始めましての人は初めまして。
お題箱シリーズ第二弾

お題は『塔』『夕焼け』『言の葉』です。
書き上げてから気づきましたが、『塔』が入っていないので
レギュレーション違反ですね。なんで入ってないかは察してください。

タイトルの漢字は『ノヂシャ』って読みます
なにとは言いませんが、もし興味がある人は色々調べてみてください。
原作も読んでみてくださいね


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始めましての人は初めまして。
お題箱シリーズ第二弾

お題は『塔』『夕焼け』『言の葉』です。
書き上げてから気づきましたが、『塔』が入っていないので
レギュレーション違反ですね。なんで入ってないかは察してください。

タイトルの漢字は『ノヂシャ』って読みます
なにとは言いませんが、もし興味がある人は色々調べてみてください。
原作も読んでみてくださいね



野萵苣の罰

 あるところに、若い夫婦がいました。

 二人はとても仲が良かったのですが、お金がありませんでした。

 妻は子供を身籠っていましたが、養えるだけのお金なんてありません。

 そこで二人は金貨三枚と交換で、泣く泣く子供を老婦人に引き渡すことにしました。

 老婦人は随分と前に夫を亡くしてしまい、毎日寂しい思いをしていました。

 だから子供が貰えると聞いて、泣いて喜んでいたのです。

 老婦人は「面倒をよく見て、母親のように大事にするよ」と妻に言い残し、夫婦のもとを去っていきました。

 

 

 老婦人は娘に桔梗と名前を付けて、大切に育てました。

 桔梗はそれはそれは美しく成長しました。

 しかし、老婦人は桔梗が成長するにつれ、

彼女が自分の目の届かない場所へ行ってしまうことを嫌がりました。

 桔梗が14歳になると、老婦人は彼女を狭い納屋へ閉じ込めてしまいました。

 納屋は暗くじめじめとしていて、中からは絶対に開けられないようになっています。

 ただ一つ。てっぺんに開いた小さな窓。

 そこから入ってくるお日様の光だけが、桔梗の心を温めていました。

 桔梗は毎日のように泣いていました。

 

 

 それから二年の時が経ちました。

 近くに住んでいる16歳の男の子が、たまたま納屋の傍を通りかかったのです。

 すると甘い声色の歌が聞こえてきました。

「なんて綺麗な声なんだろう」と、男の子は聞き惚れていました。

 男の子は声の居所を突き止めて、思い切って納屋の扉を開けました。

「君は……」

 最初、桔梗はひどく怯えていました。

 彼女にとって、老婦人以外は畏怖の対象でしかなかったのです。

 しかし、男の子は友達のように優しく話し始めると、やがて桔梗は怖がらなくなりました。

 男の子は桔梗に外の世界の話をたくさん聞かせてあげました。

 花がとても綺麗なこと。川のせせらぎがとても心地良いこと。海の広さや、雪の冷たさ。

 どれも桔梗が知らないことばかりだったので、彼女はとても嬉しく思いました。

「君の長い黒髪、とても素敵だね。まるでラプンツェルみたいだ」

「ラプンツェル……?」

「僕が好きなお話なんだ。今度来た時に絵本を持ってきてあげるよ」

「……ありがとう。楽しみにしてるわ」

 桔梗の長い髪は老婦人のお気に入りでもあり、切ることを許されていませんでした。

 彼女は伸びすぎた黒髪を邪魔だと思っていたのですが、男の子はそれを褒めてくれたのです。

 桔梗は泣き出しそうになるくらい心を揺さぶられました。

「どうして桔梗はここに閉じ込められてるの?」

 桔梗は始め戸惑っていましたが、やがて決心したように口を開きました。

 事情を聞いた男の子は、老婦人を激しく批難しました。

「そんなのひどい、そもそも桔梗はなにも悪くないじゃないか!」 

「おばさんは怖い時もあるけれど、私をここまで育ててくれたわ」

「お母さんとお父さんのことだって、一度も恨んだことはないわ。全部仕方がなかったの……」

「こうでもしなきゃ、お母さんたちは飢え死んでしまっていたわ」

 桔梗は、老婦人に引き渡されたことと、今こうして納屋に閉じ込められていることは、

この世に生を受けた代償だと言いました。

 自分が納得すれば全て丸く収まることを理解していたのです。

「そんなの絶対おかしい! 僕が君を幸せにしてみせるよ」

 しかし、彼はどうしても納得出来なかったのです。

 男の子は彼女を幸せにして、連れ出す決意を固めました。

「ありがとう。とっても嬉しい……」

 彼の真摯な言の葉に感銘を受けた桔梗。

 そのどれもが彼女にとっては救いだったのです。

 やがて二人は恋に落ちました。

 

 

 

 それから毎日のように納屋に遊びに来るようになった男の子。

 桔梗の歌声を聞いたり、外の世界の素晴らしさを彼女に聞かせてあげたり。

 互いを想い合った二人は、やがて当然のように身体を重ねるようになりました。

 

 

 

 しかし、幸せな日々はそう長く続きませんでした。

 

 

 

 ある日、桔梗のおなかが大きくなっていることに老婦人は気づきました。

 彼女は子供を孕んでいたのです。

「私は世間の全てからお前を引き離したかったんだ。それなのに……」

「私がここまで育ててやったのに……。裏切り者め!」

 老婦人は怒り狂い、桔梗の髪の毛をバッサリと鋏で切ってしまいました。

「お前がしたことは、お前の親と一緒だ。愚か者め! 何処にでも行ってしまえ!」

 老婦人に罵倒された時、初めて桔梗は自らがした過ちに気づきました。

「ごめんなさい……ごめんなさい!」

 桔梗が泣いて懇願しても、老婦人は許してはくれませんでした。

 そして薄情にも、彼女を遠くの街へ置き去りにしてしまったので、

桔梗はそこで一人で暮らさなくてはなりませんでした。

 

 

 桔梗を追い出した同じ日に、老婦人は納屋にやって来た男の子を邪悪な目で睨みつけました。

老婦人は彼のことが許せなかったのです。

「お前さえいなければ、全部私の思い通りだったのに! お前は二度と桔梗に会うことはないさ」

 男の子は悲しみのあまり我を忘れました。以来彼の心は壊れてしまったのです。

 男の子は、最愛の人を失くしてただ嘆いたり泣いたりするだけでした。

 

 

 桔梗は産んだ双子の子供と一緒に、砂漠のような街を彷徨い続けました。

 これは私の罰なんだ。彼女はそう理解しました。

 この二人の子供だけは、この身を引き換えにしてでも幸せにしよう。

 それが自分に出来る唯一の罪滅ぼしだと、桔梗は胸に誓いました。

「出来ることなら……。許されることなら、もう一度だけでも彼に会いたい」

 彼女はそんな思いを抱きながら、今も何処かで歌っています。

 


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