

 

「歩兵のみとなると僕達の出番ですね」

 

モビルスーツが入れないと聞いた9Sが「自分達が行く」と言う。

その顔はどこか誇らしげであった。

 

『敵の親玉が居る以上、防衛する機械生命体も今までの数を凌駕してる可能性が高い。二人だけで行くのはリスクが…』

 

「平気、私達は自動歩兵人形。この為に私達は存在している」

 

ケンが二人だけでいくのは危険じゃないかと心配するが2Bが返事をする。

2Bはさっさと穴に降り9Sもそれに続く。

 

『あ、無茶はするなよ!生き返れるとは言え無理だと判断したら撤退も任務だからな』

 

ケンの言葉に2Bと9Sは頷く。

二人が横穴に入るのを見届けたケン達は一旦基地へと戻る。

 

 

 

 

その数分後、

穴の中に十数人の人影が出来ていた。

多数がジオン兵で護衛のアンドロイドが複数。

 

「諸君、これより敵の本拠地に攻め込む!勇気ある者は、このガルマ・ザビに続け!」

 

「だから、何故ガルマ大佐が率先して行こうとしてるんですか!?」

 

敵の本拠地と思しき洞窟に今にも突入しようとするガルマにガトーが待ったをかけようとする。

 

「何を言ってるんだガトー大尉。ドズル兄さんならば間違いなく一番槍を狙う筈だ」

 

「うっ、ドズル中将ならば…確かに」

 

現場第一主義のドズルならば確かに部下と共に、寧ろ率先して敵に突撃するかもしれない。

ドズル・ザビはその位の凄味がある。

 

「確かにじゃないでしょ!止めなさいよ。……ああもう!あんた達、命に代えてもガルマ大佐の身は守るのよ!アンドロイドのあんた達もよ!」

 

ニアーライトがガルマを止めるようガトーに言うが、変な納得をしたガトーは口黙る。

ガルマの説得は不可能と判断し他のジオン兵や護衛のアンドロイド達にガルマを守るよう命令を下し自らも銃を取る。

もはや、ガルマを止めれるものはこの場には居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、我が創造主の墓場へ」

 

先に洞窟へと入った2Bと9Sは驚きの連続が続く。

最初は機械生命体が出てきて行く手を阻んだが奥に進むにつれ数が減り、遂には一体も出て来なくなる。

それどころか、随分と古い機械生命体の残骸が増えてくる。

記録上、アンドロイドが此処で戦ったという記録はなく当然ジオンでもない。

不思議に思いつつ先を行く二人は自然に出来た岩肌とは明らかに異なる素材と形状。何者かによって造られた「出入口」を発見し中へと入る。

中に入っても相変わらず敵の気配はない。奥へと入り階段を下ると音も無く壁が動き始める。

2Bがそこは大きい窓で近づくとシャッターが上がる仕様なっている事に気付く。

地下深い筈の場所なのにシャッターの向こう側に光がある。光源は何かと一瞬考え周囲を見回す。

9Sはシャッターの開く窓を見続けたので自分は部屋の中、椅子とも台座ともつかない物が並んでる事に気付く。

其処には干からびる何かが置かれてる事に気付き2Bは更に近づき息をのむ。

 

「エイリアン?」

 

明らかな死骸であったが2Bはこんな生き物を見たことが無い。

 

「2B!アレを見てください!」

 

窓の外を見ていた9Sが叫ぶ。

シャッターが全部開いて外の様子が確認したからだ。

2Bも外を見る。其処には、

 

「船?エイリアンシップ…」

 

正確には、船だったと言える残骸。

墜落して大破した訳ではない事が一目で分かる。

船体に巨大な槍のようなものが何本も突き刺さってる事からエイリアンは何者かと戦い、敗れた。

そして、此処に居たエイリアンも全て殺された。

改めて周囲を見回す2Bと9S。

 

そこで、冒頭の声が聞こえた。

聞き覚えの無い声に二人が声の主を探す。

 

「お前達は!」

 

視線の先に居たのは二人の男。

まだ、ジオンと出会う前に遭遇した敵、アンドロイドに酷似した外見を持つ機械生命体だった。

 

「ポッド!」

 

2Bがすかさず攻撃を仕掛ける。

しかし、ポッドの弾丸は空を切る。男の姿は消えていた。

 

「乱暴だな」

 

背後で男が笑う。

以前とはまるで違う表情に流暢な発言。上半身は裸だが下半身には服を纏、片方の男の髪は短く刈り込み、もう片方は長いままだった。

 

「なぁ、にぃちゃん。こいつら、殺していい?」

 

「イブ。落ち着け、まだ話も終わってない」

 

短い髪の男に長髪の男が待てと言う。

長髪の男の言葉に頷くと口を開く。

 

「私の名はアダム。君達アンドロイドが探しているエイリアンは、もういない。何百年も前にこいつらは…私達機械生命体が絶滅させた」

 

長髪の男がアダム。短髪の男がイブと判断した2Bと9Sだがそれ以上の驚くべき情報を聞かされた。

 

「絶滅させた?機械生命体が?」

 

「今度、絶滅するのは…君達アンドロイドかな?」

 

そう言って笑みを浮かべるアダム。

話は終わりと2Bはイブに攻撃する。

持ってる剣で切り、ポッドの射撃で攻撃する。

9Sもアダムへと攻撃を開始する。

しかし、攻撃されてる筈のアダムは涼しそうに言葉を続ける。

 

「機械生命体は、自己進化を繰り返して、強化されていく兵器だ。

ネットワークの上に芽生えた知性が、創造主のそれを凌駕するのに、大して時間は必要とはしなかった」

 

「だからって、自分達の創造主を倒すなんて…」

 

9Sには理解できない。

少なくとも自分達は、人類の為に命懸けで戦ってきた。

それがジオン公国に変わろうと変わらない。

自分達は人類を愛し戦う事が使命なのだ。

しかし、アダムは「単純でくだらない生き物」だと切り捨てる。

 

「私達が興味あるのは、月の裏側に居る人類」

 

「サイド3の!?」

 

「そう、ジオン公国さ。人間は魅力的だ」

 

アダムが芝居がかった仕草で言う。

 

「記録によれば、同じ種族で大量に殺し合ったり、かと思えば、愛し合ったり。その行動原理は目を見張る不可解さだ。

知ってるかね?君達も見たあの巨大人型兵器モビルスーツが何の為に造られたのかを。平和な時代ならばあんなもの必要としない。

さて、彼等は何処と戦争しようとしていたのか?」

 

そこで、9Sが以前ダグラス達から聞いた組織の名を思い出す。

 

「…地球連邦」

 

「そう、彼等は地球連邦に独立戦争を挑もうとしていたのさ。ふふふ、各地の機械生命体が敵わない訳だ。戦術も戦略もアンドロイドを上回っている。そして、ミノフスキー粒子という未知の粒子が我々の弱点ともいえる。それに共に戦うアンドロイドの士気も高い。私はこの三か月ずっと見ていた。なのに全く飽きがこない」

 

その言い方に不快感を覚える2Bと9S。

敬愛すべき人間に機械が解った風な、まるで感情があるような行いに腹立たしくもあった。

 

「だからこそ残念だ。折角、古い大型兵器で此処へと招いたのに来たのは君達、アンドロイドだけだとはな。やはり、横穴はモビルスーツが通れる程の広さが必要か。そうか、これが『期待外れ』という感情か」

 

「に、人間を此処に招いて何をたくらむ!」

 

「生きたまま分解して、分析して…その秘密の全てを暴く。そうだ、9S。君も参加したまえ、きっと面白いぞ」

 

その言葉に、9Sの怒りが爆発する。

 

「ふざけるな!そんな事、やらせる訳ないだろう!」

 

9Sは長剣でアダムに切りかかる。

しかし、剣は空を切るだけでアダムには当たらなかった。

それでも構わない。これ以上アダムの言葉を9Sは聞きたくもない。

それにも構わずアダムは喋るのを止めない。

 

「ふぅ、私の言葉を聞く気が無いなら…仕方ない。君の脳に直接語るとしよう」

 

9Sの攻撃の一瞬の隙をつき、アダムは9Sの首を掴む。

 

「9S!」

 

「にぃちゃんの邪魔はさせない」

 

2Bが助けに行こうとするがイブがそれを阻む。

ポッド153が援護しようとするがアダムが指を鳴らすと同時に機能を停止する。

そして、アダムはもう片方の手で9Sの頭を触る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9Sは気付けば真っ白い空間に居た。

自分の記憶領域だと気づき、ハッキングされている事に気付く。

なんとか脱出しようとすが、

 

「聞け、9S。お前に告げる」

 

アダムの声が耳元から聞こえてくる感覚がした。

 

「私達、機械生命体は…長年に渡る闘争と学習進化によって新たな意識を獲得するに至った。

そう…それはまるで新たな生命が誕生するように」

 

嘘だ、機械ごときが。

 

「機械ごときが命を名乗るな?と?」

 

アダムは笑う。

 

「確かに、お前達アンドロイドは生きてるとは言わないな。自らの意思で生きていない操り人形だからな…」

 

違う!違う!

 

「何が違うんだ…9S…」

 

僕は…僕達は…

 

「そうだ、9S。お前にも意思が…欲求があるんだろう。そうだ『憎悪』こそが生きる意味だ」

 

違う。

 

「お前の心の奥底には汚い『憎悪』が眠っているんだ」

 

違う!

 

「隠せば隠す程、その淀んだ闇が育っていく」

 

違う!違う!違う!違う!

僕達は人類を守る為に造られたんだ!

お前達、機械生命体とは違う!

 

「全ての生命は欲望に囚われている。その内的欲求こそが生きる意味なのだ。ある者は美しさを求め、ある者は安らぎを求める。私にとっては、憎悪こそが…」

 

僕は違う!

 

「はははっ、違わないさ。

お前はジオンのモビルスーツに嫉妬している。お前はアンドロイドとモビルスーツの違いに絶望している。お前は人間にも嫉妬している。お前は2Bが人間に取られると恐れている。お前は2Bの心も人間からの愛も欲してるんだ」

 

「お前は全てに愛されたいんだ」

 

「お前は2Bを人間を……▼※したいと、思ってるんだろ?」

 

欲にまみれた現実。

                     やめろ!やめろ!!

流れ込んでくる憎悪。

                     違うって言ってるだろ!

溢れ出る欲望。

                     僕は…僕はお前達とは違う!!

 

 

「何処が違うんだ?我々と同じ動力を持つ君が」

 

止めてくれ…誰か…僕を助けて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああああああああああああああああああああああAAあああAAあ!!!」

 

9Sの絶叫が室内を駆け巡る。

 

「9S、ナインズ!!」

 

その悲鳴に助けに行こうとする2Bだがそれを許すイブではない。

 

「そこを退けぇぇ!!!」

 

「嫌だね、にぃちゃんの邪魔はさせないって言ったろ」

 

2Bが斬撃でイブを攻撃するが集中力の欠けた2Bの斬撃ではイブに僅かな傷を付けるだけで精一杯であった。

その間にも9Sの叫びが室内へと響く。

 

「ふふふっ、このまま君の精神を磨り潰すか論理ウイルスを大量に送って我々の仲間にするのも面白いな」

 

9Sを誘うのを諦めたアダムは9Sを如何いう風に破壊するか決めかねていた。

決着を付けるだけならこのまま頭部を破壊すればいい。

しかし、それでは面白みに欠けるとアダムは判断し、このままゆっくりと精神を磨り潰そうとした。

 

その直後に数発の銃声と共に9Sが床へと落ちる。

手の痛みにアダムが見ると手に銃痕が付いていた。

アダムが撃って来た方を見ると十数人の集団が自分とイブに銃を向けている事に気付く。

戦いに夢中で此処まで近づいてる事に気付かなかった。

 

「どっちもアンドロイドに見えるが…誰かこの状況を説明してくれないか?」

 

「ガ、ガルマ大佐?」

 

取り敢えず、9Sの悲鳴から長髪のアンドロイドと思しき者の手を撃ったガルマ達だが状況が今一飲み込めないでいた。

ハッキングが解けた9Sがガルマ達の存在に気付く。

ガルマ達の姿を確認したアダムが笑みを浮かべるが、

 

「残念だが、そろそろ時間だ」

 

そう言い終えると同時にイブもアダムの居る場所へと行く。

イブが離れた事で自由になった2Bは9Sの下に行き守るようにアダム達に剣を向ける。

しかし、アダム達の視線は2B達には向けられずガルマ達の方に向けられたままだった。

 

「折角のお客だが此方も約束の時間なんでな。其方のガルマ・ザビ大佐とはまた何れ」

 

アダムが言い終えると共に二人の姿が糸状になって消えた。

残されたのは2Bと9S、突入したばかりのガルマ達だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、2Bはガルマ達に事の成り行きを説明した後、先週から稼働している転送装置でバンカーへと戻る。

転送装置とは、飛行ユニットを使わず地上と宇宙のバンカーを行き来する手段として技術部で開発が進められていた。

月面人類会議が原因で開発が遅れていたがやっと完成したらしい。

地上に義体を残したまま、自我データだけをバンカーのボディに転送する。

そうする事により所要時間を大幅に短縮出来る。

他にも降下中に攻撃されずに済むというメリットもあったがジオン軍基地によりそれも大分軽減されている。

 

「……以上がエイリアンシップの報告です」

 

2Bが一人、指令室で司令官に報告する。

9Sは敵のハッキングを受けた事でメディカルルームで検査されている。

報告を聞いた司令官は「そうか」と呟く。

 

「この情報はジオン軍上層部へと送る。それから君達には暫く休みを与える」

 

「休みですか?」

 

「今回の事で9Sの精神的消耗が激しい。敵から何を聞いたのか知らないが心配だ。一緒に居てやれ」

 

それを聞いた2Bは了解としか言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急な休みを貰っても困りますよ。そう思いません?2B」

 

メディカルルームの検査を終えた9Sは2Bと合流しそう喋る。

一見元気そうにも見えるが2Bには9Sが無理してるように見えた。

 

「…そうだね」

 

そんな9Sにどう声を掛けていいか分からない2Bはそう返事をするしかなかった。

結局、バンカーでやる事もないので元キャンプへと戻る二人。

 

「ん?何だろうあれ?」

 

そこで9Sがテントの一角に人だかりが出来てる事に気付く。

以前のテレビの所とは別の場所に9Sと2Bが近づく。

近づいて分かった。

複数人の人間がテレビカメラを持ちマイクでガルマへとインタビューしているのだ。

サイド3のテレビクルーのようだ。

 

「この度、ガルマ大佐の指揮の下、エイリアンどもを殲滅し配下の機械生命体を退けたという話ですが」

 

「何度も言ってるが、我々が突入した時には既にエイリアンは全滅していたんだ。それに機械生命体と戦ったのも我々ではない」

 

如何やら、ガルマがエイリアンシップでの活躍を捏造されていたようだ。

最も、ガルマも訂正していたが、

そこで、ガルマと自分達の視線が合った気がした。

 

「おお、君達も戻ったか。ちょっと来てくれ」

 

気の所為では無かった。

ガルマの手招きに答えない訳にもいかず二人はガルマの下に行く。

 

「この二人が先に突入し危険な機械生命体の霧払いをしてくれたおかげで我々も無傷にエイリアンの船へと行けたんだ」

 

「そうなんですか!ええと、お二人はヨルハのアンドロイドの…」

 

「ヨルハ9号S型です」

 

「…ヨルハ2号B型…」

 

テレビクルーの言葉に9Sが自己紹介し2Bもそれに続く。

その後も、インタビューに答える2Bと9Sだが、そろそろ番組も佳境に入りそうな場面でガルマが答える事になった。

 

「ガルマ大佐、その二人はガルマ大佐にとってどのような関係になるでしょう?」

 

「そうだな、素晴らしい友人と言えるでしょう。共に戦う中で私はそう確信している」

 

友と言われた2Bは胸に温かい物を感じた。

しかし、9Sは急に目線を下に向け少し震えだす。

心配した2Bが話しかけようとするが、

 

「…………ないんだ」

 

「ん?何か言ったかね9S」

 

9S呟きにガルマが気付き何を言ったか聞く。

それに反応しもう一度「………ないんだ!」と呟く。

 

「すまない、9S。もうちょっと大きい声で言ってくれ」

 

ガルマの言葉に9Sは大きく言う。

 

「僕等は貴方達と友達になる資格なんてないんだ!」

 

そう言い終えると9Sは地面に座り込んで泣き出し、周りの人間やアンドロイド傍観する。

全員が全員、何が何だか解らなかったからだ。

2Bはそんな9Sを見てオロオロするだけだった。

 

「あの生放送なんですけど…」

 

突然の事にテレビクルーも戸惑う。

しかし、ガルマは泣いてる9Sに話しかける。

 

「落ち着きたまえ、9S。私と友達になる資格がないとはどういう事だ?」

 

「僕達…僕達はヨルハは…」

 

9Sは泣きながらもヨルハ計画について全て喋った。

自分達は望まれて生まれてきた訳ではないと、月に人類が居る様に見せかける為に造られただけで、機械生命体を何千何万倒そうと、その戦いに意味がない。

自分達は元々捨てられる事が決まっていた。バンカーも司令官も自分達も最後にはゴミのように捨てられる計画だった。

その為にヨルハ機体には機械生命体のコアを流用したブラックボックスが搭載される。人道を言い訳にして。

しかし、ジオンの出現によりヨルハ計画は中止となり、自分達の存在意義は完全に無くなった。

 

「分かった?僕達、ヨルハ機体はこの世界に愛される資格はないんだ」

 

本来ならば、アンドロイドどころか人間にも言いたくない事実。

しかし、これ以上黙ってるのが人間への裏切りではないかと考えると9Sの胸に苦しみが支配し全てを暴露した。

話を聞いていたアンドロイド達も今では敵を見るような目で9S達を見ていた。

 

「……9S、立て、立つんだ。…歯を食いしばれ!」

 

ガルマの言葉に9Sが立ち上がると頬に衝撃がはしる。

それが、ガルマの拳だと直ぐには気付けなかった。

 

「9S!」

 

「待て」

 

2Bが9Sに近づこうとするがアナベル・ガトーがそれを止める。

 

「でも!」

 

「今ここで止めても何も解決しない。9Sの為にはならないぞ」

 

その言葉に、2Bは止まるしかなかった。

9Sが無理をしてる事には気付いていたが此処まで思い詰めている事には気付かなかった。

そして、ガルマはもう一度9Sの頬を殴る。

血が9Sの頬に付くがその血はガルマの拳の血だった。

元々も機械生命体との戦闘の為に造られた9Sの体に人間の拳などでダメージを与える事は出来ない。

寧ろ、殴った方にダメージが返る位だった。

 

「私は君を過大評価していたようだな。そんな『くだらない事』に拘るとはな。それとも慰めの言葉でも欲しいのか?」

 

「下らない事!?貴方に僕達の何が解るって言うんだ!」

 

9Sがガルマの胸倉を掴む。

 

「生まれる前から廃棄が決まっていた僕達の何が解るんだ!僕達は頑張ったんだ!2Bも皆も、多くの機械生命体倒してきたのに…全部無駄だったんだぞ!そんな、僕達の何が解るっていうんだ!?」

 

「解らんさ!私には君達の気持ちなんて解らん。だがこれだけは言える、世界に愛される資格がない?捨てられる事が決まっていた?

そんな事、誰が決めた!?世界か?アンドロイドか?機械生命体か?それともヨルハ計画を考えた馬鹿か?

そんな物に拘る位ならば私と共に来い!

この世界が君達を拒絶するのなら、我々ジオンが君達を貰おう!

ジオンが君達を要らないと言うなら私、ガルマ・ザビが君達を引き取ろう!」

 

そう言って、ガルマは9Sに手を差し出す。

その手は、9Sを殴った事で手袋越しにも血だらけであった。

 

「本当に…本当に貰ってくれるの?こんな僕達を…」

 

「ああ、必要ならば此処で宣言しよう。この私ガルマ・ザビはヨルハ機体9Sと2Bと共に戦う事を誓おう。ジオンの栄光の為に、人類の未来の為に。

改めて、私と友達になってくれないか?9S」

 

「…はい」

 

ガルマの手を9Sが握る。

この時、9Sの心の中は幸福に満ちていた。

 

 

この命に意味がないと思っていた。

あの日、ヨルハ計画の真実を知って僕達はこの世界に望まれていないと思っていた。

誰にも望まれずに生まれて、この世界から消えることだけを望まれていた。

僕達が消えても誰も悲しまない。そう思っていた。

だが、ガルマ・ザビ大佐は自分達が必要だと言ってくれた。

それが、たまらなく嬉しかった。

 

 

「皆の者、よく聞け!これより9S及び2Bはガルマ隊へと編入する!異義のある者はこのガルマ・ザビに申し立てい!」

 

ガルマの宣言が辺りにコダマする。

内心、ガルマは赤い親友がこれを見ていたら「坊やだな」と言われるだろうな思った。

暫しの、沈黙の後にジオン兵が中心となり歓声が響く。

 

「ふっ、甘ちゃんね」

 

「若いって事さ」

 

ニアーライトの呟きにダグラスが返す。

 

「え、ええと、それではスタジオにお返しします!」

 

テレビアナウンサーがカメラへと視線を戻し、そういい終える。

完全な放送事故で後で叱られるかと思ったがとんでもない視聴率を叩き出しボーナスを貰うのは随分と後の事である。

 

 

 

 

 

 

その放送は各所で流れる。

バンカーでは。

 

「今の放送、録画しているか!?」

 

司令官の言葉に6Oが「もちろんです!」と答える。

 

「よし、全てのヨルハ隊員の部屋に流してやれ!」

 

後日、引き籠っていたヨルハ隊員の殆どが仕事に復帰したのは言うまでもない。

因みにガルマの人気が凄まじい事になり、ヨルハの秘密を勝手にバラした9Sに対しては一発ぶん殴ると決めるヨルハ隊員も居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛たたた、もう少し優しくしてくれないか?」

 

「何言ってんだい。最新鋭のアンドロイドを殴ってこの程度ですんでんだ」

 

あの後、執務室に戻ったガルマはデボルとポポルに手の治療をして貰っていた。

ポポルが「骨が折れてないだけマシ」とも言う。

 

『無茶をしおって、ガルマめ』

『うう、立派だったぞ、ガルマ』

 

通信モニターからギレンとドズル、デギンが映る。

どうやら放送を見ていたようだ。

 

「ああ、兄さんたちに父上、お見苦しいところをお見せしました」

 

『構わん、構わんぞガルマ。お前も立派に成長しおって』

 

『取り敢えず、ヨルハ部隊はお前のところに組み込んでおくぞ』

 

「本当ですか?それはありがたい」

 

『立派に成長したのは嬉しいがな。それでは説教を始めようか』

 

「へ?」

 

『ガトーから』

 

『ダグラスから』

 

『キシリアから』

 

『『『聞いたぞ』』』

 

これにより暫くガルマへの説教が続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ご報告は以上です。キシリア様』

 

「ご苦労だった。ニアーライト大尉」

 

月基地ではキシリアが地上に派遣したニアーライトから報告を聞いていた。

 

「それで、ヨルハのE型は如何だった?」

 

『ダメですね。どいつもこいつも中途半端な良い娘ちゃんばかりで私達の部隊には馴染まないわね。無理に入れたところで精神が崩壊したらたまったものじゃありませんわ』

 

キシリアがニアーライト達「マッチモニード」を地上に下したのはガルマの護衛ばかりではない。

地上にいるヨルハのE型のスカウトの為でもあった。

E型とはExecutionerの意味で主に裏切り者や秘密を知りすぎた者を処刑する為に造られたモデルである。

それに目を付けたキシリアがマッチモニードの増員としてニアーライトにスカウトを命じていた。

マッチモニードも形は違えど反ザビ派の諜報を主に味方のジオン兵の始末を行う部隊である。

それゆえに、マッチモニードにも馴染めるかとキシリアは考えていたが。

 

「そうか、なら仕方ない。当面はお前達だけでガルマを支えよ」

 

『はっ!』

 

通信が終わると、キシリアは椅子に体重を預け天井を見る。

 

「味方を殺すのに眉一つ動かさない人間と味方を殺すのに一々悲しむ人形。果たしてどちらが人間らしいか」

 

キシリアは一人呟く。




9Sが感情爆発させる回です。

正直、ガルマと9Sの友情がやりたかっただけです。
そのせいで文字数が偉いことに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。